2008年06月24日

「花の天誅組」幻六郎とダイナミック・プロ(その2)漫画

2巻目。
前半の2話に登場する敵は、この話には珍しく「まあ天誅組が怒るのも無理はないな」と思える連中である。



第4話「激突!鋼鉄ジーグの巻」
天誅対象:司馬宙(司馬モータース若社長)

そう、これが一部で有名な「鋼鉄ジーグゲスト出演」の回である。
「天誅組」は青さんからお借りしたもので、何しろ貴重な絶版本、美本ながら古いものなので極力スキャンは避ける方向で考えていたのだが、この話があまりに面白いもので、第4話のみ多めにスキャンさせていただきました。申し訳ありません。

ナナハンバイクを颯爽と乗りこなして女の子の注目を集めたい!そう思って長年貯金を続けていた宙治。札束を握りしめ、高鳴る胸を押さえつつバイク屋に走る。
そう、そのバイク屋こそ

tenchu09.jpg

司馬宙の家業・「司馬モータース」である。

tenchu10.jpg
さっそくバイクを選ぼうとするが、悲しいかな極端な胴長短足の誅治。足が全く届かない。
誅治「なんじゃーこれは 設計のミスではないのか!」
宙「ハハハ それはお客さんの足が設計ミスですよ ハハハ

ひどいぞ宙。仮にも相手は客なのに。

さらに宙の辱めは続く。
「これならだいじょうぶじゃないですか」
と出して来て薦めたのは三輪車
(置いてたのか)。

tenchu11.jpg

屈辱に顔をゆがめ、それでもなぜかキコキコと三輪車を漕いで司馬宙への天誅を誓う誅治だった。



というわけで、バイクで走る宙の前に立ちはだかる天誅組。

誅治「足のとどかぬ欠陥オートバイを売りつけては客をわらいものにする悪徳業者 司馬宙!!
   きさまのような極悪人 生かしてはおかん!」
宙「じょうだんじゃねえ キチガイはあいてにしてられねーぜ

非常に宙らしい物言いで踵を返すが、地中から現れ、バイクで轢いてもなんともないもだ恵の姿を見て
tenchu12.jpg
宙「ハ…ハニワ幻人!!」

ある意味、ハニワ幻人のほうが人類らしいかもしれません社長。

サイボーグチェンジしてジーグパーツシュート、ビルドアップで鋼鉄ジーグ一丁上がり。

舞子「誅治はん あれは鋼鉄ジーグどっせ!」
誅治「な なにい?毎週テレビNET系の日曜日夜6時からやっている あの 鋼鉄ジーグか!!
tenchu13.jpg
タイアップもここまでストレートだといっそ清々しいですね奥さん

ジーグを見た時点で勝ち目がないことを悟るが、一人ずつ挑んでは玉砕していく天誅組の面々。

ドン松→ジーグバスター
筆樹→ナックルボンバー
舞子→ジーグバズーカ
もだ恵→マッハドリル
誅治→ジーグブリーカー
名前の分からんやつ→スピンストーム

と、過不足なく武器を披露するジーグ。生身相手なのに。
かくして勝利をおさめ、闘志を新たにする宙だった。

tenchu14.jpg
宙「ヒミカめ きさまがどんな手をつかっても この鋼鉄ジーグは負けないぞ!」

"いや、なにも使ってないし"(byヒミカ)
ちなみに、このページにいる炎ジュンみたいな人は美和さんです。一応。

tenchu15.jpg

"ああ…ついに正義に鉄槌がくだされた…"
誅治「正義も鋼鉄ジーグに勝つことはできないのきゃ〜〜」

…なんなんだろうこの話は;
かくして天誅組は鋼鉄ジーグに完全敗北を喫したままこの回は終了してしまうのだった。

「鋼鉄ジーグ」には数種類のコミカライズがあるが、ここで登場した安田達矢(この人もダイナミックプロ所属)版は、「月刊少年マガジン」と同じ講談社発行の「テレビマガジン」(1975年8月号〜1976年6月号)に連載され、単行本もKCレーベルで発売された。
この回のジーグや宙・美和の作画担当も安田達矢と思われる。
ゲスト出演というか、同プロダクション・同出版社ならではの一種のクロスオーバー(おふざけ)企画だろうか。

なお、「そもそも誅治がナナハン乗れる限定解除の二輪免許があるのかよ」とツッコミたくなってしまうが、限定解除カテゴリが設けられたのは1976年9月の道交法改正以降なので、それ以前、つまり連載初期あたりに二輪免許を取得していたならば、試験を受ける必要なく限定解除カテゴリのバイクを運転できる。
もっとも、誅治の足では原付が精いっぱいに思われるのだが…


第5話 清潔四天王登場すの巻
天誅対象:清潔四天王(学生)

幻六学園の風紀委員長率いる「清潔四天王」は、少しの不潔も許さず粛清して、人間や環境を病的に清潔に修正していくグループ。
はっきり言って行動原理的には天誅組とどっこいどっこいな気もするが、なかなか手ごわい相手である。
15年間洗っていなかったドン松のフンドシを洗濯し、もだ恵の顔を塗りこめて書き換えようとするなどやりたい放題に正義を語る四天王に天誅組は対決。
舞子はボロ服を着て鞭で対抗するが、逆に返り討ちに会い、「洗い干しの刑」に処され、全裸で晒されてしまう(ちなみにここの舞子はちょっと可愛いというかエロいです。珍しく)。
一度敗北を喫した天誅組は「天誅ゴミ地獄」をぶつけるが、四天王の「清潔バリヤー」に阻まれる。しかし「汚物への嫌悪感」が原動力のバリヤーは、ゴミの山の上で披露される舞子の裸体(不潔だが美しい)に目が吸い寄せられることで無効化、ようやく天誅組の勝利となる。
ゴミの中でハエを自在に操って戦う筆樹の姿が、のちの「汚猥衆」の描写を思わせるものがあるような。



第6話「ミジメ新入部員の巻」
天誅対象:浜田ミジメ

前半レビューでもちょっとふれたが、同誌に掲載されていたはまだよしみ「ミジメくん」ゲスト出演の回。
正義に憧れて天誅組入会を希望するミジメくん。ミジメくんのスタイルを見て、誅治は「短足に悪い奴はいない」と即快諾する。
しかし、帝国軍人の祖父の教育により、「正義の執行者は質実剛健で清潔でなければならない」と、メンバーの身なりを正そうとする(なんか前回と展開が結果的にかぶってるような気もする)。
そのデカい態度にキレた天誅組は、「天誅旗地獄」の執行を決定。
訓練の振りをして徹底的にしごき、思わずそばにある旗でミジメが汚れた手を拭くように仕向け、「畑を汚すとは何事か!」と攻め立てる作戦だった。
局部(察してください)に綱を結えて天井から吊るし、全員で「ぶりぶり」をして責めた挙句に海へドボン。
「♪海〜ゆかば〜 みづ〜く〜かーばーねー」


どう見てもいじめリンチです。
復刻は絶望的かも…なあ…

(注:「ぶりぶり」
 対象を天井から逆さ吊りにし、時々水責めも加えながら、複数の男たちが竹ざおで延々と殴打するという拷問。その際に「ぶーりぶり」という文句を唱えることからこう呼ばれた。
 「子連れ狼」をはじめ、小池一夫原作の時代劇にやたらと登場することで知られる。郭において、遊女への仕置きとして行われる場合もある。)



第7話「クラブ活動費倍増の巻」
天誅対象:吉川進(幻六学園生徒会会計部長)

前回海に沈められたはずのミジメくんがメンバーに加わっている。
今年天誅組に割り当てられた活動費はたったの5000円(割り当ててもらえるだけでも奇跡的な気もするが)。部費を取り決める会計部長の吉川を接待して部費アップをもくろむ天誅組だが、そもそも評判の悪い天誅組に対して態度を和らげることはなく、切り札の舞子のストリップも効果なし(ド近眼だから)。

調べによると、吉川はド貧乏で、最近まで1万円札を見たことがなかったほどだという。そこを逆手にとり、会計作業中の吉川の前に「1000円玉」「10000円玉」といった架空の硬貨を次々に転がしていく。大金に縁のない吉川は実在の効果だと思いこみ、さらに既に会計割り当ては終わっているので、仕方なく次から次へと天誅組の活動費に割り当てることで帳尻を合わせようとする。
最終的に天誅組のクラブ費は531万円にも達し、紙幣で受け取って万々歳。

「吉川進」は、ダイナミックプロの作家「よしかわ進」(代表作・「おじゃまユーレイくん」など)からつけた名前だろう。


最終話 「壮烈!天誅組のさいごの巻」
天誅対象:各メンバーの親

メンバーの親たちが先頭に立ち、PTA軍団が天誅組詰所に押し掛ける。
「あなたたちはぜんぜん勉強せずに 学園の風紀を乱してばかりいるので解散させることにしました!」
「ここにいるおまえたちの親御さんたちは あれが天誅組の親だとののしられ 石を投げられているのですよ!
まあなるべくしてなった状況のような気もするが。

誅治のはは・どん率いる武装隊に対し、もだ恵を先頭に立たせて、嵐を呼び雷を操って対抗する。
この辺りの描写は、石川賢の伝奇SFや忍者もののバトルを見ている趣がある。
もだ恵の力に押されたPTA軍団は、
「モダエ〜や モダエ〜」
と、どこかで聞いたような歌を歌って、大怪獣・キングモダエを召喚。
必殺の引力光線によって天誅組は異次元に飛ばされ、キングモダエはいずこともなく去っていく。

天どん「キングモダエありがとう!」
    「でも これでよかったのかしら…??」


よかねえよ!その上「ありがとう」とか言っちゃってるし。

ラストページは、宇宙空間(異次元空間)に飛ばされて浮遊する天誅組メンバー。なぜか国会議事堂も一緒。
そしてナレーション
「ああ…ついに正義はほろびたのだ……」

[おわり]

もうどこから突っ込んでいいか分からない脱力ラストに、奥付ページのテンプレで「あなたは、この本を読んで、どんな感想をお持ちになられましたか?」とか言われてもなあ。

とはいえ、今ではまず実現不可能なクッチャメチャな内容、プロダクションならではのコラボレーションの楽しさが何とも言えない魅力でもある。
特に、ダイナミックプロという場が、「一人の大先生+その他アシスタント」ではなく、「それぞれ個性(絵柄的にも)を保持したクリエイター集団」であったからこそ生まれた作品といえるだろう。
特有の内輪コラボなど、当時の状況が分からないと通じないネタも多いので、もしも復刊の機会があったならば、そのへんの解説フォローが付けば万全だろうと思う。
posted by 大道寺零(管理人) at 20:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | 漫画
この記事へのコメント
私が「天誅組」を初めて読んだのは、70年代だった筈。リアルタイムに近いですね。「奇妙な正義談義」が妙に心に残りつつも、覚えているのは「ブラジャーをあげますえ〜」だったり、鋼鉄ジーグの故無き暴力だったりする・・・あの本、どこへ行ってしまったか・・・面白いですよね♪私は、幻六郎の名前は忘れており、石川賢作品と、記憶してしまっておりました。でも、たしかに、舞子は石川画ではないですねぇ。大人な美人である。微妙に子供向きではないエロさがありました。 
 30年も経ったのに、私は成長していません・・・

 「伊賀**忍法帳」は、密林マーケットプレイスに注文してしまいました!!楽しみですわ!!
Posted by ネコトシ at 2008年06月25日 02:33
>>ネコトシさん

ネコトシさんも色々読んでらっしゃいますねえ!リアルタイムとは恐れ入りました…(当時月刊マガジン眼中になかった私です…というか多分親戚のお兄ちゃん連中が誰も買っておらず、塾の時間潰し用のラインナップから漏れていたせいだな多分。)

「ブラジャーをあげますえ〜」をはじめ、舞子のセリフは妙に頭に残りますね。私は生粋の東北人なので言い切る自信はないのですが京都弁が怪しいせいもあるのかなあ。「このパンティをあげるどっせ」w

>鋼鉄ジーグの故無き暴力

この回のはっちゃけっぷりは何度見ても凄いですね。同じダイナミックでなければとてもここまでいじれなかったと思います。生身の人間がえらい目に。

伊賀淫花、注文なさいましたか!楽しんでくださいませ…っていうか最後までネタバレしてしまったので楽しみを奪ってしまったような;すみませぬ;
Posted by 大道寺零 at 2008年06月26日 09:06
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:[基本的に空欄を推奨します。詳細はこちらをご覧ください。]

ホームページアドレス:

(コメント投稿後、表示に反映されるまで時間がかかる場合がございますのでご了承の上、重複投稿にご注意ください。)
コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/101453944

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。