2008年01月05日

献血できない人間が「血の一滴」について考えてみた(2)日記

私は、「血液に代価が支払われる状況」が即「安全な血液供給の崩壊」と直結するとは思わないが、かえってロス(採った血液そのものという意味でも、検査の手間隙と費用という意味でも、またそのシステムを作り出すコストという意味でも)が出るのではないかとは考えている。
それについてはまた次稿で詳しく考えを述べるとして、とりあえずは「献血」という、完全ではないかもしれないがそれなりに変遷を経て方法論や周知の確立された無償の血液供給システムが現時点で存在し、それなりに運営されているのだから、とりあえずはそれを利用する方向で、

・アリモノと、献血に応じる人間の志をいかに活用し、供給を増やすにはどうすればいいのか
・献血者数が減っているのは事実なのだが、その要因は何か、対策として何をすべきなのか
・木公さんのブログにおいて、献血者の減少が輸血可能人数の減少を明らかに上回っていることについて
献血可能人口は3%しか減っていないのに、実際に献血した人が8%も減ってしまったのは、教育・宣伝施策の失敗といえましょう。

と書かれているのだが、献血周知と協力を募る試みは果たして失敗といえるのか?

を考えてみようと思う。献血をした経験がある方なら、「意外とあれこれ条件をクリアしないと、したくても献血できない」ということをご存知だと思う。
日本の設定している条件は世界でもかなり厳しいといわれている。
また、新たな、しかも未知の要因が多い病原菌や感染症の誕生、ライフスタイルの変化や医学の進歩によって新たに判明した事実などを元に、その条件は少しずつ増えており、年々そのハードルは高くなっているのだ。

ハードルが高くなれば有資格者が減るのは当然のこととも言える。
勿論、そのハードルは全て「輸血や血液製剤投与時の医療事故や薬害感染、また副作用や拒絶反応の可能性を少しでも減らす」「安全な血液を確保する」ためのものであり、単純にとっぱらえばいいなどとは思っていない。
献血者数の変化と献血可能条件は深く関係している点もあるので、既にご存知の方も多いとは思うけれども、その項目を列挙し、感じたところを併記していきたい。

<年齢>
16〜69歳
(ただし16歳・17歳は200ml献血のみ可能で、400ml献血と成分献血は18歳にならないとできない。
 また血小板成分献血の上限は54歳である)

上限については、平成11(1999)年に「64歳上限」から「69歳上限」に緩和された。ただし、60〜64歳の間に献血経験があることが条件で、65歳以上の初献血は不可。
緩和の要因は、「65歳になっても可能な限り献血をしたい」という意向が多く寄せられたからとされている。2,30年前と較べると、同じ60代といっても体力や健康状態を維持している人が多く、健康志向が高まっていることを考えれば、少しでも血液供給のプラスになるのは望ましいと思われる。

<体重>
200ml、成分:男性45kg以上、女性40kg以上
400ml:男女共に50kg以上

自己申告。見るからに小柄・やせ型で、基準に達してないのでは?と思われる場合のみ体重を測定させられることがある。

<血液比重>
200ml・成分→1.052以上
400ml→1.053以上
<あるいはヘモグロビン(Hb)値>
200ml・血漿成分→12.0g/dl以上
400ml・血小板成分→12.5g/dl以上

<血圧>
最高血圧90mmHg以上(下は基本的に関係ない。また多少高血圧気味でもOKのようだ)

<1年の献血上限>
献血の方式が多岐にわたるようになったためかなり複雑に。「可能な限りマメに献血したい」という献血リピーターは、この複雑な条件を計算してスケジューリングを行うという。

[年間採血量(全血のみ)]
男性では1200mL、女性では800mL

[回数]
200ml→男性6回・女性4回以内
400ml→男性3回・女性2回以内
成分→血小板成分献血1回を2回分に換算して、血しょう成分献血と合計で24回以内

[次の献血まで開けなければならない間隔]
200ml全血→4週間後の同じ曜日
400ml全血→男性12週間後、女性16週間後の同じ曜日
400ml成分→8週間後の同じ曜日
成分(血小板・血漿)→2週間後の同じ曜日

<その他>
・女性は妊娠中・授乳中でないこと。6ヶ月以内に出産や流産をしていないこと
・体調不良・睡眠不足(4時間程度が基準とされるが問診によって可能になることも)
・心電図異常がないこと


ここまでは、主に献血者に無理をさせず、健康を害さない範囲での協力を募るため、またできるだけ血量や比重の自然回復を待ってよりよい状態の血液を得て、善意を無駄にしないための項目である。

次以降は、「輸血対象者に有害となる不適当な血液をハネるため」「血液の安全と衛生レベルを保つため」の項目。この項目に該当する場合には残念ながら献血することが出来ない。


・平熱より体温が高い
・特定の病気に罹患した経験
・3日以内の注射・服薬
 (薬の種類に左右される。内容によっては3日以外でもOKだったり、3日以上前の服薬でもダメな場合がある。成分によってはサプリメントも対象になることもあるらしい)
・3日以内に抜歯や出血を伴う歯科施術(歯石除去も含む)を行った

[HIV関連]
・6ヶ月以内に不特定多数の異性を相手に性交渉を行った
・〃肛門性交を伴う性行為を行った男性同性愛者
・〃麻薬・覚せい剤を自分で注射した
・HIV検査で陽性結果だった
・以上4点に該当する相手と性交した

・肝炎(急性のA,E型は治癒後6か月でよい)
・肝機能検査(ALT、AST)の結果で高い値でひっかかったことがある
・輸血・臓器移植を受けたことがある
・ピアス穴を開けてから一定期間(医療機関でディスポの器具を用いた場合は1か月、それ以外では1年)以内
 (注:鼻や舌などの粘膜部分へのピアスを行っている場合は、1年を過ぎても恒久的に不可とされる場合があるらしい)
・入れ墨(アートメイクも)を入れてから1年以内

・海外から帰国後4週間以内(次の条件を除く)
・1980年以降にヨーロッパを中心とした約35か国に、厳重警戒地域では6か月以上、それ以外の地域でも5年以上の滞在歴がある
・1980〜96年の期間中、イギリス滞在経験がある(1日だけでも)

後の二つはいわゆる「狂牛病」に関する規定で、非常に厳しい日本独自の基準。「輸血で伝染するから」ではなく、「輸血で伝染するかどうか、確たることが分かっていないから」という慎重な判断の元での基準となっている。

・予防接種・ワクチン・血清後の一定期間内
 (不活性化ワクチンで24時間、生ワクチンで3週間、種痘で2か月、抗血清で3か月)
・犬に噛まれた場合
・狂犬病接種対象外の動物に噛まれて狂犬病ワクチンを接種後1年間、HBグロブリン投与後1年間
・化膿を伴う外傷や生傷、出血を伴う口内炎がある場合
・献血直前に高カロリー・油ものを食べた場合
 (成分分離が正常に行えなくなる場合があるため、問診時の判断しだいでNGになることがある)

・その他問診などにより個別判断


さて、大まかにまとめただけでもこんな感じ。
「献血なんてそういえば学生時代にしたきりだなぁ」という方の中には、項目の増加に驚かれた向きもあるかもしれない。

血液事業に関するデータ報告は様々WEB上にも転がっているのだが、近在のデータを最も分かりやすくまとめた記事があったのでご紹介。

献血の減少に関するデータ・世代と性別、都道府県別の傾向(B級データライブラリ)

特に、年齢別の献血率を年を追ってまとめたグラフは圧巻の力作だ。

まず確認しておかなければならないのは、この記事の中でも明記されているけれど、

「確かに献血者数は年を追って減っているが、血液供給量としてはほぼ横ばい」

という事実だ。
グラフ(献血者数及び献血量の推移)を見れば一目瞭然だが、400ml献血者数はほぼ変わらず、成分献血者はむしろ微増、200ml献血者が減ったために人数自体は減っているが、結果的に血液量は一定ラインをキープしているというわけだ。
ただし、成分ごと・製剤ごとの用途や特徴・有効期限がそれぞれに異なるために、一概に量や献血者数だけで語ることは出来ない。
勿論、純粋に献血者数が増えればより血液供給量は増えるわけだから何よりもあらまほしきことだ。
200ml献血が減っているのは、単純に、400ml献血のほうが医療現場にとって安全でありがたいので、献血ルームなどでも、献血者が各種条件を満たしていれば、「できれば400mlにご協力を…」と頼むようにしているからだ。
ものすごーく単純な譬をすると、800mlの輸血が必要な場合、200ml献血によるパック*4であれば、4人の血液が体内に入ることにより、副作用や拒絶反応のリスクが高まるのに対し、400ml献血によるパック*2(2人の血液)ならばそのリスクは半分となるのがその理由。
それはいいのだが、一部の献血ルームスタッフの中には、「時間もないし200で」と申し出ると露骨に嫌な顔をしたり、「200は取っても使わないし」などと献血受付を渋る言語道断な連中がいるらしく、しばしば体験談として上げられているのを見ることがある。200ml献血が減っているのは、需要の面もあるけれども、そうした心無いスタッフが、ライトな献血志願者を遠ざけているのでは…という意見は決して少なくないようだ。

同記事では、女性の献血率の変化について着目している。というかグラフを見れば自然と着目せざるを得ないのだが…

1つは、
熟年以降で減ることは理解できますが、特に30、40、50代の女性が少ないことは明らかです。30代は出産が関係するケースがあるかと思いますが、20代と比較して落ちているのですから、それが主要因とは考えられません。この年代になると足を運びづらくなる原因が他にあるはずです。

ということ。

しかし同じ女性としては、献血可能要件をあわせて考えた場合、わからんでもない事情が色々とある。

第一点。
30代でガクンと落ちるのは、記事で触れられている通り、妊娠・出産・授乳などで献血資格を一時的に失う人が多いこと、また育児などでなかなか献血会場に出向けないという事情も付随しているだろう。
「20代と比較して落ちているのですから…」とあるけれども、女性の初婚年齢の変化を考えればさほど不思議とは言えないのではないだろうか。献血者推移グラフは1995〜2005年の10年間を追っているわけだが、「晩婚化の進行− 平均初婚年齢の推移 −」の統計グラフから女性の値平均初婚年齢を読み取ると

・1995年 26.3歳
・2000年 27.0歳
・2005年 27.8歳
・2006年 28.2歳

となっており、実質的な出産・授乳時期のマジョリティはもはや20代ではなく30代といえる。
となれば、30代に入ると女性が(その意思があっても)なかなか献血に出向けない状態になると考えてもいいのではないだろうか。

また、妊娠・出産は女性の体にとって一世一代の大仕事であり、かなりの血液・鉄分を消費し、体質が変わってしまうことも珍しくはない。
そうでなくても女性は月経によって鉄分を失いやすい体の作りになっているので、実のところ献血で示された血液比重・ヘモグロビンの基準はかなり女性にとってはクリアが厳しい数値(1説には合格できるのは3割程度だとも)だと言われている。それがだんだんと満たせなくなっていく。
さらに40代後半〜50代になると閉経・更年期障害という激しい体の変化に向き合わなければならず、同様の時期は生活習慣病も出てくる頃合とあって、なかなか女性の体にとっては忙しくしんどい時期なのだ。多分そういった生理的な事情も大きく関わっているのではないだろうか。

女性の献血者数についてはもう一つ、10代の割合の激変についても触れられている。

 一方で若い人ほど最近献血者が減っており、特に今まで若い世代で飛びぬけて貢献していた10代の女性の献血者の割合が激減して普通になりつつあることがわかると思います。
 表を見ると、10代女性は13.1%から9%に4.1%も減っており、献血者の中での減少の割合は31.4%にもなります。人口も21.5%減っているわけですが、それよりも割合の問題であることがわかります。


この激減ぶりは、確かにグラフを一瞥するだけで気になる部分だ。
いくつか考えられる要因はある。

・ピアスやタトゥーが流行…というより定着した年代であり、十代後半にそれを入れ始める者が多いということ

特に高校ではほとんどの学校が規則として禁止してはいるものの、なかなか指導に手を焼かされるのがピアスである。
しかも医療機関で開けるのは少数で、市販のピアッサーならまだしも、それを使いまわすわ、平気で画鋲やら安全ピンで開けてしまうバカチンが後を絶たないものだから、自然禁止期間も最低1年となってしまう(目立つ耳ではなく、舌やヘソなどのボディピアスを開けるものも多い)。
「そういう子だから献血になんか興味を持たない」とも言い切れないのだけれど、例えば学校単位の集団献血などに参加はしてみたものの、入り口で「ピアスしてる子はNG」と言われてスゴスゴ帰ってきたりもするんである。

・生活習慣や食生活の乱れによる低血圧や貧血の増加

私も高校時代はえらく低血圧(原因は主に寝不足だが、ダイエットの後遺症でもあった)で、高校時代の献血時にも、最高血圧が上限の90ギリギリだったのを覚えている。
そんな夜更かし野郎が言うのもなんだが、現代の10代は主に携帯電話やメール、インターネットにゲームと、とにかく娯楽がめちゃくちゃ多いため子供の頃から夜更かし傾向、しかも朝食を親が出さなかったり単に子供が面倒くさがって食べなかったり、偏食やジャンクフードに頼った食生活だったり、さらには女の子の場合はやせ願望からのダイエット…などなど。色々な要因が重なって、特に午前中の低活性ぶりといったらかなりヤバいものがある。
そういう状況にあって、血圧や血液比重でひっかかるという生徒は少なくない。

・ダイエット願望と見栄

これは非常にくだらない話に思われるだろうが…
メディアが煽りすぎるため、若い女性の痩せ願望が高いのはここ10年やそこらの話ではない。
で、実際には400ml献血が出来る体格であっても、それをした瞬間にクラスメイトやら、あるいは一緒に献血ルームに行った友人やら彼氏やらに「私は50kgある」と教えてしまうのと同じことになるのだ。身長にもよるが、体重が50kgラインを超えるか超えないかは彼女らにとっては人生の一大事らしい。
それがイヤで200mlのみを希望したりすることもあるかも…?
もっともこれは献血そのものを忌避する理由にはならないけれども…

・ゆとり教育の影響で集団献血を中止

…する学校(特に進学校)もありそう。
多くの場合、学校に献血バスなどが来ての集団献血(もれなく満16歳である高校2,3年が対象)は、市町村の保険課などからの依頼で学校側が行事予定に組み込むものだ。
しかし、ゆとり教育・週休2日制になってから、とにかく時数が足りないのだ。授業のコマは科目ごとにしのぎを削っての奪い合い状態だし、そのために運動会などの年間行事を廃止したり、日程を短縮しなければならないことはザラ。その中にあってどうしても集団献血のプライオリティは低い。
「休み時間や放課後に自由参加」という形ならなんとか可能だが、20年前のように、授業時間を当ててクラス順に…というような実施はおよそ不可能な状態である。特に進学指導に力を入れている学校では生徒の参加率も悪く、廃止する学校もあるようだ。

10代の献血率が以前より下がっていることは、こうした献血周知教育が上手くいっていない証拠を示すものかもしれないが、「初めての献血、きっかけ」として「学校の集団献血」を挙げる割合は2位と、高い位置を保っている。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/7n-03.html#20a
また、献血経験者の過半数が「高校での集団献血がその後の献血のきっかけとなった」と答えており、方法論のさらなる改善は必要としても、一定以上の成果を挙げていると考えてよいのではないだろうか。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/7n-03.html#22

もっともこの理由は「女子の低下率が明らかに男子のペースとは異なる」説明にはならないのだが…

・性行為初体験低年齢化の影響


現代の少女が総ビッチ化していると言うつもりはないのだが、

・初体験年齢が年々低下している
・行為に対する安易さ、相手を変えるスパンの短さに対し、正しい避妊や感染症に関する知識が欠けている、または誤った知識を信じ込んでいる
・今や人工中絶の10%が十代の女性である(人工中絶には、実際には産みたいのに母体のためにやむなく流産処置をするケースも含まれるので、「いらないから産まない」率はもっと高いことになる)
・クラミジアなどの性感染症罹患率は年々増加し、HIVの感染も増えている

という現状を見るとやはり、「問診でそういうことを答えさせられたり、検査結果が親や学校にバレたらイヤ」「問診表を見ると、自分は献血しない方がよさそうだ」などと判断して最初から参加しない層も一定数いることは確かなのではないだろうか。

薬物使用者も確実に増えており、そのためもあるかもしれない。


さてさて。
世の中には、「献血が大好き」「限度の許す限り献血したくてしたくてたまらない」という方々が思いのほか多く存在している。
理由は様々で、どちらさんも根本には「人の役に立てる充実感」があるのだろうし、「単に献血ルームの雰囲気が好き」「血を抜かれるのがなんかイイ」「献血回数でポイントがもらえるのがいい」「あちこちの献血ルームやバスをめぐって制覇するのが楽しい」「旅行のついでに他県で献血するのが趣味」などなど。
また、献血の回数が一定数を越えると、バッジや感謝状などの特別な処遇品を授与されるので、それが楽しみでハマる人もいる。
「献血マニア」「献血オタク」と呼ぶことは容易いが、何しろそういった方々のおかげで私は命を救われたのだから、敬意を込めて「献血リピーター」と無難な名称で呼ぶことにしよう。
事実、現在の血液供給を支えているのは彼らであることは間違いないのだから。

大学の同級生でも、「献血にハマった」人がいた。
いつも結構テンションの高い女の子で、そのテンションの割に何故だか目の下には濃いクマがあって、「献血すんのは自由だけどアンタ大丈夫かい」と心配になるほどだったが、指定間隔が過ぎれば嬉々として献血ルームに向かっていくのだった。
また別の人は、「1ヶ月も待ってられない」とばかりに、クラスメイトに作らせた献血手帳を借り、そのクラスメイトになりすましてまで血を抜いてもらいにいく勿論禁止行為です。今は本人確認方式がより強固になったので成りすましは不可能とは言わないまでもかなり難しくなりました。絶対にマネはしないでください。)剛の者までいた。一体何が彼らをそこまでさせるのかは計り知れないが、とにかく「献血したくてしたくて仕方がない」人種は確実に存在するのだ。

ならば。
献血希望者の新規さんがなかなか獲得できないという現状であるならば。
彼らの希望通りもっと献血の機会を増やしたり、「潜在的な献血リピーター素質を持つ人間」がもっと献血を行いやすくするという方法で、現存システムを生かして血液供給を増やす策はないだろうか。と考えてみた。
以下はまあ、そんな感じの思考実験である。

1:献血可能要件の上限・下限を見直してみる

まずは量と間隔。
熱心な献血リピーターは「できる限り回数も量も沢山献血したい」と考えているのに、現状の制限はかなり厳しいため、不満に思うことが多いらしい。
例えば、「1年に献血可能な量」と「次の献血まで開けなければいけない間隔」の両方に縛られるため、

「間隔でいけば再来月にもう一度献血できるのに、もう800mlになってしまったから今年はできない」

という不満をよく聞く。
なにしろ800mlは400ml献血を2回やればもう可能枠が一杯になってしまう。
献血の現場では、「可能な限り400ml献血にご協力を」と呼びかけられるのだが、実際に400mlに協力すると可能回数が少なくなってしまい、なんともションボリということになるのだそうな。(ちなみにこれはジュースとか処遇品狙いのためではなく、とにかく献血リピーターの方というのはそういうものらしいのだ)

「献血の間隔は、確かに"質の良い血液を提供し奉仕の気持ちを無にしない"、"提供者の健康を守る"ためには必要なのはよく理解できるが、献血制度の変遷の中で、間隔設定に対し上限量が少なく感じられる。時代にあっていないのでは」
「例えば30年前に較べれば日本人の体位はかなり上がっており、必ずしもこの量にこだわる必要はないのではないか。また、男性・女性という画一的な基準ではなく、各自の体格や血液濃度、献血実績などにあわせて段階的に上限を増やして設定するのが現実的ではないだろうか(一定の条件を満たせば、女性でも1000ml〜1200ml輸血可能など)」

という意見が多い。
献血量・機会の上限については、趣旨は説明されているものの、具体的な医学的なデータが示されていないので、「なぜ女性は800mlか、1000mlではいけないのか?」というような疑問がなかなか氷解しないのもあるかもしれないが、一般的な体位向上を考えると、上限を緩和してもよいのでは…と思われる。
また、「1回の献血量が600mlでも、400ml献血資格を満たす人ならばまず大丈夫」という説もあり、「1回の献血量上限増加」もまた、献血量を増やすにはきわめて効果的だと思われるし、輸血を受ける側にとっても安全性の上で大きなメリットがある。

一方、年齢の下限・上限についての見直しはどうだろうか。
現在の下限年齢は16歳(それも200のみ)なのだが、この決定基準は何なのだろうか(とはいえ、国際的にはどの国も大体こんな感じらしいのだが)。
例えば成長期への配慮や体格的な問題とか、義務教育を終了して自分の身の振り方を基本的に自分で決め始める時期だとか、そんなあたりしか考え付かないのだが…
単に体格的な問題であれば、1,2年程度緩和して、14〜15歳から献血可能にすれば少しは話が変わってくるのではないだろうか。
実際、20年前と現在の小中学生の体位を比較すると、もはや「違う人種じゃないのか」と思うほどに発育がよくなっている。
また、ボランティアや社会参画に対し積極的な子供は小学生のうちから意識が高く、「献血ルームに行ったら"16歳になってからまた来てね"と言われて残念だった」という体験をした子もいる。
まあだからといって流石に「小学生から献血体験を!」とまで言い出すつもりはないのだけれど、中学2,3年あたりから献血可能にすることは不可能でないように思える。献血下限年齢が緩和されることで、同時に献血・輸血についての教育開始も早めることができるし。
実際、日赤ではここのところの献血者(特に若年)減少を受け、「献血の周知を小学生辺りの時期から始めたい」という案を示している。
ゆとり教育の弊害で授業時数にヒーコラしているのは小学校も中学校も同じなのだが、それでも総合学習などの形で教育内容にからめやすいのは義務教育中ではないかと思うので、それはなかなか有効な案だと思う。

実際、2005年の若年層へのアンケートによれば、「献血したことがない理由」の上位は

・「針を刺すのが痛くて嫌」(29%)
・「不安だから」(28%)
・「献血(制度)を知らない」(26%)


となっている。
献血用の針は通常の注射針よりも太いので、痛いのはどうしようもないとしても、「献血制度そのものの周知」をより効果的に行うことで、少なくとも26%のうちの何割かは献血に対して積極的な考えを持ち行動する可能性があることを考えれば、低年齢からの献血教育には大きな意味があるのではないだろうか。
既に低年齢向けに配布するための絵本などは作られている。

さて次に、上限年齢はどうか。
少子高齢化がこれから先進めば進むほど(そして実際進むけれども)、献血可能な人口は減り、しかし輸血や血液製剤を必要とする人口はどうしても増えていく。
1999年に上限が64歳から69歳に上がり、実際それに伴って60代の献血率は男女ともに上がっている。非常に意識の高い年代と言えるのだろう。
条件を満たしている限り、例えば75歳まで…といった拡大は今後可能なのだろうか。
ただし、60代に突入すると、一見随分と元気そうに見えても、「どこの医者にもかかっていない」という人はほとんどおらず、何がしかの薬を常用している場合が多い。献血意思があっても条件をクリアできる人は多くないと思われる。上限はいたずらに上げてもあまり献血量増加には効果的とはいえないかもしれないが…

以上、「献血の意思が十二分にあるリピーターの献血機会を、規定を変えて増やすことはできないか」という案。
医学的に「そりゃムチャですよ」という部分が多分にあると思われるのでご指摘お待ちしております。

2:献血施設運営の改善

勤め人にとって、献血への意識はあってもなかなか忙しくて参加できないものだ。
例えば、昼休みに外に食事に出て、献血ルームの表示や呼び込みを見て、「血液が足りないのなら参加してもいいな」とは思うけれども、昼休みはあと少しだし、まして時間のかかる成分献血は無理。
さりとて仕事が終わったような時間には既にルームは閉まっている。
日曜・祝日に運営している施設もあるけれども、休日は疲れを取るのに精一杯、または家族サービスやらなんやらでそんな余裕はなかなか……といったところではないだろうか。
結局は職場に献血カーが来たとき、しかも時間に余裕があるときのみ参加できるかできないか、という状況の方がほとんどだろう。
リピーターの中には有休を取って献血参加という人もいるらしいが、普通の人はそこまではまずしない。

献血施設には各所ごとに差はあるが、クローズ時間は大体全血で午後5〜6時、成分(大体予約制)で5時くらいのところが多いようだ。
定休日は正月くらいの施設が多く、かなり頑張っているのだろうとは思うが、できれば毎日でなくても、「●曜日(あるいはパチ屋お得意の「0の付く日」など)は午後7時・8時まで受け付けています」というような延長日を定期的に設けることで、勤め人も利用しやすくなると思うのだが、どうだろう。
職員や問診医の労務規定にも関わってくるので難しい点もあるかもしれないが、効果はあると思う。

個人的には、献血ルームのサービスやキャンペーンが行き過ぎるのはあまり好ましくないと思うのだが、一部の施設では「献血中に無料託児」などのサービスがあり、どうしても献血しづらい小さな子供連れの人にとってはかなり有効だし、ちょっとした気分転換にもなるのでは?と感心した。

一方で、一部だと信じたいが、献血をやる気マンマンで行ったのに、施設スタッフの心無い対応に呆れ、その後献血への意欲を失ったという話も時折聞こえてくるものだ。(最近だと、200ml献血を希望すると渋い顔をされたりイラネ発言をされるなど)
大学の同期から聞いた話だから随分前のことになるのだが…

採血前の血液比重等の検査の段階で、担当していたスタッフが
「あなたの血は汚いですね。こんなの使えません」
という内容の言葉を吐き捨てると同時に、採取した血液を廃棄ボックスに投げ捨てた。彼が「献血なんて二度とするか」と思ったことは言うまでもない。
おそらく比重が足りないなどの理由だったのだろうが、善意の献血者の目のまで「汚い血液」と言い捨てるのはあまりにも酷い話だ。
献血リピーターや関係者の談話だと、「看護士や医療スタッフは基本的に親身なのだが、肝心の日赤から来ているスタッフにその手合い、あるいは400mlや成分献血を強要するような言動が目立つ」という話もあるのだが、献血者にとっては一緒くたに「献血スタッフ」であり、その後の献血制度に対するイメージに直結するのだから、こうしたスタッフのモラル教育はより徹底すべきだと思う。

3:優良献血者に何らか余禄を

献血に臨むのは人間なのだから、結局これが最も効果的であろうことは確かだ。
この「余禄」は必ずしも経済的・金銭的なものではなく、「達成感・充実感」「社会福祉参加の実感」だったり、またコアなリピーターにとっては「処遇品やスタンプなどのコレクター欲」「県内・国内のルームを全部回る…などのコンプリート欲」「多数の献血経験による表彰を受けるまで頑張りたい」などの精神的なものも含む。加えて、献血リピーターには「無料で行える血液・健康チェックという意味合いもあり、結果もちゃんと送ってもらえる」「こまめな健康管理に役立つ」という意味で参加している人も多い。
というか、「売血」ではない以上、今のところそれしかないと言っていい状況なわけだが。

献血制度が始まった当初は、
「献血に参加した人・およびその家族は、輸血が必要な状況になった場合に優先的に輸血を受けることができる」
という特典があったらしいが後に廃止された。
おそらくは輸血の公平性を守るためなのだろうが、医療や福祉を受ける立場になったときに何らかの優先権を与えられるというのは、考え方としては一つアリかもしれない。

ちょっと考えたのは、次のようなことだ。

献血リピーターの多くは、効率的にたくさん献血を行うために、事前血液検査でハネられないよう、非常に健康に気を使っている。
例えば

・直前どころか前日、前々日の食事内容から気を配る(油っぽい料理や糖分過多を避ける)
・直近に薬を飲まないようにしなければならないので、カゼや下痢などにならないように自己管理をする
・寝不足や低血圧にならないよう、前日にはたっぷり睡眠を取る
・肝機能で引っかからないようにするため、油ものやアルコールの摂取量には日頃から気をつける



などは基本中の基本らしい。
何しろうかつに薬やサプリに頼った生活をするわけにもいかないので、ある意味並みの健康オタク以上かもしれない。
そしてコンスタントな献血に伴い、自分の血液状態も細かくチェックできているわけなので、かなり生活習慣病リスクから遠ざかった、「健康優良」な存在と言える。

近年、健診にメタボリック基準を組み込んだり、事後指導を厳しくするなどの流れになっているのは、「生活習慣病やそれに付随する疾患の医療費で健康保険の財源を圧迫される前に、そのリスクを減らし、医療費支出を減らそう」という指針に基づくものである。
その観点からすれば、健康に気を使い、その上献血に協力するコアなリピーターは、医療行政から見て非常に低リスクで優良なユーザーと呼ぶことができるだろう。
ケガや事故などは防ぎようもないが、自己管理意識が高く、生活習慣病のリスクが低いということは、医療費をさほど食わないと予想できる。

であれば、献血の実績に応じて(気前よい割合に設定することは難しいが)医療費を割り引く、あるいは保険料や自己負担割合を下げる、還付金として還元するというような余禄の付け方はどうだろうか。
優良献血者にかかる医療費はそもそも平均よりも低いと考えられるわけだから、負担割合を下げることによって生まれるロスは(勿論下げ幅にもよるが)さほど医療行政を圧迫するほどではないかと思われるのだが…
また、公共のスポーツ・健康増進施設などの利用料が割引されるというのもいいのでは。
もしそういう形での還元や優遇が、一部家族などにも拡大適用されれば、「子供のために」と健康管理に力を入れる人も出てくるかもしれない。(家族の一人が健康優良だから親や配偶者も健康志向といいきれるものではないけれども、エサとしてはある程度効果的ではないだろうか)

また、同様の理由で、生命保険や民間医療保険の掛け金などで優遇されるなどの特典があったら、今まで食いついてこなかった人が食いつく可能性もあるかも…?

同時に、献血という行為自体が非常に有益なボランティアなのだから、現在、進学や就職・昇進などで「ボランティア・社会奉仕体験」がポジティブファクターとして評価を受ける状況の中、「献血体験」がもっと注目要素として重んじられるのも十分にアリかと思う。

と、考えうる限り(しかもできるだけ財源を食いつぶさずロスを生まない方向で)の「余禄」を空想してみたわけだが、一方でその余禄があまりにも大きくなってはいけないかなとも思う。
上述したように、献血するためには様々な条件をクリアしなければならず、それに該当せず、献血したくともできない人間、しかし健康面では特に支障のない人間が著しい利益獲得機会の損失(金銭的にはともかく社会的な面で)を蒙るのは望ましいことではないと考えるからだ。
それは結局、自分が輸血経験により献血不可能な人間だからこその発想かもしれないけれど…

例えば、輸血の経験があってもその後順調に回復し、健康管理にも気を配っている人がいたとする。この人は生活習慣病リスクも低い健康優良者なのだが、輸血経験があったというだけで献血ができない。それだけで健康状態まで誤解され、医療福祉的に高リスク者と同様扱いを受けることは正しくないと思える。

また、40kg以下の女性は献血できないが、身長が140cm台前半であれば適正な体重であり、体格の問題だけで余禄を受けられないのは不公平…ということになる。
仕事や学業のためにイギリスや特定ヨーロッパ地域に滞在経験のある人なども同様。

「献血経験者に余禄を」という案を出すと、必ず「むしろ献血しないやつにペナルティとしての追加支出を課すべき」と安直に言い出す輩がいそう(そしてそういう人に限って、献血制度に対して往々にして無知だったりする)なので、一応そこまで書いてみた。
まあ、「献血しない人間に追徴を」という発想にならなければさほど問題ではないかもしれないが。
献血は複雑なハードルがたくさんあり、しかも状況によって今後も増えていくことが予想されるだけに、余禄を設定するのであれば慎重に行わなければならないだろう。効果は出やすいとは思うのだが…

●大人への献血教育

成人、特に社会人の献血協力機会は、その多くが職場へ献血カーなどが訪れての集団献血だと思われる。
ただし、平日の業務時間や昼休みなどに行われるため、せっかくの取り組みもハンパな形になリがちだ。それについてはFeliceさんも1/4の日記で指摘している。

木公さんは教育が失敗していると捉えていますが、わたしはまだできることがあるはずだと思っています。
 例えば昨日「公務員は積極的に献血するように促されている」と書きました。しかし実際にはやりかたがあんまり良くないのです。わたしの職場に献血車が来るのは年に1回くらいですし、来るのも1週間前くらいに知らされ、当日庁舎内にアナウンスされる程度。正直、年に1回では少ないし、1週間前に知らされても時間の都合はつけにくい。公務員は、こういうことを率先して行うべき存在だと思うので、もっと献血する機会を増やし、初任者研修でも教育して促してはどうかと思う。あるいは、職場から賞賛されるようにするなどがあっても良い。

MagMell 1/4の日記より)

私もかつては公務員として勤務経験があるので非常によく分かる。
実際には、上司の献血への意識の高さの違いも出てくると思う。献血に理解があれば「席を空けてもいいから、参加できるなら行って来なさい」と促してくれるだろうし、逆であれば「そんなもん行く事ねえ」「保健課の連中がやるだろ」なんてくらいのことは言いそうだ。
だからこそ、「大人への献血啓蒙」は絶えず必要なのだろうとも思う。
私が勤めていたのは学校だったので、空き時間があれば参加はしやすいのだけれど、逆に絶対授業には穴を開けられないのでなかなか微妙だった覚えがある。本当は率先して参加すべきだと分かってはいるのだけれど。
(技術が発達して、成分献血がもっと短時間で行えるようになればよいのだろうけども、そもそも「人間の体に負担を与えないようゆっくり戻す」のが主眼なので、いくら機材が発達しても人間の体はそうそう便利になれないわけで難しいところだ)

研修に取り入れるのはいいアイディアだと思う。
例えば、公務員・教員の5年次・10年次研修では、休暇などを利用してボランティア活動を行うことが義務付けられている(注:地域や職種によっても異なる)のだけれど、年数回の献血をもってそれに替えることができてもいいのではないだろうか。

なかなか大人への啓蒙は難しいのだろう。
「16歳はじめての献血」「ハタチの献血」などはそれなりに(言葉だけでも)根付いてきたけれども、なかなかそこから先が続かない。研修などに組み込んで半ば強制的にやらせるしかないのが現状なので、できれば「もので釣る」以外で何かあれば、献血率分布も変わってきそうな気がするのだけど。

話を高校での献血協力に移すと、前述したとおり、時数がカツカツなので行わなくなった学校もあるものの、献血という制度や、その要件について初めて知るという意味は大きい。
最近では休み時間や放課後に自由意志で参加という形にしているところがほとんどだろう。
実際、集団献血がきっかけで献血にハマり、リピーターになった教え子も何人かいた。
また、血液比重や低血圧で献血できなかった生徒も、自らの健康や食生活について考える契機となるし、薬物使用や無軌道な性行為が、「献血を拒否されるほど自らの体にリスクを与える行為」だと再認識することにもなるだろう。
たとえ献血者数に即時に直結しなくとも、参加した場合に得るものは大きく、将来優良献血者となりうる人間を育むことにつながると思う。

若者のモラル低下(そしてその原因である親の層のモラル低下)は何に付け明らかで、献血率の低下もその表れではある。
しかし逆に考えれば、それでも「集団献血や教育をしているからこそ現在の水準で踏みとどまっている」とも言えるだろう。

というわけで、「既存の献血システムの中でどうにかできないものか」という思考実験はここまでに。
posted by 大道寺零(管理人) at 14:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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