メイン展示にも興味はあったのだが、「つまみ食いっぽい展示だったら別にいいか〜」という程度でいて、cakeさんのブログで併設展のことを知って俄然行く気になって出かけたのだった。
asahi.com:漫画家らが描いた戦争体験 酒田-マイタウン山形
この「私の八月十五日展」の内容は、ちょうど8月上旬あたりに「クローズアップ現代」で取り上げられていて、「近場でやってたら見に行きたいな」と思っていたので、正直地元でやってると知って驚いてしまった。
内容はと言えば原画ではなくすべて複製パネルで、場所も廊下がメインだったのでちょっと落ち着いて見づらい感はあり。
また、ニュース等でクレジットされている有名漫画家の他は、年代的な事もあって、一般的な知名度は高くない…というか、漫画史や漫画家の知識については多少自信がある私でもほとんど記憶にない方のお名前の方が半分以上だった。
ので、せっかく幅広い年代が訪れているのだから、せめて作家の代表作とか、どの分野で活躍したのか(一コマ漫画、イラスト、学習漫画系で活動していた漫画家も多かったので)という簡単なプロフィールがあった方が、展示として良かったように思う。
ちばてつや、さいとう・たかを、水木しげる、やなせたかし等の著名漫画家の分はほとんど先日の「クローズアップ現代」で、一部本文こみで紹介されていたので、致し方ないとはいえ新鮮味がなくてちょっと残念……まあこれは完全に個人的な事情なので展示のせいじゃないわけだけども。
手塚治虫は「紙の砦」全ページの展示。
何回読んでもやっぱり読んじゃうねこの話は。「これでマンガがかけるぞっ」とうれし涙を流した手塚少年のコマの、次のコマとの落差がいつ読んでもキッツいわぁ……
以前色々と調べた時に、戦中派漫画家って思いの外、引き揚げ経験者が多いんだなーとしみじみ感じた(特にフジオ・プロ関係者は、赤塚不二夫本人もそうだし、北見けんいちとか古谷三敏とか、特に目立った感じがした。)のだけど、こうしてみると本当に多い。
というよりそれだけ、満州とか大連とかからの引き揚げ者の絶対数があったということなのだろう。
直接の身内にはほとんどいないのだが、親戚の中にはやっぱり満州から引き揚げた人も少なからずいて、でもほとんどの方が辛い経験を思い出したくないようであまりその頃のことを自分から話そうとはしない。
母は「経験した人にしか分からない辛さとか、思い出したくないことも色々あるから」と言っていた気がする。そうなのだろうと思う。
この展示、中国にも持って行って開催中らしいのだが、反日教育をバリバリ受けた今の中国人がこれを受け入れるもんだろうか。はなはだ疑問と不安しか感じないんだけど…
ミュージアムショップでは、この展示が全て収録されたかなり厚い本を販売していて、定価8000円が5000円とかなり破格のバーゲン価格、そのうえ買った人は別に日中合同漫画家イラスト集みたいな、これまた厚い本を貰えてしまうというびっくりサービスだったのだが、まあ手持ち的にもアレだったし、二度見るかと言われるとちょっと微妙だったので、少し迷ったけども買わずにスルーしてきた。
本の奥付は初版2004年となっていて、この展示もかなり各地を回ったということかな。
数年ずっと植物状態だった赤塚不二夫が、あの原稿をいつ描いたのかちょっと知りたかった。
メイン展示の「パリを愛した画家たち展」は、あまり期待せずに行ったせいか、なかなか楽しめた。解説文が専門用語ばっかりで、美術史に詳しくない一般客には分かり辛いかな、とも思ったけどもちろん、別にこの展示に限ったことではなくて、あちこちで見られるわけだけども。
特にカッコ書きもなく「フォーヴ」とか書かれても「?」って感じの人が多いみたいだったので…
展示の中では、一点のみだったが
「やっぱりワイズバッシュかっけぇぇぇぇ」
ってなりました。はぁはぁ。
ワイズバッシュは指揮者とか演奏者の動きを描いた作品が良く知られているが、今回展示されていた「バイオリン弾き」は、有名な数作品に比べてもかなり動きが激しく、漫画的表現に繋がる流線・残像描写がとても印象的だった。
いつも新田嘉一コレクション(ほぼ森田茂スペース)になっている常設部屋も、コレクションの中から趣旨に合った作家の作品を並べてあって、いつもと違う趣向で楽しめた。
それにしてもやっぱりコタヴォが4点もあったりして、森田茂といい、新田嘉一はモッリモリ絵の具を盛りまくって、ちょっと離れて見るぐらいがちょうどいい作風の画家が好きなんじゃろか?と思った。
ミュージアムショップでは、図録とか迷った結果、結局東郷青二関係の本を一冊買って我慢。
この二つの展示合わせて700円は大いにお得で満足度が高いんじゃないでしょーか。
展示は9/13まで。