2007年02月09日

消えるブラウン管日記

ブラウン管テレビ3年後ゼロに(nikkansports.com)

 電子情報技術産業協会は7日、国内でのカラーテレビの販売台数に占める薄型テレビの割合が、2010年には99・9%になるとの需要予測をまとめた。3年後には「ブラウン管テレビの需要はなくなる」とみている。

 世界全体の需要予測でも、薄型テレビの割合は06年の27・4%から11年には64・5%に上昇する見通しだ。

 薄型テレビの広がりを背景に、カラーテレビの販売台数は世界的に増加が見込まれ、世界全体で06年の約1億7070万台から11年には約2億台に拡大すると予想。このうち液晶(10インチ以上)が1億617万台と半分以上を占め、プラズマは06年の約2・3倍の2277万台になる見通し。

 国内では、11年のアナログ放送終了を前に買い替えが進み、薄型テレビは09年に1000万台を突破、11年には1139万台となる見通し。11年の内訳は、液晶が997万台、プラズマは142万台といずれも06年の約1・8倍に増えるとみている。


3年後には薄型需要が99.9%。
3年後にはブラウン管需要がなくなる。
「ずいぶん業界と家電販売店にとって希望的な観測ですな」と笑ってしまいたくなるが、皆さんはどうだろうか。

私は、安くて映像の美しいブラウン管テレビにはなくなってほしくないと思う派だ。

薄型テレビに比べてブラウン管が劣る点はただ二つしかない。

●大型化が困難
●奥行きが広く、移動時に重い

(あえて加えるならば、正しいプロセスで廃棄しないとブラウン管内から有害物質が出てくるため、環境負荷が高く、廃棄時のコストがかかることくらいか)

ブラウン管テレビの生産縮小・打ち切りはすでに進んでいる(テレビだけでなく、ブラウン管ガラスを生産する会社も次々と手を引いている)。
何のことはない、メーカーが「安いブラウン管は儲からないからもう作らない」、そして「利益率の高い薄型テレビを売りたい」がために、こんな一方的な観測を流し、それをトレンドと消費者に錯覚させようとしているだけなのだが、「(国産の)ブラウン管テレビが買えなくなる」というのは困ったことに事実なのだ。


以前話した「キッチンの14型テレビ」はまだ買い換えていない(なんか音声だけのラジオ状態にもう完全に慣れてしまった…)。
現在居間で使っている21型フラットブラウン管のテレビは幸いにもどこも支障なく現役(ソニー製品的に不良品らしく、タイマーがついていなかったようだ)なのだが、もし壊れたとき、もしくは地デジがらみで買い替えを余儀なくされたら何を選ぼうか…と考えてみる。
脇にはサイドボードやオーディオ棚などがあり、テレビ台の大きさの問題もあるので、これ以上のサイズは置けない。
6畳の和室なので、そのことを考えても、せいぜい25型くらい。それより大きいものはスペーシング的にも必要がない。
「地デジを見るなら大画面買わなきゃ!」といくら電器屋が煽ろうとも、置きようがないしかえって目が疲れそうなのでいらないのだ。

だから、「ブラウン管は40型以上の大型化が難しい」といわれても、そもそも大型テレビを必要としないわけだから何の問題もない。
「ブラウン管は重い」。
まあ確かにそうだ。
しかしうちは持ち家、相当無体な人事異動がなければ通勤圏外に引っ越すこともまずない状況だし、何の支障もない。
「薄さ」「軽さ」に特にアドバンテージを求めないわが夫婦の場合、お財布にやさしいブラウン管テレビこそが最適解ということになる。
しかも薄型テレビに比べて映像が美しい。
これ以上の答えはないのに、近年中にブラウン管は強制的に選択肢から外される。

そうでなくとも、2011年には強制的にチューナーや受信のためのアイテムの購入を迫られるというのに、テレビの相場が軒並み上がってしまう。ダブルの負担である。ここまで来るとなんか陰謀めいたものを感じずにはいられない。

現在入手できる薄型テレビといえば、液晶とプラズマだが、プラズマテレビはその性質上、ブラウン管とは逆に「(35型↓の)小型化が難しい」という宿命がある。(例えばパナソニック「VIERA」も、37V以上はプラズマ、それ以下のサイズは液晶と、サイズによって採用技術を違えている)
だから、もし買い換えるのであれば、薄型なら液晶一択ということになるのだろう。
でもなあ……

家電量販店などでテレビコーナーを見て、「液晶テレビってなんか画面が綺麗じゃない」「にじんでる」「色が変」と感じたことはないだろうか。
各メーカーも画質向上に励んではいるが、液晶テレビの映像は、まだまだブラウン管のそれには及ばない。
それでいて、値段はブラウン管の5倍程度はする。

どうしてブラウン管テレビを買いたいのにそれが一方的に打ち切られ、「高くて画像の汚いテレビ」を買わされることになるのか。これに納得しろというほうが無理ではないだろうか。

「映像の美しさ」について、主要な要素についてブラウン管・液晶・プラズマの三種を比較してみよう。


<コントラスト比率>
最も明るい部分と暗い部分の比のこと。
「1000:1」というように、数字の比で表される。
この差が大きければ大きいほど、「黒は真っ黒に、白は真っ白に」色がキッパリ見え、中間色も深みや温かみを持って美しく見える。

ブラウン管:数十万超〜測定限界超:1
プラズマ:〜3000程度:1
液晶:1000程度:1


液晶テレビの分かりやすい弱点の一つ。
同じホームページを見ても、CRTでは色がくっきりときつめに見え、液晶では薄めの色に見えるのはこれが理由である。
なお、プラズマは数値的には液晶と大差ないように見えるが、暗所でのコントラストは比べ物にならないほどはっきりしているらしい。(量販店の強い照明下では黒が紫っぽく見えることもあるが、家庭の照明では問題ないレベルだとか。)


<応答速度>
画面の色が「黒→白→黒」と変化する時にかかる時間。
これが遅いと、動きが早い場面が正しい動きで再現されず、残像を感じたり、動きがカクカクしてしまう。速ければそれだけなめらかな動きが見れる。
動きの早いアニメやスポーツ放送(モータースポーツなど)、アクション系のゲームをプレイする際に大きく関わってくる。

ブラウン管:速い
プラズマ:速い
液晶:遅い


液晶の機能的な最たる短所といえるだろう。なお、WikiPedia「薄型テレビ」の項目によれば

液晶は原理上(ホールド型)、応答速度を極限まで上げられた場合でも残像感を無くすことは出来ない。この欠点を補うため「倍速表示」「黒挿入」「バックライトブリンク」等の技術が用いられているが、採用は極一部の機種に限られている。


らしい。


<視野角>

パソコンや携帯電話などの液晶モニタは、正面から見れば問題なく見えるが、ある程度斜め・上下から覗くと、色が本来のものとは違って見えたり、反転に近い映像になり、角度がきつくなれば、何が表示されているのかすら分からなくなってしまう…ということは体験がおありだろう。
「視野角」とは、画面の正面(正しく見えて当たり前の位置)から視点を上下左右に移動したときに、色が変化せずに画面が見える範囲を角度で表したものである。

ブラウン管:広い
プラズマ:広い
液晶:狭い


これも店頭で容易に確認できる液晶の泣き所。
実際には、各社とも、液晶画面を特殊なフィルムで覆ったり、さまざまな技術を加えて改善の努力をしている。しかし依然としてプラズマやブラウン管の優位にはかなわないし、視野角改善加工がすべての価格帯の液晶テレビに施されているわけではない(現状では高価格帯モデルに優先的に採用されている)。

また、カタログにある視野角数値は、「コントラスト値5:1・あるいは10:1が確保できる角度」だそうで。
このコントラストの値は実際に鑑賞に堪える数値ではない(実際には見れたものではない)ので、注意が必要とのこと。


<反射性>

画面の反対側にあるものが写りこむと、当然画面は見づらくなる。

液晶:低い(ただし表面光沢処理をしているものは除く)
ブラウン管:やや高い
プラズマ:高い


プラズマは写りこみが起こりやすく、また外からの光・室内照明によって色的にも影響を受けやすいので、暗所での鑑賞を推奨されている。

また、コスト的な面で液晶とプラズマを比較すると、

<値段(価格/型)>
プラズマ:安い
液晶:高い

これは、「小型化が困難で大型向きのプラズマ」「大型化に向かない液晶」の違いも関わってくる。
サイズが大きくなればなるほどプラズマのコストパフォーマンスが高くなるのに対し、液晶はなかなかそうもいかないため。

<消費電力量>
プラズマ:安い
(プラズマテレビは画面そのものが発光する。暗い画面では発光しないのでその分ランニングコストが抑えられる。ただし明るい映像を表示する際の最大消費電力量はこちらが高くなる。
バックライトのヘタりを気にしなくてもよいという点も寿命としてアドバンテージとなる)
液晶:高い
(画面が暗い色でも、バックライトは絶えず点灯しているため、平均的な消費電力量が高い)

他にも比較要素はさまざまあるが、その辺はAVに詳しい方々に譲るとして、素人目に見てもわかりやすいところだとこんな感じだ。
現時点で比較すると、「高画質」を売りにする地上デジタルを液晶で見ても、美味しい水をザルで汲みに行くようなものだと感じられて、とても(少なくとも現在の)液晶テレビに買い換える気が起こらないのだった。

大画面を特に必要としない、という条件下で考えるのであれば、「高画質」な地上デジタルを受像するための、庶民にとっての最適解は、「地上デジタル対応ハイビジョンブラウン管テレビ」と言えるだろう。

しかし、多くの庶民が望むであろうそのアイテムは、どこの量販店を探しても売っていない。というか製造されていない。
「ハイビジョンブラウン管」は、存在した。
既に過去形である。

これらを手に入れたいのであれば、もはやオークションや中古販売店などで探すしか手段はない。

また、これらのハイビジョンブラウン管には、地上デジタル受信機器と接続するのに最適な「HDMI端子」は、上位機種ですらつけられていなかった。
ブラウン管テレビより薄型テレビを販促したい家電メーカーの思惑により、ハイビジョンブラウン管テレビを含むすべての国内向けブラウン管テレビは、HDMI端子を装備していない。だが前述した長所もあり、D4端子入力でも薄型テレビにHDMI接続するのと同等の映像を映し出せるため、HDMI接続にこだわらない場合は問題にならないという意見もある。

なおアメリカ市場向け等のテレビはHDMI端子を標準装備しないと(14型テレビからであっても)販売できないようになっており、同様に国外向けの「HDTVブラウン管テレビ」もHDMI端子を装備している物が多い。
WikiPedia「ハイビジョンブラウン管テレビ」の項目より)


いかに日本のメーカーと国が、「地デジ見るなら薄型」という、ユーザーにとって実益を伴わないイメージを根付かせ、高い値段のものを売ろうとしているかが分かる。
アナログ停波が強制的に行われ、ブラウン管生産中止が確定した現在、これはもう「抱き合わせ」と呼んでいいのではないだろうか??

いかに人々に薄型テレビのスマートな印象だけを強調し、ブラウン管の実力を隠蔽しようとしたか。その売り場での様子を見ていた方がブログにこう書いていた。

 同じ年の12月,はじめて無料でHD放送が受信可能な地上波デジタル放送が開始された。だが,その電波は東京・大阪・名古屋の3大都市圏のみでしか発信されなかった。これらの地域の住宅事情は,HR500(引用者注:ソニーから発売されたハイビジョンブラウン管テレビ)を居間に設置することを許さなかった。広い設置スペースを持つはずの地方では,その能力を活かすソースが存在しなかった。利益率の高い薄型テレビを売りたい家電量販店はデモ機の展示にあたって,地上波デジタルやBSハイビジョンといったHD画質のソースを薄型テレビにしか接続しなかった。きわめて意図的に,HR500には地上波アナログのアンテナしか接続しなかった。同じハイビジョンソースを並べて比較したら,画質の違いは見るも明らかでほとんどすべての消費者が薄型テレビの画質の悪さに気づいてしまうからであった。

 一部デジタルソースをつないでいた量販店では,アナログを映し出しているHR500のチャンネルを,マニアがこぞってBSハイビジョンに合わせた。すると,量販店はブラウン管ハイビジョンの売り場を薄型テレビから離れた店舗の隅に移した。ボーナスを手にした消費者は,自らのステータスを競うかのごとく薄型テレビに飛びついた。
(「Enfix and xedos」より:「 KD-36HR500 (Sony) 〜超弩級戦艦大和のように

posted by 大道寺零(管理人) at 01:32 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
全く同意。画面がデカけりゃイイってモノじゃ無い。
特にゲーム機繋ぐと一目瞭然。
液晶の発色には「光」の感じが無いんだよな〜。
タイマーで壊れちゃったけど、SONYのTVはキレイだったなぁ。
選択肢が無くてしょーがなく松下に換えたんだけど、画面の汚さに愕然とした。
細かい文字が読めなくなるくらいに違うんだもん。
ブラウン管でさえメーカーによってもこんだけ違うんだからなぁ。
Posted by eng at 2007年02月09日 06:37
いいまとめをしていただきありがとうございました。とてもわかりやすかったです。
早速、楽天で探してみたけど、プロジェクションだのまぎらわしい液晶が多くて、目的のブツはやっぱないですねー。
もうチューナーも買わず電波を見ないで
DVDとか、wiiのニュースやケーブルだけに
しちゃってもいいんじゃないかしらと思います。

家族は確実に反対しますがw
Posted by napo at 2007年02月09日 16:41
素晴らしい。論文ですね、コレ。
旦那の説明より分かりやすくて、タメになります。
我が家のTVも相当年季がいっていまして、電気屋さんに行くと、買いもしないのにチョイチョイ見てます。お値段が張る割りに液晶の画質が劣るのは、私が家電オンチでそう見えるのかと思っていたけど、違ったんですね(自信になりました!?)。サイズとしては液晶がいいけど・・・、選びかねます。
3年後には、もっと技術開発が進んでいるといいな。
Posted by ふぅ&たぁママ at 2007年02月09日 20:08
>>engさん

>特にゲーム機繋ぐと一目瞭然。

液晶に繋いだことないのですが、確かにゲーム機接続については多くの人が違いを訴えてますねー。
私はRPGとかシミュレーションばかりですが、格闘ゲームやレース・ふらいとしみゅれーた系などやってる人は、特に動きのコマ落ちとか残像はキツそうですねえ。

>>napoさん

>もうチューナーも買わず電波を見ないで
>DVDとか、wiiのニュースやケーブルだけに

同じようなことを以前相方と話しました。
うちの結論は、「ニュースや情報を仕入れる分ではWebで十分だけど、TVの『期待してなかったけど面白かった』とか『偶然流してたら面白かった』という『出会い』は捨てがたいねえ」ってところでした。

期待しているのはSEDなのですが、あと3年で庶民のお財布に優しい価格で供給されるかを考えるとちょっと無理かなあ…と思いますし、ますます悩むところです。
D端子でもいいからブラウン管供給してほしいですよ本当に。

>>ふぅ&たぁママ

以前、「アナログ停波問題」というカテゴリで、「望んでもいない地デジ化の強制」について疑問をまとめた内容の記事をいくつか書きまして、その折に「薄型テレビの実態(実力)と、それを売らんかなの業界のやり方、ブラウン管の排除」のこともそのうち書こうと暖めておいたのでした。
とはいえ、あちこちで調べたことの素人まとめですので、参考程度にとどめていただいたほうがいいかもしれません。ご購入の際には、情報を把握の上でぜひ店員さんとご相談を。

>お値段が張る割りに液晶の画質が劣るのは

私自身も、普段の録画などは低画質のものでなんら不自由は感じないくらいこだわりのない人間なのですが、液晶の画面の汚さは売り場であまりにも一目瞭然なので…
近所の電気屋に至っては、低価格レベルの小さいサイズ(従来15型程度)の液晶テレビに通電していません…これまた何か恣意的なものを感じます…
Posted by 大道寺零 at 2007年02月11日 20:21
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