いわば“バージョン3”となったPS3の新モデルとは?(ITmedia +D Games)
ソニー・コンピュータエンタテインメントが10月9日に発表した新プレイステーション 3(PS3)は、HDDを40Gバイトとし従来機能の一部を見直し、値段を抑えることに重点が置かれている。発売日は11月11日、価格は3万9980円(税込)。なお、新PS3の発表に伴い、現行モデルも10月17日から値下げされ、20Gバイトモデルが4万4980円に、60Gバイトモデルを5万4980円とする(いずれも税込)。
最大の特徴といえるのが、現行の日本で発売されているPS3ではプレイステーション 2ゲーム向けのCPU「Emotion Engine」(EE)とグラフィックチップ「Graphics Synthesizer」(GS)が搭載されているのに対し、新型ではともに取り外されPS2ソフトを利用できないという点。今年3月に欧州で発売されたPS3がEEを省き、GSのグラフィックス機能の一部を備えた新チップを搭載した“バージョン2”ともまた違う、いわば3つ目のシャーシモデルとなる。なお、新モデルでもPS専用ソフトの互換性は維持している。
PS2互換性をオミットして値下げ…という方向性は、
「PS2がまだまだ元気」「そもそもPS2のゲームを持ってない」
ユーザーには朗報となるだろうが、
「今持ってるPS2が逝ったら、価格次第でPS3を買うのは十分選択肢」
という潜在的な需要を持つ現PS2ユーザーをほぼ切り捨てるものだと感じた。
そう考えると、「互換性なしで39800円」は「もう一声欲しい」印象だし、相対的に初代20Gモデルの割高感が増した(値下げされたにも関わらず)のは否めないところ。
個人的に食指を動かされるソフトがまだないことも考えると、「値下げしないよりはマシだけどまだまだ微妙」というところだ。
というか、SCEは、PS3発売前には「PS2完全互換」を詠い、ライバル機であるXBOXとXBOX360の互換性が完璧でないことをメタクソに叩いていたのに、あれは一体何でがなあったろうか、って話なわけなのだけども…
参考:後藤弘茂のWeekly海外ニュース
(注:2005年6月の記事です)
●互換性の維持はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで
【Q】 過去のPlayStationとの互換性はハードウェアで実現するのか。
【久夛良木氏】 ハードウェアとソフトウェアのコンビネーションで取る。(ソフトウェアだけで)やろうと思えばどうにでもなるが、どれだけ完璧に近い互換性に追い込むかが大事。
ソフトを開発している人は意外な、想像できないことをやってしまう。例えば、プログラムとして論理的でないけど、たまたま動いたといった。動いているけど、でもそれは全く別の理由で動いてたというようなケースがある。我々のテストもくぐり抜けて、「何だこのコードは!」みたいコードが通ってしまう場合がある。
我々は、そうしたコードに対する互換性も取らなくてはいけない。しかし、論理じゃないから、(ソフトウェアだけで互換性を取るのは)ちょっと苦しい。ハードが必要になってくるのもある。でも、今回(PS3)くらいのパワーがあれば、あるところはハードであるところはソフトでといった対応ができる。
【Q】 CPU側のコードをソフトでエミュレートする場合にはCPUのエンディアンは。
【久夛良木氏】 Cellはバイエンディアンだから、どうにでもなる。
【Q】 Xbox 360はほぼソフトウェアだけで互換性を取る。彼らは、チップを自社で製造していないから、他に選択肢がないわけだが、どう見るのか。
【久夛良木氏】 Xboxは、新世代が今年の11月に来ると、現行のXboxは旧世代になる。そうすると、Xboxは自分で自分を殺してしまうことになる。それを救う唯一の方法は100%の互換性を初日から取ること。でも(Microsoftは)それをコミットできないだろう、技術的にも苦しい。
値下げ後の価格等をまとめるとこんな感じ。
初代60G互換有モデル:54980円(←オープン価格/実勢59000円程度?)
初代20G互換有モデル:44980円(←49980円)
新型40G互換無モデル:39800円
<新型のオミット部分>
・PS2互換機能廃止(PS2用CPU・GPUともにカット)
・メモリカードスロット廃止
・SACD(Super Audio CD)再生機能廃止
・USBポート減(4⇒2)
<新モデルのユーザーメリット>
・消費電力減(380W⇒280W)
・本体重量減(5kg⇒4.4kg)…それにしても重いね;
・初代20Gモデルには搭載のない無線LAN機能あり
PS2ユーザーにとっては、
・新型登場に際し、互換性有PS3の生産は継続されるのか
・互換性が切られるならば、PS2の生産・サポートはいつまで継続されるのか
あたりが気になる部分。
互換性のないモデルがあってもいいけど、それならば有互換モデルやPS2が製造終了とならず選択肢が残されなければまずいだろってことで…。
考えてみればかつては、任天堂をはじめ他社のハードでは、ハードが変われば互換性がないのが当たり前だったのだけど、なまじPS1・2間の互換ができたために、「PSを名乗るのに互換できないのかよ」という思いがどうしても強くなってしまう。
いっそ最初から「PS」というシリーズ名を付けない新ハードとして売り出していれば…それはそれでやっぱり苦戦しただろうなあ。
何より、開発段階で「旧シリーズとの互換はない新しいハードです」としていたのならいざ知らず、他社ハードに対し「任天堂なんかハナから互換できないし、XBOXだって一応互換有りとは言ってますけど全然ダメダメじゃないですかプププ」と煽るだけ煽っておいて、その上一度は互換できるモデルを発売しておいてコレじゃなあ。
確かに「BDプレーヤーとしては格安」という評価もあるけれど、今のところBDという規格自体に興味がないし(興味が出てきたなら再生機能だけのものを買う気はなくなるだろうし…)なあ。
ソニーとしては、かつてPS2とDVDがそうであったように、「PS3をBD普及の起爆剤に」「BDへの興味をPS3購入のモチベーションに」という色気が多分にある(むしろBD普及の方がSONYの至上命題とも囁かれている)のだろうけど、あのときとは全く状況が違う。
当時はDVDのライバルとなる存在はなかったけれど、現在はまだまだ「HD-DVD対BD」の次世代光学メディア陣営の覇権争いの行方をユーザーが日和見しながら様子を伺っている状況。また当時はレンタル店が品揃えをVHS−DVDにシフトしつつあったことも順風だった。
さらに、VHS⇒DVD間の画質向上やサーチ・スキップの簡単さ、省スペース性の向上は誰の目にも画期的だったが、「DVD⇒BD」の差に関しては正直なところ「そんなに画質・音質の違いがあるの?」「どうせうちのテレビは大画面でも高走査でもないしねぇ」という考えのユーザーが多いのではないだろうか。
また現在の仕様では再生のみで、ディスクへの録画は行えないのでそこもまた「そんならいいや」という反応の元になっている。
こうした、ゲーム機なんだかハンパなAV機なんだか、はたまた劣化PCなのか?という方向性を持ち出したのは例の悪名高いクタラギ某氏体制なのだけど、高級レストランだか何だか知らないが、大半のユーザーの求めているのは「ゲーム機」であって、「ハンパな性能のAV機器」「劣化PC」をわざわざ購入してリビングに置かないんだよなあ…という気がしてならない。
新メディアのAV機器が欲しいならば、録画のできる大容量HDD付きのデッキを買うし、PCがいるならPC買うし…と考えるのは私だけではないと思うのだけど。
今回の値下げに関しては、「年末商戦の前に1段階ダウンはあると思った」という声が多い。その一方、SCEの平井氏が
「欧米では値下げするが国内ではまだ予定がない」
と発言したり、先日の東京ゲームショウでも値下げに関するアナウンスがなかったことから、「つい先日買ったばかりで涙目」というユーザーもちらほらいたようだ。
(平井氏インタビューの起こし記事を見ると、「値下げについては何も言っていなかった」のだが、発言のニュアンスなどから「年内の値下げはない」宣言と読み取った人も少なくなかった)
参考:プレイステーション3の値下げ発表は……なし! (ニュースエクスプレスブログ)
昨年は、当時社長の久多良木健氏(現・ソニー・コンピュータエンタテインメント名誉会長)がプレイステーション3の電撃値下げを発表した基調講演だが、今年はハードの内部部品の効率化や半導体の生産コスト削減による「将来的な値下げ」はほのめかされたものの、「価格は大事だが、いまはソフトを充実させることに戦略の軸を置きたい」(平井社長)ということで、値下げ発表はなかった。
いずれにせよ、かつてPS2を発売開始当時に当初の価格39800円で購入し、年々ガスガス値下げされていく様子を「何ソレ;」と唖然としながら見ていたユーザー(私もその一人だが)にとっては、「どうせもっと下げるんだろ」「本当は"勉強"できるっしょ」という意識が根っこにあり、こういう小出しの値下げは結局たいした起爆剤にはならず、むしろ「次の値下げ待ち・仕様変更待ち」の買い控えを産むような気がする。
また、「PS2が壊れたら…」という購入予備軍の頭の中には常に「PS2は壊れやすい」「いつポックリ逝くか分からない」という認識がある。うちのように「初代が逝って2代目」の買い替えを余儀なくされた側としては、「他の光学メディアゲームハードに較べてもとにかくピックアップが弱くて脆いゲーム機」という印象は拭えないのではないだろうか…
互換性以前に、とにかく「もうちょっと脆くないゲーム機を作れ」と言いたいんだ。
実際一番の問題となるのは、互換性の有無をこうしたネットニュースなどでチェックしている層ばかりではないということだろう。ライトユーザーには今回の仕様の違いはやや分かりづらく、混乱を招く可能性が高い。
販売店が表示等をいかに行うかにもよるだろうけれど、クリスマスに子供にせがまれて購入するジーチャンバーチャンカーチャンあたりになると、マジで↓AAのような状況が多発しそうなのだが…

まあ銭金以前に、リビングのTV周りはスッキリさせられるならそれに越したことはないわけで、スペーシング・収納的にも互換はあらまほし(互換があるならPS2はしまったり、売却処分できる)と思っている奥様も多いんじゃないかな。そうでなくてもPS3は筐体自体がデカいし。
なによりやりたいゲームが皆無だし、オンラインしたところで箱○ほどのコンテンツがあるワケでも無いし。
クタタンが失脚してもしてなくても結果は同じだっただろうね。
PS3諦めてPSPにシフトした方が、まだ自分のクビを絞める力が弱まりそうってのが凄い。
ウチのWiiはヴァーチャルコンソール込みでフル回転ですよ。ある意味完全互換以上で。
GCのソフトも遊んでるし、VCは数えてみたら13本ゲーム購入してた。
PC88やMSXなどの地獄の釜の中でゲーム人生を歩いてきたZとしては、そもそも1だけでも贅沢すぎる話なんですが。
(ドリ●ャスもサ●ーンの互換性がなかったのも同じ状況・・・ゲフゲフン)
新しい技術を優先すると技術上古い技術を捨てざるを得ないし古くからのユーザーも斬り捨てる事になる。
難しい問題ですなぁ。
どっちにせよ買う人は買う、買わない人は買わない。
>いまさら値下げしたところでWiiと箱○ははるか彼方なワケで・・・
そうなんですよねー。
各次世代機(もう現行なので「新世代機」とでも言うべきか)が発売されてそろそろ1年になるわけなんですが、wiiと箱○に関しては、具体的に興味のあるソフトとかやってみたいサービスを明確に思い描けるんですが、PS3について語れることって
「潜在能力は高いんだろうけど」「肝心のソフトがねえ」の2点だけで、発売前とほとんど変わらないんですよね。ライバル2機が着実に実績や評価(ネガティブな使用感であったとしても、それだけ買った人がいるということですしね)を得ていることを考えれば、いまだに「やればできる子なのかも」程度しか語ることがないPS3は1周ならず取り残されていると思います。
私もこれといって決定的に購入を決めるタイトルないんですよね…オンラインで何かキラーソフトを取り込み、かつ効果的なパック販売をすれば起死回生はあるかもしれませんけど…次のモンハンもwiiに持っていかれましたしねえ。
平井社長以下現体制は頑張ってはいるんでしょうけど、いかんせんクタラギ氏による「いらん負の遺産」とか、「高級レストラン」「高級家電」というコンセプトの残滓処理と懸命に戦うのに手一杯という印象を受けます。
>PS3諦めてPSPにシフトした方が、まだ自分のクビを絞める力が弱まりそうってのが凄い。
ものすごく的確だ…すごくわかりますソレ。
>ヴァーチャルコンソール
実はengさんの日記で拝見するたびに面白そうでひそかに刺激されまくってます。wiiは「あくまでゲーム機に徹し、現時点でできるサービスを模索し、勿体つけずにユーザーに提供している」点が高く評価できると思います。
>>きたかさん
「互換性をどうこう言うのは何年もゲームをやってきたミドル〜ハードユーザーであって、ライトユーザーはそんなのこだわらない」という意見もあるようですが、ライトユーザーやエントリーユーザーにとっては値下げしてもなお敷居が高い、つまり「やってることがハンパだよなあ」と思うのです。
振動コントローラーの特許問題が解決したところで、振動コンを同梱するような気前のよさがあればまた違ったのかもしれませんが(私は別に振動いりませんが)。
>そもそも1だけでも贅沢すぎる話なんですが。
PS1(特に初期)のゲームは、「売れるかどうかわからんけどとにかく目新しそうなもの作ってみるか」「今までできなかった立体表現で遊んでみるか」という勢いだけはある実験作・意欲作が多かった印象があります。FCと同じで鼻息だけとか、何じゃこれ!ってゲームも多かったですが、そういう自由度というか活気があって好きでした。(初期も初期ですが、「ジャンピングフラッシュ」大好きでした)
PS2になってからは、制作費が膨らみ、「失敗できない」という意識からか版権ものや既存シリーズの続編ものが増えて、保険のかかった「定番&大作主義」が主流となり、萎縮した感じが強くなったように思いました。
そんなわけで、「1とは互換」なのは、微妙だとは思いつつも地味に嬉しくないこともないのですが。
ドリキャスは、当時の回線速度がせめてADSL8M普及程度&日本語入力がもうちょっとマシであればまた展開が違っていたかもしれませんねえ。
>>風さん
>互換性を大切にすると新しい技術が犠牲になる。
新しい技術を優先すると技術上古い技術を捨てざるを得ないし古くからのユーザーも斬り捨てる事になる。
まさにそうですね。PS3に関しては、私は最初から「互換なしで新技術で勝負のハードにする、PS2は2で販売継続する」
という割り切った形で新世代を強調し、エミュレート機能切り捨て分を低価格に反映させるというコンセプトでもよかったんじゃないかと思います。
今回は、「最初は付けてた互換機能を外す」という形だったので本来不要だった反発を招いている気がしてなりません。
PS1草創期は、SCE自身が魅力的な新作ゲームをいろいろ発売して、「PSはこんなことができるよ」とアピールしたのが功を奏したと思うのですが(アークザラッド・パラッパ・ワイルドアームズ・トロシリーズ・ぼくなつ・グランツーリスモ・みんゴル)、PS3ではそういうファーストパーティーとしてソフトを供給する努力(もしくは体力)が今ひとつ感じられないんですよね…