関東地区の女性校長会が、あの「水からの伝言」の江本勝を招いて、悪名高き「水伝教」のレクチャーを受けたという話。
数年前から、一部の教師が「水伝」を用いた教材を使用・オンライン教材データベース上で共有提供して批判の対象になっているのに、この鈍感さは一体何なんだ。
しかもその中で、韓国で行った、妊婦から採取した羊水に音楽・文字・写真などを「聴かせたり」「見せたり」して行った実験について触れたという。
先生が用意した妊婦さんの羊水をホメオパシー溶液の倍率である5万倍に薄めた水の結晶を撮影しました。
羊水の結晶です(写真1)。この羊水に韓国語で「堕胎」という言葉を見せて撮影すると(写真2)、何か文字のようなものが現れました。
羊水に子どもの写真を見せたら、とってもいい結晶になりました
(『教育現場に水のメッセージを』(『Hado』9月号)|ほたるいかの書きつけ)の引用記事部分より
この内容だけでも噴飯なのだが、怖いのは
講演は好評のうちに終わり、この講演会に参加した120人の女性校長のうちの何割が申し込んだのかは知らないが、後日水からの伝言の無料配布に7000冊もの応募があったそうな。
この冊数からすると、職場の先生とか教科会の集まりとか、あるいはPTA役員会とかに配ってる人もいそうだ。
はぁ…なんでこう、自ら教員全体とか女性管理職が後ろ指刺されて笑われたりバカにされそうな(さらに小学校や文系科目出身の校長ならば「これだから文系は」も漏れなくセット)ことを進んでやるのさ……
教育界の一部の無知なる人が「水伝」を使う目的として、
「他者を傷つけたり不愉快にさせる、悪い言葉・汚い言葉は使わないようにしよう」
「普段からよい言葉を使おう」
という着地点があるのだろうけど、そんなことは、わざわざ疑似科学の手を借りなくても十分に伝えられるものじゃないんだろうか。
教員の言葉や考えさせるプロセスを適切に作って導いてやればいくらでもできることなのに、こんな「お水様のオカルト」の力におすがりするということ自体、「教育活動の敗北」だとは考えないのか、それが何より不思議だ。
お礼の言葉や、他者を尊重した言動があればその場で褒めてやる。
他者を貶めたり悪意ある言葉(幼年の場合、意味を知らずに何かの受け売りで使うこともままある)を使ったなら、熱いうちに時と場所を選んで叱ったり、教え諭す。学校・家庭を問わずこれが基本だろう。
「学校で教材に使われた」「先生が言ってた」ということは、生徒や保護者が素直であればある程、信憑性が高く受け取られるものであり、義務教育の場でこうした疑似科学が「適切らしいもの」として取り扱われることで、まだまっさらな子供たちに「トンデモビリーバー」の種を捲き、正しい科学意識の涵養を阻害してしまう可能性も十分にある。
トンデモ科学やオカルト商品、またはマルチ商法やカルト宗教を見抜き、警戒するためには、正しい自然科学や人文科学の基礎知識が必要で、それは必ずしもさほど高度なものである必要はない。「怪しいものを臭いと感じ、詐術を見抜く」ことも現代において必要な「生きる力」の一つなのに、教える側が進んでそれらに近づくことがいかに危険なのか、いい加減認識してほしいものだ。
義務教育、特に小学校の現場では、「上(管理職)」の権力がいまだに絶対的で、いわゆる「王国」の構造を維持されており、各担任が唯々諾々と従うような場面も多いという。
朝礼で校長が「この前大変良いお話を聞いてきました」とか言って「水伝」の話を始めちゃって、まともなヒラ教員が「うへぇよりによって水伝かよ、勘弁してくれよ」と思っても口には出せない…というようなことはありがちらしい。困ったものだ。
関東地域で、お子さんが通う学校の校長が女性だという保護者の方の場合、これから校長講話や総合学習等で「水からの伝言」の教義を吹き込まれてしまう可能性がある。というか後援会が行われたのは7月だそうなので、既に語られている可能性もある…ということを踏まえて、必要に応じて警戒なり修正なり抗議なりしなければならない…かもしれない。
まともな保護者であれば、「先生、それも校長先生が言ったことを『それはウソなのよ』と修正するのはさじ加減が難しい」と思うこともあるだろう。そうした面倒を保護者にかけること自体大問題なのだが、講演に感動して何十冊も「水伝」を買ってしまうようなおめでたい校長センセーには分からないのだろうなあ…
参考リンク:「水からの伝言」を信じないでください
↑まだ読んだことがないという方はぜひご一読を。
この中に
学校に対して、どのように対応するかは、むずかしい問題です。学校の雰囲気によっても、なにが一番よい対応かというのは変わってくるでしょう。残念ですが、何もしないことが、お互いにとってベストという場合もあるだろうと思います。
私も、小学校や中学校の実情には詳しくないのですが、何人かの現場の方にいただいたアドバイスによると、あえて抗議をしようという場合は、授業をされた先生に直接に話しに行くのは、あまり得策ではないそうです。やはり、先生ご本人にもプライドや信念があるでしょうから、ご自分がおこなった授業について、非を認めるのは、容易なことではないということのようです。それよりも、校長先生や、教頭先生といった先生方に疑問をぶつける方がよいだろうという話です
という部分があるのだけど、今回のように校長や教頭といった管理職がビリーバー化してしまうとこの方法は使えず、それどころか正当な抗議を行った保護者がモンペア扱いされてしまう危険も生じる可能性が出てくるわけで、本当に困ったものだ。
個人的にはPTA等の議題にかけて、団体で動くのがよいと思うが。
アホかあぁ〜!!!
こんな戯言信じる輩が教育を・・・何のために大学でたんだ、と憤りが吹き荒れております。「賛美歌13番」をリクエストするから、こんなDQN校長たちは東郷さんに始末してもらいたい・・・
出版社がマイナーだからなのか、知名度はどうもいまいちの感があります。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/bookreview/25/
こういう本がもっと広まるべきなんだと思うのですが。
>こんな戯言信じる輩が教育を・・・何のために大学でたんだ、と憤りが吹き荒れております。
そうなんですよ…理科学習への興味をいかに喚起するかというのが初等教育の一つのメインテーマのはずなのに、現場の教師が「科学的にどうかはともかく、道徳教育に使えそうないい話・理論だから」という安易な気持ちで、子供を「将来のカモ」にする危険のある授業を行うなどあってはならないことなのですが…
人間の目から見て、シンメトリーで美しい結晶ができたからと言って、それが何だというのでしょう?一見醜かったり不調和な形のものが、実は優れた機能を有していたりするのは、自然界では珍しくもないことですよね。
それに、サンプルがかなり恣意的だったり一般通念におもねったものなのも気になります。
例えば、
「モーツァルトを聴かせると美しい結晶ができ、ヘビメタをかけると結晶が乱れた」
というような実験がその最たるものです。「クラシック=上品で美しく安らぐ」「ヘビメタ=下品で煩くて気が高ぶる」というようなイメージや思い込みに沿うような結果が選ばれているように見えてなりません。
また、この「水伝」理論は、「波動」「水の情報伝達力」等の土台として用いられることが多く、水商売やマイナスイオン商法、さまざまなトンデモ商法やスピリチュアル系の詐術を行う側が好んで用います。妙な水商売やスピリチュアルに引っかかって、治療を勝手に中断したり、「薬は良くない」と吹き込まれて飲むべき薬を飲まないような患者さんの背後に、この「水伝」がある可能性があります…
>>十字人さん
校長ということは、大体50代〜60代定年間際くらいの年代の人がほとんどです。下の方はそうでもないかもしれませんが、上のほうの年代だと、「インターネットでは広く批判されており眉唾でかかるのが常識」と言っても、ネット自体にアレルギーや嫌悪感が強かったり、Webの情報をなべて怪文書的に嫌うことの多い層です。
反面、テレビ・新聞や書籍の形になったものはコロッと信用しやすい年代でもあるので、認知度がなかなか高まらなくても、「こういう批判本もあるんです」と現物を差し出すことができるだけでもありがたいアイテムではありますね。
心ある図書部担当の教員の方や司書の方はぜひ一冊入れてほしいものです。「公立図書館や学校の図書室に入っている」
という権威もまた彼ら世代には有効ですから。