2007年04月18日

あしたのジョーの日給はいくらだ?漫画

原作でもアニメでも、初期を見た人ならお分かりだと思うが、ドヤ街に流れてきて段平から見込まれたジョーは、最初から「俺ぁボクシングに命かけるぜ!」とやる気満々になったわけではない。
むしろ、多くのビルドゥングスロマンの中でも、飛びぬけて「その気になる」までに最も長く時間を要した部類だといえよう。
(そもそも最初から素直だったら、少年院になんぞ入らないわけなんだけども)

加えて、所期のジョーは非常〜〜〜にずる賢い部分を持つ少年として描かれている。段平と共に川の下の小屋に住み着いてボクシングへの第一歩を踏み出すのだが、そのこと自体について段平にめちゃくちゃ恩着せがましくしており、
「ボクシングの修行とやらを『やってやる』から一日500円払え
と要求して、契約を結ぶ。
(明確に「毎日の契約報酬500円」と言っているのはアニメ版だが、原作でも同等の額をせしめている)
段平は日々の生活とジョーへの「日当」、それにジムを再興することを夢見て、昼夜を問わず日雇いの土方仕事で遮二無二働いた上に、好きな酒もきっぱりと断つ。
こんなに段平おっつあんは健気に頑張っているのに、当のジョーは毎日金をもらって練習する振りをして、ガキ連と遊びまわったり、パチンコでせしめた景品(しかも不法な手段で)を転売したり詐欺行為を行ったりしているのだった。

で、検証してみたいのは、「ジョーの『日当』の500円って、今ならいくらに相当するのか?」ということなのだ。

そもそも、70年生まれの私ですら、「ジョー」の作中に登場する物価は驚くほど安く感じる。
頻繁に登場するドヤ街にしても、「おとまり100円」とか「150円」の世界だ。
いやそれ以前に、特番を見た若い人は、「500円がお札??」というレベルで驚いているだろうなあ…
で、恐らくは「1日500円って、そんな小銭で本当にいいのかジョー?」と思った人も多いことだろう。

まず、「あしたのジョー」の連載及びアニメが放映されていた期間を確認してみよう。

<原作漫画連載>
「週刊少年マガジン」
1968年1月1日号(1967年12月15日発売)〜1973年5月13日号

<TVアニメ(初代:カーロス戦まで)>
1970年4月1日〜1971年9月29日


ここでは、原作に準拠して、1968年(またはその周辺)の物価を調査してみたい。

そもそも「物価」や「貨幣価値」は相対的なもので、正確に「今で言えばいくら」と換算するのは難しい。
例えば、当時のテレビや電化製品は、若いサラリーマンならローンを組まなければ到底買えないほど相対的に高価だった。
反面、鶏卵や牛乳のように30年経ってもほとんど価格に差がない商品もある。
(参考:「お金の歴史」)

まず、日銀のサイトに同様の質問に答えているページがあったので、そこから物価指数などを調べてみることにする。

「教えて!にちぎん」より
"昭和40年の 1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?"


ここでは、「物やサービスの種類によって、価格の上昇率がまちまちであるため、お金の価値を単純に比較することはなかなか困難です。」と前置きしながらも、企業物価・消費者物価の戦前基準指数を用いて大体の概算を導く方法を示している。
この表の物価指数の対象は東京都区部。ジョーの舞台も東京だから、ある意味うってつけだ。

1968(昭和43)年の消費者物価指数:510.5
2005(平成17)年の消費者物価指数:1765.8


1765.8/510.5≒3.46

500*3.46=1730

よって、消費者物価指数を元に類推すると、約1,730円がジョーの契約日当(という名の小遣い)ということになる。

しかし、体感的にちょっとしっくりこないものを感じる。
ジョーの性格や行動からして、1,730円の日当で契約をOKするタマとも思えないのだ。
そしてまた、段平が昼も夜も働きづめという描写から見て、ジョーの日当が「おっつぁんの半日分の給料のほとんど」を占めているようにも感じられる。
同時に、「日当」的な役割ならば、「500円=ジョーくらいの若者が昼間まとまってバイトした程度の報酬」でなければつりあわないとも考えられる。
となれば、今の感覚で言えば5,000円くらいは行っているように(あくまで感覚的なものだが)思える。

その他、ジョーの周辺に時々出てくる物価と照らし合わせると、なんとなーくだが、「当時の物価・お金の価値は、額面の8〜10倍くらい」に感じるのだ。

その感覚の根拠の一つが、ドヤの宿泊代である。
アニメにはよく一泊が「100円」「150円」のドヤ看板が登場する
また、第1巻(ドヤ街初日の夜)で、「どこでもいいから一晩屋根のあるところに泊めてくれ」というジョーに対し、店主がこう言っている。

ただし それ相当のおねだんがあるよ
土間は三十円
物置は五十円
廊下は まあ 七十円ってところかね


やはり、原作でもドヤの宿泊料の相場は100円〜のようだ。
(原作のドヤ街には「百二十円」の看板がある)

では、現代のドヤ…じゃなかった、「簡易宿泊所」の相場はいくらなのか。
ありがたいことに、簡易宿泊所情報の特化サイトが存在している。

東京の安い宿

同サイトの宿泊料金順一覧を見ると、1500円くらいから泊まれる宿がけっこうあるのだ。
低い価格帯の宿は「台東区エリア」に多く、ズバリ「泪橋交差点」付近のエリアに集中している。やっぱりまだドヤ街の名残は残っているようだ(泪橋自体は現存せず、交差点や歩道橋・バス停の名前に残るのみ)
台東区エリアの宿泊施設の料金は、1000円台から始まって3000円台まで、まあならして2000円代あたりがスタンダードといっていいようだ。
最安値の1500円で計算しても、当時と比べて10〜15倍↑くらい。

ジョーたちにとってもっとも身近な存在だったドヤの宿泊料を比較すると、「当時の貨幣価値は体感10倍」もあながち大ハズレではないかもしれない。

もう一つ比較してみたい。
よく比較対照として持ち出されるものの一つ、「初任給」である。
いまならいくら?」というサイト内の、「値段の風俗史」によれば、昭和43年の教員初任給は24100円

公立学校初任給は、教員の免状種類や学歴・職歴・年齢によってまちまちだが、大学を卒業して第一種免状ですぐ採用された場合には、通常「2級3号俸(通称「2年3組」)」からスタートする。
現在、一般職員の2級3号俸は187,400円。

187400/24100=7.78

およそ8倍と推定すると、けっこうこの数字は体感的には納得できるように思える。

段平の夢に付き合ってちょいとボクシングの修行(のフリ)をすれば、黙って一日に付き4000〜5000円が懐に転がり込んでくる。
コレなら、金に汚い初期のジョーも納得するのではないだろうか。
(まあ、実はジョーはジョーなりに夢があって金を貯めていたのだけど…)

長々と計算してきたが、結局は「自分の体感に一番合う根拠を探してみた」というだけにすぎない。是非、「もうちょっと高いよ」「そんなにはしないよ」というご意見があれば頂戴したく存じます。

しかし、こうして考えてみると、ジョーが詐欺でせしめた100万円は、今なら1000万円近い大金である可能性があるわけで、そりゃやっぱり特等少年院行きにもなるわな…


posted by 大道寺零(管理人) at 20:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画
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