2008年06月25日

「学園番外地」永井豪・石川賢漫画

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この作品は時期によって作者クレジットや作画者が異なっており、ちょっとややこしい面がある。

掲載誌:少年画報(少年画報社・隔週刊)

第1期:1969年9/8号〜1970年9/22号(途中掲載のない時期あり)
     →「永井豪+石川賢一」クレジット(連載時)
       →途中から「永井豪+石川賢」

第2期:1970年10/13号〜1971年2/9号
     →「永井豪+相川てつじ」クレジット

となり、途中から作画担当が変わっている。
また、第2期の分は一度も単行本に収録されたことがない。

単行本:
・少年画報社 ヒットコミックス版(全2巻)1970年
       (1巻の著者名は永井豪のみ)

・若木書房 コミックメイト版(全2巻)1974版

今回お借りしたのはコミックメイト版なので、こちらを底本として紹介します。



無法がまかり通る荒れまくった「アルコール中学」、略して「アル中」。
ある朝、そこのワルガキ生徒にアル中への行き方をうっかり尋ねた青年は彼らにボコボコにされてしまう。
しかし朝のHRに現れた新任教師こそその青年。
姓は番・名は長介。通称「番長先生」。
生徒を凌駕する度胸と腕っ節でクラスを牛耳り、酒もタバコもギャンブルもやり放題。でもけっこうドジでスケベで情けない一面も…

4話目から登場する美少女教師・ルミちゃんは、長介と同じようなシチュエーションで登場し、ボコられる代わりにスカートめくりをされるも、長介同様に赴任するなり生徒をボコボコにする。というか実家がプロレス道場で鍛えられており、長介よりもよっぽど強い。
二人で同じクラスを受け持ち、仕事は楽勝…のはずだったが、いきなりアル中の教師全員が重度のアル中になって(ややこしいなあ)救急車のお世話になり、全校の授業を二人だけで受け持つことに。
札付きの3年生と対決したり、一応「ハレンチまんが」の看板もあることなので定期的に身体検査やら更衣室やらで女生徒にも軽くセクハラしたり、主人公自らアル中になりかかったり(しかも未解決)しつつ1巻目はずっとアル中での教師生活が描かれる。
1巻ラストではちょっとしたことから校舎全焼。
トバッチリを受けて生徒とともに「特弁少年院」へ(ということは長介は未成年?)。
少年院でもワルどもや牢名主を牛耳って極楽生活。シャバに出てみればアル中は廃校、ルミちゃんは寿退職していて長介大ショック。
今度は辺境の島「社会島」に転勤になり、外人スパイと戦ったりと、2巻は結構めまぐるしい。

島で寂しく釣り糸を垂らす長介の目の前に現れたのは愛しのルミちゃん。しかし金持ちのボンボンと生活力目当てに結婚しただけでなく、すでに一男一女の母になっていた。
その子供がまた分かりやすく長介そっくりで、チンチクリンの夫はルミの過去の男関係に気をもむ。というかこの二人、いつの間に付き合ってそういう関係になってたんだw
かといって別に焼けぼっくいがどうにかなるというわけでもなく、アッサリと島に置き去りにされる長介。
島から出たいとジタバタする彼に、ちょうど渡りに船で次の辞令が降りる。「ここ以外ならどこでも!」と色めく長介が受け取ったのは、「日本最南端の野蛮中学校(原文ママ)」への転勤命令だった。

ここまでが単行本収録分(石川賢作画分)で、単行本的にはこのページがラストのオチとなる(実際には相川氏にバトンタッチしてからの連載はもう少し続くわけなので、最終回ではない)。のだが…
おそらく将来的に復刻(完全復刻含め)の機会が生まれるとしても、この1ページが最大のネックとなるような気がする。

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ね。出版物的にダメでしょう。各方面に。



石川賢は1970年に単独名義でデビューするのだが、この作品はそれ以前の時期のものとなる。
一編は大体16ページ(残念ながら若木版では連載時の扉は未収録で、本編ページ内に描き文字で各回タイトルが付いている)で、今読むと「1回分が短いなあ」と感じるのだが、当時は漫画雑誌の厚み自体が薄く、作品数はそこそこあったので、ストーリーものであっても意外と1回分のページ数は今ほど割り振られないことが多かった。
一応連載時の煽り文句は「ハレンチまんが」なのだが、お察しの通りさほど(少なくとも今見ると)エロくはない。
基本的に長介は「エッチでおまぬけ」なキャラとして描かれるシーンが多いのだが、要所要所でワル顔になって決める部分は決めたり、怒りにキレたりするシーンでは、すでに石川イズムの開花を見ることができる。
長介のキャラクターは「ハレンチ学園」の山岸くんを思わせる部分も多く、彼が少しノーテンキに成長して教師側になったならこうなるかも?という感じもする。
名前通り、「番長なのに先生、先生なのに番長」という両義性が最大の魅力だろう。


この作品は、「かれいなる戦いの巻」のエピソードのみ、昨年リイド社から発売された「石川賢の本 初期ギャグ傑作集」に収録されているので、一部だけではあるが現在も読むことが可能。
しかしこの話、ルミちゃんが実家の道場でトレーニングしたり、道場破りにかり出されるという内容で、主人公の長介は1コマも登場せず、そもそも「学園」のシーンも皆無なもんで、なぜあえてセレクトされたのかちょっと不思議だったり…編集もフリーダムだなあ。
一応、ルミちゃんの試合用コスチューム(プロレス用水着)が破かれたり脱がされるシーンは多いけれども。


若木版のカバー折り返しには、最近ではめっきり見なくなった「著者近影」が付いており、今となっては貴重。さすがお二人とも若いなあ!賢先生が細い!
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posted by 大道寺零(管理人) at 07:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画
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