2007年03月24日

お花畑は仕事だけにしとけ2日記

概要は前記事でどうぞ。

この「農業体験詐欺」をやらかした自治体が、ほぼ特定されたようだ。
「北海道上川支庁管内にある人口5000人台の町」は、中富良野町と美深町の2つ。
そのうち美深町では農業体験交流事業を行っており、元記事で示された配布版募集要項と、事業ページの内容が完璧に一致する。
nougyoutaiken.jpg

(↑配布版の募集要項)

元記事にある「農業を体験して新しい自分を見つけてみませんか」という文章が、そのままこの募集案内ページに掲載されている。

以上より、「美深町がこの詐欺の舞台ではないか」とほぼ特定されている現状だ。

(参考までに、3/21時点での募集案内ページ魚拓募集案内ページの右下にあるリンクをたどっていくと、申し込み要旨の現物を閲覧できる。(Word文書・pdfの両方)

氏名・住所などの一般的な条項のほかに、
●学歴・職歴
●写真
●家族構成
●身長
(足のサイズや作業服サイズもあるが、これは貸与することになっているから致し方ないか。しかしそれで体つきを推測することも可能ではある)

などの項目があり、記事を読んだ後で見るとどう見ても「釣書」です

また、体験詐欺の記事を見てから、「そーいう目」で読むと、募集案内の随所随所がとんでもないものに見えてくるから怖い。

1.対象年齢
 20歳〜40歳までの独身男女(学生不可)


一応、「女性限定」ではなく、男性も対象に入ってはいた。
婿目当てなのかもしれないけど……

2.体験実習期間
 @年間を通して受け入れますが、冬期間は都合により受け入れできない場合もあります。
 A実習期間は1ヵ月以上を原則としますが、短期の希望でも受入農家と協議し、可否を決めさせていただきます


9.応募方法
 別紙申込書により申し込みして下さい。実習生受入審査会の中で受入れの可否を決定させていただきます。なお、不明の点は問い合わせ願います.


上の「可否」、普通に読めば、単に「受け入れ側の都合に合わせて」ということなのだが、元記事の以下の部分を読むと、「写真審査」が行われていたフシもある。

しかも「息子が、あなたの履歴書の写真を見て気に入ったからOKを出した。役場もOK、私もOK。何でそんなに実習生にこだわるのか。農業が好きなら、この町がもってこいではないですか」とまで言い出す始末でした。


3.体験実習内容
 受け入れ農家の指示に従い、農作業(稲作・畑作・酪農等の軽作業、補助労働)を体験していただきます。


「指示に従い」「補助労働」がやにわに不穏なものに推測されてくるから不思議。

7.体験実習中の特典
 @町内で開催される各種イベントに参加できます
 A美深を知っていただき、楽しんでいただくため町内の農業者との交流会に参加していただきます


1は「参加"できます"」だが、2は「参加"していただきます"」とあり、後者は「実習生の義務」として記されているように読める。
もしかしなくても、レイプ未遂やセクハラは、この町の人にとっては「各種イベント」であり「交流」なのか?

8.その他

 C実習生はその目的に添わない行為又は、常識的生活を逸脱した場合は実習の継続を拒否されます


この要綱の中で一番笑える(しかし笑えない)部分だ。
「目的=嫁入り前提の婚前交渉・味見」
「目的に沿わない行為=誘いを拒む」

ってことっすか?

そしてこの人たちの口から「常識的生活」などという言葉を吐いてもらいたくないものだ。それとも「おらが村の常識」ってことか?

私の実家の母が農家の出で、叔父叔母や従兄弟・友人にも農業に従事している人が多くいる(半農含む)。また、今住んでいるところもコメ農家地域なので、「現代社会で農業を経営するには、前近代的な頭ではやっていけない」ことも、農村や農家が全部こんなに腐った社会ではないこともよく知っているつもりだ。
だからこそ、この21世紀の社会でこんな前近代的な行為が、しかも役所ぐるみで行われていることに腹が立つ。
この元記事や拙ブログを読まれた方には、くれぐれも「全ての農業従事者や農村がこんなんだ」とは思わないでいただきたい、「農家」「田舎」「北海道」と一般化しないでいただきたい…と切に願う。
嫁探しといった「邪念」抜きで体験事業やグリーン・ツーリズムを行う自治体・団体にとっても本当に迷惑だろう。
また、普通の出会いで結婚してこの町に来た奥さん達が一番可哀相だ。ヘタすると「あの人も拉致被害者か」「結婚する前にあちこちで味見されたのか」などという変な目で見られかねないし。

同じ意見を前記事のコメントでもいただいたが、これを機会に、北海道に留まらず、全国の自治体に対し
「農業(林業・漁業等も同じように)体験交流事業と結婚相談事業を原則的に切り離し、結びつける場合はその旨を募集要項に明確に記載すること」
「体験事業の応募者に対し、交際や性行為を強要したり、セクハラを行わない」
「『セクハラの定義』という講習を終了し、『そのような行為を行わない』という誓約書を書かせた家庭のみを受け入れ先とする」
くらい徹底させなければこのイメージダウンは払拭できないんじゃないか?

元記事で、参加した女性が「参加前、母親から強く引きとめられた」と言っているが、結果的にはお母さんが誠に正しかったんだねえ。
「実態を知った一日目で逃げるべき」だったとは思うが、反対を押し切って大見得切ってきた手前、帰りづらかったのかな〜。

また、記事の枕で

誤解を生じさせる表現で都会の女性を集め、なかば強引に嫁入りを迫るやり方は、人権を踏みにじる、心の詐欺ではないか。


とあるが、どう見ても、「心の」などという文言をつける必要のない、「単品の詐欺」だって。

週末開けた月曜日は、抗議や問い合わせのメールで役所は大忙しだろう。よりによって、クソ忙しい年度末に大変ですね!でもご自分達で撒いたタネですからね!



--------------ここからチラシの裏----------------

実際田舎で暮してみると、
「あけすけに接すること、『礼儀』という垣根を作らないことが『親しく』することだ」
と本気で思い込んでいる手合いが多くて実に困ることが多い(特にある程度より上の年代)。
「下ネタ」として許容されるラインをとっくに越えた下品なネタを、しつっこく振ってきたりとか。

特に私のように、「結婚してかなり経つが子供がいない」立場(昔の農村ならとっくに離婚されてますな。ああ現代人でよかった。)だと身をもって分かる。

「んで、お子さん何年生?あ、いないの?で、どっちが悪いんだ?今は医者行くとすぐ付けてくれるらしいぞ?」
「若い頃勉強ばっかりしてて、作り方知らないんじゃねえ?(女が進学することを批判する常套句)」

とか、普段比較的常識人だと思っていた人ですら平気で言ってくるからな。
実際近所でどう言われてるか分かったもんじゃない(そうでなくても、「非農家」をクサす風潮がある地域なので)。怖いから絶対知りたくないが!

ピースボートの人は、くだらんチョコとか作ってないで、こういう地域にこそ突撃して女性を守り、ダメな男どもを啓蒙すべきだと思うぞ。
posted by 大道寺零(管理人) at 11:39 | Comment(3) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
数年前に北海道旅行した時、
美深駅で降りて、
旧美幸線沿いを走るバスに乗って終点の仁宇布まで行きましたが、
途中全く人家がなく、
これじゃ廃止になるわけだと妙に納得したことがあります。

最近田舎暮らしブームなんて言ってますが、
田舎だから人間がみんな素朴で優しいわけじゃないんですよね。
あまりにも過疎だと、
コミュニケーション能力が失われて、
人間は野生に戻ってしまうのではないかと思います。
Posted by 有賀亭 頑馬 at 2007年03月24日 15:16
前の記事への書き込みでは、事件については半信半疑という姿勢で
「もう一段階上の行政サイドが指導すべきだ」
と書きましたが、美深と聞くとなんとなく納得してしまいます。(これはこれで危険。)
人口規模が中富良野と同程度ということですが、地理的・気候的・産業的な環境が全く異なります。
あの厳しい環境故に非常に前近代的な人が多く残ってしまったんでしょうか・・・

研修なんていうのは、ある程度人が集まっているところ(人気があるところ)のほうが、教える方も慣れているから良いんですよね。
ミーハーじゃなくて本気だと示したくて富良野などのメジャーどころを希望しなかったのかもしれません。
「美深」という字面に惹かれたのかもしれません。
でも、そういうことを割り引いて考えても、本当に酷い出来事です。
Posted by Felice at 2007年03月24日 16:34
>>頑馬さん

>最近田舎暮らしブームなんて言ってますが、
田舎だから人間がみんな素朴で優しいわけじゃないんですよね。

その通りですね。農村にも色々ありますけど、閉鎖的だったり、反面プライバシーにズカズカ踏み込んできたりという、都市生活にはない変な距離のとり方といいますか…
しかもそれが常に「俺達ルール」のもとで判断されて、「合わせない方がおかしい」という風な空気は珍しくありませんね。

>あまりにも過疎だと、
コミュニケーション能力が失われて、
人間は野生に戻ってしまうのではないかと思います。

閉鎖的なコミュニティ、または古くからの悪しき慣習が伝わり続ける共同体においては、「このルールになじめないのなら出て行け」「批判は許さない」という暗黙の空気があるものです。
「それはおかしい」という声は聞き入れず、そこで育った者も土地と因習を見捨てて去っていく。そのうち批判する者がいなくなり、「このやり方は正しいのだ」とさらに確信する…という負のスパイラルが確立してしまうと、ある意味「野生化」より性質が悪いでしょうね…
これは都市部でも十分に起こることではありますが、どうしても過疎地域や農村などでより発生しやすいのは事実だと思います。

また、失われたおおらかな日本的な性の形である「夜這い」の意識がどこかに根強く残っていることも原因かもしれないですね。
でも、本来の夜這いは、女性にも選ぶ権利があるのですけどね…

>>Feliceさん

私も、読めば読むほど「ホントかよ」と思うのですが、もし記事どおりでなかったにしろ、「農業実習という名の嫁募集」「それを公然のものと認識する役場や村の人」というシチュエーションは事実だったのだろうと思います。多分これは北海道だけの話ではないでしょうね。

>研修なんていうのは、ある程度人が集まっているところ(人気があるところ)のほうが、教える方も慣れているから良いんですよね。

そうですねー。また、せめて同時に実習を行う人が一人でもいれば違ったでしょうし、異常さにも早く気づいたことでしょう。
もっとも、「一人ずつ」というのが作戦だったかもしれないですが。

>ミーハーじゃなくて本気だと示したくて富良野などのメジャーどころを希望しなかったのかもしれません。

ああ、それはとってもありそうですねぇ。
Posted by 大道寺零 at 2007年03月24日 23:47
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