ここ数年、1月末〜2月頭あたりには必ず1回、奮発していい寒鱈を1尾買い求め、「寒鱈フルコース会」を開催している。
「寒鱈」とは、この季節脂が乗って最高に美味しい真鱈のこと。
内臓の美味しさ、身の甘さを新鮮に味わえるのは短い期間だけ、しかも日本海は荒れるシーズンなので漁も厳しく、大物にはそれなりの値段が付く。
正直、「水っぽいだけの面白くない魚」と思ってる人は、この時期の寒鱈を食べると認識がかなり変わることだろう。
・白子をさっと湯がいただけで美味しく食べられる
・身を刺身にできる
上物を義父なじみの魚屋さんに予約しておき、大まかにさばいてもらい(さすがに水気の多い魚だけに大物を一からキレイにさばくのは難しい&せっかくの白子を傷つけたくないので)、エラ・胃袋・食道なども全部もらってくる。
なんといっても白子を楽しみたいのと、身の美味しさから断然オス。
オスの相場はだいたい「キロ1200円」といわれていて、今日のは一尾8000円なり。
こんなメニューで堪能しますた。
・含め煮
厚みのある切り身を、薄めのしょうゆ味のダシで、やや身がはじける程度まで煮る。できたてでもいいが、つゆの中で冷ましたものは甘くてとても美味。義母作。
・白子のさっと煮
適当にバラした白子を醤油ダシでさっと煮る。
とろっとして、生臭さがなく、万人向き。義母作。
・昆布締め
身のいいところをさく取りし、昆布に挟んで5時間ほどおいたものを刺身にする。余分な水気は昆布に吸収され、旨みがほどよく移った身を引いて刺身にする。いい鱈でないと刺身で美味しく食べることができない。
・白子の刺身
とはいっても生ではなく、白子をさっと湯通しし、わさび醤油や二杯酢など好きなタレで食べる。
・どんがら汁
なんといってもメイン。
昆布締めに使った昆布を使ってダシを取り、アクをよくとりながらアラ(通称どんがら)を煮る。味噌で味付けしてネギと豆腐を入れ、白子・肝臓(アブラワタ)を入れてさっと煮て完成。食べる時に岩ノリを浮かべる。
とろりとしたアブラワタも勿論だが、こりっとした食道やトロトロの頭や目玉もご馳走。
・大根サンド
口直し。生の大根を薄く切り、自家製梅干をほぐした梅肉をはさむだけ。
その他、メスの場合は、生のタラコを使った「かのこ漬け」などの料理も楽しいがこの前作ったばかりなので割愛。
年に一度の贅沢、お酒は地酒「初孫」を冷で。幸せだなあ…
山形では冬の味覚として親しまれており、内陸や置賜でも、寒鱈を買い求めて、職場や地域で「寒鱈会」を楽しむことが多い。現在は物流もよくなったけれど、やはり足の早い魚だけに、水揚げ地に程近い庄内で食べるのは味が違うのだった。
実家の父も昔から大好物で、冬になると必ず最低一回は寒鱈汁を作って食べたけれども、アブラワタが小さいのと私の味覚が幼かったこともあって、あまり美味しいと感じなかった。特に白子のポン酢がけは、「今しか食べられない美味しいものだよ」と言われても幼稚園児には生臭く、何より見た目のグロさに負けて好きになれなかったものだ。今ではすっかりこんなにお魚好きになりましたよお父っつぁん。
この記事へのトラックバック
ランチに来ていた常連さんの庄内出身のおっさんが
ドンガラ汁はアラだけ使うんだ〜身は甘辛く煮て冷蔵庫で冷やしてゼラチンかたまったら食うんだと熱く語っていたのを思い出しました。
しかしメッチャクチャ美味そうですねぇ食いてええ。
旬のときにぐぐっと美味しくなるのはどの魚も同じですが、鱈ほど限られた時期に艶かしいほどに変身する魚もそうそうないのではと思う1・2月です。
この時期、酒田・鶴岡・(旧)温海・遊佐などで週代わりのように寒鱈イベントがあり、また上物は料亭やお寿司屋さんにも流れるのでどうしても値段が高くなってしまうのが難ですが、それを押してもやはりこの時期一度は!というのが庄内の冬の風景のようです。
庄内の人の寒鱈へのこだわりは、山形人の芋煮やソバに対するソレと同等ではないかと思う今日この頃であります。
味付けの好みは色々あると思いますが、「煮て冷ました鱈の身」はマジ最高です。こっちに来て初めて食べたのですが感動しました。今出回っている真鱈の身なら、どこで購入しても十分美味しいと思います。
庄内の魚の食べ方を数年間見習ってきて、食材によっては「必要以上にいじらないことの大切さ」を学んだような気がします。
普通にこの季節売っている鱈が寒ダラでいいんでしょうか?
しかし、自分が不思議だな〜と思ったことは、
鮭→メスが値段高い
鱈→オスが値段高い
で男もまだまだ捨てたもんじゃないってことっすねw
食わせろ!
(景山民夫風に)
>寒だらってどうやっていいのを見分ければいいんでしょうか??
うちはいつも目利きさんにお願いしているのであまり詳しくないのですが、よく言われるのは
・目が澄んでいるもの(魚はなべてそうですが)
・皮の模様がはっきりしているもの
・腹が白くてきれい、パンと張っているもの
だそうです。
ただし、「鱈腹」の語源になるほど超雑食性の魚なので、タラやスケソウダラをさばくと、胃袋の中から未消化の魚(タラさんのお食事)が出てくることもままあるので、見た目だけだとなかなか分かりづらいかもしれないですね。お腹の後ろ半分あたりが白子充実度の目安になるかもしれません。
いつもお願いしている方は、さすがプロ、見ただけで「こっちは形は少し小さくなるけど、白子はいっぱい入ってるよ」というように教えてくれるそうです。すごい。
もし半身などにさばいてあるものをお求めになる場合は、白子がダレておらず、プリッとした感じのものがおすすめです。
「寒鱈」の定義は、狭義には「寒の入りから節分までの「寒」の時期」ということですが、まあ「冬に近海で取れた鮮度の良い真鱈」ということでいいと思います。地元の方は「寒鱈が美味しいのは(あるいは「寒鱈」と呼べるのは)やっぱり2月初旬までだねー」という意見が多いようです。
>鮭→メスが値段高い
>鱈→オスが値段高い
鮭の場合は、利用価値と味の面で「腹子>>>超えられない壁>>白子」の価値の差が大きいからでしょうね。
でも、産卵で疲弊していないオスのほうが身は美味しいのは鮭も同じでして、やはり庄内では鮭・マスに関しても「身を食べるなら断然オス+海鮭(川鮭は力を出し切ってしまっているので…)」が揺るがぬ定説であります。
しかしハタハタに関しては、メスの優位性は揺るがないですねぇ〜。
>>NAPORINさん
おう、うちに来てくれるなら、漱石さん一枚でタラ臭いゲップが出るほど食わせてやるぜぃ。
問題は、NAPORINさんがうちに来る費用で、上物のタラが何尾も買えてしまうという事実なわけだけども…