2008年04月09日

taspoと恥ずかしい記事日記

先日買い物に行ったスーパーの店先で、taspo申込・即日交付キャンペーンが行われていた。バイトの人が用紙を出入りする客に配るだけでなく、「今なら当店で写真撮影無料サービス!」というのぼりが立っており、「興味とお時間のある方は今すぐ作っちゃいませんか?」という内容のものだった。

私はタバコは吸わないし、うちで喫煙するのは男衆だけなのだが、申請内容が多くて煩雑なのと、相方はいつも店でカートン買いしていて自販機は滅多に使わないので、「わざわざ作らなくてもいいかも」というスタンスだったものであまり気にかけていなかった。
この光景を見て、「げ、写真まで必要なのか…;」とちょっと驚いてしまった。

作った方、これから作ろうとしている方には周知の事実だろうが、taspoの申請用紙には個人情報や必要書類がある。

<申込用紙記入事項>

・氏名(漢字+フリガナ)
・捺印(orサイン)
・生年月日・年齢
・電話番号(携帯可)
・住所・建物名

<本人確認用添付書類>

●本人確認書類のコピー(有効期限内に限る)
 ・運転免許証
 ・各種健康保険証
 ・年金手帳
 ・各種福祉手帳
 ・住民基本台帳カード(顔写真付き)
 ・住民票(写し)(発行日から6ヶ月以内のもの)
 ・外国人登録証明書

のいずれか

*現住所と確認書類の記載住所が異なる場合・追加で

姓(名字)が本人確認書類と同じ表記(漢字ほか)で印字されているもの及び市区町村からの住所が漢字で印字されているもので、発行日から3ヶ月以内の公共料金領収書のコピー(家族名義でも可)

 ・固定電話・携帯電話領収証(電話会社)
 ・電気料金領収証(電力会社)
 ・ガス料金領収証(ガス会社)
 ・水道料金領収証(水道局)
 ・NHK受信料金領収証(NHK)

など

●顔写真(縦45mm×横35mm)

なおこれだけ大仰に準備させた肝心のtaspoは「身分証明書としては使用できず」、「申し込みの際の証明書類は返却しない」らしい。
個人情報については、当然ながら「厳密に管理し漏えいがないように…」と銘打ってはあるものの、昨今の状況を見ていると「大手(公的機関)だから信用できる」とはもはや誰にも言えない状況にある。
申込用紙に記載する内容はあまり差しさわりのない一般的なものだが、添付書類の情報量までも一緒に引き渡すことになるのに躊躇する人も多いだろうし、その気持ちも十分にわかる。

CMやポスターなどで大々的に周知を行っているのでご存じだろうが、taspoが必要なのはあくまで「自動販売機でのたばこ購入」のみで、店舗・コンビニでの購入の際には提示要求されない。
対面販売では今まで通り、販売店員がレジを通す際に「この人未成年じゃ?」と不審・または確定しきれないと判断した場合にのみ本人確認できる証明書の提示を要求し、それ以外は基本的にスルーということだ。

これで本当に未成年者の喫煙を抑止することができるのだろうか?多少の成果は上がるだろうが、全国の自販機システムを入れ替える(電子マネーの運用・チャージ機能、及びtaspo情報を全国共通で管理するために無線ネットワークが組み込まれる)+taspo発行に伴うコスト(周知活動含む)やユーザーの多大な手間と見合うような割合ではとてもないように思える。

歯止めをかけたい最大のターゲットは10代後半(中高生)だが、もっとも見た目の個人差が大きい時期でもあり、少し大人びた風の子は、ちょっと化粧や服装・髪型を変えればハタチそこそこに化けることは十分可能だし、正直カジュアルな私服の22歳と18歳の違いをかぎ分けられる人はそうそういないと思う。
店員側にしても、そうした境界上にある見た目の客に対して、提示を求めるかどうかは、クレームに直結しがちな行為だけについ腰が引けてしまうことが多いのではないか(特に童顔・低身長の人に対して)。まして明らかにDQN臭をプンプンさせている連中ならばなおさらのことだ。

taspo導入後は、たばこの購入先がコンビニなどの店舗になる、あるいは成人の友人から買ってきてもらうというような方向にシフトするというだけで、制度としては片手落ちではないだろうか。
わざわざ撮らせる顔写真にしても、センサー付き自販機は認識しない(ICチップを読み取るだけ)のだからほとんど意味がない。

本当に「未成年者の喫煙は許さない!」という気概があるのなら、対面販売の際に、年齢に関わらず年齢証明書類の毎回提示を義務づければ済むのでは。(成人喫煙者にとっては迷惑で煩雑なだけとは承知しているが…)
「店員が怪しいと思った時だけ」という状態にしているからトラブルや不快な思いが発生するのであって、見た目に関わりなく全員への義務としてしまえば販売員も割り切れる。
その際、従来通り、免許証や学生証・写真入り身分証明書などを持っている人は、わざわざtaspoを作らなくてもそれでOKとし、免許がない、勤めていないのでそういう証明書がないという人はtaspoを作って証明書とすることができる。
上記の人・自販機を使いたい人・電子マネーを使いたい人は任意でtaspoを作る。
「本気度」が高いならば、対面販売の部分をザルのままにせず、こんな感じにすべきでは?というのは小中学生でもわかりそうなものだ。

成人ユーザーに不要で煩雑な手間を課す割に運用がザルで、「とにかくtaspoを作らせよう」とキャンペーンにばかり躍起になっている(ように見える)背景には、お定まりの「管理団体利権」と、「付属して導入される電子マネー"ピデル"の普及」が主たる目的だからなのでは?という声も多く挙がっている。
このピデルは、たばこ自販機オンリーの電子マネーで、他目的に使うことはできない。また、チャージするのも自販機にお札を入れる(1000円からチャージ可能)形のみで、クレカや口座との連動オプションはないので、利便性としてもよく分からんところはある。
感じとしては、セルフガソリンスタンドのプリペイドカードやセブンイレブンのナナコに近いかもしれないが、そっちはプリカ使用だと単価が安くなったり、割引やキャッシュバックという特典があればこそ利用価値があるのであって、ピデルでタバコを買ったからと言って多少でも価格が安くなるかといえばそんなことはなく…
「釣り銭がジャラつくのがどうしてもイヤだ」という人くらいにしかメリットがなさそうに思うのだが…

さらに言えば、JTや国が「未成年の喫煙を抑止したい」と本気で考えているならば、とっとと未成年喫煙禁止法なり少年法なりを改正して、問答無用で喫煙少年本人への刑事的処分を課す以外の特効薬はないだろう。
未成年喫煙禁止法は数回改正されている(直近は2001年)のだが、科料や罰が加えられるのはあくまで
・売った側
・監督責任者
のみ
であり、本人へのペナルティはない。

<条文(全)>

第1条
満20歳未満の者の喫煙を禁止している。
第2条
未成年者が、喫煙のために所持する煙草およびその器具について、没収のみが行政処分として行われる。ただし、現在、この行政処分の手続きなどについての法令は存在していない。
第3条
未成年者の喫煙を知りつつも制止しなかった親権者やその代わりの監督者は、科料に処せられる。
第4条
煙草又は器具の販売者は未成年者の喫煙の防止に資するために年齢の確認その他必要な措置を講ずるものとされている。
第5条
未成年者が自分自身で喫煙することを知りながらたばこや器具を販売した者は、50万円以下の罰金に処せられる。
第6条
煙草を未成年者に販売した者の経営組織の代表者や営業者の代理人、使用人、業務委託先・偽装請負などで従事している従業者が、業務に関して未成年者に販売した場合には、行為者とともに営業者を前条と同様に罰する(両罰規定)。


法律上の「少年」の取り扱いなど、建前上の事情は色々あるのだろうが、条文だけを読んでいると、まるで「ナメられるためにある法律」に思えてならない。
また、未成年者喫煙は刑罰法令の対象となる行為ではないので、家庭裁判所における少年審判の対象にすらならない。
「補導」の対象にはなるものの、結局のところ本人に据えるお灸としては「停学」以上のものが見当たらないのが現状だ。そのせいか、「自分の子供のやらかした喫煙行為について叱り、更生・防止の指導を行うのは学校側」とはき違えるクソボケ親のなんと多いことか。学校内での喫煙ならこっちも当然やることはやるけども、学校の外(しかも私服)でやらかした喫煙のことでいの一番に学校に連絡されて、「ハイ先生反省指導してください、毎日仕事が終わったら子供の様子を見に来てください」と丸投げされるのはどう見ても筋違いなんだけど…(これは万引きも同様。しかしながら、「うちの子は●●くんから無理に誘われただけです!」「誰でもそのぐらいのヤンチャはするでしょ」と逆ギレする親よりは数百倍マシではあるが…)

(参考:wikipedia「未成年喫煙禁止法-少年法との関係」

「本気」があるなら、taspo導入と法改正を両輪で取り組むべきなのでは?


ネットオークションに出回るtaspo (OhmyNews:オーマイニュース)

 というのも、taspoが「闇市場」で取引され、出回っているというのだ。この闇市場には大きく分けて2つあり、売人が間に入ってやり取りするものと、ネットオークションの2つだという。

 売人のほうは暴力団の末端などが資金繰りのためにやっているのが主だと聞くが、ネットオークションはどうだろう。

 今や多くの人が利用しているネットオークションでは、当然未成年も利用するわけで、そういった「獲物」をターゲットにtaspoをさばく輩(やから)がいるようだ。中には1万円以上など、かなりの高額で取り引きされているものもあり、出品者はボロもうけだ。そして、そのカードを利用して未成年者は簡単にタバコを手に入れることができる。


ソースがオーマイなのがかなりアレなのだが…
taspo導入に伴い、未成年者が自販機でたばこを購入「しづらくなった」のは事実で、これまでちょくちょく買って吸っていた未成年者の中には、「人からtaspoを借りたり、作らせて譲ってもらうような手間をかけてまでタバコ吸いたいかと言えば、別にそこまでじゃないかも」と思って喫煙を止める者もいる(あるいは成人層にも何人かは、この煩雑さが禁煙のきっかけになったという向きもいるのだろう)だろう。
ただやっぱり、「そうまでしても吸いたい」連中も結局は多く残るわけで、自販機は写真を認識しない以上、上記のような不正譲渡や売買が出てくるのは、火を見るより…というか、導入案が出たときから明らかだった。
結局ワリを食うのは自販機の入れ替え作業を義務付けられ、入れ替えはしたけれどもtaspoのせいで成人喫煙者の足が遠のき自販機売り上げが下がってしまう(自販機メインの)小売店だろう。
(よく地方で見かける、小売業務は畳んでシャッターが降りてるけど、自販機だけがいくつも店先に並んでて、その収入で食ってるような元酒屋や元たばこ屋とか、そういった店)

ただこの記事で気になるのは…
「ネットオークションでtaspoを売りさばく輩がいるようだ」
と書いてあるのだが、実際に代表的なネットオークションにおいて、「taspo」「タスポ」で現在の出品および最近の落札品を検索しても、ちっともタスポそのものの出品はヒットしない。
(参考:「aucfan」→「タスポ」「taspo」での検索)

せいぜいtaspoカードケースなどのキャンペーングッズがちらほら(値段も数百円程度なので、ケースを装ったフェイクではないようだ)あるくらいで、あとはひたすらに「トヨタスポーツ」がひっかかってくる。
このニュース筆者は、記事作成に当たって、実際にオークションサイトで検索を試みたのだろうか?又聞きの又聞き、もしくは「いかにもネットオークションでなら出回っていそう」という先入観だけで書いたフレーズに思えて感心しない。
「aucfan」では、主要オークション6種について同時検索ができるのだが、この記事の筆者は一体どのオークションについて調べ、「一万円以上のものも…」と書いたのか、ぜひ教えてほしい。

893業界やブラックマーケットの話なら、一般人にはそうそう確認しようもないけれど、ネット媒体の記事において、すぐに検証されるような適当な記述を入れる(しかもタイトルにまでしている)というのはなんとも間抜けで、「だからオーマイニュースはw」と見下げられるんだよなあ。

同記事についたコメントレスにおいても、こんな記述が。
(「エビフライ」なる人が筆者本人か確認できていないが他の記事を見てもどうもそれっぽい)


(読者コメント)

 自動販売機での売上が減って困っているという話は聞きますが、宮崎県及
び鹿児島県でタスポカードが闇で売買されているというようなことは聞かない
ですね。
 顔写真のないカードが記者の言う闇市場に出回っているとしたら、タスポ関
係者が関わっているということでしょうね。

 そのあたりの取材はどうなのでしょうか?

 宮崎県、鹿児島県に住んでいない方が、架空の住所で申請し、7月から全
国で導入されるのを見込んでこのようなことを行うには、あまりにもリスクが
あります。

 記者さんは、先行導入されている宮崎及び鹿児島の現状を取材されたの
でしょうか?

 もし実際に闇市で売買されているのであれば、私の確認不足と言うことにな
りますが、 ちょっと気になりました。


(レス)

・エビフライ

取材というか、友人から聞いた話を記事にしただけなので事実確認をしたわけではありません。ただ、可能性として十分起こりうることであるのは間違いないでしょう。
04/07 11:33


……やっぱりこの程度か……
posted by 大道寺零(管理人) at 13:43 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
あああああ。私もまったく同じこと考えてました!!!

刑法改正で、未成年者の喫煙は(問答無用)で法定代理人には1年以下の懲役、本人には不定期刑〜とかで全部解決やんけ!と思いますよ・・・。

ハナクソというか、ウンコたれというか、こんな「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」並にバカげたものを作るヒマがあったら、もっと見なおさなきゃいかん法律が腐るほどあるだろう・・・と思うんですけどねえ・・・。

私も喫煙者ですが、自販機は使わないですねえ。近所のタバコ屋のばあちゃんと仲良しなので、可能な限りそこでまとめ買いしちゃってます。
Posted by きたかZ at 2008年04月11日 07:32
>>きたかZさん

そーなんですよ!本人に対するペナルティがないから、何をやっても効果が上がらないと思うのです。周辺の法律も併せて改正することになるので面倒だろうとは思いますが…

一方で、「そこまで罰を与えなければならないほど有害なものを、20歳になれば何のおとがめもなしに吸っていいのか」と嫌煙家の強力な攻撃材料として利用されそうですけどね…

>「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」

ぐぐってみました。
いつも「警察24時」系の番組名物「困った酔っ払い」コーナーを見るにつけ、「あーおまわりさんはホント大変だな、でもこんなことまで職務の領域なのか、いそがしいのに…」と思っていたんですが、ちゃんと法的な保護規定があっての話なんですね…普段警察官には腹の立つことが多い(特に交通取り締まり関係だと)のですが、あの酔っ払いの世話だけは同情せずにはいられません。

>まとめ買い

喫煙者の方はやはりまとめ買いが多いですよね。他の嗜好品と違って、「切れるとかなりイライラする」もののようですし…私は喫煙しないのですが、周囲の人を見る限りそうみたいですね。
相方の吸ってる銘柄は渋い(エコー)ので、どこの店でも置いてあるわけではなく、「あそこのコンビニ(スーパー)なら置いてるから」と、ある程度取扱店舗を把握して買ってるようです。
Posted by 大道寺零 at 2008年04月11日 13:08
ここを読んで数日思い出せない言葉がありました。『羹に懲りて膾を吹く』は当たらずとも遠からずだし…
で、やっと今思いつきました。『角を矯めて牛を殺す』でした。
チラシの裏すみません…
Posted by 末期ぃ at 2008年04月11日 13:39
>>末期ぃさん

いえいえ、確かに普段あまり頻繁には使わない言葉ですよね。
この制度によって、未成年喫煙が「今までより増える」ということはないだろう(面倒臭くなるのは確かなので)とは思うのですが、別に法に触れていたわけでもない成人喫煙者に手間をかけさせ、自販機入れ替えのコスト・カード発行のコストなどを考えると、はたしてそれに見合う実効力があるのか疑問をぬぐえないところです。
Posted by 大道寺零 at 2008年04月12日 17:55
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