私が持っているのは講談社漫画文庫版(1995年初版)。その9巻の131ページのあるセリフの中身がおかしく、明らかに話がつながっていない。
大学進学を希望していたため、寝耳に水のドラフト指名を固辞する水原勇気。しかし岩田鉄五郎の情熱と根気・そして気魄に感じ入り、「明日、自分の本当の本気の投球を見せる」と約束する。
そして翌日、試投の日。
国分寺球場には、水原の投球を見ようとファンや報道陣が詰めかけて満員状態になり、その中で"真の姿"を明らかにする水原…という場面。
マウンドに姿を現し、鉄五郎に挨拶をするシーンに、そのセリフがある。
[130ページ グラウンドに入る水原勇気]

[131ページ]

この2つの場面は連続している。
で、問題は1コマ目の「すごいクセのある速球だ」という水原のセリフで、全然話が繋がっていないし、第一勇気の普通の喋り方とは全く違う。鉄五郎に対しタメ口をきくのも変。
多分ここは本来、「今日はよろしくお願いします」というようなセリフが入っていたのだと思う。
このセリフはどこから来たのか?というのは、読み進んでいるとすぐに明らかになる。
手元で変化するアンダースローの速球、それを受け損なう鉄五郎の姿に沸き立つ球場。そこに「僕に受けさせてください」と登場する帯刀。彼はキャッチャーとしてメッツのドラフト指名を受け、一度は快諾したものの、「女が1位で自分が2位」という事実と、水原の実力(実は本来の投げ方ではなかったのだが)に失望して入団を撤回したという因縁がある。
水原のボールを1球受けた帯刀の独白があるのが149ページの1コマ目。

というわけで、先ほどのセリフは、このコマのものが混同した(同じ1コマ目ということもあってか?)ものであるのは明らか。
連載時やKC単行本、現在出ている文庫版でどうなっているかは確認していないのだが、どの時点で間違ったのか、その後訂正されているかは確認していないので分からない。
こういう写植ミスは、昔のマンガではしばしば見られるものではあるのだが、ちょっと唐突で驚かされる。本来のセリフを(だいたい想像は付くけれど)ちょっと知りたい気もする。