2007年07月13日

1は9乗しても1(2)地デジに疑問符

前回の記事内にまとめるつもりだったのだが、長くなったので分けた。

さて、実質的にあまり緩和されていない「ダビング9+ムーブ1」の地上デジタル放送コピー制御の規制なのだが、著作権者サマたちにとってはかなりご不満の様子で、ものすごい渋々としたコメントが並んでいる。
まあはっきり言ってこの人たちの「国民みんな海賊盤業者」論のせいで日本の地デジ仕様が世界で孤立して、コストばかり高くアナログ時代よりも不便なTVライフを強いられているというわけで、口元はもはやキツツキのようにとんがっている模様。

(引用元は、特に指定のない限り
「コピーワンス」見直しは、コピー9回+1回へ
です。)



日本芸能実演家団体協議会(芸団協)

ただし、今回の譲歩の背景には“私的録音録画補償金制度”の存在があります。制度そのものが存続しなくなくなるようであれば、いついかなる時点においても、n回について再度検討する場を求めます。また、今回の緩和が海賊版の温床となるような場合にも同様で、関係各社や行政によって、注意をしてほしい。10回は暫定的な解ではありますが、委員会の成果」と一定の理解を示した。

 ただし、EPNの推進を訴えてきたJEITAについて芸団協は、「委員会で権利保護と利便性の解を訴えてきて、着地点を求めてきたが、JEITA だけが“解決策はEPNだけ”、と言い続け、COG+n回の話し合いに入ってこなかった。さらに、文化庁の委員会で私的録音録画補償金制度廃止を訴えるなど、当委員会の合意を壊そうという動きをしてきたことは極めて遺憾」と牽制した。


映画業界
「10回という回数に驚いている。映画においては、コピーネバーが原則。携帯電話、iPod、PSPなどの機器での利用という理由もあるとはいえ、権利者の意思を離れた利用には不満を持っている。映画のワンソース・マルチユースのビジネスモデルが疎外される。COG+回数制限という方針には納得しているが、われわれの主張は1回2個。9回10個は受け入れがたい。しかし、この場で席を立って退出するようなことはしません。村井主査におかれましては、映画界のこの苦悩ともいえる微妙なニュアンスをくみ取ってほしい」と訴えた。


(他のニュースソースより)
コピーワンス問題,「回数限定で1世代のみコピー可」の方針を確認,焦点はコピーの回数に (Tech-On!)

映画業界としては,本来はコピーを一切認めていない。テレビ放送については例外的にタイムシフト用に認めている。本来,HDDに記録すれば,タイムシフトの用途であればHDDで十分なのでは,とも考える。ただし,これまでの議論を尊重して,1回の複製は認めるということで,譲歩したい」と主張した。さらに,
番組ジャンル別に回数を変えられないものなのか。例えば,劇場用の映画やドラマは1回,その他は複数回とするなど可能ならば検討してもらいたい」と要請した。これについては,会議の出席者の中から,「コンテンツ利用記述子を利用するなどすれば可能性はある」という見方が示され,放送局設備や受信機の負担なども含めて,ワーキング・グループで検討課題になる可能性もありそうだ。

(注:「タイムシフト視聴」(⇔「リアルタイム視聴」))


映画業界はまだまだ意外に強気。「映画は特別扱いしろ」だの言ってしまうし…
もうそんなに大事ならテレビに流さなければいいんじゃない?

放送局からの意見
「回数を取り出してみると、ハード的な不良のバッファを含めても、“私的利用”の範疇からすると多すぎるのではないのか。それが率直な思いです。回数に注目が集まるのはやむを得ないが、もともとの精神は適正にクリエーターに対価を払うということ。違法な流通を防ぐなど、やらないといけないことは多く、重く受け止めている。便利になったはいいが、海賊版が氾濫したら、なんのための緩和かわからない。どうやってそれらの問題を解決していくのか、議論はまだ必要。情報通信政策部会への報告についても、対策をパッケージにして、取り扱っていくべき」。


そしておなじみJASRAC。
さすがユーザーを泥棒扱いすることにかけては「一日の長」ではすまないキャリアを持つだけあって一字一句の味の濃さが違う。

「“知財立国”といっているのに、緩和で進んでいくのは残念。法律によるエンフォースメントもない。海賊版は“海賊版業者”が作るものというのは過去の話。デジタル機器に詳しい若年層も増え、一部の不届き者の愚行でなく、だれしもができうるものだ。10回は到底納得できないが、聞き置くことにする。暫定案と認めながらも、3+1という従来の方針をいずれは理解いただけるよう、訴えていきたい」とした。


うわあやっぱりすごい風格!
「聞き置くことにする」。
なかなか言えないよ、「聞き置くことにする」って。

なんというか…
どこの時代劇よというか…
どこの家老様かお殿様というか…

最後にもう一つ。

地デジ番組の「コピーワンス」規制に抜け道 (YOMIURI ONLINE)

 「コピーワンス」は視聴者に大変評判が悪く、総務省は2005年にコピーワンスの見直しを放送事業者、機器メーカー、著作権利者に提案している。これを受け、有識者による委員会は2年以上にわたり見直しを検討してきたが、この3月、各者の思惑が交錯する中でたどり着いたのが「ムーブの回数を増やす」というオチだった。

 実は米国を始め諸外国では地デジ放送にコピーガードなどはかけていない。ハリウッド映画も、ディズニー作品も放送局が放送すれば普通にパソコンで録画できる。この点に関して日本の放送局や権利者は「我々が世界で一番進んでいるのだ」と胸を張る。


いやほんと、このお花畑連中を早くどうにかしないと…


posted by 大道寺零(管理人) at 21:41 | Comment(4) | TrackBack(1) | 地デジに疑問符
この記事へのコメント
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200710/07-1001/
XEL−1という有機ELテレビ出ましたー
動画に強いらしいですよー
Posted by なぽりん at 2007年10月02日 13:36
>>なぽりんさん

ついに第1号出ましたか!
実は有機EL研究開発の第一人者・城戸先生という方が山形大学の先生でして、有機ELを県の工業の目玉にしようというプロジェクトがけっこう前からあるので注目していました。
これまでも、携帯電話やデジカメ、ポータブルプレイヤーの画面に採用されているのですが、「画像が美しい、動画に強い、薄くて加工しやすい」という多くの利点を持ち、次世代ディスプレイの切り札といわれながらも、コストの問題がなかなかクリアできずに、肝心のTVとしての製品開発が進んでいない状況でした。
このXEL-1も、11インチで20万と高価ではありますが、皮切りの製品がリリースされた意義は大きいと思います。
コストの問題と共に、「大型化しづらい」のも有機ELの弱点なのですが、現在どの辺までクリアできているか興味があります(うちは25程度あればいいので…)。

うちのテレビが天寿を全うするまでに、うちでも買える程度の価格で市場に多く出回ればいいな〜と思うんですが、さすがに夢想かなぁ…
Posted by 大道寺零 at 2007年10月02日 14:29
おーキド博士ご存じでした(っていうと確信犯的にポケモンっぽくなりますがwそろそろ教授でいらっしゃいましたか)
当時から講演にひっぱりだこでしたが、とうとう実用化しましたね〜うひゃひゃ
XEL−3くらいで買っちゃいそうです。
Posted by なぽりん at 2007年10月02日 17:31
>>なぽりんさん

>城戸博士

勿論知ってますよ〜。去年山形大学工学部には「有機デバイス工学」専攻科もできましたし。現在は教授でいらっしゃいますね。

有機ELはディスプレイとしてだけでなく、照明器具としても注目されているらしいです〜。

なぽりんさんは毎日バリバリ稼いでらっしゃるご様子なので、XEL−2あたりで一つご購入いただいてレビューを拝見したいです!
Posted by 大道寺零 at 2007年10月03日 14:33
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