2008年03月21日

ここでないどこかに日記

昨日TVで放送(スーパーモーニングだったか)で放映されていたので知ったネタ。

【ニュース・インサイド】更生センター計画に住民猛反対 仮出所者支援 理解の道遠く 「なぜ小学校の隣に」(ワードBOX / 西日本新聞)
(2007年3月18日掲載)


 ●近くに歓楽街 「誘惑多い」の指摘も

 刑務所仮出所者の社会復帰支援のため、法務省が福岡市に設置を計画している「自立更生促進センター」が猛反発を受けている。予定地が小学校に隣接しているため「子どもたちの安全が守れない」と地元から上がった反対の声が広がり、15日には約6万3000人分の反対署名を長勢甚遠法相に提出した。凶悪事件での再犯が問題になる中、法務省は「更生保護のモデル施設」と位置付けていただけに困惑。「入所者の更生を促すためにも施設に対する地元の理解は不可欠」と説得を続ける方針だ。


「これだから子無しは」と揶揄されるのを承知で書くけれど、やっぱりこれはNIMBYだと思うんだなあ。


詳しく見てみると、このセンターというのは

法務省関連施設の福岡保護観察所(3階建て)の内部を改築し、12人が宿泊できる施設を整備。最低2人の保護観察官が24時間態勢で対応する−。地元の会合で、住民たちは同観察所職員から説明を受けた。

(略)

これに対し、法務省は予算の制約を理由に挙げる。「予算があれば郊外の土地を購入して新設することができるが無理。既存の施設を活用するしかない」(保護局)というわけだ。


とあるように、元々そこにあった保護観察所を改造して作るものであり、更地や異質の建物跡地にポコッと作るというわけではない。
つまりそれまでも、仮釈放・保護観察対象者は普通に近隣を歩き、出入りをしていたわけだ。

ちなみにこの保護観察所にはこれまで延べ2000人以上の元受刑者が出入りしていたが、特に行き帰りの際に事件は起こっていないという。
(日経の記事による)
また、こうしたセンターに入らない、通常の(身元引き取り手のある)保護観察対象者は、いくつかの制限事項を課されつつ(定期的に監督者と連絡・面談をする、転居や旅行の際は必ず報告する、素行不良の者と交際しないなど)、基本的には普通の生活をしているし、外出もすればアルバイトもするという状況にある。
一つの居所に一定期間固定させ、更生プログラム実施とともに行動や姿勢を観察していくという点においては、これらのセンターに寄宿している方がよっぽど管理強化といえるのだが…(センター側では24時間保護観察官が待機し、外出・帰りのチェックを行い、門限も設けて夜間の外出は禁止するとしている)
同じような人間が昼間出入りするのは脅威じゃなく、管理を強化して制限付きで居住したらとたんに迷惑施設扱いになるのがどうもよくわからん。「その前までは図書館だった」とか「駐車場だった」というように、全く性質の違う施設だったのならまだしも。

また、仮釈放を許されたということは、刑務中の行動や素行が比較的良好ということだし、過去に薬物使用の経験があったとしても、中毒が軽度であり、集中的な加療が必要な状況ではない(その場合はとても仮釈放の許可は下りないし、行く先は医療刑務所的な施設だろう)と考えられる。また、虞犯・逃亡のおそれが低く、改悛も一定基準以上であると判断された証でもある。要するに「マシな部類」ということで。

従来の「通い」はOKで、「(管理付きであっても)寝泊まり」されるのは怖い・気持ち悪いというのは、いくら「子どもの安全」を錦の御旗に掲げたところで本質はNIMBYなんじゃあるまいか。「子どもの安全」は「お題目」とまでは言いすぎかもしれないが、NIMBYの増幅装置であることは間違いないと思う。
要するに、「意義は理解している」と前置きしながらも、「なんでおらが町なの?」「他に行け」というのが最大の根っこということだ。

この自治会の反対運動チームは公式サイトも持っているのだが、そのいくつかの項目にそれが表れているように感じた。
例えば、携帯版のトップページ内において、福島県の同様の更生支援センターの立地に言及しているのだが、

福島県福島市狐塚 177」は「狐山のふもと」です。
つまり後ろは山です。行き止まり」です

福島県福島の「法務合同庁舎の駐車場200台可能の空き地」
に設置します。現地確認しました
左に都市環状道路有りますが4mの防護壁の高架道路です。
300m東に東北新幹線の狐穴トンネル」があり
「また福島高校の東側」は「緑地帯に3mの金網塀があり山」です
設置場所は「陸上の孤島」です。危険度が違います
みなさん「なぜ都心部の舞鶴小学校隣で無ければならないのか?」

設置賛成の法務省のご意見を聞きたいです


また、運営側の意見ではないが、掲示板(旧)では

大体街中に設置する自体がおかしい。
しかも周りは大学や小学校、京都御所まである。
このような所に罪人自立センターをつくる行政の考えがわからん。
犯罪者の仮出所再犯率は高い。再び犯罪を犯すことはほぼ目に見えている。
つくるならもっと無人島や国民の営みから離れた場所であるべき。


というように、「市街地(うちの町)はダメだけど、田舎ならいい」というニュアンスが見え隠れしているのが、田舎住まいの身としてはけっこう気になるところだ。原子力発電所や放射性廃棄物処理施設を遠隔地の田舎に押し付けるのと同じ理屈じゃないだろうか。
保護観察期間に「人の目がある」というのは結構重要だし、何よりセンターで生活する意義のうちに、「ここにいる間に、正式な居所や仕事を探す(このご時世、ましてムショ帰りでは相当難しいことだ)」という大きな目的があるのだから、ある程度利便性のある場所の方がかなっているように思えるのだが…

基本的に、センター入居対象者は、
「刑務中態度良好で仮出所が認められたが、身寄りがなかったり、また身元を引き受けるべき筋から拒否されたりして、仮釈放後の身の置き場所がない」
「これまでは民間の施設で受け入れていたが、数的に抱えきれないので新しいセンターを作って引き受ける」

ものだという。
また、、「暴力性や性的犯罪嗜好があるものに関しては民間で受け入れ拒否される場合があるのでその受け皿」ともされている。その部分を「仮釈放に相当する更生態度」と差し引きでどう判断するかが大きな争点の一つになっているようだ。

また、更生センターの機能として、

刑務所の満期出所者や仮釈放者のうち処遇が必要な人を入所や通所で受け入れ、保護観察所職員が自立更生に向けて直接処遇に当たり、薬物依存などの問題に応じた専門的な処遇プログラムや、職業体験講習などの就労支援を実践する。
福島に自立更生促進センター整備へ/法務省 - 福島県内ニュース - KFB福島放送


というものが挙げられており、地元はこれで「ジャンキーが来るんじゃねえか!」と一気に反対状態になったわけなのだが、前述したとおり、そもそも深刻な状況にある人間は基本的にここには来ないはずなんだけども…
あくまで「そういうものに対しては」であって、「薬物中毒や元性犯罪者だけを集める施設」ではないはずなのだがなあ。
そもそも福岡の繁華街近くって、「使用経験アリ」どころか、現役でいろいろやってたり持ってたりする893がウヨウヨしているのでは…
センター側は、「立地条件を考慮し、福岡のセンターには薬物使用者や幼児相手の犯罪を犯したものは入所させない」とアナウンスしているが、地元側は納得していないようだ。

「陸の孤島や山奥、もしくは24時間生活を監視しろ」という要求は、要するに「仮釈放というシステム全般を否定し、収監中の態度がどうであろうと刑期が終わるまでは檻から出すな」「一度犯罪を犯した人間は二度と更生などするわけがない」と主張しているのと同じことだ。
私自身も基本的には、「ロクデナシがそうそう心からの改悛・更生などできるのか、それができる人間なら最初から犯罪など犯さないのではないか」という思いが強い人間なのだが、日本の刑務行政が「たいていの人間は更生できる」という前提の上に成り立っている以上、建前だけでもそのシステムを受け入れて生きていくしかないんだろうとは考えている。
またそのような「監視施設」に変化させた場合、本来は質の異なる業務に従事する保護観察官や保護司(こちらは民生委員みたいなもので基本的にボランティアである)に刑務官の業務をさせることになり、そういう意味でも問題が生じるのだが…

保護観察の目的としては、期間中に社会への順応力を身につける・身辺環境を改善する他に、いわゆる「悪い仲間と再接触しない」ことも大きく、それに関してセンターでの集団生活は効果を発揮すると思う(ただ福岡の場合、繁華街・歓楽街が近い・ヤクザも多いという立地はこの点においてプラスとはいえないだろう)。
また実際に、再犯者の中には、「刑務中の更生状況は良好だったが、仮釈放後に誰からも身元受け入れを拒否され、居所も貸してもらえずに絶望した結果再度グレた」というケースが多いらしく、これを防ぐ意味が大きいという。

とにかく、これまでにもすでに保護観察施設があり、そこに通う保護観察対象者が結果的に学校近辺を(必然的に)歩いている状況があり、それに関しては理解を示していた(文句は特に出なかった)にも拘らず、決して野放しにするわけでもないのに、急に「子どもが危ない!」と騒ぎ立てるのは何か間尺に合わない気がしてならない。ならばそれまでは一体何だったのか?ということだ。
TVに出演していた反対団体リーダーは「話を聞いた瞬間頭が真っ白になり…」などと語っており、どうも感情だけが先に立っているように見えてならなかった。
勿論、法務省側の説明が十分でなかったことも大きいのだろうけども、画面を見るうえではあまりにもヒステリックな反応に映った。

法務省側も好き好んでその場所に建設するわけではなく、あくまで「他の場所に新設したいけれども金がないから仕方がない」
というコスト上の問題で、「ムショ帰りの奴のために金なんぞ出したくないが、ここにも来るな」というのでは有効な代替案が出ないのも仕方ないのではないだろうか。
ゼニカネの話で言えば、受刑者一人当たりの「衛生的で健康な」生活にかかるコストは知っての通りバカにならず、法を犯さず真面目に働いてなおワーキングプア状態を強いられる庶民が多く存在することを考えると、「なぜ犯罪者にこんなに手厚く税金が使われるのか」という憤りはいつも強く感じている。
コスト面で言えば、「再犯・逃亡の恐れが薄い模範囚を早めに出す」仮釈放制度は非常に有効であり、再犯防止プログラムは、「再度入所してまた衣食住分の税金が使われる」ことを考えた場合やはり必要不可欠なことである。何しろ日本はとにかく金がないのだから…

この騒動の落とし所がどうなるのかは分からないが、現実的な事情でその場所にセンターを建てざるを得なかった場合、周辺住民の彼らを見る目たるやどれほどきつく、憎悪に満ちたものになるか想像もつかない。文字通り「蛇蠍のごとく」見られ、毒の沼地のごとく忌避され、そそくさと通り過ぎたり回り道をする親子連れが後ろ指を指したり悪しざまな言葉を言ったりするかもしれない。(「犯罪を犯すとこんな風に扱われるのか」と痛感する意味で地域の犯罪抑止力にはなりうるかと思うが…)
それが「世間様」の荒波と言われればそれまでだが、そうした空気の中で更生プログラムを行っても、上手くいくものも行かないような気がする。何か事件が起こった日には真っ先に入所者が疑いの目で見られるだろうし。
そういう意味も込めて、どこか別のエリアに計画を変更する方がお互いのためにいいかとは思う。
いっそ少子化統廃合で生じた空き校舎を改造するというのはどうだろう?観察保護対象者の何割かは、童心や初心に帰ってプログラムの効果が上がるかもしれない。
…あ、でもそうすると今度は、「私の母校を犯罪者施設にするなんて!」と同窓会が黙ってないわけか…

法務省側の情報の提示の仕方や地元とのすり合わせ方にも問題があっての騒動かもしれないが、とにかくNIMBY臭の方が鼻についたもので…よけられるもんならよけてやればとは思うけども、先立つものがないんじゃ仕方がないような。
また、こうした偏見や誤解を緩和するためには、仮釈放の基準の明確化・厳密化をはかるとともに、その具体的な基準の周知を図ることも両輪で行わなければならないと思う。


posted by 大道寺零(管理人) at 18:08 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こういう事いう奴って世界平和とか人類皆兄弟とかいうんだろうな。
嫌われ施設ができると不動産価値が下がると思っているだけなんでしょう。
Posted by at 2008年03月21日 21:21
まぁ、最近は大分マシとはいえ、私の職場(老人ホーム)も、
まぁ、NIMBY扱いされることもありますしね。
丁寧に説明してどーにか理解してもらうしかないのかなぁ、と思いますが。
というか、ほかに方法もないですし、言う人は言うわけです(汗
「周りにそういうのが出来て嫌な人」が
むしろ集まって住んで欲しいわけですが、
近所中でギスギスしそうだなぁ……と思ったり。
Posted by たろんなーど at 2008年03月22日 23:10
わたしが実際に見たこの手の反対運動には、
「葬儀会館の建設を反対。必要かも知れないがうちじゃなくてよそに作れ。」
というのと、
「総合病院の建設そのものは受け入れるが、精神科の併設に大反対。気持ち悪い。」
というもの。

なんかねえー・・・
でもわたしの場合、購入した自宅の隣にパチンコ屋ができるって聞いたら露骨に嫌がるかも。
Posted by Felice at 2008年03月23日 08:37
>>風さん

「世界平和」も「人類みな兄弟」も素晴らしい命題です。それを唱える人が同じ口でNIMBYや地域エゴをむき出しにしたりするのでなければ…ですが。

>>たろんなーどさん

>私の職場(老人ホーム)も、
まぁ、NIMBY扱いされることもありますしね。

介護関係施設もそうなんですか…
刑務などの施設であれば、「私は一生お世話にならない」と自信を持って言えもしましょう(だからといってNIMBYが良いわけではもちろんありませんが)が、そうした施設は、「自分や自分の身内がお世話になる可能性が十分にある」性格のものなのに…と思ってしまいますね。

>「周りにそういうのが出来て嫌な人」が
むしろ集まって住んで欲しいわけですが、
近所中でギスギスしそうだなぁ……と思ったり。

ちょっとでもスタンダードから外れた外装とか、ペット一匹飼うだけでもいちいち争議になったりチクチク言われてそうですね。それこそ「住みたくない」の極みです。

>>Feliceさん

>「葬儀会館の建設を反対。必要かも知れないがうちじゃなくてよそに作れ。」
というのと、
「総合病院の建設そのものは受け入れるが、精神科の併設に大反対。気持ち悪い。」

火葬場ならともかく、葬儀会館の何をそんなに嫌がらなければならないのかよく分かりません。精神科への偏見も、まだまだ日本のメンタルヘルスへの理解が低いことを思い知らされますね。

>パチンコ屋

最近は周辺の騒音とかは抑えられてるんでしょうかね?(入ったことがないのでわからんのですが…)
深夜までの派手な電飾、車の出入りの騒音等については確実に存在するデメリットなので、住宅地としてはキツいとは思います。昔住んでいたアパートの近くのガソリンスタンドの照明もけっこうきついものがあったのを思い出しました。
Posted by 大道寺零 at 2008年03月29日 17:35
パチンコ屋については、騒音対策はされています。と言うか、北海道なので建物の機密性が高く、出入り口も最低2重なので、いわゆる「じゃらじゃらじゃらー」という玉の音や、BGMも外には漏れません。ネオンサインは多少はありますが、住宅街に近いとレーザーなどは使わないです(それでも気にする人はいるでしょうけど)。
それに確か風営法で12時には閉店でしょう、ものすごく迷惑とは思わないんですけど、わたしの個人的感覚で葬儀会館や精神科は受け入れられるけど、パチンコ屋は嫌だなあ〜って感じです。
葬儀会館が嫌な人もそういう「なんとなく」なんでしょうし。

あ、付け加えると、わたしがパチンコ屋が嫌なのは、お客さんに喫煙者が多く、多少の匂いや付近の道路にポイ捨てがあるからかもしれません。
Posted by Felice at 2008年03月29日 22:38
>>Feliceさん

そーですか〜。
近くにパチ屋はいっぱいありますけど、敷地内に降り立ったことがないもので…
パチ屋って風営法の対象なんですよね。調べてみると細かい規則とか、意外な店舗も風営法規制の対象だったりして興味深かったです。

ネオンや深夜のBGM・店内放送だとコンビニのほうが周辺への影響は大きいですね。実際親戚の家の裏手にコンビニができたときは、それなりに対策はしていたのでしょうけどもやっぱりたまらんものがあったそうです。
コンビニの場合は、周辺住民(あるいは生活エリア内住民)の利便となることもあるので、トラブルは起こりづらいようですが、直近だと色々あるらしいです。
Posted by 大道寺零 at 2008年03月31日 20:24
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