多分、「松崎しげる版」と言ったほうが通りがいいかもしれない。
秋にNHK-BSで放送したのを録画して、先日相方と一緒に見ていたのだが、連載時からのけっこうコアなファン(コブラをはじめ寺沢作品を大体所有)であるところの相方は前半が終わらないうちに
「オレにはちと無理」
とリタイアしたのだった。
彼のリタイアポイントは、松崎しげるの声とか、出崎演出とかそういうことではなく、「原作の魅力の肝である部分がオミットされまくってるのが生理的にダメだ」ということだった。
具体的に言うと
●サイコガンの表現
知っての通りコブラのサイコガンは左腕に仕込まれている。
で、撃つ時には外した左腕(義手)を右手に持ったり口にくわえたり、あるときにはぶん投げたりしているのだが、この劇場版だと
・さあ撃つぞという時に左腕が光り
・光った後に腕がサイコガンに変形している
・撃った後はさりげなく腕に戻っている
という表現になっている。
(wikipediaによれば、「劇場版では義手が何処かに転送されてサイコガンが現れる描写」とあるのだが…何だ。「何処か」って。)
言うまでもなくコブラのアクションのカッコよさの最大ポイントであり、相方が拒絶反応が一番強かった部分。
確かになあ…
自分の好きな作品で考えてみると、例えば「どろろ」の百鬼丸の殺陣において、腕に仕込んだ刀で戦うとき、義手は振り払ったり口にくわえたりするからイイわけで、腕がミヨ〜ンと光って刀に変形…では確かに萎える。
「大体これじゃクリスタルボーイを倒すときのサイコガンパンチが撃てないじゃないか!どうするんだ」と相方はご不満だったが、映画版では、クリスタルボーイの肋骨をサイコガンの先にくっつけて撃ち抜くという演出となっていた。同作品では、原作と違ってドミニクがこの肋骨で刺し貫かれて殺されているので、仇討ちという意味合いになっているのだけど、久々に原作を引っ張り出して読んでみるとやっぱりサイコガンパンチのほうが数段カッコいいと思う。
●タートル号のデザイン
これもかなり違っている。製作側としてはスマートにリファインしたのだろうけど、まあ「タートル感」はないなあ。
●その他寺沢テイストの不足
ギルド雑兵や銀河パトロールの兵士のデザインなど、スターウォーズあたりからとってつけたような感じで、独特の「寺沢感」が足りない。
そしてなんといってもアヒルが出てこない。これは致命的かも…
「コブラ」というのはそういう所々のテイストや"寺沢感"が最大の魅力の作品だから、色々オミットされているのは確かに辛いと思うのだった。
特に、SFテイスト(むしろアメコミテイストというべきか)や未来感の中に絶妙にアナログ感が混じっているのが美味しいところなんだけど、デザインのリファインとか、なまじ当時最高のアニメ技術を見せようと気張ったせいか、アナログ面が削られているのは惜しいなあ。
その他私が久々に見直してみて感じたことなど。
●キャスティング
この映画が作られた当時は「えぇ〜なんで松崎しげる???」とけっこうブーイングもあったのだが、松崎しげるの声質とコブラはそんなに相性が悪くなくて驚いた記憶がある。
ただやはり声の演技が本職でない哀しさだろうか、所々で「コブラを演じている」というよりは「単に松崎しげるがしゃべってる」のでしかない部分がけっこう気になった。
これはストーリーやセリフ自体がかなりウェットな話になってるので、そこからの違和感もあるのだろうけど…
でもまあ及第点の範囲だと思う。
一番聞いててきつかったのは、中村晃子のジェーン。
何だってあんなにオバさんくさいんだ…当時まだ32歳なのに…
中村晃子は当時ちょいエロな路線でそこそこ人気があった記憶があるが、声だけ取り出すとえらい悲惨なことになってたんだなコレ。
また、ドミニク役は風吹ジュンで、これも中村晃子ほどじゃないけどやっぱり辛い。
いや、風吹ジュンは好きなんだけど、あの独特のちょっと舌が回りきってないような喋り方は、風吹ジュンの顔や雰囲気と一緒にあってこそ魅力的なのであって、やはりアニメの声となると「何だかまどろっこしいだけ」という印象になってしまう。
この二人の起用は、「コブラ」の持つアダルト感と絡めようとしたタイアップなのだろうけど、結局姿が見える時とは違いすぎて期待値にそぐわない結果になった気がする。声の世界というのは奥深いもんだなあ。
劇場版では三姉妹のうち最後に生き残るのはキャサリンで、こちらは藤田淑子が無難に演じている。ラストシーンで存在感を示す役なので、ベテランプロに任せて正解だったと思う。ここでもキャスティングを外してしまっていたらもう目も当てられなかったのでは…(藤田淑子は「スペースコブラ」ではジェーン役を演じた)
というか、サンドラ役で田島令子(オスカルやエメラルダスなど声優としての実績あり)出ているわけで…ジェーンはこっちのほうがよっぽど良かったんじゃ…
ちと横道に逸れるが、TVアニメ「スペースコブラ」でのコブラ役は野沢那智。悪くはないけどちょっと違うかな…と思いつつ見ていた。
「コブラ役は誰がいい?」という話になると必ず提案されるのが「山田康雄!」という声だ。
実際企画段階では、寺沢サイドからは山田康雄氏のキャスティングが熱望されていたそうだが、「ルパン」とイメージがかぶるのでは(両作品共に東京ムービー製作)という理由で野沢那智氏にお鉢が回ってきたという。
コレ、返す返すも勿体無い話だ。
大体、その頃のルパンは、モノマネのネタになるコミカルキャラクター(いわゆる「ふぅ〜じこちゅわ〜ん」な喋り)が定着しきっていたし、山田氏はクリント・イーストウッドや初期ルパンのようなクールで硬質な演技もできるのだから、十分に「かぶらせない」ことが可能だったと思うのだが…
(もうちょっと調べたら、山田氏自身も「アニメの声はルパンのみに絞る」と義理立てしていたらしく、やっぱり実現し得ない話だったようだ)
今となってはもう「山田コブラ」を見ることは永遠に出来ないわけだし…あー勿体ない。
●音楽
出崎演出には合ってないこともないけれど、随分大げさで「コブラ」という作品カラーにはどうなのかな?と思う。
音楽担当は東海林修で、前年に「さよなら銀河鉄道999」の音楽も担当している。そして「コブラ」劇中音楽が「さよなら999」の曲に所々似まくっているのがかなり気になってしまう。
「さよなら〜」の音楽は当時とても好きで、「再会〜LOVETHEME」なんて耳コピーで何百回ピアノで弾いたかわからん想い出もあるのだが、当時から「スターウォーズ」「スーパーマン」の音楽に激似だという批判はあって、言われてみればその通り(ちなみに「さよなら」の内容についてはもう「SW」に似てるどころの騒ぎじゃないのだが)、パクリといわれても仕方がない曲が多い。
…ということは間接的に「ジョン・ウィリアムズ似」ってことになるんだろうか?
ともあれ、この大上段な感じは「999」の世界観にはマッチしていても「コブラ」にはどうなのか?と感じた。
●ウェット感の強い脚本・ストーリー
久々に原作を読んでみると、「三姉妹とクリスタルボーイが出てくる」という以外はもうほとんど別物の話だ。まあ脚本に寺沢武一もクレジットされているので原作者が納得しているのならいいんだけど。
そして本編を見ると、「こんなに始終チューばっかりしてるアニメだったっけか?」という気になる。
とにかく「姉妹からコブラへの愛」がメインテーマなので、やたらと「愛」という言葉が連発されるわけなんだが、基本的に「いつも美女に囲まれてはいるが必要以上にズブズブにならない(一人の女性に束縛されることは好まない)」軽妙なコブラのイメージとしてはずいぶん重い話になっているなあと思う。
話の後味(+テーマソングが追い討ちをかける)もドンヨリ重いし…
三姉妹がそれぞれにコブラを愛するというならまだ分からんでもないが、「ジェーンの愛情が伝達されたからドミニクもコブラを愛する」というような展開はかなり強引過ぎるような。
●絵
ネガティブに気になったところばかりを挙げてしまったが、25年前の作品とは思えないほどキャラクターの絵が美しい。
OPの姉妹の絵はサイケすぎてちょっと引いてしまうが…
<主な相違点>
基本的に何もかもが違う話なんだけども…
<基本的な争点>
[原作]
伝説の海賊、キャプテンネルソンの財宝をめぐる戦い。終盤、「財宝」とは実は火星古代文明の「最終兵器」であることが判明する。
[劇場版]
"伝説の旅する星"惑星ミロスを操って第七銀河を滅亡させようというギルドとの戦い。
<三姉妹の設定>
[原作]
キャプテンネルソンの娘。姓は「ロイヤル」。
ジェーン・キャサリン・ドミニクの順。
背中に財宝のありかを示す刺青があり、三人の刺青を合わせるとその場所が分かる。
[劇場版]
惑星ミロスの支配者である女王の血を引く三つ子。姓は「フラワー」。
ドミニク・ジェーン・キャサリンの順。
3人のうち生き残った1人が女王になり、惑星の行き先と命運を決定できる。もしくは3人が同じ男を愛した場合、その男がミロスの運命を決めることが出来る。
<ジェーン>
[原作]
ターベージに種子を埋められて操られ、キャサリンを殺してしまう。
その後、種子に脳を侵されて死亡。
[劇場版]
クリスタルボーイに精神を支配されたキャサリンに刺されて死亡。
<キャサリン>
[原作]
シドの刑務所から救出されるが、精神を操られたジェーンに狙撃されて死亡。
[劇場版]
クリスタルボーイに精神を支配され、ジェーンを刺し殺す。物語のラストまで生き残り、ミロスの女王として惑星と共に自爆。
キャラグラフィックが原作と異なる。
<ドミニク>
[原作]
銀河パトロール員としてスノウ・ゴリラに潜入していた。最後まで生き残り、最終兵器を入手するも放棄。
その後もいくつかのエピソードに登場し、コブラに協力を依頼したり共闘したりする。「シドの女王」編で殺された。
髪型もジェーンに瓜二つ。
[劇場版]
スノウ・ゴリラの一員で、サンドラとは親友。
クリスタルボーイの肋骨に貫かれて死亡。
グラフィックが変更されており、なんとなく「キャッツ・アイ」の泪姉さんに近いような。
<クリスタルボーイ>
[原作]
エピソード中盤あたりで、コブラのサイコガンパンチで倒される。
[劇場版]
ラスト近くまで生き残り、自らの肋骨をサイコガンで撃ち出されて倒される。
<サンドラ>
[原作]
ネルソンの秘宝が最終兵器であることを知っており、争奪戦の末にそれを手にし、コブラを追いつめる。しかし「中の人」を保護するに至らなかった最終兵器の急激な進化に耐えられず死亡。
最終兵器を独占するためにスノウ・ゴリラの部下を皆殺しにするなど残忍な性格。
[劇場版]
ドミニクとは単なるリーダーと腹心というよりも親友のような存在。サバサバして気のいい、義理堅い姐さんタイプ。
海賊ギルドの支配を嫌い、自由に生きようとしている。クリスタルボーイに挑みかかるも瞬殺されてしまう。超いい人。
<スノウ・ゴリラ>
[原作]
実質的にギルドの下部組織。略奪や強盗を繰り返す非道の集団。
[劇場版]
強盗を行うのは原作と同じだが、金品を確保したら命は奪わないなど、義賊的な性格が強い。
銀河パトロールにもギルドにも属さず、自由を標榜する独立軍隊。特にギルドに支配されることを強く嫌っている。
コブラとドミニクのとばっちりを食う形でギルドに攻撃され壊滅するも、最後まで二人を逃がそうと試みて全滅。
このエントリを書くために、久しぶりに原作の「三姉妹編」を読み返したのだが、やっぱりとんでもなく面白い。
寺沢武一といえば、CGでイラストだけでなく漫画製作を始めたパイオニアとして有名で、もうずっと単行本もCGばかり(ゆえにやたらと高い…)だけど、個人的にはこの人のペン絵の美しさこそ白眉だと思っているので、アナログ時代のエピソードのほうが好きだったりする。
そしてやっぱりアーマロイドレディはいつ見てもエロカッコいい。特に緊縛されてるシーンなんか最高だねぇ。
個人的には、第一話で破壊されたメイドロボットの中から初登場するシーンのポージングのエロさは少年誌にあるまじきレベルだと思うんだ。
この記事へのトラックバック
おっしゃる通りに寺沢先生の理想のコブラの声ってことでの指名だったとの記憶が。
声だけで言えば、松崎コブラも山田コブラも野沢コブラも、み〜んなそんな違和感は無いですよ、オレは。
実はオレのengはPC Engineから取ってます。高校生の頃からゲーセンのハイスコアにはコレでした。
コブラネタのアニパロ短編で藤田さんだったかにすごくいいのがあって、
コブラの種をまいて水をやってSDコブラをいっぱい育てあげると、そのうち1人もいなくなり、たまに宇宙をとびまわった土産話をもってきていっぱい話してくれていなくなる、というほんわかしたのがありました。
コブラは永遠に奔放なやんちゃ坊主でいてほしいというのが共感してしまいましたね。
>PCエンジン版は山田コブラ
おおお!情報ありがとうございます。
早速ニコニコにダイジェストがあったので見てみました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm362160
http://www.nicovideo.jp/watch/sm362343
最初は「思いのほかルパンまんま?」と思いましたが尻上りによくなってくる感じを受けました。好きだなあ。
野沢コブラは、「スペースコブラ」放映当時、「ちょっとカッコよすぎるかな?」と思ってたんですが、久々に機会があれば見直してみようかな…
詳細未確認ですが、来年春にコブラの新作アニメが放映されるとwikiにありましたので書いておきます。例によって山形で見れるかどうかは分かりませんけども…
>>NAPORINさん
>コブラネタのアニパロ短編
あー、ありましたありました!けっこう印象に残っています。
多分作者は樋口紀美子さんで「四季・コブラ」じゃないかな〜。単行本に入っていたような記憶があります。樋口さんはああいうちょっと切ない作品もよかったですねえ。
アニパロコミックスはなつかしいな〜。
2から25くらいまでかな?持ってました。というか今でも実家に置きっぱなしで「はよ持ってってくれ」と言われ続けてますが…
あの頃はOUTとアニパロコミックスからこんなにプロ作家(そもそもゆうきまさみがメジャーデビューするという話だけで十分に驚いたのに…)が生まれるとは思ってもみませんでした(そしてわりと長年、「椎名高志=椎名崇」と思い込んでいたのはナイショです…NAPORINさんは椎名高志ファンだから怒られそうだなあ…)。