2006年12月22日

俺にはアナログ停波なんかいらない(3)〜難視聴問題、都市も田舎も〜地デジに疑問符

調べれば調べるほど、「地デジ化無謀」「理不尽」と思うことが多く、もうカテゴリ作りましたよ。

今回は、「地デジ放送が開始され、チューナーや内蔵テレビを用意し、UHFアンテナを上げてもなお写らない」という「難視聴」に関わる問題、どれほど国が無策無責任か、無駄な金を使っているか…について。

デジタル放送は、ノイズやゴーストを除去した美しい画面(標準画質放送でも)が大きな利点である。しかし、一定の強度の受信状態を得られなければ、パタッと写らなくなる。「キレイか写らないかの二択」となるのだ。
アナログ放送のように、「状態は悪いけどなんとか写る」ということがない。
原因は、地上デジタル放送に用いられるUHF帯域の電波の特徴にある。
UHF電波は帯域幅が大きい代わりに直進性が強いので、障害物の影響を受けやすいためだ。
これは、電波の届きにくい中山間地や高層建築の間の住宅、電波障害の多い地域にとっては不利な材料である。
これまであんまりキレイじゃないけど見れてたテレビが、デジタル化されたら全然見れなくなる」事態が生じるのだ。

対策としては、利得の多いアンテナに替える・強力なブースターと交換するという手があるが、条件によってはこうした手段でも写らない可能性もある。
地デジ移行後に「テレビを見れなくなる地域」は現在よりも増えると目されている。

まあこの件に関しては国も流石に金を出すとはいうものの、判断や運用に不透明な点が多い。

地上デジタル難視聴地域に補助 総務省が概算要求へ

 アナログ方式の地上波テレビをデジタル方式(地デジ)に移行する際、山間部の難視聴地域で共同受信施設の改修などに多額の費用がかかることから、総務省は約50万世帯を対象に経費の一部を補助する制度を新設し、来年度予算の概算要求に盛り込むことを決めた。受信施設を隣の山などに移す必要がある約20万世帯については改修費がかかりすぎるとして、衛星放送などによる代替手段を模索する。

 この「辺地共聴施設整備事業」は、アナログ放送が停波する2011年7月24日に間に合わせるため、07〜10年度に実施する。07年度の概算要求では約12億円を一般財源から求め、放送局や携帯電話会社などが納める電波利用料も利用する方針だ。4年間で総額約100億円規模となる見込み。

 共聴施設を利用する世帯は全国で約121万世帯にのぼる。全国に1万5000あるテレビ中継局がデジタル化に伴い1万に減ることなどから、地デジを見られる世帯は民放では現行の98%程度に下がる見通しだ。

 山間部の難視聴地域では、受信点を変えないと30万世帯前後で視聴できなくなる恐れがある。岩手や長野、兵庫、京都、和歌山、愛媛、高知など影響が大きいと見られる自治体は、対策や財政支援を求める要望を総務省に寄せていた。

 新規の補助事業では、(1)50世帯以下の小規模共聴施設で、移設しないで改修する場合は費用の3分の1(2)受信点を数百メートルほど移す場合は半額を補助する。それぞれ1世帯あたりの負担が10万円近いと見込まれる計約50万世帯が対象となる。改修費が1世帯あたり約3万円ですむ中・大規模の共聴組合には補助しない。

 一方、受信点を1キロ以上移す必要があり1世帯の改修費が30万円を上回りそうな約20万世帯については、通信衛星や放送衛星など別の手段で番組を送ることを検討し、年内にも方針を決める。


「通信衛星や放送衛星など別の手段で番組を送る」の内容が、衛星による地デジ放送の再送信となるのかどうかこのニュースだけだと判然としないが、一見して思うのは、「池田信夫 blog" 地上デジタル放送の行動経済学"」のエントリーでも指摘されている通り、

「20万世帯にCSで番組を提供するというのなら、改修必要となる50万世帯も、共同受信施設でなくてCSで配信すれば、改修費も要らないし問題解決でね?」

ということだ。
この件に関して池田氏は

これは要するに、地方民放の電波利権を守るために政府が補助金を投入するのである。


と両断している。

なお、再送信の詳細については、WikiPediaの項目内に記述があった。

一部地域での受信方法

一部の中継局で、アナログ放送停波までに放送が間に合わない可能性があるため、そうした地域に限って、衛星や光IP放送による地上デジタル放送の再送信を行う予定である。スカパー!と通信衛星を保有するJSATが衛星での再送信を、送信所や中継局を多く抱える北海道に於いて実証実験を行った後、2007年に開始する。また、光ファイバーを利用したIP放送では2006年までに標準画質(SDTV)、2008年にはデジタル放送と同じ高精細な映像で再送信する予定である。


実際に多くの人が突っ込んでいるのは、「そもそも山間地の難視聴地域はたいてい光の来ていないブロードバンド難民なのに、光経由のIP放送ってどーすんだよ」ということだ。
するとCS一択になるのだろうが…現在、(特に雪国や山間地で)CSをご利用の方は実感なさった事もあるだろうと思うが、CSは雨や雪などの天候の影響をものすごく受けやすい。
BSでも雨や雪、強風の日にはいわゆる「メダカノイズ」が発生し、ひどいときには音声も聞こえなくなってしまうことがあるが、体感する限りCSの影響の受けやすさはそれに数倍する。
中山間地はそうした雨風や雪が比較的多い地域である。
そこでCSのみの運用というのはどうかなーと思う。
例えば、台風や大雪などの非常時。そういう時こそ、ニュースや天気予報をTVで確認したいものだが、肝心のTVは写らなくてアテにならずラジオだけ…というような光景にならなければいいのだが。

また、財源の問題も気にかかるところだ。またぞろ電波利用料を充てるといっている。
政府はすでに、地上デジタル化に向けてのアナアナ変換のための莫大な経費の財源を、電波使用量に頼っている

アナアナ変換

地上デジタルテレビジョン放送は、現在地上アナログテレビジョン放送にも使われているUHF帯の一部を用いての放送となる。デジタル放送開始のために使用できる送信周波数帯(送信チャンネル)を確保するため、一部の地域ではデジタル放送と同一チャンネルとなる既存のUHFアナログ中継放送局の送信チャンネル(周波数)を変更する事となった。このための費用のうち、キー局などの送信設備の対策に係る費用を除く各家庭用の受信設備の対策に係るもの、及び地方局の送信設備の対策に係るものは国が電波利用料を財源に支出し、各戸毎に変更工事を行っている。この様なアナログ放送チャンネルの変更(移動)を、一般にアナアナ変換(アナログ-アナログ変換を短縮したもの、通称アナ変)と呼んでいる。
WikiPediaの項目より)


電波利用料は、放送局や携帯電話会社・無線免許所有者が国に対して支払うものだが、実際には携帯電話利用者の毎月の料金に含まれている(1年に500円/1台)。
今以上地デジ関係の経費に当て込まれた場合、携帯電話料金の値上げ、また一度は撤回された「家庭内無線LAN利用者への請求」が現実化される恐れもあるのではないだろうか。

1つ目の話は「山間部の難視聴地域」、つまり主にイナカの問題だった。
しかし、UHF帯域の特性により難視聴となる可能性があるのはビルの谷間=都会の住人も同じことだ。
そして都会の場合は、マンションなどの集合住宅が多いわけだが、ここにも大きな問題が降りかかっている。
特に悲鳴をあげているのが管理組合だ。

マンション 管理組合 NPO集住センターによる『地上デジタル放送問題』」には、その問題が分かりやすく記してある。

想定される管理組合の負担とは?

1.マンション内のアンテナ、ブースター等のデジタル仕様への変更費用を負担する
マンション建設後およそ10年以上経過した、テレビのデジタル放送化が決定する前に分譲されたマンションでは、マンション内のアンテナやブースター等は、アナログ放送だけに対応しています。そのため、これらをデジタル放送に対応できるよう、仕様を変更するための工事(棟あたり数10万円から100万円を超える程度か)が必要です。

2.近隣住民に対するデジタル対応の新規の電波障害対策施設を設置する費用を負担する
マンションの建設時に売主が電波障害対策施設を設置し、その維持管理を管理組合が引き継いでいるところでは、近隣住民との協定上は、地上デジタル放送開始以降、管理組合に新規にデジタル対応の電波障害対策施設を設置し、その費用を負担する義務が生ずるものと解されます(新規の障害対策として、ケーブルテレビ等を活用することは可能です。)
デジタル化に伴い、電波障害の範囲は大幅に縮小ないし解消されるといわれますが、一部に電波障害が残る場合は、管理組合に新規対策施設の設置義務が課せられるだけでなく、どの範囲に電波障害が残るか、あるいは完全に解消されるかという調査のための費用(20〜30万円程度か)も負担する必要が生じそうです。

3.アナログ対応の既存の電波障害対策施設の撤去費用等を負担する
2011年にアナログ放送が終了した後に既存の電波障害対策施設を撤去する場合は、その費用も管理組合の負担になるものと考えられます。アンテナやケーブルをそのままにしておくこともできそうですが、その場合は、毎年電力会社に支払っている「電柱共架料」(年間数万円程度か)を払い続けるほか、近隣住民が家の建て替え等で敷地内に設置されている小さな支柱が障害となったときは、従来と同様その撤去費用の負担が生じます


しかし総務省は、「当事者同士で話し合ってちょ」と丸投げ、多くの人が被るこの問題について補助を与える気は全くなく、無責任な対応を示すだけである。

Q:
建造物等による受信障害対策設備でテレビ放送を受信していますが、地上デジタルテレビ放送を再送信できるように改修するための費用は、原因者に対して請求できますか?


A:
 まずは、共同受信設備等の所有者(管理者を含む。)や受信障害の原因となっている建造物等の所有者(管理者を含む。)にお問い合わせください。
一般的には過去の原因者に対し、地上デジタルテレビ放送の送信についてまでも補償を求めることは難しいと思われますが、その補償設備に関する原因者(所有者・管理者を含む。)と設備利用者との間で交わされた協定書等がある場合は、それに基づいて双方で協議されることが適当だと思われます。
「地上デジタル放送パーフェクトガイド」→「Q&Aナビ」


多くのマンションやビルは、TV放送に関してアナログ仕様の想定しかされていない。
となると、この総務省の回答を見る限り、原則的には「TV持ってる人が自分でなんとかしなさい」ということになるので、マンション住人以外も負担をかぶる可能性が高くなる

また、このQ&Aナビのほかの質問でも、「各家庭への補助は一切出しません、集合住宅の改修は自分でバンバンしなさい」と冷たい回答である。


Q:
地上デジタルテレビ放送開始による受信設備の変更費用を、国費等で補償してくれますか?
地上アナログテレビ放送が停止するのであれば、費用を補償すべきではないでしょうか?

A:
そういう考えはありません。
ただし 、視聴者に迷惑をおかけしないように地上アナログテレビ放送と地上デジタルテレビ放送は一定期間、並行して放送(サイマル放送)します。
この期間内に地上デジタル放送対応テレビに買い換えていただいたり、地上デジタルテレビ放送用チューナを購入していただくことになります。
高層集合住宅等で、VHF帯のテレビ放送電波の直接飛込みによるテレビ映像の2重3重映り(ゴースト障害)の改善を図るためUHF帯の周波数(チャンネル)に変換して伝送している設備について、また、当該地上デジタルテレビ放送を行う放送局の放送周波数(チャンネル) と同一または隣接関係で混信を生ずる場合についても管理組合等で改修工事を実施していただくことになります。


「そういう考えはありません」…
なんかもうちょっと言い方があるだろと思うんだが…
posted by 大道寺零(管理人) at 03:16 | Comment(3) | TrackBack(1) | 地デジに疑問符
この記事へのコメント
我が家は難視聴地域です。
近隣にとある施設があるからなのですが、そのためしょぼいケーブルテレビが入っています。
デジタル化するとどう変わるのかケーブルテレビサイトを見てもよくわからないのですよ。

というかいっそテレビを見ない生活という選択もあるのかも、でもオタクには辛い選択だなぁと思ったりしています。

受信者だけではなく、発信者もデジタル化でどう変わるか、よくわかっていないんじゃないかなぁとも思います。
Posted by ぽち at 2006年12月22日 10:34
我が家も難視聴地域っぽい(せっかく買ったちょいテレで何も映りませんでした、とほほ)のでデジタル化を躊躇ってます。
初めはコピワンの規制が無くなったらデジタルチューナーの入ったレコーダーを買おうとタイミングを見計らっていたのですが、記録メディアの容量を考えるとデジタルで録画しても恩恵に与れないんですよね。
このままだとケーブルテレビに加入する方が一番メリットがありそうです。
富士山におっきなアンテナ建ててくれないかしら。
Posted by クマ at 2006年12月23日 02:26
>>ぽちさん

元来ケーブルテレビは難視聴解消のために実施された媒体ですので、現在は通常のTV放送と同じ内容のものが配信されて(再送信)ますよね。
デジタル放送再送信のために、ケーブルテレビのデジタル化が必要になってますが、3つの方式いずれを取るかで視聴者に必要な装置やコストが変わってくるようです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93#.E3.82.B1.E3.83.BC.E3.83.96.E3.83.AB.E3.83.86.E3.83.AC.E3.83.93.E3.81.AE.E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.8C.96

>受信者だけではなく、発信者もデジタル化でどう変わるか、よくわかっていないんじゃないかなぁとも思います。

間違いなく「メンドクセ」とは思ってるんじゃないでしょうか。
特に地方局の場合、出費も膨大ですし、HD番組を作るためには新たな機材も必要となるようですしねえ。

>というかいっそテレビを見ない生活という選択もあるのかも、でもオタクには辛い選択だなぁと思ったりしています。

まったく同感です。
ニュースは情報系はネットで十分とは思うものの、アニメや特撮は変わらずテレビメインでしょうし、語学や料理などの教養系番組も見たいときありますしねえ。
また、テレビによる「ナイスなもの・人との偶然の出会い」はやはり魅力的なものです。

>>クマさん

>初めはコピワンの規制が無くなったらデジタルチューナーの入ったレコーダーを買おうとタイミングを見計らっていたのですが、記録メディアの容量を考えるとデジタルで録画しても恩恵に与れないんですよね。

コピー制御はほんとどうにかしてほしいのですが、既に購入した人たちのことも考えるとどうにもならないのでしょう…悲しいです。
大体B-CASカードのせいでチューナー類の値段は高くなってますし、また同カードが海外ベンダーに供給されないせいで価格競争が始まらないのも打撃ポイントですね。

ハードディスクにHDクオリティで録画できるデッキがなければ、「放送時間に合わせてTVの前に座り、ありがたく押し戴く」以外には本来のクオリティで見ることが出来ないようです。
それって力道山の頃のテレビに逆戻りしてるような気がするのは私だけでしょうか…
Posted by 大道寺零 at 2006年12月24日 07:35
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