三才ブックスより発売。
そのタイトルと表紙で、「はいはい擬人化擬人化」「なんでもかんでも萌え系ですか」とスルーしそうになるのだが、中身はかなり骨太で、驚くほどに直球サイエンス。
全部が漫画、イラストではなく、7割くらいがルポ風の文章で構成されています。
日本で生まれた人工衛星をいくつかピックアップし、開発や運用にどれほどの現場の苦闘があり、制限の多い中で困難を乗り越えて来たかが過不足なく、また印象的に著述されており、正直燃えます。そして不覚にも泣けます。
印象としては、初期の(内容が濃かった頃の)「プロジェクトX」にかなり近い感じです。
ただの萌え系だろ、と思って中を読むと、かなりの嬉しいカウンターパンチを食らわされる一冊。お勧めです。
Amazonのなか見機能で、全体の雰囲気がある程度掴めるかも。
以前ご紹介した「はやぶさ」動画に感情を動かされた方には文句なしにお勧めです。
浅すぎず、マニアック過ぎない適度な内容は、中学生〜の生徒さん(理科好きなら小学校高学年ぐらいからでも)にもぴったりではないでしょうか。
取り上げられている人工衛星は
・気象観測衛星「ひまわり」
・ハレー彗星探査機「すいせい・さきがけ」
・技術試験衛星VII型「きく7号/おりひめ・ひこぼし」
・環境観測技術衛星「みどり2」
・次世代型無人宇宙実験システム「USERS」
・小惑星探査機「はやぶさ」
・月周回衛星「かぐや」
の7つ。やはりはやぶさのエピソード漫画が一番泣けました……
この本のある意味不幸な所は、この体裁とタイトルからして、どうしても萌えとかオタク本関係の棚に置かれてしまって、非常に探しにくいという点でしょうね。
事実私たちも、正月この本を探す時にけっこう苦労しました。
一般書籍コーナーで店員さんに検索してもらったら「品切れ」と言われ、「あとでネットで探すか〜」と思って諦め、別フロアでイラスト・漫画描く人向けコーナー(デッサンとかツール使い方、「**の描き方」などの本が並んでるあたり)に、なぜかぽつんと置いてあったという不思議……
なかなかサイエンスコーナーに置いてもらえない、置かれても表紙で敬遠されちゃうことが多いのが、かなり可哀想なのであります……
とはいえ口コミから好評を博し、Amazonでも現在品切れ中の模様。増刷を待ちたいところです。(他のネットショップや本屋さんの実店舗では十分入手可能のようです)
本屋さんで探す時は、サイエンスコーナーとオタク系棚の両方を覗いてみると巡り合えるかもしれません。
本屋としてはどこに置いていいか悩んで返品してしまいそうですわ。
うちの店はサイエンスもオタク系の本の棚もないので、置くとしてビニールカバー掛けてコミック売り場へ(ユニコーンガンダムにビニールカバー掛けてますコミックじゃあないのに)か
ラノベ売り場かな?
あるいは雑多なTV番組本とかタレント本とかにとりあえずおくことになりそうです。
はい、これは本当に本屋さんを悩ませる一冊だなあと、読むほどに思いますね(それにしてもほんとうに、何で絵描きガイドの中にぽつんと混じってたのか未だに謎です)。
「萌」の文字や表紙の絵だけで敬遠する人も多いと思うので、一言手書きPOPなんかがあると効力を発揮しそうな気もします。でもそんなに平積みするほど入れる本でもないっちゃないんですよな。
買う側からすると、文章量が多いので、カバーはなくても?という気もしますが、その辺りは各書店と店員さんの判断でしょうねー。店によって置く場所が大きく違ってそうな一冊です。