2008年11月19日

主婦をナメてますねWEBサイト

疑似科学関係でまたすごいページがあった。
このサイトは、その筋では結構有名な「疑似科学水商売業者」のブログだ。

あまりにも突っ込みどころの多い内容、そして批判への反論があまりにも疑似科学信者(あるいは業者)のテンプレートのお手本なので読んでいて楽しすぎる。
それにしても、「主婦は知っていた」とか「主婦にも笑われる」とか、基本的に主婦とか女をなめきった記述に微妙に腹が立つな。

提橋和男の新管理人のつぶやき1089…主婦は知っている

前半の内容を箇条書きの形でまとめると、

A・しなびた野菜を還元水につけるとシャキッとして鮮度が蘇る、もやしは保存がよくなる
B・見切り品の魚の切り身や刺身を還元水に漬けると還元水が汚れ、魚は保存がよくなる。管理人によれば味も良くなる。
C・冷蔵庫に入れておらず鮮度に不安のあった牛乳も、パックごと還元水に漬けたらとても美味しくなった


というような話をとあるユーザー主婦にしたら、その主婦はそんなことはとっくに知っていて実行していた(というわけでそのタイトルになった)という話。
なのだが、実際に毎日台所で作業したり買い物をする人間(これは別に年齢も性別に関係ないから、あえて「主婦の身から」とは言わないが)からすると、もうツッコミどころが有り余って何から書いたらいいか分からないほどだ。


A・しなびた野菜を還元水につけるとシャキッとして鮮度が蘇る、もやしは保存がよくなる

これは別に還元水でなくても、普通の水道水でも、とにかく水に漬ければなべて葉物野菜はシャキシャキして見た目も良くなるのは常識。
ただし、その際に水溶性ビタミンが抜けまくる(特に既に切ったり、根を落としたもの)諸刃の剣ということもまた常識。
もやしについても、「洗う際にビタミンが抜けやすいので手早く洗い、水に長く漬けない、ゆでる際も短時間で」ということは製造業者が奨励している。

その観点から言えば、還元水と水道水で対照実験をし、
・「しなびた野菜がこの状態まで戻るのに水道水では1時間かかったのに対し還元水なら3分。だからビタミンの流出を抑えられる」
・「同じ時間漬けた結果の成分を分析してみたら、還元水に漬けたほうのビタミン流出量が少なかった」
というような結果が得られたのであればまだ意味ある情報かもしれないが、ただ「還元水で鮮度が蘇る!」とか言われても、「そんなん水道水だって同じようになるわ」としか答えようがない。

さらに根本的な問題は、「見た目がパリッとしていること」「歯触りがシャキシャキしていること」が本当の意味で「鮮度」と言えるかどうか?という点にある。
外食産業ならいざ知らず、自分や家族のために作る料理として、「見た目や食感はいいが、肝心の栄養素は水に溶けてスカスカ」な野菜を出すことに何の意味があるのだろう?
わざわざ水にビタミン類を溶かして見た目や歯触りにこだわるよりは、冷蔵庫に入れる入れないを正しく選択したり、新聞紙にくるむなどして「必要以上の低温や乾燥で野菜を傷めない」工夫をした方がいい。
また、それでもしなびたり、あるいは見切り品の野菜であれば、無理して生や半生で食べるのではなく、手早く茹でる・炒める、葉物だったら煮浸しにするなどの調理法で食べてしまえばいいだけの話だ。大根なんかは、ちょっと水分が抜けてシナッとしてしまってもこれはこれで味が濃くて炒め煮なんかにすると美味しいものだ。

大体上記リンク内では

野菜がしなびる、魚や肉の鮮度が落ちる…これは酸化です。一方、還元水に浸して、しなびた野菜がシャキッとする。魚や肉の鮮度が蘇る(保存期間が伸びる)。これは還元です。そして、還元力の働きは水素の力です。


とあるのだが、野菜がしなびるのは単に「乾燥」だし、シャキッとするのは別に「水素の力」ではなく「水を吸ったから」なのでは?としか、妥当なデータを示さずに言われる段階では考えようがないのだが…
またこの伝だと、切干大根や干しゼンマイ・干し柿などのすべての乾物、または乾燥・脱水過程を経た漬けもの(たくあん・梅干し等々)「鮮度が落ち、酸化した"よくないもの"」になってしまうのでは?


B・見切り品の魚の切り身や刺身を還元水に漬けると還元水が汚れ、魚は保存がよくなる。料理人によれば味も良くなる。

これ、どう見ても単に「血抜き」してるだけだよ…(しかも「何分浸したか」すら書いてない)
一番知られているのは、レバーの臭みを抜くために、水(塩水)や牛乳に漬ける時のものだろう。
一度やったことがある方ならおわかりだろうが、写真同様に水の中に血が出てくるので赤く濁る。塊のままより、カットした方が血抜き進行が早い。血抜き後は赤黒い色がだいぶ明るい色に変わる。
そして、別にレバーじゃなくても、魚でも肉でも(種類や部位の差はあるが)同様に色が出てくる。
かといって無限に血抜きできるわけでもないので、水を換えれば2回目以降は初回のようには汚れない。

ただし、野菜同様、水の中に有用なビタミン等も抜けていくので、レバーと言えども「30分以上漬けないほうがいい」とされている。(だから前項同様、「還元水なら早く血抜きが終了する」ような内容であればアピールするところはあるだろう)

写真では、カツオの刺身とカジキマグロの切り身で試している。
見切り品ということは、店頭に並べられてから時間が結構たったもので、解凍に伴うドリップに自ら浸った状態になっていることが多い。
それを血抜きすれば見た目も明るい色になり、味も多少軽くなる(「薄くなる」と同義でもある)。そのまま冷蔵庫に放置するよりは保存も良くなるだろうが、素直にすぐ食べた方がいいレベルだとは思う。翌日食べたいなら、私だったらヅケにするがなあ。

還元水に浸すと還元水が汚れる。還元水を変えると還元水はきれいに澄んでいる。何かがとれた結果である。
キッチンペーパーで水分をとって調理するもよし、保存するもよいでしょう。
鮮度が蘇るから50%引きの見切り品でもOKということは家計も助かる。


「何かがとれた結果である」ってのも普通の神経ではなかなか書けないアバウトな記述だ。何かっていうかまあ、血なんだけどねえ…
どうもこの人、「保存性」や「見た目の良さ」と「鮮度」を取り違えるというか、故意に混同させている部分が気になる。
「鮮度」は「保つ」「劣化を遅らせる」ことはできても、「蘇らせる」ことはできない概念なのでは?
また、特に魚類の味においては適切な「熟成」が重要となることが多い。
例えば、釣りたての魚の刺身は歯触りがコリコリとした楽しさはあるが、うま味的には浅いことが多い。経験からいっても、釣った後できるだけ早く内臓を取り除き、魚によっては頭を落としたり、しっぽなどに切れ目を入れて血抜きをし、余分な水気を拭き取って一晩くらい冷蔵庫で寝かせると、多少歯触りはソフトになるが、熟成が進んで生でも加熱しても味が段違いに良くなる。鮮度だけが味の決め手ではないというよく知られた例だ。
この場合、「鮮度」の面で言えば釣れてからの時間がより経過し、特有の歯触りは失われているが、食材としての価値は総合的に増している。適切に内臓を取り血抜きをしたことで、そのまま置くより保存性は向上しているのだが、「釣りたて」「まだ生きてる状態」と比べれば「鮮度」の面では厳密には劣っている。

汚れた還元水を変えると還元水が澄んでくる!!!


と得意満面なのに至っては、そりゃ米のとぎ汁だって、研いでは捨てを繰り返すうちに済んでくるってもんだし…

レバーやハツで血抜きをするのに、他の部位や切り身肉では通常それをしないというのは、そこまでの臭みは気にならないし、やっても味が抜けるだけだからだ。
水に漬けたカツオやカジキマグロ、(血抜きで)水が濁って保存性がよくなった(といっても比較対象何もないんだよなあ)のはいいとして、肝心の味のほうは水っぽくなったり薄くなったりしなかったのだろうか?
少なくとも話の中に出てくる主婦も板前さんも、味については特に何もコメントが引かれていないようなのだが…

せっかく水に漬けた状態や前後の写真を掲載してるんだから、半分取り分けて、「普通の水道水だとこうなった」と比較した方が訴求力が増すだろうに、なぜそれをしないのだろう?不思議だ。
(また、小売店・卸業者の中には、鮮度が下がって変色した肉にアスコルビン酸などの薬剤をかけて見た目の良さを復活させる業者もあることなどが何度か報じられた。これらのニュースを見た中には、「何か変な成分が混じっている水なのでは」とかえって敬遠する人がいるかもしれない。)

批判への反論(になってないが)を見ると、「これは実験ではなく、あくまで使用感を紹介したもの」という、この手の業者の定番の言い回しで逃げようとしているようだ。
「還元水で野菜が生き返った!」的な使用感を語る記事やブログは(どの程度サクラが混じってるのかは知らんが)確かに散見される。ただしその中に水道水との比較を語ったものはなく、そもそも
「水に漬けると葉物野菜は(リスクもあるが)パリッとする」
「レバーは水に漬けて血抜きする」
という基本的なことを知らなかった低レベルな人がすごいすごーいと騒いでいるような印象のものばかりHITするんだけど…


C・冷蔵庫に入れておらず鮮度に不安のあった牛乳も、パックごと還元水に漬けたらとても美味しくなった

これはもう、写真を見て脱力しない人のほうが少ないと思うのだけど、ツッコミさえ難しいレベルだ。
還元水の力は、紙パック越しに働きかける力があるんですってよ奥さん。ふーん。
何しろ、「鮮度に不安があった」「冷蔵庫にも入れてないから傷んでいるかも」という主観だけで、開封前の牛乳を飲んでさえいないのだから話にならない。
考えられるとすれば

・室温の牛乳が、水に漬けたのでほどよく冷えて美味しかった
・そもそも美味しい牛乳だった

ぐらいしか…

今読み直してみたら第二弾の記事もあったが、これがまた輪をかけてすごい内容。
醤油を入れた小皿を還元水に漬けておくだけで醤油が美味しくなるんですってよ奥様。ふーん。
記事によれば、この還元水マシンを買えば、すべての食材を半額落ちしたものに切り替えて、還元水に浸けて冷凍して美味しく食べられるから、その分だけ食費が浮いて奥様お得!だそうな。
挽き肉も和牛薄切りも魚の干物も調理済み食品も水に浸けろってさ。
で、「食材すべて半額落ちにした場合の試算」として、
少なめに見て一日1食400円の節約ができたら1ヶ月で12,000円。1年で144,400円。海外旅行に行けてしまう。

と出ている。
じゃあこの浄水器のお値段いかほど?と見てみれば、スタンダードタイプで238000円。フィルターが12500円。
まさに「朝三暮四」みたいな話で、要するに主婦は猿畜生扱いされてるってことよな。その上、「浮いたお金はもれなく主婦のへそくりで服やアクセサリーに化けている」とか、バカにするにもほどがあるだろ。


後半の「HydroCar」の紹介についても我田引水のトンデモが満載で、ダシに使われたホライズン社が気の毒になってくる。
OUTRIDE社通販ページ内で説明されている詳しい仕様など
これを見るとちゃんと「水素タンク」があるなど、水屋が説明するほどイージーな構造ではないし、「こっちには酸素水・こっちには水素水」というのも当たらないような。


posted by 大道寺零(管理人) at 18:06 | Comment(4) | TrackBack(0) | WEBサイト
この記事へのコメント
完全に悪乗りの産物というか・・。

ネタのつもりで作っているでしょうかね。

苦笑ものの内容です。
Posted by ナックル at 2008年11月19日 20:30
完璧に洗脳されている頭の固い人間が書いた文章ですな。刺身を水につけている時点でアハ〜ンっすよ・・

魚をおろす時身に包丁入れてからは絶対に身に水が付かないように気をつけるのが常識だと思ってました・・・水っぽくて不味いから。
Posted by manabu1207 at 2008年11月20日 10:51
しかも完璧にどこからどう見ても

オカルトインチキ商品じゃないっすかああああ!!!
Posted by manabu at 2008年11月20日 10:52
>>ナックルさん

これがネタどころか、実に真面目に語って水マシンを日夜売ってるのですから驚きです。
実際に使った人が「美味しくなった」「よくなった」という使用感を語ること自体は一向に構わないのですが、売る側の見せ方・説明としては色々な意味でお粗末すぎる、むしろ「普通の水との比較」を上手に使わないのはヘタクソだなあと思います。でもご本人はいたって真面目で、ブログでははてブ等で批判された内容をいちいち転記して、「批判者=トンデモ」というわけのわからない思考回路で叩くのにお忙しいようです。

>>manabuさん

料理のプロであられるmanabuさんからコメントしていただけるととても心強いです。
私も若い頃買った魚料理の本で
「魚をさばくときは極力水に触れさせないようにする、洗うのも最小限に」
とあったのを読み、いまだにできる限り守ろうと心掛けてます。ことに刺身はあり得ないですよね…

そしてこの手の商品がそこそこ売れているのですから世の中怖いですねえ。

ttp://www.denkaisui.com/riyourei/riyourei.htm

によれば
・ワラビなどの山菜類のアクがよく抜ける
・黒豆が柔らかく煮上がる
なんてのもありまして、そこだけ読むと

「重曹混じってるんじゃね?」

という感じにしか読めないんですが…
Posted by 大道寺零 at 2008年11月20日 22:16
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