ヒトラーがかつてウィーンで画家を志したことは有名だが、作品をまじまじと見たのはこれが初めてだ。
「アドルフ・ヒトラー」の項目より(Wikipedia)
実業学校を退学した後ウィーンで画家を志し、美術大学を受験するが2回とも失敗。教授に作品を見せたときには「君には建築家のほうが向いている」と助言を受ける。その画風は写実的だが独創性には乏しかったとされ、画題として人物よりは建築物や廃墟などの風景などを好んだ。
1907年には母を亡くしたが、ウィーンでの生活は両親の遺産や自作の絵葉書の売り上げなどによって比較的安定していた。
「写実的だが独創性には乏しい」とは、簡潔な表現だと思う。
事実、「さほどヘタではないが、悪い意味で絵葉書的」と感じた。(…実際絵葉書も書いてたんだな;)
現代美術が花開いた20世紀初頭にあって、どう贔屓目に見ても「売れる絵」とは思えない。
他にも、「Hitler's Art and National Socialist Era Art」などでさらに多くの作品を見ることが出来る。
素人目にも、人物画や戯画はイケてないが、わんこ萌えで知られることもあって、犬の絵はわりといい感じかも。
ヒトラーと芸術と言えば、近代美術やナチスの国策にそぐわない芸術・及び「劣等民族」の出自である芸術家たちとその作品を「公開処刑」して迫害した「退廃芸術」があまりにも有名である。
「退廃芸術」の項目(Wikipedia)より
ナチスは「退廃した」近代美術に代わり、ロマン主義的写実主義に即した英雄的で健康的な芸術、より分かりやすく因習的なスタイルの芸術を「大ドイツ芸術展」などを通じて公認芸術として賞賛した。これらの公認芸術を通してドイツ民族を賛美し、危機にある民族のモラルを国民に改めて示そうとした。
一方近代美術は、ユダヤ人やスラブ人など「東方の人種的に劣った血統」の芸術家たちが、都市生活の悪影響による病気のため古典的な美の規範から逸脱し、ありのままの自然や事実をゆがめて作った有害ながらくたと非難された。
近代芸術家らは芸術院や教職など公式な立場から追われ、ドイツ全国の美術館から作品が押収されて「退廃芸術展」など全国の展覧会で晒し者にされ、多くの芸術家がドイツ国外に逃れた。
展示の際には、作品や作者に対する罵倒・中傷のコメントが添付され、額縁を外されたりわざと粗悪なコンディションのもと取り扱われるなど、屈辱的な演出がなされた。
ほとんどは資金のために海外などに売りに出されるほか、ゲッベルスやゲーリングらナチ高官が趣味に合うものをいいとこ取りもしたらしい。売れ残りの一部が焼却処分された。
カンディンスキーやクレー・エルンストらがモロにとばっちりを受け、ムンクも一時期退廃指定された。それでも国外に亡命・移住できた芸術家はまだいいほうで、ユダヤ系のアーティストはそのまま収容所送りになり命を奪われている。
退廃芸術という観念の背景には、さまざまな理論が存在する(今となっては悪名高きロンブローゾの名も見える)が、実際にヒトラーの作風を見ると、「自分の付いて行けない革新的な芸術がウケていることに対するやっかみや焦燥」も根底にあったのではないかと勘繰りたくなってしまう。
芸術美術破壊については、はるか昔から戦争などで、行われているし、また文学においても、名前だけのこってて、今はもう読むことができない作品が日本の古典においてもありますし・・・・
非常に残念ですね。
それだけに現存してるものは、大切にしていきたいですが・・・・いまだに、パーミアンの石仏破壊とかあるし・・・・・かなしいー。
クリムトの絵も被害にあってたんですねー。ナチの高官に持ってかれて、その後焼失ということらしいです。
クリムトは1918年に亡くなっているので、芸術粛清の時には既に故人だったわけですが、それでも作品が槍玉に上がったのですか…
まあ確かにあの官能美の世界は、「退廃芸術」の名にある程度合致しているかもしれませんが…
ヒトラーのこれに関しては、「絶対ヒトラーの主観入ってるだろ」と思わずにいられないですね…
美術や音楽だけでなく、文学の世界でも状況はひどくて、敬愛するケストナーも迫害されつつ正面から対抗しています。
芸術を選別、排斥するという行為のもととなり、後押しする理論を提唱した学者の一人がユダヤ人であったという事実は皮肉ですね…
>それだけに現存してるものは、大切にしていきたいですが・・・
そうですね〜。
戦争や宗教問題とは違いますが、今、国内の貴重な遺跡や文物が、文化庁のずさんな管理と扱いでボロボロにされゆく姿に心が痛みます…
(壁画にカビ生やしたり、剥離がうまくなかったり…もーちょっとしっかりやれよと;)