2007年12月22日

シュリンクについて便乗して考えてみた漫画

*シュリンク=書店にて、商品保護のために本にかけられているフィルム・ビニールのこと

シュリンク(新刊本にかけられてるビニールカバー)の話 (「酔拳の王 だんげの方」)

で、色々なサイトの意見とリンクがまとめられていて分かりやすい。

私としては、有体な意見でナニだけども、
読み手としては
「ないにこしたことはない」
「普段どうしても作家買いになってしまっている中、ふとした気まぐれで未知の作家や作品に触れ、購入するのは市場としても意味があること」

と思うし、一方
「最近の客(特に低年齢層)のモラルの低下や、"万引き→新古書店転売"という流れが確実に存在することを考えればやむなしか」
と感じるのもまた事実なのだ。

<読み手・買い手として>

私が子供〜自分で少しずつ単行本が買えるようになった10代前半あたりを振り返ってみると、書店の風景は今とは随分違っていたと思う。

漫画や単行本にビニールがかかっているという状況はおよそなく、かかっているとすればそれは「相当やらしい本」だけだった。
店のおっちゃんおばちゃんの目が厳しい店、そうでない店の差はあったが立ち読みは自由で、あまり度が過ぎる(超長時間や座り読みへの意向)ようだと優しい店でも注意された。
長いこと売れ残っている本がそのままだったりもして、今よりはずっと表紙がくすんだり日焼けしたり、少しカバーが傷みかけた本も平気で棚に並んでいたが、多くの客はそれほど本の美観にこだわらず購入していたように思う。
今の目で見ると「こんなに古ぼけた本を定価で売り買いするの?」と驚く若い人もいるかもなあ…(ゆえに意外なところで初版本がゲットできたりもしたのだ)
本は今のようにどこでも買えるというわけではなく(注文すれば別だが)、書店の数も多くはなく、小規模で品揃えも豊富とは言いがたい店が多かったので、「今ここで買えること」や「出会い」が重要だった感が強い。だから、「中身を確認したから別の本屋でキレイなのを買おう」とまでする客はあまりいなかったように思う。

シュリンクされていない売り場の魅力は、「そういえば●●さんがコレ面白いって言ってたなあ」とか、「やたら力が入ってる店員POPだなあ」とか、あるいは「買いたい本の隣にあった別の本をうっかり手に取って開いちゃった」という「偶然や気軽な契機」で、「パックされていれば手に取らなかったかもしれないツボ本」に出会えるということだろう。
近年の自分の購入物を振り返ると、ほとんどが「作家買い」「タイトル買い」、もしくは雑誌で内容を大体確認したものを単行本として買うというようなもので、どうしてもシュリンク書店が一般的になってからは新規作家に手が伸びなくなっている(で、「ご新規さん」については、結局ブックオフで中身を見てから買ったりすることが多い。その後はその新刊を通常書店で購入というパターンが増えた。)。

これが「マンガ出版市場を硬直・萎縮させているのではないか」という大方の意見は、非常に体感的にシンクロできるものだ。

一部の大手書店では、平積み新刊のうち1冊・あるいはシリーズ1巻のみを「試し読み用」としてシュリンクせずに置いているところも増えた。
また、「MoonLightMile」は、あえて第1巻を「シュリンクせずに立ち読みさせて作品の良さを知って欲しい」と書店に要請して販売した。これは掲載誌「ビッグコミックスペリオール」が、ビッグコミックファミリーの中でも部数が少なくコアな存在、加えて作者の太田垣康男も、非常に良質な作品を送り出しながらも実力に対する知名度が伴わない作家(あくまで当時)であったことを考えれば、間口を広げ、作品認知度を高めることに大いに成功した例だろう(ただし、冒頭のシーンでかえって「女性中心にドッ引きさせたのでは」という危惧も強いんだが…)。

買い手として、「シュリンクがかかってるとこれが困る」というのは、これまた多くの人が指摘しているが、シリーズものなどで新刊(たとえば7巻)が出た場合、「あれ?自分はこれ持ってたっけ?」「この前買ったのは6巻だったか7巻だったか?」と自信がなくなり、結局買わずに帰ってきて別の書店やネット書店で購入するというパターン。
いやもう、「それはアンタの記憶力が老化したんだべ」と言われればそれまでなのだが、最近は「統一感重視のためか、表紙の絵がシリーズ通してどれも似たような単行本」が増え、"●●編その2"とか"**の巻"というようなサブタイトル付加のもの単行本が減ったこともあり、判別のきついものが増えたように思う。
特に福本伸行の単行本とか…浦沢直樹の「20世紀少年」なんかは、ヘタすると中身を立ち読みできても買ったんだか買ってないんだか判別が難しいし…ってこれは関係ないか;

で、判別の基準として主に用いるのが、奥付の発行日なのだが、シュリンクがかかっているとこれが見れない。
店員さんに声をかければシュリンクをはがして確認してくれるのは知っているけれど、ダブっていれば買わないもののためにいちいち剥がさせるのも申し訳ない。またレジ近辺にしか店員さんがいない場合も多く、「レジまで持っていって剥かせて確認して"その巻は持ってるから買いません"と言う」のは余計気まずいので、私のようなチキン客はつい「またにします…」となってしまうのだ。
さりとて本をたわませてシュリンクの隙間から発行日を確認するのもなあ…
まあ、店内の「新刊案内カレンダー」で確認するのも手だけれど。
最近はこのパターンで、「結局Amazonで買った」みたいなのが増えてしまった。

これは書店ではなくて出版側への要望…というかシロウト意見で笑われるかもしれないが、「書店はほとんどシュリンク導入」な時代になったのだからそれに合わせて、奥付をカバー裏表紙部分に印刷し、確認が簡単にできるようにした方が、出版社も書店も客も幸せになれるのではないだろうか。
カバーはカラー印刷なのでやはりコストの面で現実的ではないかもしれないが、カバー折り返し部分に奥付が印刷されている単行本もあるし、できんこともないのでは?と思うのだが…

また、シュリンクをキレイにかけるのも技術がいるもので、たまにシュリンクがきつくかかったために、たわんでしまっている本がある。温度が高すぎるとこうなるらしい。

素朴な疑問なのだけど、あのシュリンクは1枚何円(フィルム代のみ)のコストになっているんだろう。(例えば一般的なマンガ単行本サイズで)

<売り手になったつもりで>

考えてみれば、店側だってシュリンクなんかかけずにすめばかけたくない筈なんである。
フィルムはタダじゃないし、シュリンカーも安くない。シュリンク作業は熱でフィルムを接着させるので夏は暑い。
けれどもそれを「せざるを得ない」のはやはり

・万引き
・デジタル万引き
・節度のない立ち読み、商品の扱いが粗雑過ぎる客


の存在が増加の一途を辿っていることに尽きるだろう。
実際に書店に行くと、シュリンクのあるなし、書店の規模に関係なく、客のモラルが、10年前くらいと比較してみても確実に低下しているのを感じる。図書館などでもそうなのだけど、昔は「ホン」に対してもうちょっと敬虔…とまではいかないが、「丁寧に扱うもの」という基本認識があったような気がする。

万引きについては、昔のように「自分が読みたいから」というよりは、「人気があって高値が付く新刊のうちにブックオフなどの古書店に売り飛ばす」転売目的の悪質なものが増えている(最近では買い取り側も、新刊の複数売りには万引きを警戒して買い取らないなどの対応策を出してきているが)。
立地条件(学校の近くにあるなど)などで被害に遭いやすい大規模店では、本に万引き防止タグをつけてゲートで感知する方策を用いており、シュリンクはタグをパックするという意味を持っている。
また、タグを導入していない店にあっても、万引き犯を捕まえた場合、シュリンクがあれば「これは家から持ってきて電車の中で読んでた本です」というような言い逃れを封じることが出来る。
実際、本屋での万引きは、一般に想像されるよりはるかに洒落にならないレベルなので、万引きの被害がかさんで貴重な本屋が潰れる(これは決して誇張した例えではない)のをシュリンクで防げるのなら仕方がないかな、とも思う。(最近ではシュリンクどころか、人気タイトルのものはカバーのみの仮パッケージを置いておき、レジで現物を渡す閉架システムにしている店もあるほどだ)
また、デジカメや携帯電話カメラによる「デジタル万引き」を防ぐのにもシュリンクは一定の効果が見込めるだろう(どちらかというと、料理本や写真集など、あまりシュリンクしない類のものがターゲットになりやすい気もするが)。

少数ながら、「シュリンクをかけない本屋」も存在するのだが、そっちはそっちで、「あそこは立ち読みし放題だぜ」ってんで、厚かましい立ち読み客が多く、ただ本を棚から取りたいだけなのに近づけもしないという皮肉な状態になっている
一くくりにするのはよろしくないと思いつつ、立ち読みマナーやほんの扱いが悪いのは、圧倒的に小学生〜高校生ぐらいの「ゆとりエイジ」に多い。これは家庭の躾(つまりは私と同年代の大人の責任)も大きいだろうが、
・その場に座り込む
・それどころか平積み本の上に腰掛ける、荷物や傘を置く
・コンビニあたりで買った菓子類やジュースまで飲み食いしながら読んでる

など、やりたい放題だ。当然本も傷む。
シュリンクしてある本屋であっても、こういうガキの多くたむろする店の「お試しシュリンクなし本」などはもうボロボロ(ボロボロになった挙句に持っていかれるらしく、丈夫なヒモで棚にくくりつけられている)になっており、シュリンクを除去することの現実的な難しさをある意味身をもって雄弁に語るアイテムといえるかもしれない。
そういうDQNガキは、小学生高学年を待たずに万引き癖を身につけてしまう場合も多く、ノーマナー立ち読み連中が弾幕になってさらに万引きしやすい環境を作ってしまう。
そして「あの店は万引きフリーだぜ」という口コミが立つとますます万引きが増える…という悪循環が発生するのは本屋に限らず基本中の基本なので、現状を見ればやはり「シュリンクやむなしか」というところに落ち着かざるを得ないような。

また、現実的な話としては、「マンガにはシュリンクが当たり前」=「書店で購入する本はピカピカなのが当たり前」な若い世代にとっては、程度問題はあれ、「立ち読みされてキレイじゃなくなった本」を買う気にならない(あるいは「これならブックオフで買ったほうが安いし」とか)のもあるだろうな、と。

結局、一部のDQN化が読み手の楽しみを奪い、出版元と本屋の正当な利益を奪い本来不要な作業とコストを課し、市場全体を冷え込ませているわけだよなあ。

また自分語りに戻るが、私のマンガ人生において、書店でのもっとも忘れられない体験は、中学生の時。
学校の近くの本屋に「デビルマン」原作(マガジンKC)が置いてあり、「アニメの原作か〜」というくらいの軽い気持ちで読み始めたら、ラストの巻でもう比喩じゃなく、「頭をハンマーでぶん殴られるくらいの衝撃」「体が震え出すほどの情動」をお見舞いされて、帰り道では本当にデビルマンのことだけで頭が一杯、ほかの事は入り込む余地もないような一種の酩酊状態だったことを今でもはっきりと覚えている。
これと「キカイダー」のラストを読んだ時(こちらも立ち読みだった)の衝撃と戦慄、そして「マンガって本当に凄い!!」という感動、「ろくすっぽ読みもせずマンガを低く見る大人(当時)や興味のない人にもこの素晴らしさを叩き込んでやりたい」という心の叫びが今に至る「ダメ人間なりのマンガ人生」を構築してきたことを思えば、「立ち読みがなければ今の私もなかった(いや…こうじゃなかったほうがよっぽど幸せで真人間ロードだったかもしれないけどもね…)」と感じられてならないのだ。

そう考えると、今の本屋よりずっと狭くて暗くて点数も少なくてすすけた商品が多かったけれども、「あの頃の本屋」は一種のパラダイスというか、「今じゃ存続しえないだろうな」という点において確実に(「ウ・トポス」=「どこにもない場所」という原義的な意味合いで)ユートピアだったのかもしれない。
posted by 大道寺零(管理人) at 13:16 | Comment(4) | TrackBack(0) | 漫画
この記事へのコメント
まぁ、売り手としては(あくまでも自分の感覚で)

・節度のない立ち読み、商品の扱いが粗雑過ぎる客
が最大の原因かなと。児童書とかも少し経つとカオスな状態になってますし
(シールつきは剥がされて売り物にならないものがよく発生します)
平気で荷物を置く人も多くいますし、座り込む人もいます。
その年齢はもはや学生に限らず20代も入ってきてるかなと。

自分の場合買う時に状態をあまり気にしない人なのですが、どうも買う時だけ状態を異常に気にする人がいて掘り起こす人が多いので(そして掘り起こしたものはそのまま放置もザラ)、シュリンクしないのは無理なのかなと思えるほどで
(是非、買った後の保管状態を見てみたいものですが)

小学館は結構昔から試し読み推奨(帯にそうある)なのが多いんですけどね
売り場で試し読みさせているのは半分ぐらい自腹で買ったものを置いてます


シュリンカーの熱は完全に慣れてしまいましたね…。
Posted by ホセ軍曹 at 2007年12月22日 15:10
20年前に本屋でバイトしていました。
大道寺さんが書かれている「今時の客のマナーの悪さ」の全部が20年前もありました。頻度としても同程度だとわたしは思います。万引き被害も当時から多かったですね。当時ブックオフの前身みたいな古本屋が台頭してきたからかな。乱暴に本を扱う立ち読み客やお菓子を食べながら座り読みするのも、その頃から沢山いました。シュリンクはそういう状況を受けて、そのころから導入が始まったと記憶しています。だからゆとり世代特有のものだとは思えません。
本屋への郷愁みたいな感情については共感します。
Posted by Felice at 2007年12月23日 09:09
すみません、補足です。
小学生〜高校生というのはまだ社会性を身につけていないので、いつの時代でもそういうことをしてしまうものだ、ということが言いたかったです。ゆとり世代の子供だけがそうなのではない、と。
Posted by Felice at 2007年12月23日 09:12
>>ホセ軍曹さん

児童書のコーナーは確かにひどいですね…親が託児コーナーか何かと勘違いしてる風景がよく見られます。触ったり音を出したりして楽しめる絵本なんかを渡して放置してる様子がよく見られます。その間子供は音絵本を鳴らしまくってやかましいし、親は親でさんざん手荒に扱わせた商品を買いもしないで店を出て行きますしね。
確かにシールブックなんかはもう悲惨なことになってそうだ…
子供に片方の親がついてる場合もありますが、そのときもまるで備え付けの遊具のように商品を扱ってるのが気になるのです。

>どうも買う時だけ状態を異常に気にする人がいて掘り起こす人

多いですね。というか、かく言う自分もさすがに破れとかはないものを選んでしまいますが。
みんな掘り起こしたり上のものを下にしたりするので、結果的に下にある本のほうが傷んでたり…ということも、シュリンクなし平積みだとよく目にする光景ですね。

>売り場で試し読みさせているのは半分ぐらい自腹で買ったもの

あー、やっぱりそうなんですか…
現場からの貴重なご意見ありがとうございました。

>>Feliceさん

>「今時の客のマナーの悪さ」の全部が20年前もありました。頻度としても同程度だとわたしは思います。

うーん、私の住んでいたのが田舎のせい(+店内に店主の目が行き届く規模の本屋がまだまだ多かった)ですかね…マナーの悪い客はいましたが、悪質度と頻度は確実に今の比ではなかったように感じるのですが。
私も16年くらい前に数ヶ月ですが本屋バイトしたことはあります。業務は返本の力仕事とスリップ処理の裏方でしたが…その時の店はコミックメインではなかったせいかシュリンクはかけていませんでした。
ただ、やっぱり万引きは少なくなかったですね…どこも悩まされていました。店の対処のさじ加減というのも難しく、客のバッグ・袋類は全て入り口でロッカーに入れさせ、財布一つ持たせて買い物をさせるという書店もあったのですが、やはりそこまでするとあっという間に潰れてたようです。最初から泥棒扱いされるのも気分が悪かったのは確かですが、それ以前にそういうシステムだと、「欲しい本がなかった」時に何も買わずに出てくるのが異様に気まずかったのを覚えてます;
ゆとり教育に全てを転嫁するつもりはないんですが、結局その頃マナーの悪かった連中が親になって、ノーマナースパイラルが起こっているというのはあるのかなと思います。

Posted by 大道寺零 at 2007年12月23日 11:31
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