先日書いたエントリー「超科学ウォーター」がらみで活水器業者関連サイト等を見ていたら、水モノだけでなく、「炭」もまた疑似科学にえらいこと好かれて利用されているアイテムだと改めて実感させられた。
「磁力でできた魔法の水」という強引さと怪しさとは、炭・活性炭の「ちゃんとした効果」をもたらす素性の確かさは元来比較対象にすらならない。
炭は多数の細かい穴を持つ多孔構造で、しかも高い吸着性を持つため、現在は燃料よりも
・脱臭
・濾過
・除湿
等の目的に用いられることが多い。
(「活性炭」とは、炭の中でも細かい穴をより多く持ち、より強い吸着能力を持つもの。炭を再加熱処理して作られ、炭の持たない極性と科学的吸着力を持つ。差異については↓に分かりやすくまとめられているのでお勧め
[・活性炭と炭の比較から見えてきたこと])
実際に私も部屋や収納庫・靴箱等で利用しているが、種類によって程度の差こそあれ、効果については実感できている。さまざまな脱臭・除湿剤・トイレタリー製品にも使われているのでなじみ深いものだと思う。
しかしこうした「確かな効果があり」「人口に膾炙し信頼されているもの」であることを利用し、やれ波動だマイナスイオンだ情報転写だといった本来ありもしない機能をくっつけてうたわれ、その上
「運気が上がる」「地相がよくなる」「マイナスイオンが出て毎日快適」とお定まりのトンデモ商売道具に祭り上げられてしまっている例が色々散見された。
当の炭にしても、「オレ、そこまでのことはできないんだけど…」と戸惑っているんじゃないかと気の毒に思えるほどだ。
で、私が見つけたサイトはこれ。
住宅地の土台や敷地に備長炭や活性炭を埋めるという工事業者(その他炭製品も販売している)なのだが、のっけからこうきた。
イヤシロチ・住環境改善 空-Coo-
・イヤシロチとは?
場所によって特有の感じがあることをお気付きになられたことはありませんか?
イヤシロチとは、清々しく、動植物の生育に優れ、そこにいるだけで元気になり、居心地良い場所のことを言います。
この逆の作用がある土地をケガレチと言い、共に語源は古代日本人(カタカムナ人)が使っていた言葉とも言われています。
古くからイヤシロチは自然に存在しており、古い神社仏閣のある場所はイヤシロチであることが多く、自然の摂理に反した乱開発や、ゴミの不当廃棄で自然のイヤシロチが減少しています。
来たー!のっけからカタカムナ!カタカムナ来たよこれ!!
「カタカムナ」とは、「実は●●だった」という言い回しを好むトンデモ日本史界のスターの一つで、いわゆる「超古代文明」「古史古伝」の一つとされる文明(文字)説。千島学説にも関連があると言われており、そっちのビリーバーさんにも根強い人気があるようだ。一言で言えばオカルトの類。
カタカムナとは - はてなダイアリー
カタカムナ文献
正式名、『カタカムナのウタヒ(片神名ノ歌)』
数万年前の日本に住んでいる先住民・アシヤ族が築いたカタカムナ文明の科学原理を歌の形で伝えたとされる科学主体の「科学書」で、普通歴史主体の古史古伝(超古代史)と一線を画す。
昭和24年初、電気物理学者・楢崎皐月(ならざきこうげつ)大地が大地電気測定という研究目的のため、カタカムナ神社の宮司・平十字から「カタカムナ神の御神体」という「○」と「十」からなる不可解な図象文字が渦巻状に並んだ巻物を提出した。楢崎皐月はかつて満州にあった時、道教の先生・蘆有三からアシヤ族とその言語について聞かされ、興味を持って書写を乞い許されたという。
『カタカムナのウタヒ』の記録によって、アシヤ族は「ミトロカエシ」という原子転換技術を持ち、無機物から生物を自然発生させ、火を用いず湯を沸かす特殊な金属を精錬した事ができるという。
また、平安時代の陰陽師・蘆屋道満や古代製鉄民族の存在と関わるという。
当然、普通は偽書視される。
まあなんというか、竹内文書とか、「義経はジンギスカン」みたいな話が大好きな人にいまだに支持されておられるようで、要するにそういうレベルの信憑性の話なのだが、それを引き合いに出して
古代日本人(カタカムナ人)
と、さも「これ朝飯前の当たり前」と言わんばかりにサラリとカッコ書きするその強気さに爆笑してしまって手の震えが止まりません。
で、例の業者の「イヤシロチ」「ケガレチ」の概念もこのカタカムナ説の中に登場する考え方のようで、これはまあ埋炭業者とか土壌改善とか風水とか霊能者とか、そういった人たちにとってはとても都合のいい話なわけだ。
で、そもそもがオカルト・偽書視されているということを知ってか知らずか、そのセールストークの中に織り込んでくる。
・イヤシロチ化の施工例・炭素埋設 (炭埋) 空-Coo-
炭素埋設の原理
土地は人体と似て微弱な電気(電子)を帯びています。鍼を使った治療は、
鍼を刺した部分が損傷電位作用で電気量が高まることで治癒を促す処方です。
土地も同様で電気(電子)を帯びていて、その電気量(電子量)の差が大きく影響します。
土地に穴を掘って、その周辺からの電気を集め、そこへ蓄電物質である炭素を埋設することで、電気量を増やして半永久的に持続させるのが炭素埋設です。
イヤシロチは電気量が多く、還元作用があって健康的な土地と言えます。
電気物理研究家の楢崎皐月(ならさきこうげつ)氏によって考え出された科学的な手法です。
炭素埋設の効果は、半径15メートルにも及びますので、周辺環境への大きな貢献にも繋がります。建物は様々な設備や、シックハウス対策が叫ばれていますが、その基となる土地についての対策が肝心だと考えています。
イヤシロチ・住環境改善 空-Coo-
場所によって、何となく居心地が悪いとお感じになられたことがあると思いますが、人は自然に心地良いイヤシロチに集まり、ケガレチを避ける本能があるようです。
住宅や店舗で永く居付かない場所がありますが、その大きな要因の一つに場の影響も考えられます。
自宅・事務所社屋・医療施設・ショールーム・工場・学校・田畑・農園施設・保養施設・養鶏場・・・場所を清々しいイヤシロチにすることで、健康・生産効率アップ・生活の向上にお役立て下さい。
うーん。
炭にはれっきとした脱臭・除湿等の効果があるので、床下に炭や活性炭を敷くことにはけっこう意義があると思う(価格が適正かどうかは炭の価格の相場を知らないので何とも言えないのだが)ので、結果論で言うなら「インチキ業者」の類とは言えない範囲だろう。
ただまあ、言外に「炭でイヤシロチ化すれば商売繁盛・土壌改良・住んでる人の気分も良くなる」と言っちゃってるのは明らかに「炭に重荷を背負わせ過ぎ」に見えるのだが…
それでもこのサイトは、できるだけ「炭を埋めたらこんなに奇跡が!」的なオカルト効果をうたっていないだけまだかなり良心的な部類と言える。
まったく別の、同様の埋炭業者のブログを見たらこれはかなり「炭カルト」とでも呼ぶべき内容なのだった。
*炭埋設
uruhasi10.exblog.jp
色々引用するけども、各ページリンクは示しません。
まずはもっともインパクトのある「利用者の喜びの声」から。凄いんだこれが。
●喧嘩ばかりの隣人が引越した! 東京都 青山さん
「お隣りの家が、いつも夫婦喧嘩がひどく、罵声もよく聞こえてきて不快に思っていたのですが、炭埋をしてしばらくしたら、なんと引っ越してしまいました。しかも新しく入居された方はとても雰囲気が良く、すぐに仲の良い知り合いになり楽しいご近所付き合いをさせていただいています」
●竜巻が家の前で方向転換した! 豊橋市 尾崎さん
「海沿いに住んでいるのですが、ある日、すぐ近くで竜巻が起きました。新聞にも載ったくらいですから、大変に珍しい状況とのことです。その竜巻はずいぶんと大きく、なんと私の家のほうにめがけて近づいてくるではありませんか。数件のお宅を直撃し窓ガラスや屋根を壊しながら近づいてきます(アメリカの竜巻のような破壊力はありませんでした)。やめてー、と思ったとき、なんと家の手前で方向転換をしたのです。ホッとしました。
何で家の手前で方向転換したのかなー、と考えたとき思いついたことがあります。それはリフォーム時に月華波動竹炭を購入し置いていたからではないかということに気が付きました。土地にも炭をたくさん埋めてあります。大難を小難に、そして開運させてしまう、月華波動竹炭の不思議な作用には本当に大感謝です」
こりゃ凄い。気にいらない人間は去っていき、天災すら捻じ曲げることができる。
これがもし偶然でないならば、もし嫁や姑が埋炭を提案した時には何か別の意図を疑ったり、隣人が埋炭工事を始めたなら近所の人は「災害を周囲の家に押し付ける気か」と抗議する権利があるかもしれないなあ。
ttp://furuhasi10.exblog.jp/i3/
↑のカテゴリでは、実際の埋炭の様子がレポートされている。
・地下水を除去する
・塩を捲く
・炭を入れる
炭素埋設の工程3
水を出してはじめに、極楽塩を入れてます。
お塩を入れることにより、お清めと地電流を流しやすくします。
また、土壌微生物の腐敗菌抑える効果もあります。
その後に満月と新月の混合炭を入れてます。
そしてまた極楽塩を入れて混合炭を入れてます。
穴の中からユラ玉(エネルギーの玉)が写っています。 感謝
・謎の儀式をやる
混合炭を入れた後に写経と開運、感謝と書いた紙を入れます。
その後に新月と満月の炭を使い方位を見て三角形と六角形の
形を作り波動を高めます。
この辺からいきなり怪しさMAX。
なぜ写経とか感謝とか書いた紙を入れるかと言えば、例の波動であり「情報転写」のアレですよアレ。
墓地にも同様のことをしてるのだけども端から見るとかなりのインパクト。
ttp://furuhasi10.exblog.jp/378092/
土地の改良というよりなんか、タタリ神を必死で鎮めているようにも見えたり。
そして、「三角形と六角形の形」と穏便な表現をしてるのだけども、具体的にやってることは

うぉーーーーい!!!六芒星かいーー!!
いやまあ日本にも「かごめ紋」としてある図柄だけど、トンデモ起源の工事の仕上げに使うにはある意味ピッタリすぎというか、ケレン味ありすぎで引くだろ常識的に考えて…
ちなみにこのダビデの星、神社がらみの工事であってもおかまいなしに組んじゃってます。
ttp://furuhasi10.exblog.jp/5145730/
フリーメイソン陰謀論大好きな人なんかはもう、痺れすぎてブラウザ開けたら2分で失禁しちゃうレベルじゃないでしょうか。
こういうものを見ていると、「ゼロのものを100として売る」よりも、「30ぐらいの効果が確かにあるものを、その実際の効果にありもしない能書きを付け、すでに得ている信頼性を利用して100として売る」方法の方がより悪質なようにも思えてくるのだった。
逆にタタリが起きなければ良いなと…
適当に地鎮なんぞしたら土地神が怒るぞ
竜巻を曲げるとは凄い炭だこと!
http://www.hanarousoku.jp/page19/page.html
知り合いですが、友達ではありませんので、見かけても絶対買ってはいけません...
「気に入らない人間を土地から追い出すことができる炭パワー」ってのもねえ。普通良く使う言葉で言えばそれは「呪い」以外の何物でもないような気がするんだけども…
アメリカとか、先日の五輪の際の中国のように、雨雲やハリケーンの進路をそらすのにヨウ化銀をばらまく方法があるのだけど、そんなことをせんでも炭さえ埋めればうまくいくらしい。報告したらガッポリもらえるかしら。
>>イドさん
「ありがとう」というありがたい言葉も、なぜか束になって来られると怖いものだなと思いました…
そして「画像をクイック」にもやられました。