今年2つ目の雛巡り。
ここは、元教員(専門は美術)の工藤幸治氏が、「白畑質屋」の建物が取り壊されることを惜しんで買い取り、そこを古民具・骨董類を展示する私設美術館に生まれ変わらせた施設。
この工藤館長は庄内の教員界隈では大変有名な人で、現役時代から相当な古美術コレクターだったらしい。ちなみに奥様も元教員だとか。
「あいおい工藤美術館行って来た」と夕食時に話したら、義理両親から色々と当時の話(一部裏話)が出てきた。
ちょうど雛巡りの季節なので来訪客も多く、その中には同業のご友人や、かつての教え子さんも結構いたようで、内輪話に盛り上がっていたようだった。
写真撮影はOKともダメとも書いていなかったのだが、女の方に「写真撮影とかダメですよね…?」と尋ねてみたら、「うーん…いいですよ!できるだけフラッシュは使わないでください」と優しく了解をいただけたので、あまり撮りすぎない程度に(館内は広くないので、撮影音がどうしても気になってしまうし…)撮影してきた。
玄関の外観は低く小さい感じなのだが、中に入ると天井が思いのほか高い。
これは、質屋という商売上、あまり玄関をガッチリ構えて威圧感を与えると、敷居が高くなってお客さんが入りづらくなってしまうので、あえて入りやすくするためにそうした作りにしたのだとか。
ここの内裏雛の展示ポリシーは、「部屋の上座の方にお内裏様を置く」ということなので(人形研究家の方のお墨付きらしい)、2組並べるとこういう配置になるのだとか。
「五人囃子の並べ方は、"楽器の出す音が大きい方を(向かって)左に、小さい方を右に"と覚えると間違いないのですよ」
と教えてもらう。なるほど。
七福神が飾られている。
こちらは六歌仙+両脇に胡蝶舞。
毛氈や三人官女の紅色は全て紅花染めだという。なんともいえずいい色だ。
ひな人形以外にも色々なアイテムがある。
刺繍が見事な小袖。
童子型の恵比寿と大黒。
希少価値の高いもので、古いものとは思えないほど肌が美しい。
「前の持ち主の方がとても大事にしてらしたのでしょう」と職員の方。
人形以上に目を見張るのが、精巧な雛道具の数々。
このミニチュアの素晴らしさに、日本の職人の手仕事のレベルを垣間見る。
写真には撮っていないが、錫製の煎茶道具セットも素晴らしかった。
右側にあるのは将棋盤・碁盤・双六(「一回休む」のアレではなく、バックギャモンゲーム)で、婦女子も大いに嗜んだ。平安文学でも、女性が双六や碁を打つシーンはよく出てくる。
五人囃子の顔がとてもいい。
この衣装の袴は藤の柄で、「不死」とかけているのだとか。
蔵の方も一部見れる。これはこけしコレクション。
さまざまな地方のものが集まっている。
蔵の扉の鍵周辺。
「白畑」の文字・宝袋・鯉の滝登りなどの意匠が見える。
御殿飾りの内裏雛。
このお雛様がなんか自分に似ている気がする…
下は鵜渡川原人形の犬。狛犬好きとしてはこれ欲しいのだけど、今入手できるものなのかどうか。
こちらは入口に展示されていたもの。
酒田の鵜渡川原人形ではなく、鶴岡の瓦人形だとか。テイストが微妙に違う。
建物の外側にも色々なものが置かれている。
左が「石臼」の内部の筋彫り、とすぐに分かるのは、「鉄腕DASH」のおかげだ。
右は何だかわからないのだが心惹かれて。
噂通りかなり充実したひな人形展示で、これで大人入場料300円ははっきり言ってお値打ちだ。
こちらからお願いしなくても、館長さんや係員の方が展示物について色々説明してくれる。限られたスペースなので詳細なプレート等はないし、やはり説明を受けないと「何がすごいのか」伝わってこないものも多いので私は許容範囲だが、相方はちょっと苦手だった模様。
まあこれはスタイルと好みの問題なので何とも言えないが、私は十分楽しめた。
写真の展示物については、あえてあまり詳しく語らないので、興味のある方は是非一度足を運んでみられては。
今年のひな人形展示は4/12まで。
参考:庄内のお雛さま・ひな祭り−展示会場一覧−