2008年03月29日

傘福日記

加茂水族館に行った翌日、朝風呂と朝食を済ませ、朝ドラを見ながら軽くお茶を飲んでチェックアウト。
鶴岡の雛街道を案内しようかと思ったのだが、山王くらぶの傘福を見てみたいということで酒田へ方針変更。
母たちはバスで来たので、酒田からでも乗ることができるため特に支障はないようだった。

「山王くらぶ」は、明治に建てられた料亭で、酒田の景気が良かった頃はお大尽たちが毎晩芸者を揚げて賑わっていた場所。建物自体が文化財となっている。現在は料亭を廃業し、展示イベントやお茶会などの会場として用いられている場所だ。
ここ数年は雛人形展示スペースの定番として使われている。

「傘福」は、酒田商工会議所女性会が主催する展示イベント。
節句の折などに、布で作った縁起ものマスコットを傘につるし、寺社に奉納していた「傘福」という行事の伝統が失われつつあることに着目し、その伝統文化を復活させるだけでなく、新しい解釈やテイストも加えて再び次世代へ受け継いでいこうというのがコンセプトらしい。
赤い傘に赤い紐で沢山吊るされた可愛い飾りものが華やかで、会場全体がとにかく明るく可愛らしい雰囲気だった。

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赤い唐傘の周りに、赤い帯状のシェード飾りをつけ、縁起のいい意匠や、娘の成長を願うアイテムを赤い糸やひもで連ねて飾り下げるのが基本。

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傘から透ける赤い柔らかな光が会場の広間全体を満たしている感じ。

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吉祥マスコット「さげもの」は、基本的にはちりめんや着物はぎれなどの和布で作られていて美しい。中にはプリント生地や化繊の鮮やかな色柄のもので作った現代風なものもあるが、それはそれで変化があって見た目に面白い。

用いられる意匠は様々で、将来の安産を願う犬張り子、裁縫が上手になるようにと糸巻き、寝る子は育つという意味で枕、お金がたまるようにと宝袋…など、健やかな成長だけでなく、実のある女性として成熟するようにという祈りがたくさん詰め込まれている。

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上は庄内の海山の幸を形どったオリジナルのさげものたち。
口細カレイやメロン・いちご・庄内米のおにぎりや柿など。
下:傘福の下に沢山集められたわんこ。かわいい。

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布人形による祭りのジオラマ風。
出汁の後ろに男の子女の子のペアと鳥居が見える。

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地元の伝統工芸品・鵜渡河原人形(土人形)の雛段。
素朴な庶民のひな飾り。

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脇の床の間にあしらわれた布細工。

会場ではさげもの作りの体験コーナーもあったり、すでにできたさげものや製作キット・素材のちりめん布も販売されていた。
私はつい作り方の本を購入。
最近していないけれども実は布手芸も好きだし、コツコツ作って来年のふたばのための春の節句に飾れれば…という野望もそこはかとなくあったりする。
まあその野望がどうなるかは分からないけれども、写真やさげもののいわれを本で見ているだけで十分面白いのだった。
フェルトやコットン、古着のきれで作っても悪くはなさそうだが、やっぱりちりめんや和布で作るのが品があってしっくりくるような感じ。
スタッフの方がお茶を御馳走してくださったり、詳しい解説をしてくださったりと、さすが女性ならではのサービスの細かさが印象的だった。
ただやはりここも古い建物、展示スペースは二階の広間なのだが、昔ながらの急な階段を伯母に上り下りさせてしまうことになり、またも申し訳なかったなあと反省。やはりわが事になってみないとちょっとしたところで気が回らないんだよなあ…


その後、本間美術館かこっちが迷ったが、あまり時間の余裕もないのでさっと見学できそうな本間家旧本邸へ。

実は私も、ここには一度もちゃんと来たことがなかったのだが、本間家のお雛様と、特に精巧を極める雛道具は一度見てみたかったのだ。
中に入ると、職員さんが建物内を案内しながら詳しく分かりやすい解説をしてくれる。
しっかりした作りだが、日本を代表する大地主とは思えないほどの質素な暮らしぶりだったということもよく分かって勉強になった。一度も旧本邸に来なかったのは、一つには入場料の割高感があったのだけども、このくらいしっかり案内してくれるなら悪くない。うるさくなく、品があって素敵な職員さんだった。

残念ながら内部は写真撮影禁止なので画像はナシ。
公式サイトの写真(もうちょっと大きいといいなぁ;)で雰囲気をどうぞ。
1.5間のひな段には圧倒されるが、実はもともと二倍の幅があり、戦時中に徴収されてしまったのだとか(もったいない)…
最上段に夫婦雛が二組あるのが目を引く。
左の方にあるのは翁と老婆の老夫婦雛で、つまりは「高砂人形」の雛人形バージョン。「百歳雛」「相生雛(相生=ともに白髪の生えるまでの意)」と呼ばれているという。これも東北ではまず見かけないものだ。
人形もさることながら、京や江戸の職人に作らせた道具類の精巧さがすごい。お膳や長持などはよくあるものだが、化粧道具・文房具など実に細かい細工で、フィギュア類に目が慣れた現代人でさえ驚いてしまう。また、碁盤・将棋盤(碁石も小さく文字が描かれた将棋の駒も一式揃っている)・双六(バックギャモン。勿論超ミニサイコロも付属)や楽器類。長さの違う櫛のセット(もちろんちゃんと櫛の目が切られている)お内裏様の持ち物としての文台(ミニ本にはちゃんと文字が書き込まれている)、理髪セット(ミニ剃刀はちゃんと刃がついていて剃れるという)など、ずっと見ていても飽きないほど。

向かいにはミュージアムショップ主体の別館「お店(おたな)」もあるのだが、時間の都合で割愛。

中町の寿司屋「しばらく」に一行をご案内。予約なしだがすぐにランチを出してもらえた。
最初、入船ランチを注文したのだが、「値段ほとんど同じでこっちのほうがおすすめだよ」ということで、勧められるままに地魚オンリーの「庄内浜(1650円)」を注文。
叔母の足のこともあるのでカウンターで、大将の観光案内や魚の話を聞きながら握ってもらう。噂には聞いていたが、予想以上に話好きで笑いの豪快な大将だった。
こっちも食べる方に集中していたのですべて覚えてはいないのだが、白身主体で

・カナガシラ
・ホウボウ
・ハタハタ
・アイナメ
・イカ
・ブリ
・川マス
・フグ(上にちょこっと白子が乗せられている)
・甘エビ(尻尾が抜かれていて食べやすい。1カンに3匹乗っている)

あとはハタハタの焼きびたしと味噌汁(つみれ・イゲシ入り)。
いや〜〜美味しかった!ありきたりでない地元のネタを紹介できてよかったと思う(大将のにぎやかさは好き嫌いがありそうではあるが)。ちょうどマスも出てきたし。特に「生のハタハタ」なんて食べるのは私も初めての体験だった。
カウンターでトーク込みの食事になってしまったので内心ちょっと時間が心配だったが、余裕を持ってバスターミナルに到着できて安心。

手元には、本間家旧本邸別館用のチケットが余っていたので、取って返して一人で別館「お店(おたな)」へ。
ここの小物は時折タウン誌などで紹介されていて一度行ってみたかったのだけど、ショップを覗くだけでも入館料が必要なのでなかなか足が向かなかったのだ。また、前から欲しかった「犬筥(いぬばこ)」のミニチュアを買う絶好の機会でもあった。
静かな別館に入ると、さきほど本館で案内してくださった職員さんがお店番中。ミニ雛・ドールハウスの食器をはじめ、可愛らしい和風小物が色々あって見飽きない。ミニ雛飾りを探したい方はここがマジお勧めだ。
時間もあるのでゆっくり品定め。

「犬筥」は、さきほど見た本間家のひな飾り最上段の両脇に置いてある、2体1対の犬の置物。陶器や和紙でできており、飾りものであると同時に小物入れにもなっている(本間家では普段お雛様のアクセサリーや杓を入れているらしい)もの。
こちらのページの中ごろに写真あり
上流階級の家で、ひな飾りのオプションとしてだけでなく、多産・子孫繁栄のお守りとして飾られていたものらしいが、やはり東北では珍しい。
本間家のものは、口が狛犬同様に阿吽になっており、さらに珍しいという。
以前から、「狛犬亜種」として入手したいと思っていた。最近ではやはり、双子に重ね合わせて、ひな飾りとしても欲しかった。

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というわけで購入。こちらは箱ではなく、犬筥を形どった土鈴細工なのだが、なかなか表情が上品でよろしい(残念ながら阿吽ではないのだが)。

職員さんは私が午前中見学していたのを覚えていてくれて、「お連れ様はお帰りですか?」と声をかけてくれて、展示品の解説などもしてくれた。うーん、本当に気持ちのいい職員さんであることよ。

3月中は庄内のあちこちで雛人形の展示をしていて楽しめるのだが、基本的にやはり古いものを見る際には数百円の入場料が必要になるため、見て回るとちまちました出費がわりとバカにならなかったりする。
最近では効率的に鑑賞して回れるバスツァーや期間限定の周遊バスなどもあるので、他地域の方にはおすすめだ。
興味のある方は、「庄内ひな街道」の案内サイトをどうぞ。
素朴なものから豪華なものまでさまざまだが、古今東西、ひな飾りというものには、「女の子を育てる楽しさ」が形になってぎっしり詰まっているのだなあと、自らの失われた娘との生活を夢に思いつつも実感するのだった。
posted by 大道寺零(管理人) at 20:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
いつものKです<(_ _)>

いやぁ、素晴らしい雛街道ですね♪♪
熟女姉妹と一緒に楽しませてもらってます(^_^)/
地名も行事もワラワにとっては初ものばかり(^ ^;Δ
一気に身近な場所になってきました(笑)

「傘福」展示物等の素晴らしさは勿論なのですが、
画像の美しさ、見事さに圧倒されております。

説明や画像を拝見していると、
雛人形などには縁もなく可愛げもなく育ち
過ごしてしまったワラワにとっては^^;、
心洗われるような貴重な紀行文ですねー★☆★
 
Posted by 通りすがり at 2008年03月30日 05:48
>>通りすがりKさん

ありがとうございます。多分他県の方は名前すらご存じない片田舎の風景ではありますが、一瞬でも楽しめていただけたなら、普段あまり多用しない写真を貼り付けたかいがあるというものです。産業の空洞化や、昔からの店や大型店舗が閉店して均質化(跡地にできるのはパチ屋や消費者金融ばかり…)が著しいのはいずこの否かとも一緒ではありますが、かつて米と海運で栄えた旧家の名残りを今にとどめて楽しむことができるというのは、受け継いできた方々に感謝せずにはいられません。

婦人部のスタッフの方々が一つ一つ手作りした布のさげものには、言いようのない温かみが満ちておりました。

こちらのサイトは、地元の印刷会社が各戸無料配布をしている月刊情報誌のものなのですが、特色のある雛人形や道具を紹介しており、楽しんでいただけるかと思います。お暇のある時にでもどうぞ。
http://www.spoonnet.jp/special/index.html
特に、五人囃子ならぬ、七人官女の雅楽隊はなかなか見られないものかと存じます。

北国の雛祭りの頃は、まだ雪も降り寒い中での飾り付けなのですが、それでも少しずつ春の訪れを感じ始める時期でもあり、冬の終わりとともに祝うイベントとしてやはり格別の感慨がございます。
Posted by 大道寺零 at 2008年03月31日 20:32
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