あまり期待せずに録画してみたらものすごくツボな良作だった。
基本的に初期原作を強く意識した絵柄・時代設定等は2004年放映の今川監督TV版に準拠しているが、人物の設定が一部変わっているなど、「同設定のパラレル」とみるのが妥当か。
昭和30年代の風景は、若い人でも新鮮で楽しめると思うが、やはりその時代を生で過ごした40代後半↑のリアルタイム読者オールドファンの方に見てほしい(というか、ぜひ感想をお聞きしたい)作品。
公式サイトはこちら。(音出ます)
[物語]
太平洋戦争が終結して10年余り、舞台は昭和30年代の復興期の日本。
急速な復興により空襲の爪痕もほぼ癒え、近代的な建物が立ち並ぶ東京。東京タワーは建設中(このことから考えて、31〜2年辺りか)。活気あふれる人々が闊歩する一方で、物乞いの傷痍軍人が路上のあちこちにいるなど、ところどころに戦争の陰影が見え隠れしている、そんな時代。
「不発弾」もまた、戦時の名残りの一つだった。
住民を避難させて不発弾処理に当たっている最中に、謎の怪ロボットが現れ不発弾を奪取しようとする。その場に颯爽と謎の青年が現れ、正太郎少年以上に見事な操縦で鉄人を駆り、敵ロボットを倒す。しかし爆破信管を作動させられ、結局不発弾は爆発してしまう。
鉄人の操縦プロポを持っているのは自分だけのはずなのに…と驚愕する正太郎。
その青年の名もまた「金田ショウタロウ」。
金田博士は長年子供に恵まれず、正太郎を授かる以前に彼・ショウタロウを養子に迎えて、鉄人操縦者として育てていたのだ。
戦時中、ショウタロウは徴兵されて特攻隊に配属されるも、金田博士に招聘されて南方の研究所で鉄人の研究開発を手伝っており、徹底的に操縦技術を叩きこまれていた。しかし実戦に投入される前に戦争は終結。状況の混乱の中、ショウタロウは終戦を知らされることなく10年以上南方で生活し、その地を訪れた研究者に発見されて日本に戻ってくることになったのだ。
義理の兄弟・二人の「ショウタロウ」は対面を喜び、「これからは幼い正太郎を戦わせることなく、自分が鉄人とその戦いを引き受ける」と微笑むショウタロウだが、鉄人をさらわれるような気分の正太郎の心中は複雑に揺れる。
戦後10年ですっかり変わってしまった日本の風景に、ショウタロウは自分がいるべき場所ではないような強い違和感を抱いていた。そんな心境を慮り、戦災を耐え抜き戦前の面影を今なお残す「共潤会アパート」へ連れて行く。
その懐かしく美しい風景、一瞬母と見まがった優しい初老の管理人へのほのかな慕情、そしてかすかに残る幼い頃の思い出からショウタロウはアパートをいたく気に入り、そのまま入居することになる。
そんなショウタロウを待っていたのは、弁護士が携えてきた金田博士の遺言。そこには、「鉄人の継承者は息子・正太郎」と明記されており、ショウタロウの疎外感を強めるのだった。
一方、冒頭で爆発した不発弾についても詳細が判明。
それはただの不発弾ではなく、戦時中金田博士が開発した「もう一つの負の遺産」・「廃墟弾」だった。
建造物や人工物は破壊するが、生命体にはダメージを及ぼさないという爆弾。それに関して、
「廃墟弾のありかは鉄人が知っている」
という博士の言葉を思い出して告げるショウタロウ。
かくして廃墟弾の発見・撤去のために鉄人28号が駆り出されることになるのだが、処理の現場には必ずそれを妨害する怪ロボット、そして米メラネード財団の影が見え隠れする。
また一方では、金田博士の遺言を届けた弁護士が殺害されるという事件が起こる。その現場には
「正太郎に鉄人を操縦する資格なし」
と書かれた一枚の紙、そして続けて記された署名は
「白昼の残月」…
ショウタロウがかつて特攻隊時代に、その独自の戦法からついたあだ名も「白昼の残月」。そして目撃者が語る数少ない加害者情報は「復員兵姿の男」。
突然現れた兄への思慕と疑念へのせめぎ合いに戸惑う正太郎。
そして廃墟弾により局地的に東京に生じた廃墟を見つめて「美しい」と呟くショウタロウの真意とは…
「知らないはずなのに懐かしい」という言葉はあまりにも陳腐だが、この映画で描かれる昭和30年代の光景はまさに私にとってその言葉通りだった。
実際には両親や親戚の話で聞いたり、ドラマやドキュメンタリー・当時の写真などで目にしていたし、育った頃の風景にもまだまだその名残がところどころにあった時代だったので、そうした二次的な記憶がそうさせているのだろうと思う。
演出として画面のところどころに編入させるのが実に巧みだと思う。
例えば、建設中の東京タワーが何度も効果的にフレームインしたり、共潤会アパート(同潤会アパートがモデルとなっているのは言うまでもない)の懐かしく美しい風景、都電が走る東京など。
特に個人的に心臓をグッとつかまれたのは、「ニュース映画」が挿入される場面だった。
実際に映画館で映画ニュースを見た経験はないのだけれど、ちょっと前の戦中戦後を扱うドキュメンタリーなどでは頻繁に登場していたアイテムだし、父が映画好きでいろいろ関連書籍がある中にニュース映画特集のものもあってよく読んでいたので親近感があった。
そして同時に、「ああ、そういえばこの頃テレビは登場したばかりで超高価で、ほとんど庶民には普及していなかったんだもんなあ…ニュース映画は貴重な映像ソースだったんだ…」とハッとさせられて、否応なしに「時代感」を強く味わった。その辺が本当にうまい。
この映画では、鉄人のアクションシーンももちろんだが、それよりも二人の「ショウタロウ」を中心にした心理葛藤と人間ドラマ、そして廃墟・桜・月が絶妙に配置された映像美に重点が置かれ、丁寧に描かれているように思う。
それでいてしっかりと「ショウタロウと鉄人の物語」としかいいようのないものに仕上がっている妙技には脱帽、そして感動するしかない。(勿論、鉄人の重量感・硬質感の表現はお家芸)
「廃墟」を作り出すための装置として、中性子爆弾と真逆の効果を持つ「廃墟弾」の発想も、力技ながら面白い。
今川監督特有の「ケレン味」はやや控え目に思えるが、非常にきっちり・切なく作られていて、ストンと感動した。もしかして「映画」という形式がこの監督にはベストマッチなのかも…とすら思うほどに。
機会があれば、若い方とオールドファンの両方の感想を聴き比べてみたいと思う作品。
後者のファンの方とすれば、
・徹底した横山リスペクトに感動した!
・「鉄人28号」としてみた場合ややナイーブ過ぎるのでは?
という2極化した反応になるかもしれないが…
作中では村雨一家のスタンスが実においしい。竜作にいちゃん活躍しまくりだし、渋いし、若本規夫は相変わらず巻き舌巻き放題ヨロレイヒーだし。
あと、ショウタロウのデザインはやっぱり「あばれ天童」なんじゃろか…
その他の感想は、「イン殺。」のレビュー・感想とびっくりするほどシンクロしてしまっている。
特にこちらの指摘する「今川好み」要素の一つに挙げられている
# マッドサイエンティストな父親が作った余計な物のせいで子供が死ぬような苦労をする。
* 父親に最も欠けている能力は社会性ではなく ReadMe を書く力。「ソースがドキュメントだ」とか言っちゃうタイプ。
という表現には大笑いすると同時に頸椎がどうにかなるほど同意。
OVA「ジャイアントロボ」は突き詰めるとこれがすべての元凶だもんなあ。
ちょっと前にここで「BSでやるのか!見なければ!」と知った時から楽しみだったのに
せめてなんかこう、メモなりケータイのスケジュールなりやっておくんだった
あの枠は本当に超ひっそりやりますから、私もけっこう見逃してしまったことがあります。
最初ハイビジョンの方でやって、数ヵ月後にこっそりBS2でやるパターンなんですが、不定期なので時期が読めないんですよね。なにもこんなにこっそりやらなくてもいいだろと思うんですが。
深い話じゃないですか。このストーリーの物哀しさは、偉大な職人横山御大には「漫画らしくない」と言われるかもしれませんが、私は観たい。あの絵柄で、このストーリーかぁ。色々、複雑な思いです。
21世紀番TVシリーズ「鉄人」のラストで、正太郎を守りつつ「死んでいく」鉄人を観ながら、私はホントに泣いたのでした。深夜でぼうっとしていたからかもしれませんが・・・この作品、観たいです。
「鉄人」も見たが殆ど覚えがないですが、カラーだと違和感がある…
小学校に上がってしばらく街角や銭湯で傷痍軍人を見かけたので、私は戦争は知らないが戦後は知っている世代と自称しております。
確かに、横山漫画の持つ単純明快さとは別の味わいではありますが、たぶんネコトシさんのお気に召すんじゃないかと思います。
特に、「硬いロボをこれでもかと硬く描写した上で、痛々しくボッコボコにする」シチュエーションの健気な表現には定評のある今川監督ですので、そのへんの味付けが好きな方にはたまらぬものがあるかと。
DVDもリリースされておりますので、ご近所のレンタル屋さんなどで借りてみられてはいかがでしょうか。
>>末期ぃさん
私はフィクションの世界でしか傷痍軍人の姿を見たことがないんですが、親戚知人の中に引き揚げしてきた方はけっこういますし、子供のころはあちこちに「シベリア帰りのおじいちゃん」もいたり、黒塗りされた白壁がまだそのままのお倉なんかもありまして、そう言われてみればたしかに「戦後の光景」はまだまだリアルに身の回りにあったように思います。