2007年06月03日

セコムのCM日記

なんとなく書きそびれていたので数日古いニュースになってしまったが…

セコムのCM、打ち切りへ 「動物を悪く描いた」と抗議 - 社会(asahi.com)

 大手警備会社セコム(本社・東京都)が21日から流し始めたテレビコマーシャルに視聴者から抗議が相次ぎ、同社はこのCMをいったん打ち切ることを決めた。

 打ち切るのは、子どもなどが危険時に携帯端末から通報できる同社のサービス「ココセコム」のCM。歩行中の人間や電柱で作業中の工事人らが、ハイエナやハゲタカに変身するシーンで構成され、最後に「野獣はふだん、ヒトの顔をしている」とのコピーが表示される。

 同社広報室によると、身の回りの危険を猛獣で表現したが、21日以降、「電気工事人を侮辱している」などの抗議が数十件届いた。「動物を悪として描いている」との声もあった。同社は29日、一部手直しして改めて放送することを決めた。すぐには対応できないため、打ち切りは来月1日から。広告枠には当面、同社の別の商品のCMを流す。


問題のCM動画
(リンク先はニコニコ動画なので無料アカウント取得が必要です。
 また、コメントが邪魔で画面が見づらいので、コメント非表示にしてからの閲覧を推奨します)

CM単体としては、少なくともソフトバンク携帯の「仲間はずれCM」ほどの嫌悪感を抱かなかったけれど、同時にセンスも感じないという程度だろうか。
しかしこれ、クレームを招くには十分な内容だと思う。

「動物を悪く描いている」というのは個人的には意味不明な批判に思える。欲情や悪意を抱く人間を、オオカミやハゲタカなどに擬獣化(…ムリヤリひねり出した表現ですまんが、大体通じるよね?)する手法は、コメディー映画やマンガなどではむしろ古典的と言っていいし、多くの慣用句やことわざなどにも用いられる記号的表現であるからだし、この観点でのクレームはむしろ「映像表現狩り」だと思う。

しかしやはり、「電気工事従事者のイメージを貶める」というクレームは妥当だろう。
案外、日頃工事や検査の仕事に就いている方々は寛容かもしれないが、例えば自分の夫や父、兄弟が工事の仕事をしていたら腹が立つと思う。

ココセコムは、全ての人を対象としているが、特に独居の成人(特に女性)や子供をターゲットにしている。何かあったらすぐにプロの警備員が駆けつけるというサービスで、
「一見普通の人でも、一皮向けば不審者や犯罪者かもしれない。だから『もしも』の時に備えてココセコム」
というのがこのCMの趣旨である。

・サラリーマン風の男性⇒オオカミ
・電柱?で工事中の人⇒ハゲタカ
・フルフェイスのバイク乗り⇒黒豹

にメタモルフォーゼさせて、「みんな野獣かもしれない」ということを表現しているわけだが、明らかに工事業者=ハゲタカの例だけ具体性が高すぎる。
実際にはこうした電気や回線などの工事は夜間は行わないようだし、どうしても行う場合には車止めなどを使い注意を促す。また、夜間に工事を行っている場合は、緊急のインフラ復旧などののっぴきならない事情を抱えている場合が多い。

以前、子供や保護者が時節柄仕方がないとはいえ「人と見れば不審者と脊髄反射する」ことについてのエントリーを書き、ご意見もいただいて勉強になったのだが、その中のひとつに、「人の善悪をとっさに見分けることは大人でも容易でない、まして子供の判断力はまだ低い」という内容があり、説得力があった。
それゆえに、このCMを見て、低年齢の子供の見る目が
「僕たちのために電気工事をしてくれるおじさん」
から
「不審者の変装かもしれない」「高いところから獲物を物色している怪しい人」
に変ってしまう例が1つでもあったら浮かばれない話だと思う。低学年くらいだと、バカな子は徹底してバカですからなー。

まあ製作側の意図としては、
動物がオオカミ・黒ヒョウと陸上ばかりなので、空の動物もいっちょ入れときたい⇒高い場所⇒じゃあ工事の人
というものにすぎなかったんだろうけど、このご時世、クレームが来るかもという可能性を考慮に入れなかったのもうかつといえばうかつ。
職業などを限定する表現でなく、例えば「アパートやマンションの高い階に住んでる人間が、物色するように望遠鏡や窓から眼下を眺める⇒ハゲタカ」などのほうが、一般性が強いだけに恐怖をそそると思うんだがどうか。

このニュースやプレスリリースでは、電気工事業者からのクレームと動物愛護方面のクレームだけが紹介されていたが、最後の黒豹変化も、バイク乗りの人に対して相当失礼だと思うがな〜。
黒づくめのスーツやフルフェイスで不審感・恐怖感を演出したつもりなんだろうけど、安全性で言えばフルフェイスにしくはないと思うんだが。

このCMに感じる不快感がもうひとつあるとすれば、サービスの性質上、「CMで危機感を煽ること」が、そのまま「自社サービスの需要を高めること」に直結しており、それをストレートに、しかも配慮を欠いたやり方で表現してしまったというイヤらしさだ。

例えば…なんでもいいのだけど歯磨き粉を例に取ってみよう。
歯磨き粉のほとんどは、「歯周病」「虫歯」「口臭」などの予防をうたっている。ここでは歯周病に限定してみる。
CMでは、顕微鏡の映像や模式図などを用いて、「歯周病は身近で厄介な病気」と強調し、その予防のために商品を売り込む。
消費者はそれを見て、歯周病の予防や、現状維持などのために商品を選択して買う。

対してココセコムのサービス購入の動機は、「危機感」そのものである。
「あの人もこの人もみんな野獣」と煽り、「言われてみれば夜道や帰り道も安全じゃないかもしれない」という危機感を持つことこそが需要となる。
歯磨きにしても、予防意識や危機感が商品購入の動機となることは同じだが、そこに「歯周病」という実在する病気が介在している。
歯周病の情報や予防の衆知は、学校や医療機関も行っているし、「歯磨きのCMをすることが歯周病を産む」ということではない。
その歯磨き粉の効果自体が実際どうであれ、歯磨きは歯周病の予防や改善・口内衛生状況改善に効果的だし、歯磨きを怠った場合、まめにしていた場合よりも歯周病にかかりやすくなるのは事実だ。

それに対し、安全保障系のCMは、「うちも安全じゃないかも」と煽られることで直接的な需要が発生する。

また、歯磨きを適切に行うことで歯周病にならずにすんだり、軽微に済ませられることはあっても、「ココセコムを契約しているから犯罪に巻き込まれる確率が下がる」とはいえない(原則的に、『何かあったときに色々してもらえる』という性質なので)。
警備保障会社契約のステッカーを玄関に貼っておくと多少の抑止効果があるとは聞くが、携帯型のココセコムの場合、持っているということが必ずしも襲撃者の目に留まるとも限らないし、逆に目に見えるような場所に携帯していると奪われる危険性もある。

別にサービスの意義を否定するわけでなく、あくまで「CMがマッチポンプになりがち」だと思うのだ。
で、そういう中で更に特定職業の従事者のイメージを不当に貶めるような表現を用いるのは、思慮もセンスもないなあ、と感じた次第。


posted by 大道寺零(管理人) at 14:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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