2007年01月16日

謎の教団CM日記

年明け以降、やたらと目にする「パワー・フォー・リビング」のCM。
久保田早紀・ヒルマン監督・ジャネットリン・m-floの人の4パターンがあるようだ。
各バージョンに一回だけ「神を信じた」というフレーズが入るだけで、どういう宗教なのかという情報はまったく得られないのが非常に気味の悪いところ。
まあ「神」というのだから間違いなく仏教系じゃないということだけは分かるが、「神」というだけではキリストなのかアフラ・マヅダーなのか、はたまた又吉イエスなのか全然見当もつかない昨今、見る度に胡散臭さが募るのみ。
このCMで得られる情報は
・冊子「パワー・フォーリビング」が無料でもらえる
・申し込むためのURL
・「アーサー・S・デモス財団」という団体でやってるCMらしい
という3点だけ
なのだから。
(まあんなこと言い出したら創価学会とか聖教新聞のCMも情報量が極端に少ないけど、こっちはまだ知名度あるしな〜)

で、その正体はというと、

「キリスト教福音派系の教えを広めるために活動している団体」

らしい。
そんならそーと「キリスト教」って言えばいいのに。そのせいで不必要に怪しい印象を振りまきまくっているように見えるのだが…

ナゾの団体、10億円CM攻勢…全国紙の大半“制覇(ZAKZAK)

 無宗教者のために83年に書かれた「パワー・フォー・リビング」英語版は、134ページの冊子に例え話を織り交ぜ、「神はあなたを愛している」「人類は罪深い」「何人たりとも神を受け入れねばならない」などと訴える。聖書を読むよう勧め、妊娠中絶や喫煙、同性愛には反対の姿勢だ。

 01年末からはドイツでも英国人歌手、クリフ・リチャードさんらを起用して同様のキャンペーンが行われたが、キリスト教右派的な教えや秘密主義、新興宗教とのかかわりなどで批判が高まり、1カ月で放送禁止となった。

 同財団の創始者は、ダイレクトメールによる生命保険で財をなしたアーサーS・デモス氏。1955年に設立し、79年に同氏が亡くなると妻のナンシー氏が代表を引き継いだ。毎年のように全米で慈善団体の上位に名を連ね、資産額は600億円とも。テレビ宣教師やキリスト教系組織、同性婚や妊娠中絶に反対する法律事務所などに多額の寄付を行っている。

 米国の宗教事情に詳しいある教授は、キリスト教福音派の中でも、中絶反対や進化論否定などを訴える右派と関係が深い財団。米国では福音派の保守的な価値観が盛り返し、ブッシュ大統領の当選にも貢献した」と説明。さらに同財団について「本を頼んだ後にしつこく勧誘されるようなケースは聞いていないが、情報が遮断されている点はカルト的」とみる。


一口に「福音派」と言っても様々なニュアンスがあるようだ。
WikiPediaの「福音派」項目
しかし、キリスト教右派との関わりが強いという情報が事実であるならば、定義のうち

「キリスト教根本主義者が自ら好む自称」

が最も近いのかもしれない。
(中絶反対、同性愛否定などもファンダメンタリズムやキリスト教右派と共通している)

キリスト教の派といっても、カトリックとプロテスタントの二分類くらいしか日本人には馴染みがないかもしれない。
知ってる人は極常識なのだが、一応WikiPediaから引用してみる。

ファンダメンタリズム=キリスト教根本主義

聖書を文字通り一字一句が真実で、誤謬・矛盾は決してないものと考える。字義的解釈が明らかに不可能な際は必要に応じて「柔軟な」解釈を行うが、可能な限り例え話や抽象的な表現だとは考えない。創世記の物語もそのまま、世界の歴史そのものと捉えている。そのため、創世記の記述と直接一致しない科学、特に進化論を受け入れる余地は全くない。アメリカでは、南部を中心に公教育にこうした傾向が反映した時期があり、進化論裁判と呼ばれる一連の裁判で、創造論を学校教育にもちこむ是非が問われた。合衆国州政府では進化論を歴史教科書から削除するところも出て来ている。

世俗的には、妊娠中絶禁止や同性愛禁止など「アメリカ的生活様式の復活」を主張し、共和党の重要な支持母体として台頭しつつある。

この立場の教会は自ら「福音派」(Evangelicals)と自称する。但し、全ての福音派がファンダメンタリストではなく、この事に関しては福音派内部にも混同される事を嫌う批判的意見がある。日本における福音派の連合体である日本福音同盟(JEA)に所属する教団や教会は総じて保守的な「福音主義」に立つとはいえるものの、その信仰をすべて根本主義であると言い切る事は出来ない。但し、福音派は根本主義を包含しているのは事実で、福音派は根本主義ではないという事もまた妥当ではない。


キリスト教右派

キリスト教右派は、キリスト教内の政治的および宗教的右派の勢力である。
より一般化した言い方としては宗教右派と呼ばれ、右翼的な見解を持つ政治、宗教運動や団体に対して用いられる名称、定義である。このような運動や団体は様々な国で見られるが、キリスト教右派の名称はアメリカ合衆国国内の運動や団体を指している事が多い。キリスト教右派団体は、名前が示すとおり、主にキリスト教徒で構成されており、特にキリスト教原理主義者者が多い。また、プロテスタントが多く、カトリックが少ない。著名な右派が「カトリック教会は邪教である」と言って憚らない程である[要出典]。カトリックの右派の殆んどは「教皇空位主義者」(Sedevacantist)である[要出典]。一部の団体は、自分たちの政治的信条は全てのキリスト教徒を代表しているのだとか、あるいは全てのキリスト教徒は、自分たちのような政治的信条を持つべきだと主張している。しかし、実際にはアメリカのキリスト教徒の政治的信条は非常に様々である。

キリスト教右派の団体や構成員には、合衆国共和党の主義や政策に賛成、支持するものが多く、時には(逆に)共和党の主義や政策に影響を与える事もある。例えば、ジョージ・W・ブッシュ大統領の選挙戦では、キリスト教右派の共和党支持が、無視できない役割を果たしたものと考えられている。

キリスト教右派が、主に関心を寄せているとみなされている問題、及びそれに対する彼らの姿勢を以下にいくつか掲載する。

* 中絶の禁止、又は厳しい規制
* 特定のバイオテクノロジー(の使用)の禁止:生命倫理(例:胚性幹細胞を使った研究)
* 同性愛者の権利向上活動への反対と、彼らの言うところの“伝統的な家庭の価値、価値観”の標榜と支持
* 同性愛者、又は異性愛者による、“自然に反する、異常な性行為”(通常結婚していない者同士でアナル・オーラルセックスする事を指す。時には結婚している者同士のこうした行為をも指す)への反対
* 公共の場でのキリスト教信仰(的な行為)、例えば学校でお祈りする事などへの支持
* 宗教的な慈善事業や学校への、政府による財政的支援の制限の解除や、これに類似する問題
* 合衆国裁判所による、国家と宗教の分離を、昔より進める決定に対する反対
* 彼らが下品、猥褻であるとする書籍、音楽、テレビ番組、映画など(特にポルノに関係するもの)の(発売)禁止

奴隷制廃止、市民権運動に賛成だった事実から彼らが正確には右翼ではないことは自明である。


「進化論否定」のあたりは、知らなかった人が聞くと驚くポイントのナンバーワンですな。
「なんでブッシュみたいなバカ猿を指示するアメリカ国民が多くいるのか」と常々不思議に思う方がいると思うのだけど、まさにこういう方々なんですな。

[注:以上二点は、あくまで、アーサー・S・デモス財団と関わりが深いといわれている2派についての項目であり、「パワー・フォー・リビング」の教義自体を定義するものではありません。]

まあとりあえず、例の冊子にどのような戯言が書いてあるのか見てみたいところではあるのだけど、宗教団体に個人情報を渡すのも冗談じゃないってことで…
誰か実際に取り寄せてレポート書いてくれないかなー。
ものみの塔みたいに配り歩いてくれればネタにするには便利なんだが、あれはあれでウザいからなぁ…

CMでURLを示しているサイトにも行ってみたが、CMと同内容(4人のコメント)と、冊子申し込みフォームしかないという、見事なまでのシンプルさ。
そして、財団の本家や日本支部のオフラインでの住所や連絡先も全く書かれていない。

ZAKZAKの同記事によれば、

 99年にタイム誌記者が財団本部に電話取材すると、「われわれはカルトではないが、自分たちの実態を話すことはできない」と回答され、「当財団には(自分たちを)PRすることを望まなくなった経緯がある」とのFAXが送られてきた。財団関係者には、財団を称賛する話を外部ですることすら禁じるなど、厳しい秘密保持が求められるという。


お前らは湯殿山神社か;
(湯殿山神社=山形県にある修験霊場・出羽三山の一つ。
 古来より、湯殿山に関する事は口外してはならないという固い戒めがある。
 現代においても、ご神体周辺は撮影禁止とされる(パンフレットにも掲載せず)など、その伝統はある程度保たれている。)


 日本でも秘密主義は貫かれる。

 財団の住所とされる東京都港区南青山のビルの一室を訪ねても、呼び鈴に応答はない。ビルの関係者は「複数の団体の連絡場所として使われている部屋。誰もいないことが多い」と話す。

 本の発送を頼むホームページに財団の連絡先はない。同様にコールセンターでもオペレーターは財団や本の「情報を持ち合わせていない」うえ、センターの所在地も「お答えできない」。マスコミ向けの電話窓口でも広告会社社員が「資料をお送りします」と応対するのみで、財団とじかの接触はかなわなかった。


なお、各キー局では、
・CM放映:日テレ・テレ朝・テレ東
・CM放映せず:フジ・TBS
というように対応が分かれているようだ。

<追記>
山形のフジ系局「さくらんぼテレビ」では、同CMの放映を行っている模様。フジも放映許可に回ったのだろうか?

(ENGさんのコメントにて指摘あり。また私も1/15放映の「鬼平犯科帳」再放送内にて確認済みです。)
posted by 大道寺零(管理人) at 01:26 | Comment(5) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
私も激しく気になっていました。なのにHPに行っても何もわからないし、謎は深まるばかり…

TVCMもすごいけど、先週買った「週刊新潮」「週刊文春」にはここの広告が2ページも載っているので(見開きではなく、1ページの広告を2箇所に載せているパターン)むちゃくちゃお金のある団体なのだけは確かですね。

mixiの「新宗教・新興宗教ウォッチング」コミュでは申し込んだ勇者がいるようなので、ヘタレな私はレポ待ちです。

“キリスト版創価学会”という説が今のところ有力みたいですが。
Posted by 文月奈緒子 at 2007年01月16日 11:24
あれ?CXで放送してるねぇ。
Posted by ENG at 2007年01月16日 17:19
>文月さん

新聞折込の広告もめちゃめちゃいい紙っぽかった…
ほんとにどれほど金あるんだろ?信者からの寄付はいかほどか?とか疑問はつきません。

>ウオッチングコミュ

なかなか面白い&役に立つコミュですね。早速入ってみました。どの団体が何系だとか、勧誘の手口とか体験談とか、すごく参考になりますし、スタンスも同調できるので楽しめます。
色々読んでいて、仕事仲間に呼び出されたら顕正会の勧誘だった時のことを思い出しました…
あとで聞いたらインストラクター全員同じように勧誘されたらしい。気が付けばクビになってましたけどねその人。

>“キリスト版創価学会”という説

なるほど。ネオコン的な面でアメリカで政治力を持っているような部分は通じるところがあるかもしれません。
CMで系統を明らかにせずイメージだけを打ち出すところも似ているかも??

>>ENGさん

>あれ?CXで放送してるねぇ。

あっほんとだ。
私も、この記事書いたあとに昨日録画した鬼平の再放送見てて「あ、フジでも流してる」と気付きました。追記しておきます。
Posted by 大道寺零 at 2007年01月16日 17:39
私も気になって仕方ありませんでした、このコマーシャル!!詳しいレポートありがとうございます。

宗教の問題って難しいですよね。私の場合だけど、自分が本当に困窮した状況になって初めて「どの宗教を受け入れるか?」って悩むような気がします。今の所は特に宗教を選んだりはしていなく、普通に実家の仏教(宗派は知らない)に従っている程度。

私、若い頃、悪い遊びをしてたんですね。その時に「今、存在している自分」「それを高い次元で見守る自分」「さらに私を包む大きな意識」という存在を感じたのです。要するにトリップした時の感覚なんですが。何を言いたいかといえば「神様は自分自身の心の中に存在する」って結論に達したのです。だから、それぞれの宗教の良い点だけ取り入れて、生きる力にすればいいのじゃないかな〜。

↑そういう意見は有りつつも、巨大な宗教団体に嫌悪感を感じるのは何故でしょう?芸能人がたくさん所属している団体がありますよね。あれ、知人が音楽でメジャーデビューする時に勧誘されたんですよ。売り出してもらえるらしいです。その時、私の意見はこうでした。「音楽の世界で食べて行くのはサラリーマンのようにはいかないから、一つの手段として、例えば会社に勤める感覚で入信するなら効果はあるかも。だけど、それで良くない方に人生が進んでしまう可能性もあるのだから、自分の責任で入信しないと駄目だよ」でした。他の友達も賛否両論でした。彼とはもう付き合いがありませんが、現在、アニメソングの歌手&ライターとして売れっ子です(ささきいさおに新曲を提供したりしています)。果たして入信したのか?しないのか?調査してみようと思います。パワーフォーリビングだったら驚くな〜。
Posted by 力音 at 2007年01月17日 10:34
>>力音さん

>宗教

私は人並み以上に宗教や神話についての知識はある方だと思いますが、あくまで芸術や文学・文化を理解する上の基礎知識であったり、民族・集団の習慣や行動原理のバックボーンを知るのが面白い(神話などはそれ自体が面白い)というスタンスで接しているので、今後も積極的に関わったり入信したりすることはないと思います。
まあ一応、相方の家が氏子となってる神社やお寺さんへは関わったり、また葬式や法事のお世話をしてもらうことがありますが、神社と同様「地域社会の付き合い」のレベルですね。日本の葬式宗教が本来の仏教と大きく離れたところにきてしまってるのも分かってますし…
ですが、遺族の心を慰めるための葬式仏教や仏壇にも大いに意味があるものだと最近は思ってます(ボッタクリの面があるのはアレですが…)。

>要するにトリップした時の感覚なんですが。

宗教儀式の多くは、多かれ少なかれトリップ感を伴うものと言われていますよね(それの極端なものが薬物を用いたり、過酷な断食や荒行だと思います)。とてもよくわかる感覚です。
仏教でいえば、声明なんか聞いてるとかなりキます。お香と火をガンガン焚かれてる中でこれ聞いたらたまらんでしょうな。
先日の祖母の葬儀の、「ホーミー般若心経」も、相当効きました…

>それぞれの宗教の良い点だけ取り入れて、生きる力にすればいいのじゃないかな〜。

そうですね。
たとえば仏教説話や聖書・コーランなどには、それなりに普遍性があって人生に迷った時に効く名言がちりばめられているので、その時自分にぐっと来る言葉を拾って自分を力づけるようなやり方は大いにアリだと思います。

>↑そういう意見は有りつつも、巨大な宗教団体に嫌悪感を感じるのは何故でしょう?

やはり、「布教活動」の強引さや、団体によってはそれが非常に卑劣であったり、献金や奉仕労働を要請する生臭さが大きいのではないでしょうか。
また、「○○を信じれば良くなれる」という裏で、「信じないと人生が悪くなる、病気になる」「信心が足りないから死んだ」などと脅迫したり、明らかに不合理な「○○してはならない」などのタブーが多いこともあると思います。
例えば記事で書いたキリスト教右派の一部は、
「中絶は禁止すべき」という教義に基づいて産婦人科医を殺害したり、
「同性愛や姦通はいかん」ということで、同性愛者や夫婦以外の性交を行った人間を死刑にすべきという提案を大真面目に圧力行動したりしています。

私の叔母の嫁ぎ先が、とある宗教(仏教系)を信仰している家でした。彼女は納得ずくで嫁ぎ、自分自身も信仰活動を行っていますが、ケジメを持っていてくれるので、母や私たちに入信を勧めたりはしません。私が苦しんでいたり悩んでいる時に何度か助言をしてくれましたが、それも宗教色は交えず、しかし彼女自身の言葉で、説得力のあることを言ってくれました。
こういうバランス感覚のある人ばかりならいいんですけどね…
しかしその一方、叔母の子供たち(つまり私にとっては従兄妹)は小さい頃から入信し、兄弟3人のうち2人は同じ宗教に入っている人と結婚しました。
新宗教に入っているということは、どうしても出会いを狭めたり、交際や結婚の障害になりがちです。
(実際私は、創価とかエホバの家の人と結婚するとなったら躊躇するでしょう。)それを考えると、「自分が納得してればいい」とも必ず言えないのかなあと思ったり。

>芸能人がたくさん所属している団体がありますよね。

具体的には創価がそうですね。
「創価 芸能人」で検索すると、真偽の程はどれほどかは別にして一覧なんかが出てきます。実際、仕事の面で有利だと言うのはあるみたいですね。
作家や漫画家も意外に多く、「なんでこの人は大して人気もないし感覚も古いのに、いつまでたっても連載持ってられるんだろう」と不思議がられている某少女漫画家がいるらしいのですが、どうやらその真相は、「この人が書いていれば、創価の人が本を買ってくれるから」なんだとか。
やはり人数が多いというのはバカにできないことみたいなんですねえ。

力音さんの助言はかなり妥当じゃないかと思いました。
Posted by 大道寺零 at 2007年01月17日 16:44
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