2008年04月17日

復刻版「青の6号」 小澤さとる漫画

ao6kyu.jpg
(世界文化社 上・下2冊)

[注:現在の筆名は小"澤"だが、発表当時は小"沢"表記]

このパキッとした色使いがなつかし漫画ならでは、でたまらん!
そしてこのオリジナルロゴもたまらん!(「6」の字の上の部分が右にスッと流れているところが特に好き)
何とはなしにブックオフで探し続けていたらついに発見。しかも両方とも105円(でもキレイ)で言うことなし。



1967年 週刊少年サンデー連載。

架空の海底火山「マラコット」の火口内に本拠「ブルードーム」を置く組織「青」。
「青」は、世界の海中航路の安全を守り、パトロールや救難の任務を果たすため、国境を越えて環太平洋の各国が艦船・資金・人材を提供して組織された団体である。
所属潜水艦にはいずれも各国の軍人が乗り込み任務にあたる。
日本の「くろしお号」には6番艦のナンバーが与えられ、通称「青の6号」と呼ばれている。
乗り込むのは現役自衛官の伊賀三佐(船長)、早田二尉(副長)で、最も旧式のために「ポンコツ」「オンボロ」「ドンガメ」と言われたい放題だが、クルーの度胸と腕、艦長の知略は天下一品。

一方、経済力と軍事力を誇る世界的犯罪テロ組織「マックス」は、自分たちの存在と力を世界に認めさせるため、各国の潜水艦を攻撃し、青に対しても戦いを挑んできた。
青は総力をあげてマックスの本拠を探し、同時にマックスの潜水艦や超兵器と熾烈な戦いを繰り広げていく。


一応物語の主人公は、青6に新しく搭載される潜航艇の少年パイロット・ケン太と竜次なのだが、小澤作品の常道で、敵も味方もオッサンたちの行動やセリフがやたらとカッコよく、いい味を出しているのが特徴。
ギルフォード艦長のツンデレぶり、ヤマトワンダーへのぬぐい去れない慕情を延々と語る伊賀艦長の独白など、当時の少年漫画としては画期的な場面だったのではないだろうか。

小澤さとるの絵柄(特に人物)は、言ってしまえばやや没個性気味な部類である。当時めちゃくちゃ多かった手塚治虫エピゴーネンに属すると見る人が一番多いだろうが、けっこう横山光輝にも似ているし、部分的には白土三平(「サスケ」あたりの時期の)の表情の付け方と共通したところも多い。
しかし画面構成、特に艦戦の場面の演出と描写となるとこれは全く話が別で、ここまで読者を引き付ける海洋バトルを描ける漫画家は(少なくとも当時)おらず、他の追随を許していない。
また、同じような「丸っこい絵柄」であっても、メカ・基地などの描写について、たとえば手塚・石森あたりがかなりアバウトであったのに対し、フィクション度が高いながらもこだわりの設定で、「それらしく、説得力のあるメカ」を描けるのも小澤さとるの大きな強みと言えるだろう。
作中にいきなり「ワルター機関の説明」なんて入ってくるあたりもまたたまらん。

また、この作品に限ったことではないが、昔の漫画は「1ページ4段」がコマ割りの基本となっていたので、1ページ辺りのコマ数が多い。線の処理が律儀なことも手伝って、非常に濃密で「ぎゅっとした」印象。(現在、ほとんどの漫画家は1ページ3段割を基本としているので、コマ数と情報量がかなり異なっている。当時は雑誌自体が薄く、1作品に割り当てられるページ数が少なめだったことも関係している)

話の流れとして、矛盾点や強引な点、風呂敷のたたみが性急すぎる点はいくつもあるのだが、バトルの面白さやセリフの応酬、「海の男の友情」などの力点を置かれたフェイスが非常に魅力的なため、トータルの読後感としては妙に満足感が高い出来栄えとなっている。
ラストもかなり性急で、ストーリー処理が粗い部分は否めないが、一応マックスとの決着も付き、「未完」というほど尻切れトンボではないと思う(並行して「AO6」も読んでいたためにアラが割り引かれたのかもしれないが…)。


小澤氏ファンサイトに、ご本人に訊くQ&Aというコーナーがあり、作品製作の裏舞台がかなりぶっちゃけて語られており面白かった。と同時に、特に作画の面で、「聞けばなるほど」と思う点が多かった。
(このインタビューはとても面白いので、小澤漫画ファンは必読かと)

小澤さとるQ&A
小澤さとるQ&Aその2

Q.漫画家を目指すようになったきっかけ?


 高3(県立川口工業高校)の頃、サッカー部の先輩で出版社に勤めている某氏に誘われて手塚治虫のペン入れのアルバイトをすることになった。手塚先生から海と波と岩の絵を渡され、「好きなように着色してみなさい」と言われ、テストされることに反発したら、手塚先生がしどろもになって、結局テストなしで任されることになったという(1日700円)。

 当時の小澤青年は手塚先生のことを「ベレー帽をかぶったジャガイモ」ぐらいにしか思っていなかったというから驚き。最初から「一枚いくら」と尋ねるなど態度が珍しかったようで、なぜ任されるようになったかは未だに謎であるという。


なんというMAX態度。しかしベレー神様が怒らずに採用したというのは、よっぽど実力を見込んだのか、それとも単に呆れたのか。絵柄が(現在に至るまで)一番手塚絵に近いのは、やはりアシスタント経験からなのだろうか。


(絵について)

 「707F」は6〜7割は先生だったが、蛭田 充氏(「仮面ライダー」、「デビルマン」ほか[筆者注:こちらはコミカライズ作品])が手伝われた。

 その他の過去の作品も、自分一人で書いたのはほとんどない。サブマリン707は自衛官出身の増田シンゴさん、青の6号は久松文夫氏(「スーパージェッター」ほか)、そのほか、あだち充氏(なんと小澤先生(「北沢 力」の名)原作でデビュー作「消えた爆音」を描いている)、ながやす巧氏(「愛と誠」ほか)などが手伝ったもの。


「青の6号」に久松文雄が関わっていたというのは、言われてみれば確かによく分かる話で、独特のキャラクターの可愛らしさ、当時としては高めの頭身がこの作品にもよく出ている。ガボテン島とか可愛いんだよなあ。元祖萌え絵師との呼び声も高い。しかし「青6」に女性キャラは皆無なので残念。

「青6」には直接関係ないが、唯一の専属アシスタント・増田シンゴ(真吾)氏の話がすごすぎるのでついでに転載。

 ただし、専属のアシスタントは増田さんぐらいなもの。そのほかは編集者の連れてきた助っ人だった。専属を雇うことはその人の生活について重い責任を負うことであり、それができなかったとのこと。このせいで作品をよくチェックする余裕もなく、また、連載の人気投票競争で無我夢中だったため、間違い/矛盾が多いとのこと(2002年2月3日)。

 この増田シンゴさんには多くのエピソードがある。彼は米第6艦隊のオクラホマシティーにも留学したエリートで、出会った当時は特務艦(レーダーピケット艦)の「わかば」の艦橋士官だった。横浜港で出会って意気投合し、飲み明かして先生の部屋で目を覚ましたら、すでに「わかば」は朝8:00に出港してしまっていた。まあいいやとそのまま先生の仕事を手伝い始めた。船の絵は非常に得意で、707はほとんど彼の絵だったという。
 2、3年?経って、脱走したままというわけにもいかず、小澤先生が付き添って基地に出向いたところ、どういう訳か本人不在のまま佐世保や横須賀などに転属されており、おまけになんと一階級昇進していたという。
 そんな増田さんに大きな不幸が訪れる。実家の工場に手伝いに帰省していた時、プレスで右腕を切断。これが707のアポロノーム中断の秘密だった。小澤先生自身の手で執筆を再開したら、これは小澤先生の絵ではないと抗議の投書が殺到したという。


増田氏がご存命ならまた違った角度から面白い製作秘話が聞けそうなのだが、残念ながら既に他界されている。「まんが王」に連載した「ボナンザ」の一部がUPされているので、興味のある方はご覧になられては。確かにこの絵は当時の小澤作品にけっこうな頻度で登場している絵だ。

右腕を失ったというのも辛い話だが、そのあとの、「自分で書いたのに代筆だろと言われた」というエピソードも色々な意味で凄すぎる。

「横山光輝の絵にも似ている」ともよく指摘されるところだが、師弟関係の存在が確認できる手塚治虫と異なり、横山光輝との関係はいま一つはっきりしていないようだ。
「ジャイアント・ロボ」を共同製作するなど、少なくともかなり良好な関係の時期があったことだけは分かっているのだが、

・前半は小沢が作画(シナリオや構図は横山)
・小沢が多忙になり、横山が作画
・横山もスケジュールが追い付かなくなり、最後はアシスタントにほぼ丸投げ


という製作経過をたどったため、作品自体の知名度が高く、復刊を望む声も絶えなかったのだが、横山光輝は「自分が生きている間は決して再販しない」と公言。小沢側もこの作品については徹底して語らない(作品に関する権利はすべて横山側に譲渡済み)ため、単に多忙によるものなのか、両者の関係そのものが破綻したのかは定かでない…が、後者と目されているようだ。
(参考:「ジャイアント・ロボ」の不幸と、そしてお願い
なお、「ジャイアント・ロボ」は、2005年に待望の完全版が講談社から復刻された。

絵柄の相似でいえば、そもそも共作を行うくらいだから似ている部分があった、とも考えられるし、一部作画を担当した久松文雄は横山光輝のアシスタント出身で、やはり絵柄に共通する部分があるためそう感じるのかもしれない。
[コメント欄にて、「とも」様から
「久松文雄氏は横山先生のアシスタントではなく先生の作画のお手伝いをしたことも、面識もありません」
という情報をいただきましたので、上記部分を打ち消し線修正いたしました。ありがとうございました。]



「青の6号」にはいくつかの強敵が登場してストーリーを盛り上げるのだが、その中の一つに「ヤマトワンダー」がある。
これは、沈没した戦艦大和をマックスが引き揚げ、潜水艦として大改造したもので、主砲から発射される魚雷が大いに「青」の艦船を苦しめた。(OVAにおいても、コンセプトが受け継がれ、「ナガトワンダー」として登場した)
「大和のリユース」というコンセプトは、なんといっても「宇宙戦艦ヤマト」を想起せざるを得ないところだが、時期的にはこちらの方が早い(ただし、これが「最初」ではない)。これについては調べてみたら色々面白いことが分かったので、後日改めてまとめてみようと思う。

話は変わって、かわぐちかいじの名作「沈黙の艦隊」は、設定要素のいくつか、また一部バトルシーンの展開において、「サブマリン707の露骨なイタダキ」と、(全体的にではなく、ポリティカルフィクションとしての価値を十分に認めた上にしろ)辛い評価を受ける機会の多い作品である。

例えば物語の冒頭、海江田が最新型原潜「シーバット」を強奪する部分は、「707」の「盗まれた潜水艦編(自衛官が試験艦を強奪して逃走し、独立国家設立を宣言する)」や「アポロノーム編」との共通点は多くの読者に指摘されている。

で、今回「青6」を通して読んでみて、こちらにも結構共通点はあると思った。
目的やコンセプトで言えば、「沈黙の艦隊」の「やまと」の性質は、「青」よりも「マックス」にかなり近い。

マックスの要求と目的はいくつかあるが、その中に

・国連に代表を送り込み
・マックスを世界の散在国家として認めろという要求を出す
・固定本拠を持たず(実際は何度か作ろうとして阻止されているわけだが)基本的には一か所に留まらない移動基地および艦隊が組織の本体である


という部分が共通している。
勿論やってることと目的は全く異なる(「平和の実現」という究極目的においては青側と一致する)ものの、共通した性質をもち、「国家主権を主張する」集団が、同じ「やまと」の名を冠する(マックスの場合は単に兵器として利用したのみだが)という共通点が非常に興味深いところである。
(私はこれらの共通点を以て、「沈黙の艦隊」が盗作であるとは判断しない。しかし、作中において、写真集から無断トレスを行ったとしてカメラマン側から訴えられたり(謝罪と和解で終わったはず)、一部の戦闘シーンの流れが「紫電改のタカ」に酷似していると指摘を受けるなど、何かとスッキリしないゴタの多い作品であることは事実だ。)

ところで、マックスの首領の説明によれば

「いいかね マックスは、いま 世界の通貨の八十分の一を動かすことができる。」
「この経済力は、アメリカ・ソビエトという二大国につぐ大きさなのだ。」
「だが、しかし、アメリカにもソビエトにも 二億三億という国民が、その経済力に、たよっている。そのために両国ともぼう大なる予算を必要とする。」
わがマックスには やしなわねばならぬ人口は両国の百分の一にも、みたないのだ。したがってマックスの経済力は世界一だ。」

む、それ魅力。

さらに

・マックスの援助なしにはやっていけない国は十カ国をこえ
・マックスの資本を導入している国はすでに三十か国


と、経済支配はかなりのところに及んでいる。
そして一連の攻撃行動の目的は

・太平洋を航行する船舶のすべてを海底に送り込み、海路通商路を恐怖の底に陥れる
結果、経済に行き詰った国からマックスに従ってくるようになる

というところにあるという。

世界征服をたくらむ悪の秘密結社は星の数ほどあるが、「資産と食いぶちの比率」に始まり、「経済的に降伏せざるを得なくなるように仕向ける」というしっかりしたビジョンを持った組織はそうそうザラにあるものではない。ほとんどの敵は、「どうやって世界(日本)を征服するか」「それは何のためか」「征服したあと何がしたいのか」を説明できず、「敵役だからとにかく征服するのだ」「悪役だから悪いのだ」というトートロジーに陥りがちな中、大したものである。
「敵の行動や目的が陳腐でなく、説得力があること」は、作品が名作たりえる条件の一つだと思っているのだが、マックスはそれを悠々クリアしているように思える。


女性キャラなき「青6」にあって、唯一のアイドルといえば、ブルードームの守護者にしてオペレーターのロボット・ノボである。この造形がなんとも可愛らしく、妙に人間くさい受け答えも作品のアクセントになっている。

上巻表紙に描かれたノボのボディには小さな落書きがしてあって、

novo.jpg

(鳥居マーク)
TATISYON
NOGUSO
KINZU

MONOGOI
MONOURI
KINZU

ENGARU SHINBUN・・・12751


こういう他愛もない落書きがローマ字で入っているのも、いかにも「昔のマンガだな〜」とノスタルジーにひたってしまう。海底で物売り物乞いとか立ちションはないと思うが。
なお、「ENGARU」とは、現在小澤氏が住んでいる北海道遠軽町のことだろう。
posted by 大道寺零(管理人) at 02:32 | Comment(4) | TrackBack(0) | 漫画
この記事へのコメント
お邪魔します。
青の6号第一巻
 ムスカ雷撃戦の巻
 ヤマトワンダーの巻(赤はげ登場)
青の6号第二巻
 「ああヤマトから空からの攻撃」まで
青の6号第三巻
 「本局襲わるからマックス滅亡」まで
第三巻の170ページからは
 「Dライン」と言う別物語が掲載されていた。
懐かしい青の6号、マックスとの戦いの中に「赤はげ」なる怪物が現れ無類の強さを発揮し、青の本部が危機にさらされ、B号プッシュにより浮上を余儀なくされるるシーンなどこの漫画の主人公は「赤はげ」ではないかと勘違いしてしまうほど暴れまわります。
懐かしい漫画、「赤はげ」私の記憶の中で一番のキャラクターでした。
ちなみに、「あかつき戦闘隊」が私の一番好きな漫画でした。
Posted by 龍山 at 2008年04月17日 17:10
>>龍山さま

こんにちは。こちらの桜もそろそろ散り始めております。

この「復刻版青の6号」は、叔父様がお持ちの秋田書店サンデーコミックス3巻本の復刻ものですが、残念ながら「Dライン」は収録されておりません。

物語では、ヤマトワンダーはなかなか沈まず、結局ラスト直前まで健在でしたね。敵のコマが減らない中、赤ハゲ+ヤマトワンダー+ムスカ隊の脅威で青本部が追い詰められていく様、そしてB号プッシュのくだりは、ページをめくる手が止まらない面白さでした。

1999年に発表されたオリジナルアニメでは、キャラクターや敵がアニメのオリジナルとなっていますが、いくつか本編との共通項が存在します。

「赤はげ」も登場しますが、漫画のような操られるだけの存在ではなく、深い知性と哀愁を持った知的生命体として描かれており、かなり趣が違います。

CGを多用しており、雰囲気がかなり異なるうえに、音声が聞き取りづらい部分が多いのですが、もし機会がありましたらご覧になるのも一興かと思います。
水やブルードームの表現は美しいです。
http://animejapan.cplaza.ne.jp/b-ch/ao6_ova/ao6_ova.html

(以下は第1話です)
http://www.youtube.com/watch?v=4GoWG5QcIok
http://www.youtube.com/watch?v=0FZrv_BNbX8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ipVuUjXiHgE&feature=related
Posted by 大道寺零 at 2008年04月18日 15:20
お邪魔します。久松文雄さんですがこの方は横山先生のアシスタントではなく先生の作画のお手伝いをしたことも、面識もありません。ただ小沢さんから横山先生のお話はよく聞かれていたとご本人から、某集いでお聞きしたことがあります。
Posted by とも at 2008年04月19日 13:19
>>とも様

貴重なコメントありがとうございます。早速本文の該当部分を打ち消し線修正させていただきました。
久松先生の絵柄は今ではずいぶんと変化なさってますね。
誤解を正していただき、感謝しております。
Posted by 大道寺零 at 2008年04月19日 16:13
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