2008年04月14日

不利益日記

五輪関係者、開会式ボイコットは「自国選手に不利益」

【4月14日 AFP】チベット(Tibet)問題や人権問題などを巡って北京五輪開会式ボイコットの動きが広がるなか、五輪関係者らからは、中国に批判的な各国首脳が北京五輪を利用することは自国選手の不利益になるだけだとする声があがっている。また、米政府の高官は13日、ボイコットは「責任回避」だと発言した。
(AFPBB News)


「開会式ボイコット=自国選手の不利益」
「不利益」の内容は具体的に示されていないのだが、

・アンフェアジャッジ(そうでなくても各種目の主審はほぼ全員が中国人)
・ドーピング冤罪
・「母国からの持ち込み禁止」とされる食物や薬剤に色々混ぜちゃうぞ
・その他有形無形のハラスメント

の予告に相当するのでは?ということは誰でも考え付いてしまう文言であり、今や中国の忠実なるスピーカーと化した感のある現在のIOCやロゲならいかにも言いそうな恫喝である。

…とは私も十分に思うのだが、このニュースの原文を当たると、翻訳が微妙なのでは?という印象も否めない。

上掲の部分に相当する本文は以下の通り。


Olympics boycott would miss the point, say organisers (Yahoo! News)

Olympic officials here warned world leaders wishing to snub China over its crackdown in Tibet that using the Beijing Games will only hurt their own athletes, as a top US aide said a boycott would be a "cop-out."


この「hurt」の訳出はこれでいいのかな?という疑問がなくもない。
というのは、後半のほぼ同様の趣旨の文の中に再び「hurt」が登場し、そちらでは「失望させる」「心を傷つける」というニュアンスの訳になっているからだ。

 また、国際五輪委員会(International Olympic Committee、IOC)や北京五輪関係者は、開会式などの招待状は開催国からではなく各国の国内五輪委員会から送付されることを指摘。
ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領らがボイコットを決定することは中国政府だけではなく、自国の五輪選手らも失望させることになるとしている。



[原文]
Moreover, International Olympic Committee (IOC) officials and the Beijing Olympic organising committee point out, it is not the host country that sends out the invitations but each country's own national committee.

So while a possible decision by French President Nicolas Sarkozy or others to skip the opening ceremony may disappoint China, it would effectively be a snub of athletes from their own country, Olympic officials said.


ここでは「be a snub of」という表現を用いている(こっちの方が「ためにならない」というニュアンスを強く含むような気がするが)。

さらに、訳出されていない部分でのロゲの談話(やっぱりロゲかい)で、再び「hurt」が用いられている。

IOC President Jacques Rogge said a boycott of the opening ceremony, where every competing country marches into the main Olympic stadium behind their national flag, would perhaps hurt athletes but nobody else.

(自分たちの国旗がはためくオリンピックスタジアムでそれぞれの国の(特色ある)行進で参加する開会式セレモニーをボイコットするということは、他でもないアスリートたちに辛い思いをさせることになるだろう)

There are some politicians who talk of a boycott not of the Olympic Games, but of the opening ceremony," said Rogge, who was here last week for a series of meetings.

"I think the athletes would be disappointed because the athletes of a particular nation would not have their political leaders applauding them," he added.


「hurt」には「心情的につらい」「傷つける」、肉体的・立場的にに「危害を加える」「不利益・不都合を与える」というどちらの意味もあり、後から同じような内容を「disappointed」と書いているのを見ても、前者の意味に使われているのでは?と思うのだが…

また、タイトルの
「Olympics boycott would miss the point
も、「point」を「点数」ととらえれば
「オリンピックをボイコットすると減点(教義的不利益)につながる」
という意味合いの訳になり、どちらかといえばこっちよりの訳出なのかと思われるのだが、一般的には
「miss the point」は、「的外れ」「意味がない」という意味
のほうがよく使われる
ような…

まあ特に、このニュースの訳や反応に何かケチをつけたいのではなく、何がしかの報道文を読んで感想を抱こうとする時に、万一正確さを欠くソースだったら意味がなくなると思って原文にあたっただけなんだけども。

英語力が欠如しておりますので、デキる方のご指摘等お待ちしております。


ロゲ会長やIOCの過去(チベット問題がクローズアップされる前)の発言を、現状に照らし合わせて掘り出してみると、一部だけでもかなり笑える…というか、「笑えない」ものがある。

2007年6月23日、一部で北京オリンピックボイコットを唱える動きがあることについて、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長はドイツメディアの取材の中で「ボイコット運動は間違った行為だ」と語った。中国メディアが伝えた。

来年8月に控えた北京オリンピックが近づくにつれ、一部の海外メディアや組織などでオリンピックと国際問題を結びつけて論じる動きが強まっている。今年に入り、ボイコットを訴える声は少ないながらも日に日に大きくなっている。

今月23日、ロゲ会長はドイツメディアの取材の中で「ボイコット運動は間違った行為だ」とし、「ドイツが去年のサッカーワールドカップで自国の繁栄と友好をアピールしたように、来年のオリンピックでは中国のすばらしい文化と地理風俗が見られるだろう」と話した。

また、ロゲ会長によると北京オリンピックには全世界から2万5000人近くの記者が訪れるという。報道の自由は十分に保たれ、各国メディアはオリンピック競技のほか、中国の社会的変化などについても報道するだろうと話した。

レコードチャイナ


ある意味盛んに中国関係のニュースを報じている現状は予告されたのかもしれない。「報道の自由は十分に保たれ」かどうかは疑問(そもそもそんな文言を置かなければならない事実自体が十分に危ういのだが)だが。

ロゲ会長「五輪ボイコットは過去のもの」 (nikkansports.com)

 米映画監督のスピルバーグ氏が中国政府の外交姿勢を不満として北京五輪の開、閉会式の演出担当を退いたことについて、国際オリンピック委員会(JOC)のロゲ会長は19日、「スピルバーグ氏の決定は尊重する。選手のボイコットも尊重する。だが、北京五輪は間違いなく成功する。五輪はあらゆる個人よりも強く、ボイコットは過去のものだ」と述べた。

 スピルバーグ氏は中国政府に対して、深刻な人道危機が続くスーダン・ダルフール問題に適切な措置を施すよう要請していた。また、オランダの議員も開会式のボイコットを呼びかけていた。

[2008年2月20日10時40分]

ジャック・ロゲIOC会長、「フェイスマスクは無用」

2008年3月3日‐ジャック・ロゲIOC会長は、イギリス・オリンピック委員会が北京の劣悪な空気に対抗して開発を計画しているフェイスマスクについて、「全く無用である」とのコメントを発表しました。

先日マラソンの世界記録保持者ハイレ・ゲブラセラシェ選手が北京市の汚染された空気を懸念して今夏のオリンピックマラソン競技への出場辞退の可能性を示唆したばかりですが、その翌日、ロゲ会長は、「マスクの有効性を示す証拠など何もない」と語りました。

「我々の医学委員会は満場一致でこのマスクの有効性に異議を唱えました。競技におけるマスクの使用は各スポーツ連盟の規定から外れるもので、団体によっては使用を認めないでしょうし、また曖昧な立場をとる団体もあるかもしれません。私は先の専門家の意見を踏まえ、アスリートにはマスクを着用しないように薦めます。アスリートたちは彼らの望むことは何でもできますが、マスク着用は全く意味がありません。」


まあ最近はさすがに拝金IOC側も多少空気を読んだ発言を出してきてはいるのだが、チベットに聖火リレーを通そうとか言い張ってるからなぁ…どうするのやら。
posted by 大道寺零(管理人) at 20:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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