2009年01月16日

「隠し砦の三悪人」(1958)映画

なん〜〜〜にも難しいことを考えずに楽しめる、単純明快な冒険活劇。
そのストーリーもごくごくシンプル。
私としてはとにかく、雪姫演じる上原美佐の魅力に撃沈された。もう「美佐姫」とお呼びする以外ない。

戦国時代を思わせる時代設定。
秋月・山名両家の間で戦いがあり、秋月家が敗れた。
戦に乗じて一儲けをもくろんだ百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)だがそれどころではなく、命からがら落ちのび、結局山名方に捕らえられて強制労働をさせられる。
秋月家には莫大な隠し金があり、それを捜索するための労働だった。
そこからもなんとか逃げだした二人は、薪に偽装された隠し金の一部を発見し、色めき立つ。

一方、秋月家の後継者である雪姫にも賞金付きで追手がかかっていた。侍大将の真壁六郎太(三船敏郎)は、ひとまず雪姫(上原美佐)を隠し砦に匿い、なんとか隠し金とともに友好関係にある早川家領に脱出しようと機会を伺っていた。

六郎太と太平・又七が出会い、金を発見した二人を詰問する。六郎太はあえて二人に隠し金と砦のことを明かし、その欲の皮を利用する形で脱出行に同行させる。
敵の裏をかき、敵地山名領を通過して早川領に出るという作戦に決めたものの、隙さえあれば金を横領して逃げることしか考えていない太平と又七、気位が高く男勝りな雪姫を連れて敵陣を通過するという逃避行はリスク満載。
果たして六郎太一行は、姫と金を守りながらゴールにたどり着くことができるのか?…というのがストーリーの柱。

yukihime3.jpg

とにかくこの雪姫演じる上原美佐が魅力にあふれていて、もうほんとに参った。
上原美佐は撮影当時短大生(公開時21歳)で、この映画でデビューした。演技の面ではほぼ素人で、はっきり「大根」と言う人も多く、それはそれで分かるのだが、特有の「妙に力が入った話し方」が、「不安な状況の中で精いっぱい虚勢を保とうとする勝気な姫君」であればこう喋るんじゃないか、という雰囲気にマッチしていて、素なのかディレクションの結果なのかは分からないけれど結果的にはしっくり来る。
逃亡中、山の百姓に外見をやつしても、話し方や物腰から身分がバレる危険が高いため、六郎太は雪姫に「唖の娘」という設定を課し、「人前では決して口をきいてはいけない」と指示をする。だから中盤では、六郎太の前以外ではほとんどセリフを発さないのだが、もしかしてこの中には、演技面のアラを目立たせないようにと言う意図もあったのかもしれない。

それはそうとして、このキリっとした容貌、ノースリーブショートパンツ(的な)姿でお転婆放題する、エッチすぎずのびやかな肢体と全体の気品と雰囲気は、確かに「雪姫はこの人以外に考えられない」と思わせるものがある。
「赤ひげ」の加山雄三もそうだったが、本当に黒澤組スタッフは、大して演技がうまくない俳優をして、その人の持つ属性や持ち味を引き出し、「でもこの人しかいない」というところまで仕上げてしまう魔術師、むしろ錬金術師だと思う。
もちろん、千秋実・藤原釜足らの芸達者なベテラン勢が脇を固めてカバーしているからこそ、というのも大きいのだけど。

「舞台化粧じゃないんだから」と最初は言いたくなってしまうほど釣り目のアイラインがガッチリ入ってるのだが、これがまたいいんんだなあ。この目でキッと睨まれて仁王立ちされると、もうどうにでもして状態。
映画界にヒロインは何万人もいるけれど、こんなに仁王立ちが似合うのは雪姫以外に考えられない。S属性の人なんかはもう、手にしたあの鞭みたいな棒でしばかれたいと思ってしまうんじゃないだろうか。

単にお姫様然としてツンツンするだけでなく、人買いから娘を救い出す情けあり、無邪気に火祭りの踊りに混じった時の可憐さあり、窮地にありながらも、満座の中で臣下を侮辱する主君を批判する正義感ありと、非常に魅力あふれる人物に仕上がっている。

この勝気なキャラクター、キリッと吊り目の風貌も含めて、ダイナミックプロ的だなあと感じた。
「石川賢が漫画化したらさぞ面白くなるだろう(雪姫が一気にアーマードする可能性大だが)」
と一瞬夢想したのだが、やっぱりこれは、映画だからいいのだろうなあ…と思い直す。

中盤、一行の正体を悟った敵の侍を、六郎太が馬に乗って追撃する有名なシーンがある。
ここでは三船敏郎が刀を両手で上段に構えたまますごいスピードで馬を走らせているので、見る者は誰もが「あのスピードで馬上で両手離しとは!」と度肝を抜かれる名場面(後で調べたらなんとノースタントだったらしいのでさらに驚いた)なのだが、これは実写映像だからこそ「三船敏郎すげぇぇ〜〜!」となるのであって、当然ながら漫画では「出来て当たり前」なわけで、1/10も凄さが伝わらない。槍の決闘のシーンもしかりだし、「やっぱりCGとかなかった時代の映像の説得力って凄いよな」と再確認したのだった。

太平と又七の二人は、単にコミカルなだけでなく、途中で何回も「お前ら少しは懲りろよ」と言いたくなるくらいにしょーーーもない根性の汚さなのだけど、そこがまたこの作品の味だ。
変に途中で「姫のためなら」みたいなモードになって獅子奮迅の忠臣になったりしない(あくまで三人がそれぞれをしたたかに「利用しあう」関係にある)のが私は好きだなあ。しょうもないけど、それゆえに愛さずにはいられない二人なんである。

そしてこの映画で一番美味しい役柄が、藤田進演じる敵将・田所兵衛であることに同意いただける方は多いのではないだろうか。その理由についてはこの映画の最高にイイ場面なので、あえて語らず「見れば分かっていただけるはず」と言うにとどめたい。
ラスト付近の「あの名セリフ」の場面では、公開当時映画館で拍手が巻き起こったという体験談もあるらしいが、さもあらん、と思う。

この映画のキャラクター構成がにインスパイアされたスピルバーグとルーカスが、のちの「スター・ウォーズ(今の数え方で言えばエピソード4)」で使ったというのは有名な話。
つまり、
ハン・ソロ=六郎太
レイア姫=雪姫
C-3POとR2-D2=太平と又七
というわけで、レイア姫の勝気なキャラクターも雪姫のそれを一部踏襲している。

上原美佐姫があまりにも魅力的なので、そののちどんな映画に出演されたのか、今はどんな感じの風貌なのかな?と調べてみたところ、残念ながらデビュー後2年で、「自分には才能がない」というコメントと共に引退なさったという。雪姫で強烈な魅力を放ったがゆえに、その後苦しむこともあったのだろうか。
wikipediaには2003年没、という情報もあったのだが確かな典拠が示されておらず詳細は不明の模様。

お名前で画像検索したところ、同名の女優さんの写真が多数HIT。そちらの上原さんも大変お綺麗です、お綺麗ですが!検索にはちょっと邪魔だなあと思ったり…
まあねえ…あちらのファンの方も日々そう思ってることだろうけども…


昨年リメイクされたのは知っているのだけど、太平と又七の二人の百姓のうち、一人が松本潤演じるイケメンくんになり、しかも後半姫とのラブストーリーに突入…という粗筋を聞いただけで食指が石化してしまったので…能動的に見ることは多分ないだろうなぁ…
posted by 大道寺零(管理人) at 17:17 | Comment(4) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
この作品はみていないのですが、みたいーーーと、思いました。


>-本当に黒澤組スタッフは、大して演技がうまくない俳優をして、その人の持つ属性や持ち味を引き出し、「でもこの人しかいない」というところまで仕上げてしまう魔術師、むしろ錬金術師だと思う。

いいですよねえー。こういうのって、なんか、最高の監督と仲間たちって感じます。

Posted by okapi at 2009年01月16日 20:09
ぐえええええええ!!!

先生の描く美佐さま魅力的すぎです!
携帯の待受にしちゃいますね☆

隠し砦の私のポイントは、志村喬と三好栄子です。
「こんな地味な役でも完璧にこなすなあ」と感心しきりでした。

黒澤作品では珍しく、なにも考えずに見ることができるのが、この作品の魅力じゃないかと。
Posted by きたかZ at 2009年01月16日 22:35
一昨日見たばっかりです…もう1回見るか…

実は昔からお姫様を正視したことがないです。
情景や周囲の人物とのコントラストが強烈で…
Posted by 末期ぃ at 2009年01月17日 00:35
>>okapiさん

余韻とか緻密さの点では他の名作に一歩も二歩も譲りますが、ほんとに軽いノリでさっくり見れるのでお勧めですよ。

>最高の監督と仲間たち

この映画では、逃避行の中で何度もピンチに陥ってはそれを切り抜けるのが面白いところなんですが、4人の脚本家がそれぞれにピンチを考え出し、他の人が「いかにそのピンチを解決するか」とアイデアをひねり出し、お互いに謎を掛け合うような方法でセッションして脚本が練られたのだそうです。
また、ストーリーは軽快な作品ですが、撮影に対してのガチぶりはいつも通りで、落ち武者役の加藤武さんはマジで頭を馬に蹴られたのだとか…

>>きたかさん

かようなヘタクソな絵を気に入っていただけたなら、お世辞でも嬉しゅうございます。
髪型がどうもうまく描けずに輪郭トレスしちゃってる上でこれですからまったくお粗末でお恥ずかしい。

>志村喬と三好栄子

二人とも出番は少ないんですけど、存在感ありましたねえ〜。どうしても志村喬が出ると彼を目で追ってしまう自分がおります。

>>末期ぃさん

>実は昔からお姫様を正視したことがないです。
>情景や周囲の人物とのコントラストが強烈で…

それは美佐姫が正視できないという意味かー!と叫んでみたりしたのはもちろん冗談です。彼女についてはもうそれこそ何十年も賛否両論ありまくりですし、そういった意見もよく理解できます。
Posted by 大道寺零 at 2009年01月17日 17:59
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