「WEB支那漢」というサイトがあったことを初めて知った。
「支那漢」とは、ハンディ漢字字典の名著・「支那文を讀む爲の漢字典」の略称。
この辞書は、研究室に入った時に「とにかくこれは買っておけ」と言われるままに購入した(ゆえにうちには相方のと私ので2冊ある)ものだが、現在でも時折お世話になっている。
この辞書の初版はなんと昭和15(1940)年と格段の古さながら、中国学の研究室や学生に愛用され続けている驚異のロングセラー。
田中慶太郎氏が、大正4(民國4=1919)年に中国で(当然中国人学生向けに)発行された「學生字典」を翻訳し、さらに「辭源」「中華大字典」を参考にして補注を加えたものである。
「字典」なので、基本的に漢字単体の原義的な意味や用法等を説明するものであり、通常の漢和辞典のように熟語や固有名詞の説明などは入っておらず(用例として熟語が登場することはある)、収録されている文字も8000字と多くはなく、660P程度の簡便な体裁となっている。
昔のものだけに当然解説文も文語調、字はすべて旧字体表記なので、初見時にはそのいかめしさに驚かされてしまう。また、ある程度漢文に慣れていなければ(以前の般教レベル等)、「説明の部分を解読するのに漢和辞典や古語辞典が必要」という場面もあるかもしれない。流石に高校生には向かない。
しかし、文字の持つ原義やニュアンス、似た文字との違い(たとえば「潮」と「汐」など)が簡潔に表現されており、シンプルながらなかなかいい辞書で、使うほどに「なるほど先生が必携と推薦するわけだ」と実感できてくる。
事実、大漢和でも漢語大詞典でもその他の辞書でもどうもしっくりこない解釈が、支那漢の説明でスッキリ氷解するようなことが2度や3度ではなかった。
「辞書としてではなく、読み物として通読するだけで間違いなく得るものは多い」とも勧められていた。
「WEB支那漢」は、この辞書全ページをスキャンしてデータベース化し、文字や部首・画数・音訓・四角号碼で検索できるようになっている。
原著は索引が部首・総画数の2種類しかないのが残念な点だったので、検索方法が充実したのは非常に嬉しいところ。
現在の出版元の研文出版では一応現在も刊行しているようだが、Web書店ではAmazonに在庫が1冊あるのみ、他のところでは軒並み品切れになっていてちょっと不安(そもそも学生協メインで出る本ではあるが)。
支那漢は基本的にスキャン復刻本なので、ナリの割には値段がいい。私が学生時代買った時も2200円と、ページ数を考えれば高価だった。今じゃ3000円越してるのを見てちょっとビックリした。
「Web版便利」と言っておいて矛盾するようだが、今でも価値は色あせない名工具だと思うので、絶版にはならないでほしいなあ…
2chあたりだと、「時代遅れ」とおおむね散々な評価のようだが、少なくとも過去の文献を読む上で、その「時代遅れ」が功を奏することもしばしばあるわけで…現代中文に関しては流石に出る幕はないと思うけれども。
教授陣の年代も相当入れ替わっているので、学生にこれを推薦する指導者も今や少数派orいなくなったのかもしれない。
まあとりあえず、私は一生そばに置くことは間違いない一冊。
しかし今回この記事を書くにあたって気づいたのだが、IME2007ででは「支那」は変換できない仕様になっている。
こうした「日本語化NGワードフィルタ」については以前も何度か書いたのだが、さすが今や中国で製作されている日本語変換ソフトだけのことはあるなあもう。バージョンアップするたびに頭が悪くなるのは本当に勘弁してほしい。
ただし、ATOKの場合一度使用者が入力するとすぐに覚えてくれるので、現在ではわたしは支那も小人も気違いも一発変換できます。
その他やや長めの文節で入力した際の変換も的確ですし、バージョンアップで良くなっていく実感があるのでわたしはATOKのほうがずっと優れていると思っているのですが、普及してませんね〜。IMEはOSに同梱だからなー。
・・・MSは商売はうまいと思いますが、製品がどうも・・・(汗
そうですね、ATOKでも同様のフィルタがかかっているのは以前も確認しています。共通忌避語と独自忌避語があるみたいですね。(それらの語句を集めた辞書ファイルもネット上で公開されていますが)
身体・障害・出自等に関する、いわゆる「自主規制差別用語」的なものはたいていアウトです。
とにかくIMEは、2002以降だんだんおバカになっていくのがものすごく実感としてヒシヒシとあります。ほんっとに使いづらいです…
前のメインマシンはIME2000だったんですが、そちらのほうがよっぽどストレスなく使えておりました。中国に開発が写ったのはその後らしいので。
なお、一応気になって変換してみましたが、流石に「天安門」「天安門事件」は一発変換が可能でしたw
IMEにしろOfficeにしろ、とにかくバージョンが上がるごとに確実に使いづらくなっていくのには頭を抱えてしまいます…そして一番大きな問題がOSなわけですが…;