2008年04月02日

「イムリ」三宅乱丈日記

「ぶっせん」「秘密の新撰組」などのギャグ作品で名を上げた三宅乱丈の本格SFファンタジー。
すでに「ペット」などの作品で、ストーリーやシリアス分野の実力を提示した同氏だが、その引出しの多さには改めて驚かされる。
コミックビーム連載。


物語より4000年の昔。
「カーマ」と「イムリ」の2つの民は争い、勝利した「カーマ」の民はその惑星「ルーン」を凍らせ、隣の星「マージ」へと移住した。

「カーマ」はマージに住む支配者階級。最高権力者は「賢者」と呼ばれる。
「イムリ」は凍らされた星・ルーンに住む原住民であり平民層
「イコル」はカーマに使役される奴隷民族

という階級社会が形成されて長い時間が過ぎた。
マージではなぜか子供が生まれないため、カーマは一時的にルーンに移住して子を儲け、再びマージに帰還するという形で、両者間の移動は行われていた。
ルーンの氷が解け始め、カーマたちは母星であるルーンへの帰還の計画に着手した。


マージの支配者は主に、
・軍事系の「大師」
・文官系の「呪師」
の2系列に分かれ、互いに対立している。

この世界の人間はみな、生体エネルギーである「彩輪」を持ち、この生来の強さや制御能力が支配者としての能力のカギとされている。
この彩輪を用いて他社の精神をコントロールする「侵犯術」がカーマの支配力の要となっているという設定。

主人公・デュルクは呪師系の高官である父の元に生まれ、呪師としての将来を嘱望されて、エリートの集う寄宿学校に入学する。
生来の彩輪の強さ、秀でた能力で頭角を現して選抜され、「研修旅行」の名目でルーンに派遣されることになる。
研修・視察は表向きで、ある使命を帯びてのルーン行きではあったものの、与えられた任務に危険はないはずだった。

デュルクの能力とまっすぐな人格を高く評価する先輩・ラルドは、種族と歴史の真実の一端をデュルクに語り授ける。
そこには、4000年という長い年月の間に忘却された、あるいは故意に覆い隠された事実があった。ルーンに降り立ったデュルクは少しずつそれを学んでいくのだが、事態の急変に見舞われてしまう。



作者が一から構築した世界での物語であり、冒頭から様々な造語が飛び交うので、1巻の序盤はややとっつきにくい+読むスピードがなかなか上がらない。
物語の理解を助けるための小さなシートが入っているのが助かる。
とはいえ、「用語集と首っ引きでないと全然理解できない」というものではなく、漫然と読んでいっても大体把握できるようになっているのでさほど心配しなくても大丈夫だろう。
現在3巻まで発売されているのだが、1巻だけ買うよりも2.3巻まで一気に買って、物語が動き出す先の巻まで読み進めた方が物語世界構造の理解がスムーズになるかと思う。

2巻で登場する「旅のイムリ」が非常にいい味を出している。
いかつくて不細工寄りの顔立ち・体躯が印象的で、一件不気味で気難しいのだが、実は率直で気さく(これはイムリの特徴でもあるようだ)な、味わい深いキャラクターである。
男女問わず、「美形を美しく描くのは誰にでも出来て、普通の顔・ブサイクをきちんと描けるのが実力ある作家」なのは同じなのだが、ことに三宅乱丈は、女性作家にあってそういうキャラクターをきちんと描写できるのが毎度のことながら凄いと思わされる。(逆に美男美女でもどこかしらちょこっと崩した部分があって、そこが妙な色気につながっていたりするのを描くのも大得意)

3巻になって物語が急激に動き出し、先(過酷でダークな方向に進みそうだが…)が気になると同時に、「丁寧な描写ペースを崩さないで、このままで進んでいってほしい」とも思う作品。


posted by 大道寺零(管理人) at 17:46 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
 今、最も「続きが早く読みたい」作品の一つです。三宅乱丈先生はホント凄いわ!!力強い、肉感的な絵柄から、女性作家と思えなかったのですが「イムリ」を読んでいると、背景や衣装、髪型の詳細な美しさに「女性作家の良さ」も感じましたね。
 ミューバの怒りはどう表現されるのか?私は単行本派なので、もう少し我慢です。
 
Posted by ネコトシ at 2008年04月03日 01:12
>>ネコトシさん

私も単行本派なので、続きがめちゃくちゃ気になります。あそこで引くなんて、うますぎて罪つくりですよ〜!
これから物語がどう変化して、母の見たデュルクのビジョンに至るのか、想像力をかき立てられます。だれの身にも痛みが伴いそうな未来図なので、ますますつらい話になりそうなのですが…

>背景や衣装、髪型の詳細な美しさに「女性作家の良さ」も感じましたね。

そうですね〜。デュルクの学校の制服もイイですし、ビーズを散らしたような女性の髪飾りも繊細で美しいですね。
骨格や筋肉をきちんと描ける人なので、独特のデザインの衣装もウソ臭くなくて、引き立っていると思います。

以前から、ストレートに性的な書き方はしていなくても、三宅乱丈の描く「強制」や「服従」のシークエンスには言いようのないエロティシズムが漂っていると思う(という人は多いと思います)のですが、この作品の中の「促迫」のシーンにも似たようなものをチラチラ感じてしまいます。
Posted by 大道寺零 at 2008年04月03日 17:56
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