先日NHKで緒方拳の追悼番組があったのでいくつか録画する。
本当に得難い名優を失ったんだなあ…ということを今更ながら痛感するいい企画だった。
*「破獄」(昭和60年放映)
実在した「昭和の脱獄王」白鳥由栄をモデルにした吉村昭の同名小説のドラマ化。
主人公の佐久間を緒方拳が、彼に出し抜かれる鈴江看守を津川雅彦が演じ、二人のセメントバトルが終始圧巻。
とにかく緒方拳の「鬼気」が凄まじく、目を離せないながらも心のどこかで「見てはいけないものを見てしまった」ような不思議な背徳感を感じ、それに囚われてしまう。
冒頭、脱出道具などを隠し持っていないか、直腸の中までも調べられて大暴れするシーンがあるのだが、さすがにお宝は隠しているものの、尻丸出しで津川雅彦たちにつかみかかる緒方拳の姿の前には、「体当たり」などという言葉はあまりに月並みだ。
作中、手錠抜けを難なくやってみせる佐久間に対し、刑務所側が「鍵がなく、たたき壊さなければ絶対に外れない特製手錠」をかけ、それを付けたまま獄中生活を強いられるシーンがあるのだが、実際の撮影中、休憩中に弁当を食べる時にもそれを外さず、佐久間の姿そのままに皿を床に置いて犬食いしたという。
「佐久間がなぜ脱獄を繰り返すのか」「見事に脱獄をやってのける割に、なぜその後の逃亡はお粗末で毎回捕まってしまうのか」といった部分は説明不足で、プロット的な消化不良は若干感じたけれども、脱獄の手口の見事さ・緒方拳の迫力、そして憎みあいながらも次第に交差していく佐久間と鈴江の感情の描写に飲みこまれてしまう。
緒方拳という人について毎度不思議に感じるのだが、迫力とともにどこかしらぬぐえない「可愛らしさ」を併せ持つ人だと思う。
そしてその「可愛らしさ」は、佐久間のような「怖い演技」が激しければ激しいほどふとしたシーンでこぼれ出た時の印象が強いように感じた。そこが魅力の一つではないだろうか。
時間的な制限もあり、脱出の手口や移送の経緯等についてかなり簡略された部分もあるのは致し方ないだろう。
モデルとなった白鳥良栄の脱獄人生については、↓のサイトが詳しく、分かりやすくまとめてある。
見比べてみると、ドラマや小説よりも実際の脱獄のほうが奇想天外かつ大胆だったりするのが実にすごい。
(同作品は東北新社よりDVDで発売されています。)
・大河ドラマ「太閤記」第42回 『本能寺』(1965年)
緒方拳が秀吉役で主演したドラマ…なのだが、この回はタイトル通り本能寺の変がメインなので、緒方拳の出番は少ない。
それもまだこの回では本能寺で信長が死んだことを知らず、毛利攻めの最中。信長の合流を心待ちにしながら、石田三成(石坂浩二)から肩を揉んでもらったり、弓で鳥撃ちをして遊んだりと平和なシーンがいくつか挿入される程度。
こう書くと「もっと出番の多い回をやればいいのに…」と思われそうだが、この時代ビデオテープは大変高価なもので、キー局ですら番組を保存するということは稀。今では考えられないことだろうが、放映が終了すれば次の放送分を上から録画して過去の内容は潰してしまっていた。
そして「太閤記」については、この回の分以外はすべて上書きされて失われてしまっているのだ(というか1回分だけでも残っていたのが奇跡的)。なんというもったいなさ!
ちなみに、この映像もかなり経年劣化があるせいか、柱やふすまなどの直線部分もビヨビヨと歪んでいたりするのだがそんなに気にもならない。
本来であれば、「信長の死を知った後の秀吉の演技」なども見てみたかったところ。
そんなわけで、この回については素直に、当時超人気だった信長役(人気がありすぎて本能寺で死ぬのが大幅に延期されたという)の高橋幸治の凛々しさを堪能するのが妥当な楽しみ方だろう。
森蘭丸役の若かりし片岡孝夫がまた、瑞々しい。
以前、「大河ドラマの歴代信長役」についてBBSなどで話した時に、「高橋幸治の信長」の話が何度か出てきて、一度当時の映像を見てみたいとずっと思っていたので嬉しいチャンスだった。
緒方拳と高橋幸治はその後、「黄金の日日」でも「秀吉と信長」として共演している。
NHKはこの際、緒方拳追悼で「黄金の日日」全編を通年or集中放送してくれないものか…私の中でいまだに大河ベストワンだからなのだけど、頭の中で根津甚八のイメージが強烈で、秀吉と信長のことはあんまり詳しく覚えてないんだ…;
本編の前後に、1977年に収録された緒方拳・石坂浩二との対談も少し放送された。二人とも若いわ〜。
・大河ドラマ「源義経」(1966年)
緒方拳が弁慶役を演じ、有名な「仁王立ち」のシーンの部分がちょっとだけ放映。
目を見開いた演技がやっぱり強烈。
当然死の演技なの目をカッと開いたまま直立不動を保つのだが、背後のお堂に火がかけられて煙がモッサモサ出ているのに、まばたき一つしないのには心底驚かされた。役者根性ってレベルじゃない。
・ひとり芝居「白野-シラノ-」(2006年)
新国劇時代の恩師・島田正吾から受け継いだ演目「白野弁十郎」を緒方流にアレンジした一人芝居。
内容はロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」の翻案。
主人公白野(=シラノ)は会津藩士元朱雀隊隊士・舞台は幕末という設定。
最終幕の、闇討ちの傷を隠して愛しの千草(=ロクサーヌ)を訪れ、息を引き取る場面のみ放映。
今際の際に「死」と対話する白野のセリフが、そのまま病と闘う緒方さんの心の言葉のようにも聞こえて、感動と同時にたまらなく切なかった。
「そこにはないものや人をあるように感じさせる」のが一人芝居の醍醐味。
シラノといえば、彼のコンプレックスの源でありトレードマークの「大きく醜い鼻」を付けるのが通例だが、それすらも付けずに、「すべてセリフと演技で感じさせる」と臨んだという。
できれば全幕放映してほしい。
参考:当時のweb記事
asahi.com:緒形拳 一人芝居「白野」で新国劇の精神を継承 - 演劇 - 文化芸能
藤村さんも、大河ドラマ、かなりでていますよね。三姉妹のときは、話が小学生の私には難解すぎて、ついていけなかったのですが。
あと、緒方さん、風と雲と虹とで、藤原純友の役もやりましたねー。毛利輝元にでてきたときの、緒方さんもよかったなー。
子供のころから馴染みのある俳優さんが、亡くなられるのは、本当に悲しいですね。ビデオテープのことに関しては、時代的に仕方がないとはいえ、くやしいです。私の一番好きだった天と地とだつて、もうわずかしか残っていなそうですし・・・大河初のカラー作品だったというのに。
と、まあ、昔の話になると、異様に興奮してしまいごめんなさい。でも、大河ドラマ関連の特集番組とか、またやってほしいですねえー。朝の連ドラ関係の特集もみたいなー。そうそう水曜日の時代劇関連の特集もみたいーー。ついでに、関係ないけど、私が生きてるうちに、ガラスの仮面の最終巻でてほしい。
このあいだはいきなり話しかけてすみません。いや、okapiさんに「私も高橋幸治さんの信長見たよ!」と報告したかったのですw
太閤記は確かに、子供にも分かりやすい話ですよね。私も親戚からもらった子供版を何度も読みました。周囲の人物もキャラが立っていて面白い(蜂須賀小六とか)ですし、秀吉が貧乏暮らしからどんどん出世していく面白さがありますね。そしてだんだんとねねをないがしろにして若い女にハマっていく秀吉が嫌いになったり…
そうです、太閤記のねね様は藤村さんでした。1シーンだけですがでてきてくれました。当然ながらお若い〜。
大河ドラマの題材は色々ありましたが、子供の頃は、頑張って見ていたつもりでもやはり幕末・明治関連のものは勢力関係が難しかったですねえ。
昔のNHKは、緒方さんとか山崎努さんとか、個性の際立った俳優さんを使うのがとても上手だったように思います。そしてドラマ時代もとんがった意欲作がたくさんありましたね。
年末年始とか、思い切って「今日はまるごと大河ドラマ」とか「まるごと水曜時代劇」とか放送してくれたらもう、おせちそっちのけでかぶりつくのですが。
特に水曜時代劇枠は、娯楽性が高くて(忍者モノなんかもありましたし)大好きでした。「御宿かわせみ」のラブシーン(今思えばおとなしいものですが雰囲気は濃かった)とか、親と見るのは恥ずかしかった…
『破獄』やってたんですかーーー?
見逃しちゃいました・・・・ガックリ
ところで、ご存じかも知れませんが、
こんな調査結果が出てるみたいですね。
こんにゃく入りゼリー、「販売を停止すべき」はわずか1.8%
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0811/05/news044.html
水曜ドラマのラブシーンで思い出しましたが、男は度胸という浜畑賢吉さん出演の徳川吉宗のドラマがありまして、そのとき、三田佳子さんとのラブシーン、たしか、新聞でもとりあげられたほどの、問題になった覚えがあります。天下のNHKが、なぜあのような過激なラブシーンらしいですが・・・ただ、だきあっていただけだったけどなー。それも、着物きたままで。当時、私は中学生ですが、この男は度胸大好きでして・・・そのあと、しばらくは浜畑賢吉さん萌え状態でした。民放で、吉永小百合と田中絹江さんとごいっしょに、女人平家にも出演なさっていて、それもかかさず、見ました。大河ドラマで、吉宗やったときは、西田敏行さんが、吉宗の役をやられたのですが、今は亡き父とともに、浜畑賢吉さんのイメージがあるのに、ぇぇぇぇぇえええと、ふたりして、ぼやいていたことを思い出しました。
やってたんですよ〜。これがまた例によって特に番宣するでもなくさりげなーくだったので、私も危うく見逃すところでした。
あと太閤記を放送したアーカイブの枠も、放送内容が決まって電子番組表に反映されるのが遅いので、けっこう録り逃して公開することが多い私です。
「破獄」はDVDになっているので、レンタルショップなんかに置いてあればラッキーですな。
>こんにゃく入りゼリーに関するアンケート
母集団を見るとネットユーザーなので、妥当な数字だと思います。
というかこれ本来、規制しようとしている国のほうでやるべき調査のようにも…
蒟蒻畑のクラッシュタイプ、近くのスーパーで全然見かけなくて残念です;
他のメーカーは、例の食べないでマークをでっかいステッカー(B6よりちょっと小さいくらい)にして袋の上から貼って対処しているようですね。
>>okapiさん
さすがにガラス越しでなくてはキスもできないような時代は終わったとはいえ、当時まだまだ「NHKは健全じゃなければダメ」というのが大きかったんですねえ。
ラブシーンって、モロに写せば刺激的というのではなく、セリフ回しや演出、役者さんの演技の雰囲気に左右されるところが大きいですよね。「御宿かわせみ」の、小野寺昭と真野響子さんのシッポリシーンはまさにそんな感じでした。
>浜畑賢吉さん
私がドラマで記憶にある浜畑さんって、お父さんとかナイスミドル〜初老役の印象ばかりなのですが、「紫頭巾」とかで検索したら私のイメージとはかなり違うイケメンが登場して、そりゃ人気が出たはずだ!と納得しました。
昔は、なんでもないようなドラマのシーンでティッシュを取って涙ぐむ母を「どれだけ涙もろいんだ」と思ってましたが、私も35歳を回ったあたりから、「年齢とともに涙もろくなる」とはこれのことか!とようやく実感するようになりました。これほんと、何が原因なんでしょうかねぇ…