2007年03月17日

ひどい ひどいひどいあいつ特撮

戦隊物を除外し、ピンに限って話をすると、かつて特撮ヒーロー(単独)が得物を使うというのはなかなか危険な賭けだった。

「かつて」とは言ったものの、じゃあ月光仮面とかまぼろし探偵の拳銃はどーなのよというツッコミもあるだろう。
これらのヒーローは、「基本的に人間が相手」「変身じゃなくて基本的に『変装』した生身の人間」なので、また少々話が違ってくる。
便宜上「変装もの」とここで呼ばせてもらおう。
「変装もの」の多くは、「主人公一人に対して敵が大勢」「敵も主人公と同等かそれ以上の武器を持っている」ことが多い。
バトルフォーマットとしては、時代劇のチャンバラや、西部劇のガンアクションと同系統にあると考えていいだろう。

それに対して、「ウルトラマン」に代表される「変身もの」「怪獣・怪人もの」の系譜のバトルは、「プロレス」(または格闘技全般)だと思う。
例外を除いて相手は単独、そして特殊能力は光線だの火炎だのいろいろあるけれども「身一つ」で出せるものであり、見た目としては「丸腰」が基本であった。
悪役レスラーに対するヒーローは当然「正義のベビーフェイス」レスラーである。
時に悪役が「凶器攻撃」をしても、ベビーフェイスは一緒になって得物を持ち出したりせずに、正攻法で相手に勝利する。これがまあ基本である。

実際には、ビームを出したりミサイルとかマシンガンを発射することがあるわけだが、「手に持たず」「見た目に身一つ」であることが重要なのである。
(ウルトラセブンのアイスラッガーは例外だが、普段は「体の一部」なので許容範囲だろう)

例えば「鉄人28号」「ジャイアントロボ」もそうだし、初期のウルトラシリーズ、仮面ライダー1号2号などもそのカテゴリに属するだろう。
また、アニメでは「マジンガーZ」も、テコ入れで武器が増えるまでは基本的に「身一つで出せる攻撃」で勝負していた。

これらの特徴はいずれも「シリーズ初期」によく見られ、その後続シリーズではたいてい武装が豪華になり、やがて得物を持つようになる傾向がある。
シリーズものの宿命で、新味を出して前シリーズと差別化を図ったり、現実的な問題として玩具メーカーの売り上げに貢献するためもあって、武装は数が増えてゴテゴテになるケースが多いのだ。
ライダーシリーズで言えば、Xライダーのライドルなどは当時ガキの間では賛否両論があった。

武装的に過剰になると、どうしても「弱いものいじめ」「やりすぎ」感が強まり、「ベビーフェイス」感が損なわれる。
相手が多勢で、その上武器や卑怯な手を使われても、あくまでヒーローは得物を持たず、正攻法で勝利する。これは力道山に代表される初期プロレスの典型的な構図であり、それゆえに「燃える」展開であった。

そうこうするうちに、ヒーローも差別化や大人の事情で得物を持つようになる。
しかしその得物も何でもいいわけではなく、できるだけ「凶器感」の薄いもの、例えばスティックや棍棒、鞭などが用いられることが多かった。一方、「ヤッパ感」の漂うナイフやドス、あるいはトゲトゲ系の武器は、どちらかというと回避される傾向にあったように思う。
処理しだいだが、基本的にメッタ刺しや串刺しなどは、やはりどうもヒーローらしくないからだ。

前置きが長くなったが、「レッドマン」の話を始めたい。
「レッドマン」は、前回ご紹介した「ゴッドマン」の同枠で、ゴッドマンの前に放映されていた。
同様の短時間特撮番組だが、「ゴッドマン」に比べると数段クオリティが高い。
実は「レッドマン」が円谷製作、「ゴッドマン」「グリーンマン」は東宝の製作という違いがある。
ロケーションのチープさは同じようなものだが、スーツアクターのアクションはずっと質が良く、特撮処理や技のエフェクトに金を賭けられない分、投げ技などを駆使して、いい意味で「怪獣プロレス」として成立している。
また、この枠に登場する怪獣は、同社が別の番組で使った怪獣の使いまわしなのだが、そこは天下の円谷、ウルトラシリーズやミラーマンの怪獣など豪華キャストが控えている(ゼットンやバルタン星人などの超メジャーどころが登場するのだ)。
参考:レッドマン各回の登場怪獣(WikiPediaより)
撮影やアトラクションで散々使われたもののため、あちこちくたびれてはいるが、元が元だけにそんな姿でもオーラが違う。

そんな風に見ごたえのある「レッドマン」は、得物を持つ変身ヒーローである。
しかもメインの得物が「レッドナイフ」、そして細身の槍に変化する「レッドアロー」で、メッタ切り、メッタ刺し、串刺しなどはお手の物。
さして理由もなくバトルが始まる回もあることから、「変身ヒーローきっての通り魔」とまで言われるそのアクションは、今見ても「いいのかよ」と思うほど物騒で、いわゆるヒーローらしさに欠けまくっている。

その凶悪さ、理不尽さは、いきなり第1話で炸裂している。



●空を飛んできて荒地に降り立ち、「レッドナイフ!」と叫んでナイフを構える
●そのまま近くにあった木をレッドナイフで、爆発とともに伐採
●崖の上に走ってきて、そこからレッドナイフを崖下の地面に投げつける
レッドナイフから発火、枯れ草が燃える


登場一発目に環境破壊&放火。
おそらくこんな正義ヒーローは後にも先にもいないだろう。


●崖の上から怪獣(ダークロン)登場、吼える。


どう見ても、非道を行うレッドマンに対して至極真っ当な抗議をしている良識ある怪獣さんです。

●怪獣、レッドマンに岩を落とす。
●しばし取っ組み合い→チョップ&キックでレッドマン勝利(レッドナイフはバトルに使ってないあたりにも注目したい)。怪獣動かなくなる。

●レッドマン「レッドアロー!」と叫び、レッドアロー(ハンディ形態)を掲げる。
●レッドアロー、大型化して槍状になる。
●レッドマン、レッドアローを掲げて助走を付け、なぜかはわからんがその辺の岩にレッドアローを投げつける。
レッドアローが岩に刺さり、岩が爆発する。
●レッドマン、結果を見届けてご満悦。→その場を去る。


(゚Д゚≡゚Д゚)何したいのこの人……

どう贔屓目に見ても、「怪獣退治よりも環境破壊が主目的」にしか見えません。本当にありがとうございました。

YouTubeには、レッドマンの映像がやたらあるようなので、今後またすげー回を見つけたらご報告するかも。



最近の若い方にとっては、格闘技といえばK-1などのイメージが強く、プロレスを目にする機会もめっきり減ったので、「プロレス的な悪役と善玉」と言ってもピンとこないかもしれない。

終戦後、ようやくテレビが普及し始めた頃、力道山らが人気を博していた頃のプロレスは、善玉(ベビーフェイス=正統派の日本人)と悪役(ヒール=主に外国人やコワモテの日本人)という役割分担がはっきりしていた。
前半はヒールに苦しめられ、最後にはベビーフェイスが勝つというのがお約束の展開であり、当時のファンを大いに熱狂させた。
日本ではその後そうした「お約束」は排除されていくのだが、女子プロレスの世界では比較的長く残った。アメリカのプロレスやルチャリブレの世界では未だに健在の構図である。

このエントリ内での「プロレス的」というのは、そういう意味で用いた。


posted by 大道寺零(管理人) at 20:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | 特撮
この記事へのコメント
|ω・`)
なんかさ…
怪獣の後姿が「ピカチュウ」に見えたのはナイショ

そして左ハイキック(のつもりなのだろう)
どう見ても「素人キック」

最後に槍を投げる時
一瞬だけ「躓いてた」ね!

いつも心から笑わせてくれるこのブログに感謝
ノシ
Posted by 雨野 夜 at 2007年03月18日 22:24
>夜さん

コメントありがとうございます。

専門家である夜さんの目から見るといろいろアラが目立つと思いますが、前回紹介した「ゴッドマン」に比べると相当マシなほうなのです。

>一瞬だけ「躓いてた」ね!

モロに躓いてましたねw
そういう部分をカットせずに入れてしまうあたりを愛でるのが、こうしたマイナー&低予算作品でしかできない楽しみ方であります。

「レッドマン」には他にも色々(レッドマンが)ひどい回がありますので、そのうちまたまとめてご紹介しようと思います。
Posted by 大道寺零 at 2007年03月19日 21:18
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