「結婚相手の身辺調査」というタイトルだが、実際は「別れさせ屋」としての内容だ。
メールで知り合った娘の婚約者の身辺調査
身辺調査によりご依頼主にとって見逃せない問題がわかり、調査員の工作で婚約解消に成功しました。
[娘と婚約者の知り合ったきっかけがメールだと聞いて不安です]
依頼者
58歳男性
相談内容
長女(30歳)が結婚したいという相手(35歳)を連れてきました。話を聞くと、インターネットでのメールで知り合ったとのこと。少々頼りない感じの男性だったのですが、「いき遅れ」の心配をしていたので「それも出会いの形か」と結婚を了承しました。しかし、最近のニュースでの出会い系サイトの犯罪を見ていると、少々不安です。
調査内容
男性の氏名・住所・電話番号から、あらゆる身辺調査を行いました。
調査結果
男性は、大阪市内のOA機器業者に勤めており、勤務態度も真面目で、特に金銭トラブル・女性問題もありませんでした。ただ、かなりのアニメマニアのようで、軽度の少女愛好志向があるらしいことも判明しました。お嬢さまも相手の趣味は知っていたようで、犯罪性もないものと考えられましたが、ご依頼主のご希望から女性調査員による工作を行って2人を別れさせました。その後の話では、お嬢さまには新たにお見合いをさせ、もうすぐ結納というところまで進んだそうです。
別れさせ屋の違法性・合法性については後述するとして、共感できる範囲は、例えば相手が
・妻帯者、または二股状態・女癖が悪い
・重度の浪費癖・ギャンブル癖がある
・893な稼業
・暴力をふるう
・薬物やアルコール等の中毒
などの事由がある場合は個人的にわからんでもないが、この男性の場合、「勤務態度良好な普通の勤め人」であり、上記のような重大な事由があるわけでもないのに、「アニメマニアである」という趣味で判断され、しかも探偵社の独断で「若干の幼女趣味があるかも」とされて、別れさせられた後もなおサイトに「成功実績」として鼻高々で載せられてしまう。
これはいくらなんでも不憫ではないのか。
このことはアキバ系のニュースサイトやブログでも報じられ、「バレンタインデー粉砕」などの活動で知られる「革命的非モテ同盟」が公開質問状を出すなどの動きに発展した。
当の探偵事務所は
「こんなの答える必要があるんですか?(質問状の差出人は)マトモな人だとは思っていません。何か言いたいのであれば(京都のオフィスまで)お越しになってみたらいかがでしょうか。こんなことは初めてです。大変失礼な話。何が内容証明ですか!」
("livedoor ニュース"女性調査員による別離工作」 「非モテ同盟」が探偵事務所に質問状より)
と、「オタクは人に非ず」と言わんばかりの対応だったらしい。
この「非モテ団体」の活動には、普段は痛々しさしか感じないものの、Webで公開された内容に対する公開質問状としてはマトモだと思うのだが。
別れさせ事例そのものに話を戻そう。
これは結局、
「30にもなった娘が連れてきた交際相手が気に入らない」
「相手そのものを見ようとせず、メールやネットで知り合ったということが気に入らない」
というだけの理由(「いき遅れ」などという文言を使うところからして、世間体しか気にしていない印象を受ける。また、通常のサイトやオフ会などを通じた出会いと、「出会い系」を区別していないようでもある。)で、大金をかけて「別れさせ」を依頼した女性の父がそもそもの元凶だと思う。
文章を見ると、
「男性を調査した結果、特に決定的な非はなかったので、なんとか『オタク』『低年齢の女の子が好きかも』という理由を無理矢理ひねり出して別れさせ行為を正当化させた」
というようにしか思えないのだ。
別れさせる相手の本質は、問題ではない。
依頼者から「別れさせてください」と頼まれ、「わかりました」と引き受けた時点で契約は成立、別れさせは規定の事項となる。
この一件でも、事実調査結果自体は「女性側も趣味については了解しているし違法性のない範囲」と出ているのだが、結局は依頼者の希望に従っている。
こういう場合によく出てくるネガティブな調査結果は
「他にも女がいる」「風俗通い」「浪費」「酒量・酒癖」「パチンコ通い」などだが、そのいずれも出てこなかったところを見るとよほどマジメな部類の男性に思われる。
ここでは、「軽度の少女愛好志向」が果たしてどれほどのものか、が謎だ(これが別れさせの直接の原因ではなかったにしろ)。
これが重度で真正なものであれば、そもそも「30女と交際して、結婚を考える」ということ自体があり得ないし、さらに「二次元指向」が強ければ、「工作員のトラップ(接近をはかって誘惑、あるいは彼女に対して疑念を抱かせる言動)」そのものが効力を持たない。
恐らくは、「可愛いキャラクターが好き」という程度なのではないだろうか。あるいは「妹萌え」「制服・メイド好き」くらいか。
そもそも最近の萌え系アニメやゲームのトレンドな絵柄を詳しくない人が見たら、どれもロリ絵に見えてしまうかもしれない…
まあ、「小学生や幼稚園児の食い込みDVD」がライブラリーに並んでいたら私も引くけれど。
探偵や調査所の業務は、基本的に「業者の言い値で実費請求思いのまま」なのだが、中でも「別れさせ屋」はソレ向きの業務らしく、ちょっと検索してみたら、「絶賛営業中」と宣伝する探偵社がバシバシヒットする。
そもそも、「別れさせ屋」とは合法的な行為なのだろうか?
法に触れそうな要素をまとめると以下のようになる。
<依頼・相談について>
●弁護士・弁護士法人でない者が和解・仲裁やその他の法律事務を扱うことは禁止されている。(弁護士法第72条)
●利益を得る目的で「法律相談その他の法律事務を扱う」旨の標示や記載をすることは禁じられている。(弁護士法第74条)
<人物・素行調査>
●敷地内に入っての調査
住居不法侵入(刑法第130条)
●尾行・追跡
不退去の罪(刑法第1条28号)
(*これは尾行対象者が尾行を悟って不快になるほどの近距離でのつきまといが対象になる。また尾行自体も、「正当な事由」と認められた場合にはプライバシー侵害に当たらない…らしい。
多くの探偵社では「見つからないように上手に尾行するからOK」と主張しているようだ)
<別れさせ工作>
●傷害(刑法第204条)
●脅迫(刑法第222条)
●強要(刑法第223条)
(*多くの探偵社では、工作員を用いた脅迫・暴力を伴わない接触や誘惑によって、「強要することなくターゲットの心を操って変えさせる」という手法でこれらの法に触れることを回避しているらしい。)
業界団体や業者の中には、「別れさせ業務」を脱法性の強いものとして自主規制しているところもある。
別れさせ屋とは
浮気をしている夫(妻)・彼氏(彼女)とその相手を自然と別れさせるという文字通りの工作。
工作手法としては、(1)ターゲットに”工作員”を接近させ擬似恋愛へ発展させる。
夫(妻)・彼氏(彼女)とターゲットが別れた段階で、徐々に”工作員”もターゲットから離れていく。
(2)ターゲットが夫(妻)・彼氏(彼女)と交際できないような環境を情報操作によって作り出す。
東京都内にある探偵事務所が行っていたサービス(工作)であり、TVドラマ『別れさせ屋』によって、全国の探偵社が同様のサービスを模倣し始める。 優良なサービスを提供する探偵事務所もあるが、中には、『やらずぼったくり』的な探偵事務所も多い。
探偵・興信業界唯一の公益法人である社団法人日本調査業協会では、『別れさせ屋』行為を下記の理由により、自主規制対象として傘下団体へは受件しないように指導している。別れさせ屋の禁止事由
(1) 弁護士法違反となる可能性もある。
(2) :脅迫・強要となる可能性もある。
(3) :(2)で探偵社が警察に逮捕された場合、依頼者自身も
共同正犯となる恐れ有り。
共同正犯
「二人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とする。」
つまり、「共同実行の意思」があると「一部行為の全部責任の原則」が作動する。一部しか実行していなくても犯罪の全部に責任を負うのは違法性と有責性があるため。
別れさせ屋について:0からの探偵豆知識
参考:同サイトより「別れさせ屋の問題について
一方、「別れさせ業務」を行う探偵社のサイトより。
「FAX探偵ドットコム」より「別れさせ屋工作のQ&A」
<別れさせ屋工作の三大ポイント>
相手カップルの結びつきは何によるものですか?
状況に応じて柔軟に対応が可能でしょうか?
詳細情報はどこまで揃っていますか?
これらの三点が「キーポイント」になります。
必要な情報が欠けていると、工作の切り口を
考える上で方向性が狂う可能性があります。
正しい方向性を決めること、それが工作の成功か
失敗かを決めるといっても過言ではありません。
あまり調査費用をかけたくない、
と、考える方も多いでしょう。
しかし調査はある意味、工作よりも
全体の鍵を握ることもあるのです。
"何が起きれば二人は別れるのか"
というのがポイントです。
浮気なのか、性格の不一致なのか、
地位や金銭的な面なのか、周囲の環境なのか…
二人の結びつきを正確に捉えることがまず第一歩です。
Q:別れさせ屋は合法なの?
A:別れさせ屋工作自体は違法ではありません。
別れさせ屋工作などは、その存在自体、賛否両論が出る事業内容です。
別れさせ業務、工作業務は一切行わないということをポリシーにしている探偵社もあります。
しかし、たとえ弊社がこの業務を行わなかったとしても、悩み抱えた相談者の方は、必ずどこかに救いを求めることでしょう。行き場のない思いに苦しまれるかもしれません。
Q:別れさせたい相手が既婚者の場合でも、依頼することはできますか?
A:お受けすることは可能です。別れさせて自分と結婚して欲しいというご要望は多いです。
んー、怖いですな〜。
要するに「金次第」なのねえ…
だったらいちいち「アニオタでロリかもしれないので…」などと無理矢理理由をひねり出すこともあるまいに、と思うのだが。
工作員がターゲットに仕掛けるのはあくまでも「擬似恋愛」であって、別離以降ある程度の時間がたてばフェイドアウトしていくだけだ。
ターゲットは元来の恋人(あるいは未来の結婚生活)を失い、擬似恋愛も失い、手元に残るのは喪失感ばかり。
「彼女と知り合ったのがネットで、アニオタであった」「彼女の父親に気に入ってもらえなかった」というだけで、彼がここまでの仕打ちを受けなければならなかったのだろうか…
彼にかける慰めの言葉があるとすれば、「こんな奴を義父と呼ぶ羽目にならなくてよかったじゃないか」の一言しか思い浮かばないのだが。
実績報告によれば、この女性は「その後親の認めた相手とお見合いして結納間近」らしいが、そのお相手も、「気に入らない相手は、別れさせ屋を使ってまでも別れさせる父親がいる」という事実を知ったら、相当の余禄があるのでもない限りドン引きなのでは…