2009年05月26日

オープンハート日記

web上の相談コンテンツなのだが、ちょっと面白いやり取りがあって、なるほどと思った。

私はあまり人に興味がないように思われがちです。
「心を開いてくれていない」と感じられてしまうようです。
しかし、自分では別にそんなつもりはないのです。
「能面」とか「サイボーグ」とか、「血は緑色だ」とか「早く人間にしてあげなきゃ」だとか、
まるで人の心が欠落しているかのような言われようです。
(略)
もう少し、人間らしく振舞うには、どうすればいいのでしょうか?「心を開く」って、どうすることですか?

「心を開いてくれない」と思われているようなんです - ゆうきゆうの人生岐路岐路クリニック - 女子まぐ!


これに対する回答が実に明解。

よく「心を開いてよ!」とか言う男がいますが、あれは別に「心をすべて見せてよ!」という意味ではありません。
ただ単に「自分を受け入れてよ! 自分をもっと気分よくさせてよ!」という意味です。

「あぁ、心を開けばいいんだ。だったら私は相手にイライラしてるから、素直にイライラをぶつけてあげよう」

と思って怒ったりすると、「心を開いてない」と判断されます。

難しいものです。

本当の意味で心を開いてはいけないのです。

「七匹の子ヤギ」という童話がありますが、あれで考えると分かりやすいかもしれません。
あの童話では、オオカミが家にいる子ヤギにたいして「ドアを開けて」と要求しますが、あれはもちろん、「食べたいから」です。
幸せがほしいのです。気分よくなりたいのです。

「ただ単に開けました、はい終わり」とか、
「ドアを開けたら中から殺人鬼が」とかは期待されてません。

くどいですが、「心を開いて」というのは、「今見えている状態ではなく、もっと僕を気分良くさせる面を見せて」ということです。

ですのでそのための方法は、先ほども言ったように、「笑ってあげる」こと。


ここではあくまで「心を開く」ということについての話なのだが、私が子供のころから、時折今に至るまでも言われ続けている言葉にも当てはまるな、と思い、抜けていたピースがスパンとはまるような気分になった。

「心を開く」に少し似ている。
それは「素直になる」「素直である」ということ。

理屈臭いマセガキであった私は、子供の頃お小言を食らう度に、親と言わず教師と言わず、この言葉を頂戴することが多かった。

「もっと素直に」と叱られる時、大抵は私は「自分の心に素直に」行動した結果が元で叱られているのである。
言われている内容は、要するに「言った通りにしなさい」
ということで、その指示内容は大抵間違ってはいないことだ。
だから
「先生の(親の)いうことをききなさい」「言われた通りにしなさい」
と言ってもらえば、「ハイわかりました」で済むのである。
しかしなぜか必ずと言っていいほど
「素直になりなさい」
と言われる。
昔親に対し、
「しかしこれは私が自分に素直になった結果であって、これ以上素直になりようがないのだがどうしたらいいのか。言うことを聞け、というのならそういう言い方をしてくれれば分かるんだけど」
と口答えしたらさらになんか「だからお前は」的な感じで小言を追加された覚えがある。

要するに、
「内心から自然に自分の言うことを聞くお前になれ」
という意味
だったのだろうけども、ここぞという時の「素直」の繰り出され方に納得がいかない日々だった。

今でもよく一般論として、「女性は素直な性格が一番」とか何とか言われたりするが、その「素直」って結局、「自分が求めるような性格やリアクションの人間であれ」って意味だよなあ、とか色々思ってしまうのだった。
まあ、いちいちこんな風に言葉に引っかからない人間が、求められる「素直」であることは疑うべくもないのだが。
そう考えると、「素直な性格」というのは、
「理屈っぽくない」
「反論しない」
のと限りなく近いのかもしれない。

少なくとも、「素直さって何だよ?」などといちいち考えない人種であることだけは間違いない。


今まで言われた中で一番理不尽だと思うのは、中学校の時の担任女性教師とのやり取りだった。
目元が細く、鼻が少しずんぐりしていたG先生は、どこか象を思わせる(別の言い方をすれば仏教美術的にはかなり「ありがたい」漢字のお顔)こと、ちょうど国語の教科書に「オツベルと象」が収録されていたことから、もっぱら「オツベル」と呼ばれていた。
中学校では毎日提出する日記ノート(生活時間とか勉強時間を描き入れたりするもの)と、読んだ本を記録する読書ノートがあった。
本の虫である私は、日記ノートにもけっこう読んだ本を記録したりしていたのだが、その頃私は安部公房とか北杜夫とか海外SFのほかに大いに筒井康隆にハマっており、特に初期のキッついところをガンガン読破している時期だった。
あの頃、そしてオツベル先生にとっては、筒井康隆は過激な「悪書」であり、少なくとも女子中学生にはふさわしくないと思ったのだろう。
「そんな本はまだ中学生には早い」だの「猥雑でふさわしくない」だのと言い出して、日記やらなんやらで小さなバトルを繰り広げた時期があった。
その時に言われたのがやっぱり「少しは素直になれ」。
どうです。全く意味が分からない。

「素直に先生の言うことを聞いて、もっと"いい本"を読め」だったんだろうけどもねえ。
読む本のチョイスほどに自分の内心に素直になるものはないと思うのだけど。
どんなに素晴らしい内容の本であっても、呼ばれている、きっかけのある時期に手にして心に響かないと出会いの意味が限りなく薄れてしまうものだし。
筒井康隆の一方で、コーランだのフロイトだの読んでいたから余計不安になったのだろうか、オツベル先生。
でもなあ。筒井はともかくとして、後の方は学校図書館にあったものだし、それを読んで心配になられても困るんだよなあ。

今思えばくだらない話で、バロウズとかにハマっていたならまだしも、なぜ文房具が壮大なバトルを繰り広げるスラップスティックな話を読んで担任教師に呼び出されなければならないのか、ガキながらに話にならないと思っていたし、今もそう思う。
おそらく初期だけで筒井康隆のイメージが固定してしまっていて、「変わり続ける作家」であることも理解できていなかったのだと思う。まああの頭の固い先生に「じゃあこれ読んでくださいよ」と「ジャズ大名」でも差し出そうものなら、熱の一つも出していたのかもしれないが。
3年になって、豪放磊落な男性体育教師に担任が変わった時は心底嬉しかった。
この歳になって、しかも短期間ながら教職に従事したこともあって、今思えば当時は嫌いだった教師の指導もそれなりに理由があってのことと思えるようにもなったが、いまだにあのオツベル先生にだけは別に会わんでもいいと思うのだった。
posted by 大道寺零(管理人) at 20:55 | Comment(3) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こんにちわ、emixです。
相談コンテンツの回答「心を開いてという要望の意味=受け入れてくれ/気持ちよくさせてくれ」、私もとーんと腑に落ちました。

子どものころ、理不尽に怒られたとき
違うと言っても聞いてもらえなくて
返事したくなくて黙り込んだら
素直じゃない、強情だ、とさらに怒られたものです……。

…と思い出していて、ある人が「子どもに『悪いと思っているのか』と怒るのは間違いだ」と言ってたのを思い出しました。
子どもは、イエスと答えたら「じゃあどうして悪いとわかっていてやったんだ」と怒られ、ノーと答えたら「どうして悪いとわからないのか」……どっちにしても怒られる結果になる質問だから、ということでした。
結局子どもは話を聞いてもらえない訳ですものね。かなり、身に覚えがあります。

……まあ、こんな心当たりがいろいろ浮かぶ自分の子ども時代ってどうよ、ということでもありますが。
Posted by emix at 2009年05月27日 01:41
こんばわ〜〜
かなり早い時期から「ああ、これは言ってもわからんな」と気づいたので、適当にあしらってやり過ごしてきました(爆)
だって、幼稚園(仏教系)で飼ってたウサギは、しゃべりもしないし自分からたき火に飛び込んだりせんのやもーん(⌒▽⌒)
Posted by bergkatze at 2009年05月27日 01:50
>>emixさん

コメントありがとうございます。

>「子どもに『悪いと思っているのか』と怒るのは間違いだ」

確かに…よく使われる言葉ではありますが、言われてみれば確かに魔女裁判方式というか、どっちを答えても怒られるわけですからねえ。

親から叱られた経験は、その事自体は自分に非があり、親に理があり、今思えば怒られて当然なことがほとんどでしたが、文言としては「何でそんな言い方するんだろう?」と納得できない経験は色々ありましたねー。
今思えば、親も人間だから、叱っているうちにそんな風になったりもするんだろうなという感じではあります。まして幼少のころを思えば、今の私より若かったわけだし…

>>bergkatzeさん

>幼稚園(仏教系)で飼ってたウサギは、しゃべりもしないし自分からたき火に飛び込んだりせんのやもーん(⌒▽⌒)

これは、仏教説話(ジャータカ)の兎の話でしょうか?
あれに出てくる献身の物語って、どれもレベルがハンパないんですよねー。

確かに私も、何度も「素直に」と言われるたびに、あーまた言われたなあハイハイって感じではありましたね。それがまた相手をムカつかせていたのでしょうけども。
Posted by 大道寺零 at 2009年05月27日 17:56
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