2007年07月29日

振り逃げ3ラン日記

高校野球神奈川県予選・準決勝(横浜VS東海大相模戦)において、4回表に振り逃げ3ランを決め、これが決め手となって勝利というニュースに驚き、実際の動画を見てみた。

問題の場面(YouTube)

強豪同士の対戦、しかも勝負が決まったかという瞬間に痛恨のミスで敗退。今回はキャッチャーや監督の注意不足が招いた単純なボーンヘッドと言えるが、同じような状況に、「ドカベン」の明訓VS白新戦(後述)を思い出した方も多いのではないだろうか。


ルールにさほど詳しくないもので、「振り逃げ」というのは何度説明されても、そのたびに分かった気になるけれど後になるとよくわかってなかったりするものの一つだ。
で、自らも中学まで野球をやっていて今も野球観戦ファンの相方に聞いてみると、
『3ストライク・三振』が無条件に『バッターアウト』となるわけじゃなく、それぞれ独立したジェスチャーとコールを審判から受けなければアウトは成立しない
ということがキモのようだ。

状況を箇条書きにして見て行くと、

<状況>
・4回表:東海大相模の攻撃
 ツーアウト ランナーは1・3塁
 カウント2−2

・バッター菅野がハーフスイング
投球はワンバウンドし、捕手が捕球
・主審、一塁塁審へスイング確認をリクエスト。
 塁審からスイングの判定が告げられ、3ストライクが確定する。
主審、「ストライク」のコール。
 <重要>まだ「バッターアウト」ではない。コールもなされていない。


★2アウトなので打者は振り逃げが可能。
★横浜のキャッチャーが、ここで打者にタッチするか、一塁に送球していればアウトとなっていた。しかしそれをしていないためアウトは成立していない。


アウトコールと勘違いし、横浜守備陣が引き上げる中、打者は走り、1・3塁走者とともにホームインして3得点が成立。
・東海大相模が逆転。

そういえば解説してもらうまで、「ストライク」と「アウト」のポーズ(親指を立てた手の形)が同じということを意識したことがなかった。

「投げて打って走るっていう動作自体は簡単だけど、野球のルールってものは実はものすごく複雑だから、審判、特に主審っていうのは大変なんだよ。まあこれはボーンヘッドだけども。」と相方。

「そもそもどうして『振り逃げ』をしていいの?」という疑問にはこちらのルールの解説が分かりやすかった。

それにしてもこの横浜高校のキャッチャー君は1年生だそうで…辛いだろうなあ。
しかし、1年生で横浜でマスクをかぶれるということは(控えの選手らしいがベンチ入りするだけでも大変だろう)相当将来を嘱望されている選手なのだろうから、間違っても変な方向に思いつめないで気を取り直してほしい。

また、この時のバッター・東海大相模のエース菅野君は、原巨人監督甥っ子ということで、監督自身が球場に応援に来ていたとか。

この記事を書いている間に、結局東海大相模は惜しくも決勝敗退。せっかくだから甲子園に出てきてほしかったのだけど、なんとなく残念(優勝は桐光)。


*明訓VS白新戦 ルールブックの盲点*

「ドカベン」作中、山田たちが2年次の神奈川県予選、対白新高校戦の名場面。

白新のエース・不知火は新たに編み出した超遅球と本来の剛速球を使い分けて明訓を翻弄。加えて審判さえ意識を失うほどの異常な暑さの中で行われる壮絶な流れとなるものの、気力充実の不知火は絶好調で、完全試合を果たそうかという勢い。
延長10回表、名訓は満塁のチャンスを作り出すものの結局得点できずに攻撃を終える。

詳しい経過は以下の通り。

・1番岩鬼:死球 ⇒0アウト/一塁
・2番殿馬:ヒット(秘打ハイジャック)⇒0アウト/一・二塁
・3番山岡:犠打失敗⇒1アウト/一・二塁
・4番山田:内野安打⇒1アウト/満塁
・5番微笑:スクイズ⇒ピッチャー前に小フライ/捕球されてスクイズ失敗⇒2アウト/満塁
・三塁走者・岩鬼はスクイズ失敗と判断、リタッチしないまま本塁に滑り込む。
・一塁走者山田が離塁していたため、不知火は一塁へ送球⇒一塁にタッチする⇒3アウト(ダブルプレイ)

そして名訓の攻撃は終了…となるはずが、スコアボードにはどういうわけか明訓に1点が刻まれていた。
結局同回裏は明訓が守り抜き、1-0で白新学園は敗退となってしまった。
その1点はどこから来たか?
それは、細かすぎて多くの人が把握しきれていないあるルールを山田が知っていたことと、逆に野球の常識に疎すぎる岩鬼のデタラメなプレイが起こした奇跡のコラボレーションだった。

このくだりは、wikipediaの項目「ルールブックの盲点の1点」で独立項目として説明されているので、そちらから引用してみる。

この時、第3アウトはフォースプレイによるものではないため、第3アウト成立以前の岩鬼のホームインは有効である
ただし、岩鬼は三塁へのリタッチを行っていないため、白新守備陣は第3アウト成立後であっても審判員に対して彼の離塁が早かったことをアピールすれば、第3アウトを置き換えて、彼の得点を無効にすることが出来た。
しかし白新守備陣はこれを怠り(得点が認められることに気付かなかった)、さらに全員がファウルラインを越えてベンチへ引き上げてしまったことで、アピール権も喪失してしまった。

結果として岩鬼のホームインは認められ、明訓に1点が入った。


時々数年おきに「ドカベン」を読み返すと、ついここの説明部分を3回は熟読してしまう。
このエピソードは当時プロの審判までもうならせ、今でも「アピールプレイ」を説明する時によく引き合いに出されるという。
また、つけ入る隙のない出来の不知火が、野球そのものではなく、山田の深い野球知識(もっともそうでなくては勤まらないのがキャッチャーだが)と岩鬼のあまりにもムチャクチャなデタラメさに敗北を喫するという意外な展開には誰もが驚かされた。「攻撃やエラーではなくて、ルールやアピールプレーによって点が入る」というのが衝撃だった。

不知火君の高校時代の戦歴を見ると、「正直野球では勝ってる」という展開が多い(たいてい殿馬にしてやられる)ので、実にドカベン一の「悲劇のヒーロー」だよなあと読むたびに思うのだった。


上記の一件はよく「ルールブックの盲点」と言われるが、別に不備や矛盾ではなく、あくまで「普通のプレイヤーはそこまで把握しきれていないほど細かい」という意味で使われている。

横浜高校の場合は、小学生でも忘れちゃいけない基本的な振り逃げ規定であり、それゆえにホント痛恨だろうなあと思うのだった。
アピールプレイの説明に明訓VS白新戦が引き合いに出されるように、振り逃げを語る際には今後高頻度でこの試合が何度も出されるのかもしれない…


posted by 大道寺零(管理人) at 17:24 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
むーん、勉強になります(←振り逃げをあまりよく知らなかった)
野球ってこう、どうでもいいところというか、些細なところにものすごく複雑なルールがあったりするんですよね。インフィールドフライの規定とかいまだによくわからないし・・・。

振り逃げってルールにのっとった正統な行為であるにもかかわらず、なにかこう、小賢しい行為であるかのように思われるのは、「逃げ」という言葉のイメージがよくないからかな〜とも思ったり・・・。
いっそ名前を変えてみたらどうでしょうね、「ロンリーチェイサー」とかに(なんでだ)
Posted by きたかZ at 2007年07月30日 20:41
>>きたかさん

私も野球ルールには全然詳しくないので、「実はものすごく詳細なルールのあるスポーツ」と知って驚いた記憶があります。一般の人には分かりづらいルールやプレーが起こったときに「解説」や実況アナウンサーの手腕と表現力が問われると思いました。
そしてインフィールドフライは説明を見るたびに分かった気になるけどその度忘れてしまいます。

「振り逃げ」は通称であって、ルールブックの中には1度も登場しない言葉なんですね。「第3ストライクの投球を捕手が正規に捕球(ノーバウンドでキャッチャーに到達し、それをミットに収めた状態)しなかった場合は打者が走者になる」とあるだけで、解説などでも通りがいいので用いているだけなんだそうです。
まあそれにしても響きのよくない言葉ではありますよね。どうしても「食い逃げ」とかを連想して、バッター側がセコいとか諦めが悪いようなイメージを持つ人もいると思います。

>ロンリーチェイサー

解説とか試合説明の時に、アナウンサーがまじめな顔で
「5番**、この機を逃さずロンリーチェイサー」
と言ったり、緊迫した試合展開の中、監督や先輩が
「お前!あそこは迷わずロンリーチェイサーだろ!」
と選手を怒鳴ったりする場面を想像しました。

結局、
振り逃げ:3アウト認定のためには、守備も完全な捕球を行うか、タッチ・送球などそれを補完するための行為を行わなければならない
インフィールドフライ:守備側が故意に落球した場合、フォースによって併殺のシチュエーションを作ることが出来るので、そういう不公平がないように
という意味があるルールなので、そこに「野球の考えるフェアプレーのあり方」が表現されていると言えますね。

ただどうしても、「●アウトの時」とか、「走者が●塁の状況にのみ」という部分が覚えにくいなあと感じますね。ルールの大元の意味を思えば納得できる状況なのですが、なかなかパッと出てきません。
Posted by 大道寺零 at 2007年07月31日 09:59
野球中継を見ると、たまにハーフスイング等でアウトになったバッターに捕手がタッチする場面を目にして「アウトなのに嫌味なことすんなぁ〜」と思っていましたが、このタッチがなければ振り逃げ、いや"ロンリーチェイサー"ができるんですね。
勉強になりました。m(__)m
Posted by クマ at 2007年07月31日 13:42
>>クマさん

>たまにハーフスイング等でアウトになったバッターに捕手がタッチする場面を目にして「アウトなのに嫌味なことすんなぁ〜」

いわゆる「ケツタッチ」ですよね。
私も「何もいちいち…」と思うことがありましたが理由があるわけです(ロンリーチェイサー阻止)。
投球がワンバウンドしていない場合でも、「念のため」にしておくんだとか。
Posted by 大道寺零 at 2007年07月31日 16:11
つい最近、プロ野球でも振り逃げが試合を決定しましたよ。
8月2日甲子園球場の阪神vsヤクルト戦で9回表6−5で阪神1点リード。攻撃するヤクルトは2アウトながら3塁にランナーを置いて1打同点の場面。阪神の藤川球児は打者を三振にとるものの捕手が後逸した隙に3塁走者は生還して同点!…のはずが、打者走者が1塁に走っていなかったために1塁に送球してアウト、ヤクルトの得点は認められず試合終了です。ヤクルトファンの私はテレビを見ながら引っくり返りました。
ちなみにこの馬鹿者は早稲田から来た3年目の田中浩康。一応今年からレギュラークラスになった選手です。
Posted by SOKOTSUAN at 2007年08月07日 18:39
>>SOKOTSUANさん

これは…脱力の一言ですね…
ちなみに今ふとwikipediaの「振り逃げ」の項を見てみましたら、この試合のことがバッチリ追加してありました。
振り逃げを完成させたり阻止するためには、チーム全体が常に気を抜かずにプレイしていないとダメってことなんですねぇ。
Posted by 大道寺零 at 2007年08月08日 14:25
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