2009年01月26日

「影武者」(1980年)映画

「乱」の方を先に見て、そっちはけっこう好きなんだけど、こちらはなんとなく今一つだった。微熱状態で見ていたせいもあるかもしれないが、何度となく寝落ちして(特に前半)、そのたびに巻き戻して見た。そこそこ期待して見たので。(個人的に)タルコフスキー級の寝落ち率になるとは思わず、驚いた。
間合いがとにかく「長っ!」と感じるシーンが多く、その意図とか意味が分からない、というか効果的に感じられなかった。勿論別につまらなくはないのだけど。
3時間がとにかく、長い。2時間30分とまではいかなくとも、せめて20分くらいは詰められた内容だったんじゃないかな?というのが正直な感想。

[ストーリー]

とあるケチな泥棒(仲代達矢)が「武田信玄そっくり」の容姿に目を付けられて命を拾われ、信玄の影武者として生きることになる。
信玄当人は戦の中で敵に狙撃されて死んでしまうのだが、「死後三年はその事実を隠せ」という遺言に基づき、重臣たちは影武者を信玄として奉ることになる。事実を知るのは一部の重臣・側近と息子のみ。

影武者生来の隠せない下品さや人物の小ささがにじみ出るのを心配し、また反発する者もいたのだが、信玄と言う人物に心酔するようになった影武者は、次第に本物と見まごう程の品格や迫力を身に付けていく。
一方、織田をはじめ武田家を狙う有力大名たちは、信玄の生死の真偽を確かめるべく、武田領内にそれぞれ間者を放つのだった。

遺言の三年が過ぎようとし、いかに真実を明かすべきか、そして影武者の身柄をどうするべきか…という議題が重臣たちに持ちあがる中、ある失敗から影武者が偽信玄であることが発覚してしまう。


本来の主役キャスティングは勝新太郎だったが、撮影開始後数日にして黒沢監督とトラブルを起こして降板したことは有名。
そのためどうしても、「主役が勝新だったらまた違っていたかも」「勝新で見たかった」という感想の付くことが多い。事実私もそう感じた。
仲代達矢の演技も力がこもっていて不足はないのだが、少し真面目で上品、悲壮感が勝ちすぎるというか、勝新だったらもう少し滑稽さとか下品さ、それゆえの哀しさのようなものが出せていたかもしれない…と思ってしまう。

黒澤映画は、監督自身や作品に関わるエピソードに有名なものが多く、「勝新降板」もその一つだ。逸話が多く残っていればいるほど、作品を見て後から情報をチェックする側としては面白いのだが、それに感想が引きずられることもあり、ビッグネームなのもそれはそれで大変だよなあ、とも思う。

「間合いが冗長」に感じるのは、主に人物同士の会話(顔によったカットが少なく、ロングショットが多いので余計にそう思うのかも)なのだが、この映画の売りである合戦シーンもやや間延びした感はあった。
ただやはり、実際に馬と人をガバッと使った迫力は圧巻で、特に神系展開の場面は見ていて面白さがあった。
終盤の長篠の戦では、史実通りに鉄砲隊に武田軍が敗れる。そこでスローモーションで延々と、人が倒れ、馬が嘶きながら最後のあがきをし、息絶えていくシーンは実に長い。その長さのあまりに呆れる向きも多いのだが、あの馬の「迫真の演技」にはやはり目を引き付けられる物がある。
通常、映画やドラマで使う馬は、動物プロダクションなどからレンタルするのだが、この映画では全て買い取り(アメリカから調達したという)、映画のための調教を行ったということを後から知り、色々と納得した。
あのシーンの馬は実際に末期のシーンなのかそうでないのかまでは知らないのだが、あれが演技や演出でなければ、確実に予後に不安が残る負傷があったように見えた(あくまで見えた、だけなのだが)。レンタルではあそこまで酷使することはできなかっただろう。それゆえの買い取りだったのかな、と思った。
そういう意味では、馬の迫力あるショットには事欠かないのだが、本当に馬好きな人にはお勧めするのが微妙な映画かもしれない…と感じた。

最初は「お宝でも見つけたらトンズラする」程度の考えしかなかった影武者が、「あの方のために何かしたいんだ」と言うまでに心境が変わるのだが、その心の変化に今一つ説得力が感じられなかったのは脚本の弱さだろうか。


「特捜最前線」のファンの間では、船村刑事役の大滝秀治(映画では重臣の一人・山縣昌景役)が、この映画に出演するために一時番組を降板(番組中では依願退職という形で、のちに復帰した)、しかも例によって撮影が長引いたためになかなか特命課に帰ってこられなかったことで知られている。特捜ファンとして、「おやじさんを長期束縛したほどの映画」ということで、少し期待しすぎてしまったのかもしれない。
おやじさんの長期不在は色々寂しくも物足りなくもあったのだけど、この一次降板があったからこそ、傑作「裸の街」(船村刑事が退職を決意するいきさつと、そこに起こった事件を描く名エピソード)も生まれたわけで、悪いことだけでもないわけだし…
posted by 大道寺零(管理人) at 01:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:[基本的に空欄を推奨します。詳細はこちらをご覧ください。]

ホームページアドレス:

(コメント投稿後、表示に反映されるまで時間がかかる場合がございますのでご了承の上、重複投稿にご注意ください。)
コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。