また、オフラインの知り合い、親戚等の方もホント勘弁してください。
同氏の漫画を総合的に(深い浅いはこの際置いといて)フォローしているファンでない限り、「忍者漫画の描き手」として石川賢を認識している人数は、マンガ読みの中にあっても多くないのではないだろうか。
「SF・バイオレンス・ギャグ、またはコミカライズ作品の描き手」という意識が一般的であり、氏の名前が気になっていろいろ読み始めると、オーバーテクノロジーがしばしば乱れ飛ぶ独自の時代ものにも突き当るという具合…だと思うのだが、実は多くの忍者ものを執筆している。
ストレートに忍者バトルを繰り広げるものもあれば、一見そういう話じゃないのだが気がつけば忍者バトルになっている物語、また「忍者」という呼称は明確に出てこないまでも、繰り広げられる「異能者バトル」の構造がまごうことなき忍者もののフォーマット的であったりすることがしばしばである。
漫画における忍者ものは、1960年代を中心に白土三平・横山光輝らの名作群によって大人気を博し、その後もいくつかのエピゴーネンを産み出したものの、ジャンルとしては1970年代に入ると急速に収縮した。この辺の事情や考察は始めるとかなり長くなってしまうので割愛させていただくので、興味のある方は検索等でどうぞ。
その後、たとえば「伊賀の影丸」等に見られる「異能者チームバトル」は、形を変えて「リングにかけろ」や「キン肉マン」などのバトル漫画のフォーマットの中で生き続けるのだが、「時代劇」という基本舞台の上で忍者たちが技を競い合う正統派の忍者漫画は急速に姿を消していく。
70年代以降の代表的な忍者漫画としてよく挙げられるのは
・「伊賀のカバ丸」「さすがの猿飛」などの、ライト化・ラブコメ化したタイプのもの。現代の日常や学園生活の中にライトな忍術が入りこむことによって騒動が起こる…というフォーマットが多い。
・「風の戦士ダン」などの、近未来・SF・超能力バトルフォーマットの中に「忍者」が組み込まれたタイプの作品。
のどちらかが圧倒的に多いのだが、その中にあって石川忍者漫画は
・オーバーテクノロジーも結構出ちゃうけど江戸時代が舞台
・山田風太郎の路線を受け継いだ異能者集団としての忍者の戦いを描く
という2点を持つ作品が多く、忍者ものにそもそもニーズのあまりなかった時代にも連綿と忍者ものを描き続けた(そして遺作となった「五右衛門」もまた忍者集団を舞台とした作品だった)作家であるといえる。
実際に本人もとにかく白土三平を中心とする忍者漫画が好きで好きで、デビュー前の時代も何度も忍者ものを描いて持ち込んだというエピソードがある。そして編集者は「今時忍者ものなんてダメダメ」とけんもホロロな対応だったというのはいかにも残念だが、この仕打ちがあったからこそ、後に中堅漫画家となって以降、ある意味"過去の仇を取る"ような感じで多数の傑作忍者(的)漫画を作り続ける原動力が生まれたのかもしれない…
デビュー前、白土忍者漫画に大いに傾倒していたというのはけっこううなずける話で、たとえば本作内のこんなコマを見ても一目瞭然だ。

このポーズ、この表情、この汗の飛び方…お遊びかどうかは定かでないが、ここまで「白土している」コマを描けるのは、過去にかなり白土作品を読み込み、模写した経験がなければそうそうサラリと描けるものではない。
石川忍者漫画は、上で語ったように「意外に正統派なフォーマット」を持ちつつも、
・山田風太郎忍法帖的なエロティシズムはできるだけオミットしない…というか極力隙あらば入れてくる
・石川賢一流のダイナミックでスケールの大きなアクション描写を勿論ふんだんに盛り込むため大迫力画面を実現
という独自要素が相乗効果を生みだしているものが多いのだ。
できるだけ簡潔にまとめるつもりがかなり長くなってしまった。
ようやく本作「伊賀淫花忍法帳」の話に移ることにする。
いかに石川賢が忍者漫画の卓越した描き手であるか、誌面の迫力ある描写がいかにイイかを力説した後で非常に気が引けるのだが、上記の美点を持ちながらもこの作品は、基本的に、石川賢のもう一つの得意技たる
「徹底的にお下劣なエロコメ」
なのである。
この作品が描かれた1978年は、「特別非道捜査隊」「まみむめ悶々荘」などの傑作お下劣作品の当たり年でもある(というかまあ、単純に掲載誌が同じなのだが)。
石川賢のこの手のエロコメを2,3作読んだことのある方はお分かりだと思うが、徹底的に下品だし、裸も出るしそういう行為もしまくるのだけれども、実にエロくないのが最大の特徴である。多分当時としても「実用に適さない」という評価が一般的だったのではないだろうか?
もっとも、読んでいるうちに「そこがいい」とボディブローのように効いてくるのが実に不思議な味わいなのだが…
そして「伊賀淫花」もまたその路線上にあり、掲載誌が成人対象の上に、こう言っては何だがかなりマイナー、「2流」的な位置づけにある雑誌だけにけっこう自由度が高くやりたい放題だったのか、もう飛ばしっぷりが凄いことになっている作品である。
超下品・お下劣・あけすけなエロもやり放題。
しかしキャラクターはこれでもかと立っており、その上アクションの格好よさと迫力は実績の中で磨きがかかっていて一級品の味わい。
そう、「伊賀淫花忍法帳」は、短いながらもまごうことなき傑作。石川賢の持ち味をマルチに味わえる作品と断言しきれる作品だと思っている。
しかし、このお下劣さゆえに間口(特に女性読者に向けては)は極端に狭いのもまた事実。
石川ファンの間でよく「石川漫画のリトマス試験紙(=アクが強くてとっつきにくさはあるものの、石川賢の持ち味がいくつも詰まっている上に漫画としても面白く、この魅力が分かるなら他の石川作品も大概楽しめるだろうという意味)」として「極道兵器」が挙げられるが、下品度の高さというハードルを考えると、「伊賀淫花」はさらに反応がシビアな試験紙と言えるかもしれない。
掲載は1978年、雑誌「漫画ジョー」にて。
この雑誌名、はっきり言ってこの作品で初めて知った。この時代、けっこう細々と色々な出版社が成人向けの漫画雑誌を出していた。(短命なものも多かった)
双葉社版の奥付には「漫画ジョー」(マネーライフ社)と記載があるのだが、実際の発行業務は廣済堂出版で、発売元がマネーライフ社といった形(あるいは逆か)のようだ。
創刊は1976年1月15日号。いつまで発行していたかはまだ調査できていないが、1979年に存続していたことだけは確か。
創刊号のメンツを見ると、さいとうプロ・政岡としや・松森正・ケン・月影・長谷川法世など劇画系が圧倒的な中でぽつんとあすなひろしがいたりする。また、狩撫麻礼のデビューもこの雑誌らしい。
石川賢のお下劣作品群を載せ続けたこの雑誌、よっぽどC級感に溢れているのかと思いきや、描き手を見るとなかなかの顔ぶれだし、この手の雑誌としては少なくとも3年間存続したのはまずまず立派な方か?(とはいえ、当時掲載されていた広告類は裏本・ビニ本やらエロ生写真の類があったりして、やっぱりそれなりに下世話路線だったかと思われる)
単行本は2種類。
・オハヨー出版 エースファイブコミックス(装丁が3種類存在するらしい)
・双葉社 アクションコミックス(復刻もの・2000年刊)
後者には若干作中用語の改変がある(後述)。
双葉社版が出た当時、恥ずかしながら私はゲッター以外の石川作品にほとんど興味を示しておらず、買わずにいるうちに今では勿論新本での入手は不可能となってしまい、激しく後悔している。
そんなわけで今回は、カゼさんからお借りした双葉社版にてレビューさせていただく所存。
ああ、もし時空を移動することができたなら、今すぐ当時の自分の首根っこを捕まえて
「後から憑きものが落ちるんだから、チョコエッグに血道を上げてねぇで、とりあえず本屋で石川賢の名を見たら何も考えずに買っておけこのバカチンが」
とグーでボコボコにしたいんだ…!
やっぱりここまで書いたらえらく長くなってしまったので、縁取りを改めて具体的なレビューを書くことにする。
…とはいえやはり、内容が内容だし、ちょっと間違って身内が見た日には確実に説教を食らいそうな気もするので、それなりにぼかした表現連発になってしまうのだがあしからずご了承ください。
できれば実際に読んでいただきたいので、みなまで語ってしまうのももったいないことだし。
うぇっへへへ。
(おとうさんはVシネの秘伝忍法帖(だったかな?正式表記失念!)シリーズが大好きです。)
(忍法 乳時雨! 火炎乳!)
(南蛮妖術 ぼじょれぇぬぼぅ!)(とかね。)
コレはノリにノって描いたんでしょうな。
私も、80年代頃に戻って、イシカワ作品を買い漁りたい…。
コメントありがとうございます。続けてその2をUPしておりますが、興味を持っていただけたら幸い(しかし同時に生殺しでもあるのですが)です。
>Vシネの秘伝忍法帖
はい、非常に近いノリだと思います(というか多分イメージソースが同じところにあるのかと…)。
石川作品は非常にVシネ向きなノリが多いので、90年代あたりにもっと映像化されてればなあ…と思うことが多いのですが、しかし冷静になって見てみると、実写や合成・CGをもってしても実現不能な部分もまた多いんですよねえ。映像作品の枠におさまりきらないといいますか、真に「漫画的」なのかなとも思います。
石川作品ではありませんが、オーケンが主演した「ドス竜」をちょっと思い出しました。
>>カゼさん
石川名作の数々からは、「ノリまくって書いたんだろうなあ」というのがビシビシ伝わってきますよね。石川先生自体が漫画を描く・頭の中のイメージを紙の上に具現化させるのが楽しくてたまらないというような…
また、書かれている絵やセリフそのものも、「石川賢に描かれているのが楽しくてたまらない」感じがするんですよ。そこが他の作家では得られないダイナミズムだなあと。
>>私も、80年代頃に戻って、イシカワ作品を買い漁りたい…。
カゼさん…そのころまだ幼女も幼女なのに…