2009年02月04日

「蘇える金狼」(1979年)映画

昨年NHK-BS2で放送されたものを録画視聴。
NHKなので有名な吹雪ジュンとのファックシーン等がカットされているかも?と思ったがおおむねそのままだった模様。(ノーカット劇場版を見ていないので比較できないのだけど、大筋そのまんまかと思う)

とにかく松田優作がカッコよく、脇を固める怪優大サービスの嵐に嬉しさを隠せない。ラストの展開はちょっと読めてしまったが、1本の映画として文句なく楽しめた。
大藪春彦の原作は未読。原作ファンからは改変部分に不満が多く出たことは一応知っている。

まあとにかく、よくこれだけクセの強い「怪優」カテゴリの人たちをそろえたもんだと驚くほどの(その手の役者が好きな人にはたまらない)豪華さ。

・朝倉哲也:松田優作
・永井京子(小泉の愛人):風吹ジュン

・清水社長:佐藤慶
・小泉経理部長:成田三樹夫
・金子経理次長:小池朝雄

・坂本(ヤクザのボス):今井健二
・磯川代議士:南原宏治

・桜井光彦:千葉真一
・鈴本光明:安部徹
・牧雪子(光彦の情婦):結城しのぶ
・石井(秘密興信所所員):岸田森
・国友(石井の部下):待田京介

・ボクシングジムのトレーナー:角川春樹

監督:村川透


会社のトップ陣が佐藤慶に成田三樹夫に小池朝雄。麻薬ルートを掌握する悪徳代議士が南原宏治(しかも髪型やメイクが濃厚なんだこれがまた)、経済界の黒幕に安部徹、その甥の企業ゴロみたいなトップ屋に千葉真一、「興信所の人」と言うには余りにも危険すぎる殺し屋が岸田森。
濃いわー。濃すぎてたまらんわー。
こうしてみると故人が多く、なぜか「怪優」と呼ばれる人って、惜しまれつつ早逝するパターンが多いような気がする。


主人公・朝倉哲也には2つの顔がある。
1つは真面目なだけが取り柄の、「東和油脂」に勤務する平凡なサラリーマン。この時はペッタリとした七三分けのカツラ、野暮ったい黒縁眼鏡をかけて、「冴えなさ」を演出している。
もう一つの顔は、日々秘密裏にボクシングジムで体を鍛え、銃や武器の知識も身に付けた、冷酷非情な獣の顔。

物語の冒頭は、警察官に偽装した朝倉が一億円を強奪するシーンから始まる。犯行後、何食わぬ顔をして現金をリンゴの箱に詰め替えて会社に持ち込み勤務を続ける朝倉は、奪った現金のナンバーが全て控えられていることを知り、金を麻薬に変えるためにヤクザの坂本に接触する。麻薬ルートの元締が代議士・磯川であることを知った後は坂本を殺す。
その後磯川宅に赴き、取引を迫る。
海千山千の磯川がまともに相手をするはずもなく、待機させておいたボディーガードに始末を命じるのだが、ここから銃知識を存分に散りばめたハッタリを発動させて窮地を乗り切るのがまさに大藪ワールド。
「その距離からその銃で撃てば、弾は俺を貫通して磯川に当たる」
とうそぶき、隙を突いて磯川にナイフを突きたて、ボディーガードに銃を捨てさせる。この時、ただ単にマガジンや弾丸を外させるだけでなく、
「M70、ボルト抜け。カービン!薬室の弾出せ。」
と細かく指示するあたりがもう最高にカッコいい。

指定した場所で後日取引という話が付くが、案の定その場所にも朝倉を消すための手勢が配置されていた。それらを全て倒して麻薬を入手する。

一方で朝倉は名前を偽って、勤務先である東和油脂の営業部長・小泉の愛人である京子に接近。たらしこんで骨抜きにするだけでなく、そうとは教えずに麻薬漬けにさせて支配し、彼女を通じて東和油脂重役陣の情報を聞き出す。
とにかく風吹ジュン(公開当時27歳)の脱ぎっぷりがなかなか度胸座ってて素晴らしい。お尻乳首当たり前でファックシーンを披露し、特に「朝食付きバック」のシーンは、色々な意味で伝説になるのもうなずける。後半の「ご奉仕」シーンもなかなかエロい。
現在、20代後半の女優でこのくらい根性見せて脱げる人っているのかね?と思ってしまった。たいていは不自然な「シーツぐるぐる巻き」でキスとかしたら「ワープして事後」みたいなばっかりだし。見る方も「大手事務所だししょうがないよね」とか納得しちゃったりしてねえ。

この映画では、「主人公の最終的な目的は何か」ということは最後まで明らかにされない。というか多分、朝倉自身にも「どこまでやれるか自分を試す」ような感じで、ゴールは定めていないように見える。
「復讐」のような明確な動機があるわけでもないので、特に前半は観客はなんとなく不安な気分のまま朝倉の行動を追っていくことになるのだが、おいおいと、単純に金や麻薬が目的なのではなく、自分の勤める会社とそのトップ陣が標的なのだろうと見当が付いていく。

後半は、朝倉以外にも東和油脂を狙う相手が現れる。
金子営業部次長(小池朝雄)の盗撮写真と汚職事件の証拠をネタに大金を強請る桜井光彦(千葉真一)。トップ屋まがいの企業ゴロだが、叔父は経済界の黒幕と呼ばれる鈴本で、彼もまた東和油脂を手中におさめよういう目論見があった。
東和油脂重役陣は緊急会議を開き、秘密興信所の探偵・石井(岸田森)に事態の収拾と証拠の処理を依頼する。
そんなわけで、中盤は「千葉真一VS岸田森」という「濃ゆい人対決」に、漁夫の利的に朝倉が絡んでいく形になる。

千葉真一が、存在感を見せながらも脇役らしさに徹しているのに対し、岸田森は(もちろん脇役の枠を守りつつ)けっこうやりたい放題の役作りで、イヤでも印象に残る。
そのくらい石井のキャラクターは強烈で、「石井」という普通の日本名なのに、喋りは終始「インチキ中国人」。仕事の電話の中でニヤリとして「ギャラ、タカイヨォ〜〜??」とか喋る時点で既にキャラ立ちすぎ。設定は「興信所の探偵」だが、実質はほぼ殺し屋。
さらにサングラスと白い杖で盲人を装い(本当は見えているのかどうかは明らかにされていない)、その杖は実は仕込杖。服装も黒いエナメル上着の下に純白の上下。少し足を引きずり気味に歩く。
原作では「見た目はごく普通」の人だったとのことで、相当の変更、というか「もはや別人」になっちゃったことがよく分かる。というか目立ちすぎだろうと。まあここまで目立てば逆に「腕利きの殺し屋」には見えないかもしれないが。
これらのほとんどは岸田森が自ら提案した「役作り」の一環だったらしい。なんか色々詰め込み過ぎでは?という気もするのだが、以前何かで読んだ話(「狂気を感じさせる悪役」の演技指導をしており、模範として見せたものが、派手なセリフや動きではなく、ビッコを引いた無言の男が、表情と目力・動きのみで狂気を感じさせるものだったという逸話)を思いだしてなんとなく納得した。多分「肉体機能の欠損(から生まれる何か)」に深いこだわりを持っていた人なのだと思う。
まあとにかく、「この映画で一番濃くて怪しい」人物であることは間違いない。

光彦の情婦のマンションでの「光彦VS石井」戦は光彦の逆転勝利。
その後「朝倉VS光彦」の戦いでは朝倉が光彦を負かし、証拠を入手する。
証拠を奪ったのが東和油脂の手のものと思い込んだ光彦はさらに提示額を上乗せし、重役陣は殺し屋を増量召喚して石井に指揮させ、光彦を消そうとする。

ここからしばらくのカーチェイス&ガンアクションの時間は、松田優作が登場しない、「千葉ちゃんと森ちゃんのターン」で、千葉真一がアクション俳優第一人者の意地を見せた切れのいい動きを披露してくれる。
バトル開始を告げる岸田森の「ウラミ、フカイヨォ〜」がなんとも不気味で印象に残る。
闘いの末、千葉ちゃんと情婦の二人は岸田森に撃ち殺され、ボタ山を転げ落ちる。ここもノースタントらしく、千葉ちゃんもそうだが、女優さんもノースリーブなのでめちゃくちゃ痛そう。既に勝負あった二人に対し、執拗に弾丸を撃ち込んでハチの巣にする岸田森がやっぱり怖いよママ。

今度は石井たちが東和油脂に脅しをかけ、さらなる大金を要求する。始末しようにも手駒がなく悩む重役陣に、朝倉が一策講じる。
上役の金子に、ジム関係者を装って電話し、今まで隠していたボクシングの才能と腕っ節をアピールしたのだ。
重役たちは朝倉を呼び出し、将来の出世の約束を報酬に、石井たちの始末を命じる。
朝倉はその命令に従順に従うふりをして石井たちを殺し、アジトに火を付けて証拠になりそうなものも全て消した。

この「優作VS岸田森」のバトルにも超印象的なシーンが一つある。
岸田森が優作に撃たれて後ろに倒れる。その時背中には障子があり、おそらく後ろに障子ごとバリバリと倒れる段取りだったのだろうと思われるのだが、思いのほか障子が丈夫だったのか、一度「やられた〜」的なポーズで倒れかかった岸田森が、思いっきり後ろ向きに肘鉄をガツッと打ち、無理矢理障子を壊して倒れこむのだ。もしかしたらその場で「障子壊して倒れた方がいい」と思ったのかもしれないが、それにしたってめちゃくちゃ不自然なエルボー。あまりにクッキリハッキリとかましちゃってるので、誰もが思わず吹いてしまう場面だ。
普通だったら撮り直すところだと思うのだけど、なんかもうこれはこれでアリのような気がするのでとにかくヨシ。

利用し終わったら知りすぎた奴は消すのが東和油脂の企業体質。金子次長に銃を預けて、葉山で朝倉を消させようとするのだが、この作品中の小池朝雄は終始一貫して体力のなさそうな小悪党なので勝負にならず、別荘に集う社長重役御一行のもとに案内させられる。
ここで一度高圧的に出たかと思えば、銃を出されて急に醜い責任のなすり合いを始める佐藤慶・成田三樹夫・小池朝雄の狼狽ぶり、それに対してドッカリと構える松田優作の不敵さがたまらなく痛快。
朝倉は巨額の東和油脂株を要求し、さらに重役の椅子を手に入れることで、名実ともに東和油脂を手に入れることに成功する。
この場面の「大株主にコーヒーくらい持ってこんか」とか、少し後で出てくる、会社の警備員に対して「明日からヒゲ剃って来い」という余裕のセリフがなんとも痛快だ。

東和油脂社長の令嬢と婚約し、会社でも頭角を現して女子社員の噂の的になり(この頃になると冴えないカツラと眼鏡は外している)、カウンタックをポンと購入する羽振りの良さ。
(カウンタックで朝の町を走るシーンは、今見るとかなり合成がチープに感じられるのだが、この当時の合成技術を考えれば致し方ないところか。この作品を撮影した当時、まだ松田優作は四輪の免許を持っていないはずなのでしょうがないのだろう。)

殺された光彦の叔父である鈴本が朝倉に接触し、彼の保有する株を24億で買い取ると打診する。経済界の黒幕である鈴本は前々から同社に狙いを付けており、甥との因縁もあった。自分の持つバックの大きさを示し、逆らうよりも手を組んだほうが今後のためと説かれ、朝倉はドル払いという条件で交渉に応じる。

完全に麻薬中毒となった京子(メイクが怖い;)。朝倉の本名と正体を知り、目的のために利用され、彼が東和油脂社長令嬢と婚約したという事実を知った上でもなお離れられずにいた彼女だが、葛藤の末に朝倉を刺し、自分も朝倉の手で命を落とす。
懐から航空券を2枚取り出す朝倉。彼女とともに海外に出る心づもり(「ドル払い」を要求するのもその伏線か)だったことが示されるのだが、すでに遅かった。
次のシーンでは、空港を闊歩する朝倉の姿が上からのカメラアングルで写されるのだが…

ラストシーン、機内でスチュワーデスに
2001年物のジュブレ・シャンベルタン」
を頼む朝倉のセリフは、2001年を通り越した今聞くとサラッと聞けてしまうが、言うまでも当時の感覚では「実感できないほど未来(特に「21世紀」はずっとずっと遠いイメージだった)」のことで、見る者を思わずハッとさせたことだろう。若い方がこの映画を見る時は、ここの部分は是非「1979年の映画」ということを確認しつつリピートしてほしいかな、と思う。

映画のラストは原作とは正反対で、当時は賛否両論だったらしい。
でも全体的に、「面白い映画」としてお勧めできるパワーと俳優陣の豪華さがある。
私はいわゆる「角川映画」はあまり好きじゃないほうなのだけど、「野獣死すべし」とかの村川透-松田優作ラインの作品は好きなのだった。


「カウボーイビバップ」の主人公・スパイクのデザインモデルの一つが松田優作であることは有名で、特に髪型などから「探偵物語(TVシリーズ1979年)」の工藤ちゃんの名前がよく挙がるのだが、この作品の朝倉の髪型もほぼ共通している。
髪型のモジャモジャ具合、主なバトルシーンにおいてスーツを着用していたり、磯川一味との戦闘シーンで着こなしていた革ツナギでアピールされている手足のしなやかさや動きの良さなど、所々に「ああ、スパイクだなぁ…」とドキッとさせられる場面が結構あったりもした。
楽しみ方としては邪道なのだろうけど。


あと、この映画で何度か出てくる「潜入・忍び足展開」の時のBGMって、よくバラエティとかコントの同じようなシーンに反復して使われてるような気がする。
posted by 大道寺零(管理人) at 17:48 | Comment(7) | TrackBack(0) | 映画
この記事へのコメント
BS2でやってたのを知らず、見逃したんですよなあ。
今度、DVD借りるかな。

私はモウ、岸田森が見られればそれで。ええ。
顔は薄いのになぜあんなに濃いんだ、森。好きだぜ、森。

ラストの台詞は有名ですが、そうか、もう2001年って過ぎたんだなあ…。
Posted by カゼ at 2009年02月04日 21:49
>>カゼさん

BSはたいてい、いい番組を大して宣伝もせずひっそり放送しちゃうイメージがあります。昼間のPR番組とか見てないからだろうけど…
この優作何連チャンかもなんかすごくひっそりやってました。

カゼさんこれまだ未見でしたか。あの森ちゃんの死に際は是非見てほしいです。腹抱えて笑えると思います。

ボーっと見てると、「なんで2001年ものって言われて、スッチーがそんな怪訝な顔するんだろ?」って見逃してしまいますよね…時の流れは私のようなオッサンオバハンの感覚までも簡単に変えてしまうようです。
Posted by 大道寺零 at 2009年02月05日 22:07
優作が凄くかっこいいですね。
Posted by ナックル at 2009年02月06日 08:30
>>ナックルさん

本当に「優作ワールド」が炸裂している作品です(それが強すぎて原作ファンからは不評のようですが…)。
特に「復讐」のような主人公の行動への正当性を設けず、野性の本能のままに人生の賭けとスリルを追い続けるクールさに痺れます。
Posted by 大道寺零 at 2009年02月07日 17:00
松田優作の演技には妥協が一切ない。常にリアルワールドをもとめていた。彼の最大の魅力はそこにある。
「蘇える金狼」でも徹底されていて、松田優作のアクション映画の総決算の意味合いが強く最高傑作である。
格闘シーンにしろガンファイトシーンにしろ観る者を熱くさせてくれる。

その中でも最も熱くせてくれるのが、風吹ジュンとのSEXシーンだ。
このシーンこそ一切の妥協を許さない松田優作の役者としての凄みを見せつけてくれている。
濡れ場ほど役者のレベルが分かるシーンはない。大抵の役者は相手に配慮したようなリアルワールドとは程遠い演技に終始する。
しかし松田優作は違う。
全裸になった風吹ジュン相手に見事なファックを披露。オッパイを揉みまくり、乳首を吸いまくる。駅弁ファックに朝食しながらの立ちバックと風吹ジュンとSEX三昧。主人公の朝倉哲也の絶倫ぶりを風吹ジュン演じる京子に見せつけ虜にしてしまう重要なシーン。松田優作はリアルに演じきった。
こんな濡れ場を見せてくれた役者は松田優作以外にいない。

それにしても風吹ジュンは最高に可愛かったなぁ。
一説には前貼り無しの文字通りの体当たり演技だったそうな。
松田優作に軽々と抱きかかえられる全裸の風吹ジュンは何度観ても素晴らしい。

松田優作を超える役者は二度と現れないが、「蘇える金狼」の風吹ジュンのエロスを超える女優も金輪際出てこないでしょうな。
Posted by Dear ジュン at 2009年02月28日 00:45
>>ジュンさん

コメントありがとうございます。
この時期の松田優作は、「好き放題にやった上でいい結果を残す」作品が多かったと思いますが、中でも代表格ではないかと思っています。
モラルを吹っ飛ばした野性あふれる演技が素晴らしいです。

風吹ジュンも本当に体当たり、かつキュートで色っぽくて最高ですね。最近では「お母さん」的な役どころが多いのですが、若い方にも、この時期の瑞々しいジュン様をぜひ知ってほしいところです。
女優の「体当たり」というと、まあイコール「脱ぐ」「見せる」なわけですが、その意味でも本当に度胸満点ですよね。「黄金の犬」で服を剥かれるシーンで乳首に絆創膏貼ってた島田陽子は、ジュン様の爪の垢を煎じて飲むべきだと思っております。
Posted by 大道寺零 at 2009年03月01日 20:19
俺の 吹雪ジュンが エッチされてる場面がある みんな 見るなぁー この映画は 面白いけれど 昔の映画 塗ればシーンが ある 女の裸も 娯楽のひとつだったのだろうか? 鶴舞劇場(ストリップ)はなくなった。大曽根もかなぁ 
Posted by 村石 太368号 名古屋 at 2009年12月23日 13:59
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