JET実況 アストロ球団 決戦!!ビクトリー球団編 ‐ ニコニコ動画(原宿)
2005年にPS2対応ソフトとしてリリースされた「アストロ球団 決戦!!ビクトリー球団編」のプレイ動画です。
「ビクトリー球団編」とあるけど、別に「復讐球団編」とか「ロッテ編」がリリースされている訳ではありません。
このUP主さん、サムネイルの場面選択がいちいち「ここぞ!」というシーンばかりを抜き出している為、動画の一覧をサムネ表示しただけですでに特濃です。
このゲーム、一応「野球ゲーム」とジャンル分けされることがほとんどなんですが、「アストロ球団のアレは、もはや野球じゃねえだろう」という根本的なポイントを差っ引いても、「スポーツゲームですらない」作品です。
その理由は動画をどれか見てもらえれば一目瞭然なのですが、基本的にキャラゲーな作り、もっと言えば「ちょっとインタラクティブな要素の入った、声の出るアストロ紙芝居(カラー)」なんですね。
要は、「ユーザー側が汗とテンションと連打で、原作ストーリーをPS2上で再現する」というのが基本。ある意味「なりきりゲー」とでも言うべきなのかな。
この手のキャラクター・原作作品ありきのスポーツゲームの場合、
・君が監督になって主人公チームキャラクターを自由に動かし、ライバル達を打ち破れ!ゲームオリジナルの敵チームや選手も満載!
あるいは
・ライバルチームorオリジナルエディットチームを率いて、主人公と対決するモードもあるよ!
的な作りになることが多いと思うんですよ。
ドカベンで言えば「よーしパパ白新高校で明訓に勝って、不知火を甲子園に連れて行っちゃうぞー」的な遊び方とでもいいましょうか。
はたまた巨人の星ならば、「飛雄馬があんなに大リーグボールにばかりこだわらずに、普通の球も取り混ぜて投げればピシらずに済んだのに」という往年のモヤモヤをゲームで晴らすべく、クレバーな起用で星君を息の長い投手として活躍させたりですね。
そういう楽しみ方というのが一つ、キャラものスポーツゲーのメインストリームとしてあるわけです。
私も一瞬、そういう方向のゲームなのか、エディットモードとかクリア後のお楽しみとして、ビクトリー球団の監督としてアストロを倒すモードがあるのかなとか、つい考えました。一瞬だけ。
しかし動画を見始めて間もなく、そんなありきたりな幻想はガツンと打ち砕かれる。
このゲームには、アウトカウントも、ランナー位置もない。いや、表示はあるんだけど実質的に意味がない。
プレイヤーが操作できるのは基本的にアストロ側なんだけど、場面によってはビクトリー側のプレイヤーの操作もやらされます。
例えば、球六のアンドロメダ大星雲打法を成功させる為に連打し、その直後にそれを大門が止める場面もまた連打させられる。
その両方がきちんと成功しないと、ゲームオーバーとなる。そんな具合です。
アストロ側だけを操作するんじゃなく、本当にひたすら、原作の試合の流れをユーザーが再現するだけという、この潔さ。
その方法とは、タイミングよくボタンを押したり、言われるがままにアホほどボタンを連打したり、スティックをグルングルン回すだけ(本当に「連打じゃ〜〜!!」「回すんじゃ〜〜!」と指示されます)。それもかなりハードワークを要求されます。
その連打や回転が要求する水準に達しなかった場合、ストライクが入らなかったり打たれたり、打球を止められなかった、と判定されます。
で、即ゲームオーバー。
「ピーポーピーポー」と救急車のサイレンが鳴り、無駄に色っぽい女医先生から
「まったく……バカに付ける薬はないわ!」
と、至極ごもっともな言葉で呆れられます。そりゃそうだ。
打たれたら打たれたで、ボールになったらなったで、次で何とかする。
そんな臨機応変な対応は、このゲームには存在しません。
コマンド入力(連打)に失敗したら、プレイヤーは即退場扱い。
選択肢その物が存在しないんですね。
この状況に存在するのは
・プレイ中に蓄積された「アストロガッツ」というパラメータを消費してコンティニューするか
・エピソードの切れ目から再プレイし、濃ゆい小芝居を見る所からやり直すか
この二つの選択肢しかありません。
非常に思い切った、色々思い切り過ぎているシステムです。
最初は「えっ何、そういうゲームなの?」と目が点になるんですが、ほんとにほんとにほんとにほんとにそういうゲームなんですね。
でもちょっと慣れて来ると、アストロ球団のゲームのあり方としては、これでいいのかもしれない、とも思えてきます。
だって、考えてもみて下さい。
肩や腰を大事にして、各魔球の合間に普通の球(それだって当たり前の剛速球)や、時にはチェンジアップまで使いながらクレバーに敵をやり過ごす球一。
打たせて取る球一。
チーム総球五状態になり、シュアな好プレイで地味〜に敵の攻撃を食い止めるアストロメンバー。
果たして「アストロ球団」を冠したゲームで、そんなものを見たいと思いますか?
少なくとも私は思いません。
ビクトリー球団の連中は並じゃないんです。
「おまえらもう超人ってことでいいよホント」と言うしかない男たちがゴロゴロ出て来るわけです。
そりゃ、なんぼ球一がボロボロでも、スカイラブ投げなきゃ凌げないんです。
球七兄ィが8週間目のダスキンみたいな瀕死状態でも、涙を飲んで「七の字、頼むぞ〜!」と命じ、弟が号泣しながら投げつけないことには打球が取れないんです。
男には、「この先30m、人間ナイアガラ」の表示が出ている状況であっても、行かねばならぬ時があるんです。
だからやるんです。
力をセーブして勝てる相手じゃないから、言われるがままにバカみたいに連打しなきゃならんわけです。
そうすることでキャラクターのテンション、熱血、あの「うぉおおおおお!」感を共有し、シンクロできる。
球一や球八の辛い気持ちにシンクロし、危機を体験できる。
挙句の果てに連打が足りずにゲームオーバー画面で、球八から
「わしはもうたくさんじゃ!
こんなものは野球じゃない、ただの殺しあいじゃ〜〜〜!」
と、ぐうの音も出ないまっとうな嘆きをぶつけられたりもする訳です。
氏家や大門が、原作通りあんなことになっちゃうからこそ、バロン森だっていきなりオカマキャラから漢モードにチェンジもする訳です。
こうして見ると、イロモノゲームに見えて、「アストロ球団のゲーム」としては、非常にアリ、な立ち方だと思えてならないのです。
まあ身も蓋もない言い方をすれば、アストロ球団という作品自体が色物なんだから、そりゃあゲームだって色物にならざるを得ないわけでして。
これをクソゲーと呼ぶ方が出るのは仕方ないとも思える一方、既存の野球ゲームのシステムに右ならえした、自由度を歌いつつ特色もない、小粒なゲームになってたりしたら、きっとそちらの方がアストロ的にはよっぽどクソゲーなんじゃないか。
気が付くとそこまで洗脳させられています。少なくともそういう力は持ってるゲームなんですね。
そういう作り方をしている割に、ゲームシナリオのボリュームが足りないのは残念。
単純に尺として短い。つまり、えらい勢いではしょってるシーンがかなりあるんですね。
ここはもうちょっと踏ん張って、色々なシーンをきちんと入れて欲しかった。
小芝居とか、派手な対決じゃない「小競り合い」の部分も面白いのがアストロなので。
そんな構成なので、キャラクターが唐突に新登場して「こいつ誰??」、あるいは知らんうちに死にかけて退場してたような展開が多いのが残念。
分量的には本当に短いし、これといってハイスペックな映像処理を要求されるシステムでもないので、
「これって、初代PSでも十二分だよね」
「って言うか、音声を要求しないのならス―ファミでも十分収まっちゃう内容だよね」
という気が凄くします。
ボリュームとしては、ブラック球団・ロッテ編も入れられたと思いますけどもね。
その一方で、原作絵がオールカラー、まずまずの声付きで見られるというのはやはりなかなかいいものです。
ゲーム動画として見た場合、実況主さんのスタンスがなかなか絶妙で面白いです。
この人、全くアストロを知らないわけじゃない、でも随分前にサラッと読んだきりなので、かなり忘れちゃってるんですね。その半端なさじ加減がいい。
まったくの初見であればこのゲームには付いていけないでしょう。
「アストロ球団読んでる」事がある程度前提になってるゲームなので、きっと開始5分ぐらいで振り落とされる。濃さとかテンションとかシステム的な意味で。つまり全部だなこりゃ。
一方、細かい所まで覚えてるアストロマニアであれば、既知のドラマが再現されるだけなので、これと言って驚きはない。
この人の場合、「大まかに知ってるけど大体忘れてる」ので、ゲームを進めながら「そうそうこんな魔球あった!」「こんな奴いたな!そういえば!」と、アストロを味わい直す過程での驚きがあって、その反応がプレイ動画を見ている側に飽きさせない。そこがいいなと思います。
あと本当に、この人のツッコミが肌に合ってて面白かったので。
そしてあの連打地獄を最後までやりぬいたアストロガッツに心から敬礼。
個人的には、絵がなかなかいいと思うので、この絵でアニメ化してくれたら見たいなあと。
見どころ:シークエンスクリア後、セーブする時の「名前入力」
こんな部分が見どころになるゲームもそうそうないと思いますが、間違いなく見どころです。
コンティニュー回数が少ないと9人揃ってアフリカに旅立つらしいです。