2008年10月27日

「モンテ・クリスト伯」感想(その7) いろいろ見つけたもの一般書籍

前の記事を描くためにいろいろ検索していたら、とあるサイトのコラムで、アメリカのサブプライムローン問題について語っている文章で、ダングラールが伯爵に欲をくすぐられて破滅するくだりを例として挙げていたのだが…

その破産のストーリーは、

『モンテ・クリスト伯となったエドモン・ダンテスはパリのダングラール銀行へ。伯爵の肩書きを信用し、会うダングラール。モンテ・クリスト伯は100万フランで公債を買うという。「どの国の公債を?」「ハイチ」「ハイチですか?分かりました!」ハイチの公債を買う金100万フランも用立ててハイチ公債を買う。「明日には300万フランになる」という伯爵の言葉どおり翌日ハイチ公債は値上がりし、ダングラールは大もうけ。その後も伯爵の言うとおりに売り買いして大もうけ。すっかり伯爵を信用したダングラール。さらに、伯爵の言うがままにルイジアナ鉄道の株を買った結果、株が値下がりした。「株はタダ同然」、ダングラールも全財産を賭けて破産・・・・・・』

ということでした。

(※元記事はPDFなのでgoogle先生のHTML版にリンクしときます
独思録:「サブプライムローン問題」(1/20)

へ?これって、先日私がレビューを書いた「100円ショップ岩窟王」の内容そのまんまで、本編とは全然違うんだけども……???(ちなみに本編でダングラールを破産に導く過程は、もっと周到で面白いものです)

この文章書いた人、妙にしたり顔だけども、絶対本編読んでないだろこれ。
多分このサイトの紹介文を鵜呑みにしたか、それとも300円DVDで済ませたのか…いろいろ書誌情報書いてるのになんともお粗末だ。

(なお私、黒岩涙香版は読んでません。本当に300円版のストーリーの元本とかがあるなら気になるなあ。)

で、黒岩涙香版のことを調べていたらばさらに、「巌窟王」の続編があることを知った。
こちらは高桑白峯という人が、黒岩涙香版の設定(人名)を踏襲して訳したらしい。(1926年発行)

タイトルは「モンテ・クリストの妻」。(高桑白峯版の邦題は「後の巌窟王」)
で、内容はと言うと

 江馬と緑子は結婚して三人の子供があった。眞太郎と華子も結婚。しかし、眞太郎は弁太郎に復讐のために攫われてしまう。蛭峰は病院から脱走して華子のもとへ現れる。一方、知り合った羽鳥卿と共に、巖窟島伯爵は鞆繪姫と故国ギリシャに帰っていた。姫は即位したが狙う人も多い。伯爵は眞太郎の行方を捜す為に留守の間を羽鳥卿に託す。武之助はアラビアで軍隊にいたが、そこへ夕蝉が。段倉もアラビアにいた。それぞれの人々がそれぞれの場所で伯爵やその同調者への復讐の機会を窺っていた。


(引用元:黒岩涙香作品感想

えーと、黒岩涙香の翻案では、ご丁寧に一人一人が日本風の名前に変更されている(それでいて舞台はヨーロッパという謎の世界)ので何が何だかわからんと思うので僭越ながら人名のみを描き直してみる。

 エマニュエルとジュリー(注:マクシミリアンの妹)は結婚して三人の子供があった。マクシミリアンとヴァランティーヌも結婚。しかし、マクシミリアンはベネディットに復讐のために攫われてしまう。ヴィルフォールは病院から脱走してヴァランティーヌのもとへ現れる。一方、知り合った羽鳥卿(新キャラだと思うので不明)と共に、モンテ・クリスト伯爵はエデ姫と故国ギリシャに帰っていた。姫は即位したが狙う人も多い。伯爵はマクシミリアンの行方を捜す為に留守の間を羽鳥卿に託す。アルベールはアラビアで軍隊にいたが、そこへユージェニーが。ダングラールもアラビアにいた。それぞれの人々がそれぞれの場所で伯爵やその同調者への復讐の機会を窺っていた。

うん、案の定、ラストで「殺しておけばよかったのに」と思う人物が悪さをする話…というか、生き残った人間をなんとかかき集めて作った話のようだ。「作らなきゃよかったのに」的な続編(「失楽園」に対する「復楽園」とか、「マカロニ2」とか)なんだろうか。好奇心から一度読んでみたくはあるが、読まないほうが幸せなような予感が…

引用元には「デュマ作」とあるのだが、どうも後世に作られた「勝手に続編もの」っぽい。

wikipedia英語版や海外の研究サイトなどを参考にしたところ、デュマ名義で書いた本編以外の「モンテ・クリスト伯」関連の作品は、以下の戯曲3本のみ。(題名は英訳準拠)

・Monte Cristo (1848)/「モンテ・クリスト」
・Le Comte de Morcerf (1851)/「モルセール伯爵」
・Villefort (1851)/「ヴィルフォール」

(注:実際の製作は、ブレーンとして知られるマケ氏との共作)

これ以外の「その後」やパラレル作品・スピンオフ作品はすべて後世の他人の筆によるものということになる。(海外文学ってこういうの多いんだよなあ。「その後のハイジ」とか「ハイジのこどもたち」なんかも他人作とは知らずに読んでたもんだ。)

で、例の「wife of Monte Cristo」は、Jules Hippolyte Lermina(1839-1915)という人が1881年(デュマ没は1870年)に出版した「Le Fils de Monte-Cristo」。
同書が1884年に英訳された際、
・The Wife of Monte Cristo
・The Son of Monte Cristo
の2編に分割されて販売されたのだとか。
ちなみに気になる「wife」はまあ当然ながらというか順当にというか、エデのことらしい。(ちなみに「wife〜」は1946年に映画化されている)

他にも、妻・息子だけでなく「モンテ・クリスト伯の帰還」「モンテ・クリストの娘」「モンテ・クリスト女伯爵」「マドモアゼルモンテクリスト」とか、もう色々やり放題のようだ。

(参考:Le Comte de Monte Cristo

posted by 大道寺零(管理人) at 01:41 | Comment(2) | TrackBack(0) | 一般書籍
この記事へのコメント
モンテ・クリスト伯は、小学校のとき、子供版の全集にのっていたのを読んだのが初めてでしたが、正直いって、最初のほうが、つらくて、途中挫折したのですね。つまり、幸せの絶頂から、おとされる主人公が、見てられなったわけでして。ところが、その後、がんばって、もうちょい先にいったら、あらー。おもしろいーー。てことで、一気に子供版最後までいきました。ところが、子供版は、とんでもないところをカットしてありまして、かなりの長い作品ですし、なにせ対象が、子供ですから、いろいろなカットも仕方がないとは思いますが、ヴァランティーヌは、生きかえらないのです。で、子供心に、えっという違和感はありました。
さて、その後大人になって、原作よんだら、そこが違っていて、よかったーと思いましたねえ。
話が断線してしまいますが、名作を子供版にした場合、おかしな変更とか、ある場合が、あるので、そんなことするくらいなら、子供版はやめてと思ったりしますね。私の読んだリア王なんか、最後悲劇じゃないしーー。


さて、題名は、忘れたのですが、そのまま岩窟王だったのかなー、草刈正雄さんが、ダンテスの役をやって、三林京子さんが、エバの役をやった、NHKの水曜時代劇が、かなり前にありました。エバは、琉球のお姫様っていう設定になってましたね。原作を江戸時代の設定にしてました。
Posted by okapi at 2008年10月27日 09:40
>>okapiさん

原作に近ければ近いほど、最初のエドモンは、純粋で真面目で幸せいっぱいな分だけホント見てらんないですよね〜
;読者はたいていその後の運命知ってますからね;

尺が長いこともあって、リライトだけでなく、映画やドラマ化されたものでもびっくりするような大胆な変更点が多いみたいですね。
最後に伯爵とメルセデスがくっつくパターンがわりとあるらしいです(あと、アルベールが本当はエドモンの子だとか)。エデやヴァランティーヌ・マクシミリアンあたりを最初から出さないのも見かけられます。

それにしても子供版でヴァランティーヌが生き返らないのは驚きですね。普通児童向けって、不義の男女関係とか、殺したり死んだりという場面をオミットすることは多くても、生き返るものを殺しちゃうというパターンは稀ですから…

まあ翻案でいろいろ変更が入ったりするのも、「別物を楽しむ」という遊び方もできるので一概に否定はできませんが、とりわけ自分の論考で引用するなら、ちゃんと完訳版…を読まないまでも、それを底本とした紹介文・要約文を探すくらいのことはしないとカッコ悪いなと思った次第でした。

>>草刈正雄さんが、ダンテスの役をやって、三林京子さんが、エバの役をやった、NHKの水曜時代劇が、かなり前にありました。

おお〜、「日本巌窟王」ですね!通してではないですがチラチラ見た記憶がありますよ。
調べてみると1979年の作品だそうです(3年ほど前にCSの時代劇チャンネルでも放送されたので、同チャンネルで再放送の機会もあると思います)。
この時期のNHKの、フィクション・アクション性の強い時代劇好きでした。「風神の門」「早筆右三郎」とか…あと大河でも、「黄金の日日」とか。

調べてみたら、出演してた三波豊和さんのブログに数枚当時の写真がありました。
http://toyokazu.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_e254.html
草刈正雄のカッコよさといったらもう、当時は天下無敵でしたよねー。

大河ドラマとは違って娯楽性の高い水曜時代劇枠(今はいろいろ変遷の末土曜ですけど)は、子供にも直観的に分かりやすくて魅力的でした。
今も継続している枠ですが、1シリーズが多くても10話くらいなので、「日本巌窟王」のような長編が作りづらい感があるのかな?と思います。改編期にとらわれず、再び26話くらいのボリュームの面白い作品が見たいところです。
Posted by 大道寺零 at 2008年10月27日 16:52
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