<帝国データバンク 大型倒産速報より>
当社は、1978年(昭和53年)5月に設立された。アニメ専門学校「代々木アニメーション学院」の運営を手がけ、東京本部校のほか、大阪校、名古屋校、アキバ校など全国に13校展開し、約6000名の生徒を有していた。多数の卒業生を輩出する歴史と実績を誇る業界の大手で、主力のアニメ学部のほか、映像学部、ゲーム・クリエイター学部、芸能学部などを擁してクリエイターを育成し、98年4月期には年収入高約77億円を計上していた。
しかし、近年では少子化の影響や競合業者がアニメ科、コミック科を設置するなど生徒獲得競争が激化し、2005年4月期の年収入高は約50億円に減少。新規校開設や就職率向上、授業料の値下げなどによる生徒数の増加を目指していたが、生徒数は横ばいで推移していた。
この間、2004年11月には東京国税局より所有不動産に差し押さえを受け、2006年5月には、学費について不当な表示があったとして公正取引委員会より排除命令を受けるなど社会的信用も低下していた。資金繰りの悪化するなか、手形決済の資金調達も困難となり、今回の措置となった。
負債は約22億円の見込み。
代々木アニメーション学院の公式サイトトップページには新取締役(12/4就任)の事情説明がある。
[民事再生法の適用に関するご説明]
前代表による経営の失敗により、当代々木アニメーションを経営する株式会社代々木ライブアニメイションは本年12月6日、東京地方裁判所に民事再生手続きの申請を行いました。
あまりにもストレートな物言いに吹いた。
同新取締役は就任挨拶でもかなり赤裸々だった。
就任挨拶(キャッシュ)
私は、大門建設産業株式会社の代表として、学生寮はじめ各種の建築や管理運営を永年してきており、代々木アニメーション学院の学生や教職員とも数多く接してきています。近年では東京都認証の「保育園トキ」も経営しており、教育産業の難しさと共にその楽しさや大切さを身をもって感じております。
代々木アニメーション学院とは学生寮運営管理等で長年お付き合いする上で、その経営戦略に甚だ疑問を感じておりました。同時に、怒りさえ覚えておりました。
元来、バブルの遺産であるかのごとくの経営体質は信じられませんでした。
学費や経費など金銭の動きも分からない不透明な経営、同時に長く代々木アニメーション学院に触れていく中、学生の楽しそうな笑顔、ひたむきな向上心やその熱意が私の心に改革を決意させました。
この就任挨拶、今は公式サイト上から消えている。
消さんでもいいような気もするのだが。
今回関連スレをちょっと読み流したのだが、「代アニが無認可校」ということを知らなかった人たちのレスがけっこう見られて驚いた。
んもう、先生ロングホームルームとか二者・三者面談で何度も話したじゃないっ。
専門学校を進路の視野に入れる生徒がいる学校ならば、必ず教えている(はず)なのが、「一見専門学校に見える無認可校」のことだ。
一般的な概念では一緒くたにされるが、本来「専門学校」と名乗る事が出来るのは、学校教育法に定められた要件を満たし、国や自治体の認可を受けた学校法人のみである。
修業年限・授業時間下限・生徒人数や校内施設などが主な要件となっている。
認可された専門学校を卒業すれば、平成7年より「専門士」の学位を獲得できるようになった。多くの場合、短大・高専卒の「準学士」とほぼ同等の学歴として扱われるものである。
さて、代アニは認可を受けた専門学校ではない。無認可校である。
(「学校法人大矢学園」のグループなのでやや紛らわしい。ちなみに同法人の経営する「マルチメディアアート学園」は認可専修学校である。)
無認可校は、上記の認可を受けていないというだけで、教育活動は自由に行う事が出来るが、扱いは「私塾」、つまり「習い事」と同様のものでしかなく、「学歴」としては一般的に評価されないなど、(主に生徒側に)大きな差がある。
というか、「専門学校」ですらないんだね。
*「専門士」学位が授与されない
もっとも大きな差異といえるだろう。
つまり多額のお金と貴重な2〜3年を費やした結果、学歴的は「高卒」のままということだ。
上にも書いたように、無認可校で受けた教育は「習い事」のカテゴリである。履歴書学歴欄に、英会話学校とか料理学校の名前を書く人はまずいないだろう。
勿論書いても構わないが、プゲラされてしまう場合が多いということ。
同様の理由で、短大などでは可能な、「四年制大学へ3年次編入」も当然不可能である。
*各種奨学金・学割の対象にならない
これも「学校」として認可されていないため。
無認可校のいくつかは、自前の奨学金を設定している。代アニでは「くじ引き奨学金(キャッシュバックの額を抽選で定める)」などもある。巷間の話によれば、代アニの場合、この奨学金やキャッシュバックなども遅延が見られたらしい。
*学校経営が破綻した場合の救済が保証されない
今回は「民事再生手続きに入った」ので、「即閉校」というわけではない。
しかしこのまま状況が改善せず、閉校となった場合。
認可された専門学校・各種学校であれば、同種の学校から生徒を受け入れてもらうことが可能だが、無認可校にはそうした救済策が原則的にない。
(現にこれまでいくつかの無認可校が経営破綻しているが、いずれの場合も生徒の受けいれ救済はなく、生徒はほっぽり出されて終わっている)
参考:分かりやすく対比しているページ
勿論、保育園などと同じで、「無認可だからボッタクリ」「無認可だから教育内容が空虚」というわけでは勿論ない。
カリキュラムの充実度や経費・就職は、その学校によって大きく異なるし、何より専門分野についての修養は、本人の姿勢、技術を学ぼうとする意欲がものを言う。
だから、生徒がどうしても受けたいというのであれば、無理にやめさせるようなことはできない。
ただ、現実的にこうした扱いの違いがあるよ、って話は口を酸っぱくしてしたものだ。
私が勤めていた頃もそうだったが、「実態の空虚な無認可校」の代表例として語られるのが、この代アニだったんだよなぁ。
近年では、講師が就任しては辞め、就任しては辞めということが大量に続いたらしい。
学費や諸経費でも、色々「話が違う」ことがあり、今年は排除勧告まで食らっている。
冒頭でも書いたが、代アニといえば、「100%越えの就職率」で有名(というか失笑を買っている)。
平成18年3月の就職率は114.8%だそうな。
114%て。
各方面から幾度となく突っ込まれているにも関わらず、年々増え行く就職率。もはやヤケクソの域にも見える。
この就職率のカラクリは以下のようなことらしい。
*母集団は全卒業生ではなく、「学校の就職指導を受けるに値する力のある生徒で、実際に就職・デビューしたもの」「自力で就職指導に取り組んだ生徒」。つまり、「技術が足りない、就学態度がよろしくないので就職指導を受けられない生徒」は入っていない(そしてその数が少なくはない)。
*卒業後の身のふり方がアルバイト(専門の業界とは無縁の仕事、例えばコンビニ・新聞配達など)であっても「就職」としてカウントする。また出版社編集への面接を果たしただけでもカウントされるという話も。
*代アニ卒業生を受け入れるための、「ヒューマン・ラボ」なる会社を設立。
細かい事はこちらが詳しい。
参考リンク:"代々木アニメーション学院、就職率の数字トリック"(探偵ファイルより)
こうした就職率カラクリは、あちこちの専門学校や無認可校の宣伝材料として行われている事ではあるが、それにしてもケタが違う(就職できた人間を母集団としてるんだからそりゃあ100%越えるよな)。
代々木アニメーション学院については、数年前のものだがこのテキストがインパクト大だった。
「実録!ソドム・オブ・代々木アニメーション学院」
声優科の最後の授業で、講師が放ったセリフが強烈だ。
「ここで学んだことを演技だなどと思わないで下さい」
う、うわぁ……
そういえばこの学校、私が大学受験真っ盛りの時期にパンフレット送ってきたっけなぁ。
仮にも進学校の生徒に送ってきても、経費の無駄じゃないかと思ったものだが…