2007年03月20日

無知の涙日記

原告の言い分ばかりが掲載されていて非常に不明瞭な記事なのだが。こりゃどう見ても乱訴だろ…

「娘の思い出消された」と500万円請求 (nikkansports.com)
 交通事故死した娘がパソコンに残した思い出を修理の際に消されて精神的苦痛を受けたとして、秋田市の夫婦が、家電修理店を経営する家電量販店デンコードー(本部宮城県名取市)に、慰謝料計500万円を求める訴訟を19日までに秋田地裁に起こした。

 訴状によると、夫婦は2005年、前年に亡くなった長女(当時20)の遺品であるパソコンの修理を秋田市の修理店に依頼。修理が終わったパソコンは長女が入力していたデータが消えていたため、問い合わせると、店側はハードディスクを交換した際、データを誤って消去したことを認めたという。夫婦側は「通っていたデザイン専門学校での考案デザインや日記、友人とのメールなど、長女をしのぶことができる貴重なデータだった」と主張。デンコードーは「修理したことは事実。詳細を調べて対応したい」としている。


光学メディアもHDDも、全てはいつ壊れるとも知れない「消耗品」なんだがなー。
娘が20歳なら、多分親は40〜50代。職場でもそこそこパソコンを使う世代で、そんなにディバイドの底でもないようなイメージがあるのだが。
「大事なデータはバックアップ」という常識は通用しなかったのか。

デンコードーは、東北一円に比較的広い範囲と知名度を持つ家電量販店なので、修理受付の際の手続き・確認事項もマニュアル化されているはず。
そもそもPC・HDDは、輸送の際の振動などでもトラブルを起こすことがあるので、データを保障しないことは通常確認する(引越し業者も同様にするらしい)。

また、修理に当たって「ハードディスクの交換」を行ったのであれば、そもそもハードディスク破損がもとの故障と思われる。となると、「壊れた時点でそのデータはほぼオシャカ(高額な費用を追加してサルベージを試みるなら話は別だが)」ということになり、訴えは筋違いということになる。
また、交換をした破損ハードディスクのデータをことさらに「誤って消した(もっともこれはあくまで両親側の言い分)」という状況自体訳がわからない。

どう考えても、「初期化」「フォーマット」という言葉の意味を原告が理解していなかったようにしか思えないのだが…

もしその辺に関して店員が説明不十分&データ復旧を安請け合いするなどの落ち度があったにしても、PCに対する無知からの理不尽な要求であり、賠償額としては、HDD代価+誠意で色付けてせいぜい10万いかないくらいが妥当では?
私も以前デンコードーに修理を依頼したことがあるが、依頼する際に書く申し込み用紙などには、免責事項等が書かれていたように思うがなあ…

というか、この500万請求が通ってしまったら、修理サポートサービスは暗黒時代になってしまうよ
でも最近地裁では変な判決多いしな〜。
考えようによっては、相手が企業(しかもそれなりの規模)でまだ良かったのかもしれない。
もし、「お父さんの知り合いのパソコンに詳しい人」が依頼されて、このバカ夫婦から同じようなことで訴えられていたらと思うと……
ま、おそらくは今後修理に出す際に、「しつこいほど確認を取る」というマニュアルが徹底されることにはなるだろう。

意地悪い言い方をすれば、精神的苦痛で500万せしめようとするならば、
「このPCのこのハードディスクに、確かに娘の大事なデータが入っていた」
「そのデータは別の形でバックアップが残っていない唯一無二のものである」
ことを証明できなければならないのでは?


そもそも、この夫婦が主張するデータは、けっこう復元できそうな気がするのだが。

●メール

娘の友人に呼びかけて、友人が保存している娘からのメール・その返信のデータを送ってもらう

●日記

今時「パソコンで日記を書く」という場合、オフラインのワープロソフトや専用ソフトではなく、ブログやmixiなどのオンラインのものを使うことが多いのでは。
であれば、契約期限切れなどがない限りWeb上に残っていて読めるはず。
URLを控えていない、検索して当たりそうなキーワードが分からないなら親しい友人に総当りすればいいんじゃない?

●デザイン学校の作品データ

普通メディアにバックアップしてないかな〜。
もしくは学校の教師などにあたってみるとか。

まあ何だ、不毛な八つ当たりをするくらいなら、「消去された」というハードディスク(物理的に逝っていないなら)のデータサルベージでも試みたほうがよっぽど建設的だと思うが。


私が20歳の頃を考えてみると…勿論パソコンはあったけど高嶺の花みたいな値段で普及してはいなかったし、メールもネットもなかったわけだが、その頃の友達や恋人との私信やら日記やらを親に読まれたら…と考えると、草葉の陰でもう一度死にたくなること請け合いだ。
娘さんも、あの世で身をよじっているのではないだろうか。「色々親バレ」&「親が言いがかり」という二重の意味で。

記事の内容が不明瞭なこともあり、この一件は是非続報が欲しいところ。変な判例付かなきゃいいが…
posted by 大道寺零(管理人) at 21:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
いや、もしわしが他界した際には、
PCは問答無用で初期化して欲しいですよ。
(物理破壊でも可)
PCなんてプライバシーの塊ですからね。
携帯電話の比じゃありません。

故人を偲ぶなら、写真でも思い出でもあるでしょうに、
何もPCを覗かなくても良いでしょうに。
(増して言いがかりつけてるし)

大方
店員「ハードディスクは初期化されますがよろしいでしょうか?」
父親「(ハードディスク?初期化?とにかく初期化ってことは元に戻るってことだろう)ええ、お願いします。」
店員「かしこまりました。ではこちらにサインを。」
と、承諾書をよく読まずにサイン。
といったところではないでしょうか?
Posted by Q太郎 at 2007年03月20日 22:29
>>Q太郎さん

「お互いが相手より早く死んだら、内容を見ないで指定PCの指定フォルダ内データを破棄する(またはHDDそのものを物理的に破壊する)」契約でも結びましょうか……

フリーソフトで、「指定した日数以上アクセスがない場合」という設定になりますが、その場合に遺言を表示してデータを消すというものはあるみたいですな。
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se281094.html
ただこれだと、予想外の事態で思ったより長く家に帰れなくなった…等の場合に悲劇が起きますけど…

>「初期化」の認識

そんなところなんでしょうなー。
この人たちにとっては、「修理」とは「データ復元すること」、店側にとっては(というか常識的には)「PCが再び動くようにすること」というギャップがあったのでしょう。
依頼すべきは「データのサルベージ」だったんですよね。
多分、所定の修理依頼書にサインしてるなら通常は一発で店側無問題だと思うのですが、一方でうちの近所のヤマダ電機みたくどうしようもないレベルの店員も存在していて、そういう人が誤解を招くような安請け合い的文言を使ってしまったという可能性も無きにしも非ず…かもしれないですね。
いずれにせよ、どうもこの記事を書いた記者自体が今ひとつPCの基礎知識に欠けるような感じがするので、続報があればチェックしたいところですね。
Posted by 大道寺零 at 2007年03月21日 23:03
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